身体介護と生活援助の違いは?それぞれのサービス内容を解説!
構成・文/介護のみらいラボ編集部
高齢化が進む日本において、介護サービスを受ける人は年々増加しています。その流れで利用者が増えている介護サービスのひとつが訪問介護です。訪問介護には「身体介護」や「生活援助」といったサービスの種類がありますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
当記事では、訪問介護における身体介護と生活援助について、それぞれの定義や具体的なサービス内容の違いを解説します。これから介護職を目指す人や、介護サービスの具体的な内容を知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
1.身体介護と生活援助の違い
「身体介護」とは、介助者が利用者の身体に直接触れて行う介護サービスです。食事、入浴、排泄など、利用者の日常生活動作のサポートが身体介護の基本的なサービス内容に分類されます。
「生活援助」とは、身体介護以外で、利用者の日常生活を支援するサービスです。生活援助は、利用者本人や家族の家事遂行が困難な場合に行われる代行的なサービスとして位置付けられています。
身体介護と生活援助は、どちらも訪問介護のサービス類型のひとつです。両サービスは「利用者の身体に触れるかどうか」という点を基準として区別されています。
2.身体介護のサービス内容
訪問介護における身体介護は、下記のいずれかにあたるサービスを提供するものと定義されています。
(1)利用者の身体に直接触れて行う介助サービス
(2)利用者の自立支援・重度化防止のためのサービス
(3)その他の専門的知識・技術を要する生活上のサービス
(出典:厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について」)
ここでは、身体介護の3つのサービス内容について具体例を挙げて紹介します。訪問介護の業務を把握する際の参考にしてください。
身体に直接接触して行う介助サービス
利用者の生活動作を介助する場面の多くは、身体に直接接触してサービスを行う必要があります。
(例)身体に直接接触して行う介助サービス
介助サービス | 内容 |
---|---|
食事介助 |
・食事姿勢の確保 ・配膳 ・摂食介助 ・服薬介助 ・口腔ケアなど |
排泄介助 |
・衣服の着脱 ・排泄の補助 ・手洗いなどの清潔介助 ・居室からトイレまでの動線確保など |
更衣介助、清拭 |
・着替えの準備(下着、靴下などを含む) ・衣服の着脱 ・身体の清拭など |
入浴介助(全身浴、部分浴) |
・浴室への動線確保と安全確認、移動介助 ・脱衣室や湯温の確認 ・衣服の着脱 ・洗髪、湯あみ介助 ・身体の洗浄など |
(出典:厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について」)
各介助サービスには、事前の準備や安全確認などさまざまな行為が伴います。また、利用者の身体に直接触れる介助サービスを行う際は、必要に応じて介助者も、着替えや手洗いを行うなど、衛生面に気を配りましょう。
自立支援・重度化防止のためのサービス
介助者が安全を確保しつつ、常時介助できる状態で利用者を見守ることが、「自立支援または重度化防止のためのサービス」に該当します。利用者自身の行動を後押しすることで、社会生活における自立や生活の質(QOL)の向上が期待できます。
自立支援・重度化防止のためのサービスを行う際のポイントは、利用者本人の自己決定を尊重することです。利用者が自分で行いたいこと、そのために障害となることを把握し、必要に応じて介助者が手伝いながら家事などを行うとよいでしょう。
(例)自立支援・重度化防止につながるサービス
声掛けをしつつ見守る | 利用者と一緒に行う |
---|---|
・服薬 ・入浴 ・更衣 ・移動時の歩行 ・ベッドの出入り(自立)など |
・洗濯 ・ゴミの分別 ・調理、配膳、後片付け ・部屋の掃除や整理整頓 ・シーツや布団カバーの交換など |
(出典:厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について」)
立位や歩行を伴う動作を見守る際は、転倒防止の声掛けを適宜行い、介助が必要になったら、即時に対応できるよう準備して付き添いましょう。また、上記のようなサービスを行う前後は利用者の疲労度や体調に気を配ることも大切です。
専門的知識・技術を要する生活上のサービス
身体介護のうち、専門的知識・技術を要する生活上のサービスには「たんの吸引」や「経管栄養」といった医療行為が含まれます。また、嚥下困難者に提供する流動食など、特段の専門的配慮をもって行う調理も、専門知識・技術を要する生活上のサービスのひとつです。これらは、利用者が日常生活を営む上で必要な行為として、医師の指示がある場合に限って行うことが認められます。
