介護職の離職率が高いのは本当?長く働ける職場探しのポイントとは
文/佐藤恵美(介護福祉士・社会福祉士)
介護職は人手不足が続く一方で、離職率の高さが課題とされています。職場の人間関係や収入面の不安、働きやすさの問題など、さまざまな理由で転職を考える人が少なくないためです。
ただし、近年の調査では、介護職の離職率に改善の兆しが見られ、職場環境が少しずつ改善されていることがわかります。
この記事では、介護職の主な離職理由や、自分に合う職場を見つけるためのポイントについて詳しく解説していきます。ぜひ最後まで読んで、参考にしてください。
1.介護職の離職率の実態
公益財団法人介護労働安定センターが実施した「令和5年度 介護労働実態調査」によると、訪問介護員・介護職の離職率は13.1%です。

(出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」)
2019年の離職率が15.4%だったことを踏まえると、離職率は低下しているといえるでしょう。
また、厚生労働省が発表した、2023年の「雇用動向調査」における全産業の離職率は 15.4%となっており、このデータと比較しても介護の離職率はそれほど高くないといえます。
離職率が低下した理由としては、人間関係が改善したことや残業が減少したこと、有給休暇が取りやすくなったことなど、介護業界における業務改善の取り組みが挙げられます。加えて、介護職員等処遇改善加算による賃金の向上や、採用基準の見直しなども、離職率の低下に影響している可能性があります。
2.介護職のよくある離職理由
次に離職理由について見てみましょう。公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和5年度介護労働実態調査」の結果を見ると、介護職の主な離職理由として以下の項目が挙げられています。
- 職場の人間関係
- 職場の理念や運営に対する不満
- ほかによい仕事・職場が見つかった
- 収入の少なさ
- 将来の見込みが立たない
1つずつ順番に見ていきましょう。
職場の人間関係
職場の人間関係は、最も多い離職理由です。
介護職は、利用者さんの安全を守るため、常に神経を研ぎ澄ませておかなければなりません。一方で、先に紹介した慢性的な人手不足という課題があります。そのため、誰もが忙しくなり、職員同士のコミュニケーションが希薄になったり、意見の対立が生まれやすくなったりすることも事実です。
そうした背景から、次第に働きづらさを感じるようになり、離職につながるケースは少なくありません。しかし、近年は職場環境がよくなり、人間関係で離職する割合も減っていると言われています。
職場の理念や運営に対する不満
職場の理念や運営方針への不満も、離職理由として多く見られます。
介護施設では、それぞれに経営理念や方針を掲げていますが、介護職員が「自分の思いとは違う」と感じると、離職に至る可能性が高まります。例えば、利用者にじっくり寄り添った介護がしたいと思っても、職場が効率重視の方針を取っていると、理想とするケアができないかもしれません。また、職員の意見が反映されにくい職場では、職員の不満がたまりやすくなります。
なかには、経営側の判断で突然ルールが変わったり、現場の職員にかかる負担が増えたりするケースもあります。こうした状況が続くと働く意欲が低下して、辞めたいと感じてしまうでしょう。
ほかによい仕事・職場が見つかった
働きやすい環境を見つけて離職する人もいます。
身体的な負担が大きいと感じる人の場合、日勤のみのデイサービスに転職したり、給与が高い職場に転職したりするケースが多く見られます。
また、資格や経験を生かして、介護事業所以外の職場に挑戦する人もいます。例えば、福祉用具の販売なども、資格が生かせる仕事の1つです。まったく別の業界の営業職や事務職でも、介護職で培った協調性や柔軟性、コミュニケーションスキルを生かした働き方ができるでしょう。
私の同僚は、同じ介護業界で転職先を見つけていました。ハローワークを利用していましたが、同時に転職サイトや転職エージェントも利用したと聞いています。私自身も、転職のときは複数の転職エージェントに登録し、情報を集めていました。働きながら転職活動が進められるので、効率がよかったです。
収入の少なさ
収入への不安が離職の理由となる場合もあります。
「令和5年度介護従事者処遇状況等調査」によると、訪問介護員の平均給与額は22万3,122円、介護職員の平均給与額は22万5,914円でした。この金額は、生活相談員やリハビリ職など、同じ職場で働く他職種と比べて、低めの水準となっています。

(出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護従事者処遇状況等調査」)
そのため、責任や負担の大きさの割に給料が少ないと感じ、転職を考える介護職員も少なくありません。処遇改善加算によって収入が増えている介護職員もいますが、業務量に見合わないと感じると、離職につながりやすいようです。
将来の見込みが立たない
介護職員の仕事に将来性を見出せず、辞めていくケースもあります。主な要因として挙げられるのは、前述した収入への不安ですが、身体的な負担も離職を考える大きな要因です。
介護職のなかには、利用者さんの介助を続けるうちに腰や膝を痛め、長く働けるかどうか不安になる人が多くいます。現場の負担を軽減する設備が整っていない施設では、とくにこの傾向が強いと感じます。
