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仕事・スキル 介護士の常識 2022/07/29

地域包括ケアシステムとは?5つの構成要素から構築のプロセスまで

構成・文/介護のみらいラボ編集部 4.jpg

みなさんのなかには、「地域包括ケアシステム」という言葉を初めて聞く方や、「聞いたことはあっても、内容を把握しきれていない」という方もいるのではないでしょうか。地域包括ケアシステムは、一般的な認知度こそ高くないものの、介護職としてきちんと把握しておくべき用語です。

当記事では、地域包括ケアシステムの概要やシステムを構成する要素、構築のプロセスを紹介します。地域包括ケアシステムは、今後の介護業界だけでなく社会全体に大きく影響するキーワードなので、当記事を参考に内容を整理し、正しく理解しておきましょう。

1.地域包括ケアシステムとは?

地域包括ケアシステムとは、厚生労働省が2025年をめどに構築を目指している高齢者に対して住まい・医療・介護・予防・生活支援を包括的に提供するための仕組み」のことです。地域包括ケアシステムが実現すれば、高齢者は重度な要介護状態になっても、最期まで住み慣れた地域で自分らしい暮らしを継続することが可能になります。

地域包括ケアシステムが求められる背景にあるのは、日本の加速度的な少子高齢化と高齢化社会を支える財源の不足です。特に、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年には、後期高齢者の人口が日本の総人口の20%を占めるといわれており、対策が急がれています。

(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」
(出典:厚生労働省「我が国の人口について」

地域包括ケアシステムのメリット

地域包括ケアシステムがもたらすメリットには、次のようなものがあります。

高齢者の社会参加が活発になる 「支援の必要がない高齢者には、積極的な社会参加・社会復帰を促して生きがいの場を創出するとともに、介護予防につなげます。高齢者の社会参加は、高齢者本人の介護予防になるとともに、高齢者支援のボランティアとしての活躍なども見込めるため、地域にとって大きなメリットになるでしょう。
ニーズに適したサービスが提供できる 地域包括ケアシステムの構築により、生活支援、介護予防などに関する豊富なサービスの誕生が期待できます。また、ケアマネージャーなどが高齢者の状態をもとに、ニーズの判断や適切なサービスの選択・提案を行うことで、高齢者の在宅生活をより豊かなものにすることが可能です。
医療ケアが必要な高齢者も自宅で過ごせる 地域包括ケアシステムのなかでは、互いに独立して動いていた医療および介護事業者が連携することになります。医療と介護の連携が進めば、在宅介護でも一貫した医療・介護サービスが受けられるようになるでしょう。
認知症の高齢者と家族の暮らしをサポートできる 認知症患者を在宅で介護する場合、どうしても家族の負担が大きくなります。地域包括ケアシステムでは、地域支援ネットワークを使って認知症患者の支援を行うことで、家族の負担を軽減するとともに、患者さん自身が住み慣れた地域で在宅生活を続けられる環境作りをサポートします。

地域包括ケアシステムの課題

地域包括ケアシステムには、大きなメリットが期待される一方で、運用に向けて解決するべき課題もあります。

認知度が低い 地域包括ケアシステムは、高齢者や家族に加えて、システムに関わる医療機関、介護事業所、その他の法人や地域住民の理解の上に成り立つ仕組みです。しかし、現状の認知度はあまり高くありません。システムの構築には、事業者や地域住民などに対する普及啓蒙や協力依頼を行うことが必要です。
地域格差がある 地域包括ケアシステムの主体となるのは、都道府県、市区町村といった自治体です。しかし、自治体によって高齢者の人口、財政、介護従事者をはじめとする人的資源などに格差があり、地域ごとにサービスの質や施策・取り組みによる結果に差が生じることが考えられます。地域包括ケアシステムを全国的に普及させるためには、それぞれの現状に適した取り組みを行うなど、地域格差の是正が求められるでしょう。
人手不足 地域包括ケアシステムの運用には、医療・介護サービスなどの担い手の確保が必須です。特に、過疎化が進む地域では人材不足が深刻なため、行政だけでなくNPOやボランティア団体、地域の民間企業などの人材を活用する必要があります。
医療・介護の連携が不十分 地域包括ケアシステムでは、医療・介護の関係機関の連携が肝心です。しかし、医療・介護分野の間には越えられない「メンタルバリア」があり、現状のままでは連携が不十分だといわれています。今後は、両分野の連携を強固にし、在宅医療、在宅介護のサービスをより拡充させていくことが求められます。

