地域ケア会議とは?目的・5つの機能・運営用法を詳しく解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部
超高齢化社会に突入している近年、多くの高齢者が要介護(要支援)状態となっても住み慣れた地域で自分らしく過ごしたいというニーズが高まっているといわれています。
それに応えるように、医療から介護、生活支援までを包括的に提供する体制である「地域包括ケアシステム」の実現が進められています。
そして、地域包括ケアシステムを推進するうえで欠かせないのが「地域ケア会議」です。地域ケア会議には、地域の医療や介護、福祉に関わるさまざまな職種が「関係者」として参加します。
当記事では、地域ケア会議の概要から具体的な機能と運営方法、さらに運営・参加におけるポイントまで詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
1.地域ケア会議とは?概要・目的は何かを解説
地域ケア会議とは、いわゆる地域包括ケアシステムの実現に向けて行われる会議です。市町村もしくは地域包括支援センターが実施・主催し、その地域の行政職員や各医療機関・高齢者向け施設などで働く医師・看護師・介護職員・コメディカルスタッフといった多職種が出席します。
地域ケア会議では、さまざまな職種の参加者がもつ専門的知識を共有し合いながら、地域包括ケアシステムの実現・推進につながる支援内容や提供体制について検討することが基本です。
地域ケア会議の主な目的としては、下記の4つが挙げられます。
●地域における医療・介護のチームアプローチ(多職種連携)
●高齢者(要介護者)を取り巻く個別課題の解決
●個人的課題の分析による地域に共通した課題の明確化
●地域課題の解決に必要となる地域づくりや資源開発、事業計画などの政策形成
上記の目的を一度の地域ケア会議で網羅することは困難なため、地域の実情や状況に応じて一つひとつの項目に取り組むことが基本です。また、最終的に各会議の内容を組み合わせて連動させる仕組みづくりが必要とされています。
地域ケア会議とサービス担当者会議の違い
支援づくりを推進する会議には、地域ケア会議のほかにもさまざまなものがあります。下記は、特に混合されやすい「サービス担当者会議」と地域ケア会議の違いです。
地域ケア会議 | サービス担当者会議 | |
---|---|---|
実施主体 | 市町村または地域包括支援センター | ケアマネジャー(介護支援専門員) |
目的 |
●地域包括ケアシステムの構築 ●自立支援ケアマネジメントの支援 ●地域課題の把握・解決 |
●利用者についての情報共有 ●提供支援サービス内容の調整・検討 |
参加者 |
●行政職員 ●医療従事者(医師・看護師など) ●介護事業者 ●利用者本人・その家族 |
●指定在宅サービスを含む各サービス担当者 ●主治医 ●利用者本人・その家族 |
上記の通り、地域ケア会議は市町村または地域包括支援センターが実施主体となる一方で、サービス担当者会議は事業所の担当ケアマネジャーが実施主体となります。また、サービス担当者会議は利用者についての情報共有がメインの目的であり、より狭い範囲の議題が中心です。地域ケア会議は、サービス担当者会議では解決が困難となる議題を中心に多職種で検討するものと考えておきましょう。
2.地域ケア会議の機能5つ
地域ケア会議は、基本的に5つの機能で構成されています。下記では、各機能について順番に概要を説明します。
(1)個別課題解決機能
個別課題解決機能は、地域で活躍する多職種が個別ケースについてあらゆる視点からの検討を行い、個人的課題の解決を図る機能です。また、地域包括ケアシステムを進める各職員の課題解決力の向上もこのプロセスを通して期待されています。
(2)ネットワーク構築機能
ネットワーク構築機能は、地域で活躍する多職種の共通理解・相互連携を深める機能です。個人的課題を解決するために必要な関係者の役割分担が明らかになることに加え、連携力の強化・方向性の統一化にもつながり、個別課題解決機能のさらなる向上も期待されています。
(3)地域課題発見機能