たんの吸引などの医療行為を行う際は、介護事業者から都道府県への申請や登録が必要です。さらに、現場でサービスを行う人については「介護福祉士および一定の研修を受けた介護職員など」に限られています。
(出典:厚生労働省「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度について」)
●関連記事:身体介護とは?訪問介護における位置づけと3つのサービス内容
3.生活援助のサービス内容
生活援助は、身体介護以外で利用者の日常生活を支援するサービスを指します。サービスを行う際の注意点は、あくまでも「利用者本人の生活支援」であることです。利用者本人が現状行うことができない家事などを代理で遂行するのが、生活援助サービスの基本です。
ここでは、生活援助サービスの具体例を挙げて詳しく解説します。
サービス準備など
生活援助サービスの実施前後に行うべき行為として、以下の内容が挙げられます。
サービス前後に行う行為
・利用者の健康確認(安否確認、顔色などのチェック)
・室内の環境整備(換気、室温・日あたりの調整など)
・相談援助、情報収集・提供
・サービスの提供後の記録など
(出典:厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について」)
なお、サービス準備や記録はあくまでもサービス提供に伴う行為という位置付けであり、単独で介護報酬の算定をすることはできません。
掃除
生活援助における掃除は、自宅内で利用者が日常生活を送る場所を対象として行います。生活援助は利用者の日常生活を支援するサービスです。そのため、直接的に利用者の生活援助につながらないと判断される場所については対象外とされています。
(例)訪問介護における生活援助の掃除場所・内容
対象 | 対象外 |
---|---|
・利用者の使用する居室 ・浴室 ・洗面所 ・トイレ ・キッチン ・生活動線(廊下) ・ゴミ出しなど |
・家族の使用する居室 ・ガレージや物置 ・庭(草むしり、花壇の手入れなど) ・窓ふき ・床のワックスがけ ・家具の移動、必須ではない大がかりな掃除など |
掃除の方法や頻度は人によって違うため、実施する前に利用者へ聞き取りを行うことをおすすめします。可能な範囲で希望に沿った対応をすると、利用者の満足度の向上につながるでしょう。
洗濯
生活援助における洗濯は、利用者本人が利用した衣服やタオルなどに限って行います。家族分の洗濯は生活援助のサービス範囲に含まれないため、注意が必要です。
洗濯機または手洗いによる洗濯、乾燥、洗濯物の収納までの流れを基本とし、必要に応じてアイロンがけなども行います。
ベッドメイク
生活援助におけるベッドメイクは、シーツや布団カバーなどの交換が主な内容です。利用者の状況によっては介助者と一緒に行う「身体介護」として位置付けられる場合もあります。
心身の安定を図る上で、質の良い睡眠を取ることは非常に重要です。ベッド周りを衛生的に整えることは、利用者が健やかな日常生活を送るために必要なサービスといえるでしょう。
衣類の整理・被服の補修
生活援助で行う衣類の整理は、利用者のQOLの維持・向上に関わる重要なサービスのひとつです。
人は高齢になると外気温を敏感に感じ取ることが難しくなり、季節に合わない服を着てしまう場合があります。適切な時期に衣服の衣替えなどを行うことは、利用者の健康維持に大いに役立ちます。
また、手先の細かな作業を困難に感じる利用者もいるため、必要に応じて介助者が代理で被服の修理などを行いましょう。整理、補修した衣類は、可能な限り利用者の手の届きやすい棚などに収納するとよいでしょう。
買い物・薬の受け取り
生活に必要な日常品や薬の受け取りは、外出が困難な利用者にとって重要なサービスのひとつです。
日常品の買い物については、利用者に依頼された内容の確認や、購入した品物と釣り銭の確認を確実に行いましょう。なお、生活援助における買い物の対象となるのは利用者の生活必需品で、利用者宅の近隣で購入する場合に限られています。
●関連記事:訪問介護で行う生活援助とは?介護保険適応サービスと保険外サービスの違いを理解しよう
まとめ
近年需要が高まっている訪問介護では、利用者の在宅生活をサポートするさまざまなサービスが実施されています。「身体介護」と「生活援助」は、それぞれ訪問介護におけるサービス類型のひとつです。利用者の身体に直接触れて行うサービスかどうかという点に違いがあります。
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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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