2.【重要】地域包括ケアシステムを構成する5つの要素

地域包括ケアシステムを理解するには、仕組みを構成する5つの要素について把握しておく必要があります。

構成要素1:医療
日常生活的な医療はかかりつけ医や地域の連携病院、入院など急病への対応は急性期病院や回復期リハビリ病院が担い、互いの関係機関同士で情報を共有。日常の医療と緊急性の高い医療をシームレスに連携させることで、在宅と入院との切り替えを柔軟に行います。

構成要素2:介護
必要に応じて、訪問介護や訪問看護などの在宅系サービスと、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護療養型医療施設などの施設・居住系サービスを提供します。また、小規模多機能型居宅介護などの地域密着型サービスもあり、臨機応変なサービスの提供が可能になります。

構成要素3:住まい
住まいがなければ生活が成り立たないため、地域包括ケアシステムにおいて非常に重要な要素です。住まいそのものを提供するだけでなく、賃貸住宅への入居に際しての保証人を確保するなど、手続き関係の支援を行うことも地域ケアシステムに含まれています。

構成要素4:生活支援
安否確認、配食、買い物支援など、高齢者の生活に欠かせないサービスが生活支援に該当します。生活支援は、医療や介護に比べて専門性を必要としないため、自治体や専門の業者、ボランティア、地域住民などが協力・参加しやすいのがポイントです。

構成要素5:介護予防
生活支援と並んで、地域包括ケアシステムの根幹的な要素です。介護予防サービスを積極的に活用しながら高齢者の在宅生活を支援するほか、地域交流や社会参加の機会の提供、家事援助や外出援助などの自立支援、安否確認や見守りといった活動も介護予防の一環となります。

(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステムの5つの要素」

地域包括ケアシステムで重要な4つの「助」

地域包括ケアシステムを推進するにあたっては、下記の4つの「助」も重要になります。

自助 「高齢者自身が健康管理や介護予防に取り組み、自分で自分をケアする」という意味の言葉です。なお、地域包括ケアシステムでは、家族による対応や市場サービスの購入、介護保険や医療保険の自己負担も自助の一環とされます。
互助 家族や近隣住民、友人らと相互に支え合い、問題を解決することを指します。ボランティア活動や住民組織の活動も互助にあたります。公的制度ではないので、互助による費用負担を保障する制度はありません。
共助 医療保険、年金、介護保険、社会保険などのように、制度化された相互扶助が共助にあたります。
公助 生活困難者を救済するための行政サービスを指します。公助は税金で成り立っており、高齢者福祉事業、生活困窮者への生活保護、人権擁護、虐待対策などの取り組みが行われます。

(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステムの5つの要素」

3.地域包括ケアシステムを構築する際のプロセス

地域包括ケアシステムの具体的な内容は、自治体の状況によってさまざまですが、一般的には次のようなプロセスで構築を進めます。

1:課題の把握・社会資源の発掘
適切なサービスを提供するには、地域に住む高齢者が抱える課題を洗い出し、把握しなければなりません。そのため、支援が必要な人数や求められている支援内容の具体化、すでに実施されている支援に対する反省・検討などを行い、地域内の課題の把握・分析を進めます。

課題の把握に加えて、医療・介護サービスを担う地域ボランティアやNPO団体の発掘、人材確保も重要なプロセスです。

2:会議での対応策の検討
市区町村レベルの「地域ケア会議」を開催します。地域ケア会議とは、地域密着型の医療・介護を推進するために、地域内の関係者が課題を検討する会議のことで、役所の担当者やケアマネージャー、医療および介護従事者などが出席します。

会議では、それぞれの視点から意見交換を行い、問題の明確化やアイデアの創出、施策の優先順位決定などを目指します。

2:対応策の決定・実行
地域ケア会議などで具体的な施策やサービスが決まったら、介護保険事業計画に盛り込んだ上で実行に移し、地域包括ケアシステムを構築します。システム構築後も、引き続き施策の検討・見直しなどを行う必要があります。

(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

まとめ

地域包括ケアシステムは、公助や共助だけでなく、自助・互助も取り入れて今後の高齢化社会を支えるためのシステムです。地域包括ケアシステムでは、介護予防や医療、生活支援などのサービスを地域で一体となって提供し、高齢者の生活を包括的かつ継続的にサポートする社会が望まれています。それが実現すれば、高齢者は在宅でさまざまなサービスを受けやすくなり、住み慣れた地域での生活を継続しやすくなるでしょう。

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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

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