地域課題発見機能は、個人的課題の背後に隠れている、いわゆる個人的課題が発生してしまう原因ともいえる「地域の課題」を発見し、優先度も明確化する機能です。課題解決策を検討するプロセスを通して、各機関の役割も把握できます。地域包括支援センターが介入できない課題の場合は、地域づくり・資源開発や政策形成につなげる必要があります。
(4)地域づくり・資源開発機能
地域づくり・資源開発機能は、公的サービス以外のものを指す「インフォーマルサービス」や地域ネットワークなどに必要となる資源を開発する機能です。各地域の実情に応じて、独自の資源を掘り起こさなければなりません。地域包括支援センターの担当領域を超えた場合は、市町村が中心となって検討する必要があります。
(5)政策形成機能
政策形成機能は、地域課題の解決に向けた施策の立案・実行につなげる機能です。市町村が主体となって開催され、実務者よりも代表者レベルの職員が主に参加することが一般的です。
3.地域ケア会議の運営方法
地域ケア会議は、きちんと準備を行ったうえで当日を迎え、会議終了後は協議内容の実施につなげるための対応も必要です。ここでは、各段階におけるポイントを紹介します。
会議の事前準備
地域ケア会議を実施する際は、会議の質向上や、効率的な検討に向けてきちんと事前準備を行う必要があります。まずは会議の目的を整理し、適切な回数を設定したあと、参加者の負担を最大限考慮した開催頻度・曜日を設定することが基本です。会議目的に応じた参加者の選定を行い、事前資料の準備が整ったら、問題なく地域ケア会議を行える状態となります。
会議の運営
地域ケア会議当日は、司会進行役が概要や目的、課題や提案事項などをその場でまとめながら進行します。司会進行役は、多職種連携を心がけることや、参加者間でブレのない情報共有を行うことがポイントです。参加者の意見は、ホワイトボードなどに記入して可視化するとよいでしょう。
会議終了後の業務
地域ケア会議の終了時には、改めて会議内容や分担した役割について確認しましょう。終了後は、個人情報が記載された資料をシュレッダーで廃棄したり、議事録を作成したり、事例提供者へのサポートを行ったりする必要があります。事例提供者は、日常的に多職種連携を図りつつモニタリングを行い、目標に応じたフィードバックも行います。
4.地域ケア会議の運営・参加におけるポイント
ケアマネジャーや現場の介護スタッフが地域ケア会議に参加する場合は、下記2つのポイントを意識しておきましょう。
地域の特性・目標を意識する
地域ケア会議に参加する関係者は、大前提として地域の特性を理解しておかなければなりません。特に、その地域の人口や高齢化率、産業構造、地域包括支援センターを含むサービス事業所数と形態などの要素は重要です。そのうえで、目標とすべき地域像を掲げ、関係者全員の理解が深まる資料を作成することも欠かせません。
個人情報の取り扱いに注意する
個人情報を取り扱う地域ケア会議では、機関ごとに個人情報の取り扱いに関する法律が異なります。また、市町村によっても個人情報保護条例の規定があるため、個人情報の取り扱いについては会議前に各関係者が理解しておかなければなりません。基本的に、地域ケア会議で取り扱う個人情報には守秘義務があります。参加者は、個人に関する情報を外部に必ず漏らさないようにしましょう。
まとめ
地域ケア会議は、市町村もしくは地域包括支援センターが実施・主催する「地域包括ケアシステムの実現に向けて行われる会議」のことです。「個別課題解決機能」「ネットワーク構築機能」「地域課題発見機能」「地域づくり」「資源開発機能」「政策形成機能」の5機能が期待されており、多職種が地域包括ケアの実現に向けて話し合います。
地域ケア会議の参加者は、地域の特性を理解し目標を意識して会議に取り組むことが重要です。また、個人情報を多く取り扱うこととなるため、守秘義務・個人情報保護条例についても注意しておきましょう。
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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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