私は、かつて勤務していた施設で腰を痛めた経験があります。それによって、これまでと同じような働き方が難しくなり、「利用者さんに十分なケアを提供できない」と実感したため、退職を選びました。
3.離職率の調べ方
介護職の離職率を調べるには、以下の方法があります。
- 公的なデータを利用する
- 求人情報をチェックする
- 事業所に直接問い合わせる
- 介護サービス情報公表システムを使う
順番に解説していきます。
公的なデータを利用する
公益財団法人介護労働安定センターが、毎年実施している「介護労働実態調査」では、最新の離職率や推移がわかります。厚生労働省が発表している「雇用動向調査」も、全産業の離職率が掲載されているので、他の職種と比較する際に便利です。
介護サービス情報公表システムを活用する
全国の介護事業所の情報が公開されている、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」がおすすめです。明確な離職率は掲載されていませんが、現在の職員数と退職者数がわかるため、おおよその離職率を割り出せるでしょう。
事業所に直接問い合わせる
事業所に直接聞いてみるのも1つの方法です。ただし、面接の逆質問などで離職率を尋ねる場合は、ネガティブな印象を与えないように配慮することが大事です。働く意欲や応募先に対する関心度の高さを示したうえで質問するようにしましょう。
直接聞きにくい場合は、ハローワークの職員に聞いてみるのもよい方法です。「人員の入れ替わりが激しい事業所は避けたい」と伝えると、情報を教えてくれる可能性があります。
求人情報をチェックする
離職率の低さをアピールしている求人もあるので、ハローワークや転職サイトで求人情報をチェックしてみましょう。
また、転職エージェントを利用すれば、離職率に関する情報も提供してくれます。すぐにわからない場合でも事業所に確認してくれるので、自分で聞きにくい方は、活用してみてはどうでしょう。
4.自分に合う職場を見つけるために意識するべきポイント
- 希望する条件を明確にする
- 応募したい事業所を見学する
- 転職エージェントを利用する
希望する条件を明確にする
自分に合う職場を探すには、希望する条件を明確にすることが大切です。まずは希望条件をリストアップし、優先順位を決めましょう。それによって、応募先を絞りやすくなり、転職後のミスマッチも防げます。
働き始めてから「思っていた環境と違った」と思っても、すぐ転職するのは容易ではありません。自分に合った職場を選ぶためにも、「転職で何をかなえたいのか」「どんな働き方をしたいのか」などについて、きちんと考えておいてください。
【希望条件の例】
- 利用者とじっくり関われる環境で働きたい
- 残業が少なく、家庭と両立しやすい職場がよい
- 夜勤のない職場で、規則正しい生活を送りたい
希望の条件を明確にすると、転職活動の方向性が定まり、納得できる環境で働ける可能性が高まるはずです。
応募したい事業所を見学する
求人情報を確認するだけでは、実際の職場環境や雰囲気などがわかりにくいもの。応募を検討している事業所については、できるだけ見学するのがおすすめです。
実際に職員がどのように働いているか、利用者さんとの関わり方はどうかなどを確認すると、自分に合った環境かどうかが判断しやすくなります。見学時には、職員同士のコミュニケーションや、屋内外の清潔さなどにも注意しましょう。
見学に行くと、1日の業務の流れや職員の年齢層、実際の雰囲気などを確認したり、質問したりできるため、入職後のミスマッチ防止にもつながります。
私が勤務していた施設でも、よく希望者が見学に来ていました。面接の場では聞きにくいことも、見学の流れのなかだとすんなり聞けたりするものです。働いてみたい事業所があれば、見学が可能かを問い合わせてみましょう。
転職エージェントを利用する
働きながら転職活動をする場合、仕事の合間に履歴書を書いたり面接に行ったりと、慌ただしくなりがちです。転職活動を効率よく進めたいなら、転職エージェントを活用するのがよいでしょう。
【転職エージェントを利用するメリット】
- 一般には出回らない非公開求人を紹介してくれる
- 人間関係や職場の雰囲気など、詳細な情報を得られる
- 履歴書の作成や面接対策などの手厚いサポートがある
転職エージェントを利用すれば、希望に合った求人を紹介してくれるほか、面接の日程調整や条件の交渉など、応募先とのやりとりも代行してもらえます。そのため、最小限の時間で転職活動を進められるでしょう。
ただし、希望条件をしっかり伝えないと、ミスマッチが生じるケースもあります。希望条件の優先順位を共有することでミスマッチを防ぎ、自分に合った職場を見つけてください。
まとめ:介護職の離職率は低下傾向!自分に合う職場を見つけて楽しく働こう
介護職が離職を決意する背景には、人間関係の悩みや収入の少なさ、職場の理念との不一致など、さまざまな要因があります。
そうした理由で転職を検討する際は、自分にとって何が大切かを整理し、慎重に職場を選ぶことが大切です。希望する条件を明確にし、職場見学や転職エージェントを活用することで、よりよい環境を見つけましょう。納得できる職場が見つかれば、きっと長く働き続けられるはずです。
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