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仕事・スキル 介護士の常識 2023/01/14

ケアマネジメントとは?業務プロセスと「適切なマネジメント手法」も

構成・文/介護のみらいラボ編集部 main.jpg

介護・福祉の現場で働く方であれば、「ケアマネジメント」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。ケアマネジメントとは、要介護者・要支援者に向けた相談支援サービスを提供するプロセスあるいはシステムのことです。また、ケアマネジメントを実施する際は、ケアマネジャー(介護支援専門員)が中心的な役割を担います。

この記事では、ケアマネジメントの意義や目的といった基本情報から、業務プロセスまでを詳しく解説します。ケアマネジメントにおけるケアマネジャーの役割にも触れるので、関心のある方はぜひご一読ください。

1.ケアマネジメントとは?

厚生労働省による「相談支援の手引き」では、ケアマネジメントを次のように定義しています。

利用者が地域社会による見守りや支援を受けながら、地域での望ましい生活の維持継続を阻害するさまざまな複合的な生活課題(ニーズ)に対して、生活の目標を明らかにし、課題解決に至る道筋と方向を明らかにして、地域社会にある資源の活用・改善・開発をとおして、総合的かつ効率的に継続して利用者のニーズに基づく課題解決を図っていくプロセスと、それを支えるシステム

(引用:厚生労働省「相談支援の手引き 第1章ケアマネジメントの基本」

ケアマネジメントは、「介護や支援を必要とする方やそのご家族に対して、それぞれのニーズに合った相談・調整を行い、効果的なサービスを提供すること」だと言えます。

ケアマネジメントの意義・目的

ケアマネジメントの意義・目的は、支援や介護を必要とする方に「自分らしく生活してもらうこと」と「主体的かつ積極的に自分の人生に関わってもらうこと」にあります。

厚生労働省「相談支援の手引き」に示されたケアマネジメントの意義と目的は、下記の通りです。

ケアマネジメントの目的は、「人間の尊厳」を守ることであり、「自己決定」「自立」を支えることです。「自己決定」と「自立」は、本人及び家族(介護者)の生活の質と深く結びつき、日常生活における「利用者の自立」と「家族の自立」を支援することによって具体的に現れます。

(引用:厚生労働省「第1章ケアマネジメントの基本」

ケアマネジメントの対象者には、介護や支援を必要とする本人だけでなく、そのご家族も含まれます。つまり、介護や支援を必要とする方やそのご家族が、住み慣れた地域で自立した生活ができるようにサポートすることが、ケアマネジメントの大切な役割なのです。

ケアマネジャーの役割

要支援者や要介護者のケアマネジメントは、ケアマネジャーが中心となって行います。ケアマネジメントにおけるケアマネジャーの主な役割は、要支援者や要介護者からの相談対応や介護支援サービスを利用するための連絡調整などです。

利用できる介護支援サービスはさまざまあり、適切なサービスは利用者さんによって異なります。そのためケアマネジャーは、利用者さんが効果的にサービスを利用できるように課題やニーズをヒアリングし、利用者さんに合った計画を立てなければなりません。

なお、ケアマネジャーは介護保険法に規定された専門職であり、ケアマネジャーになるには専門知識を身につけた上で、都道府県知事から介護支援専門員証の交付を受ける必要があります。ケアマネジャーの仕事場は、居宅介護支援事業所やケアマネジャーの配置が義務づけられている介護施設、地域包括支援センターなどです。

2.ケアマネジメントのプロセス

ケアマネジメントは、要支援者や要介護者が自立した生活状況を維持できるように、段階的に展開されます。

ケアマネジメントのプロセスは、下記の通りです。

STEP1 インテーク(面談・相談)

STEP2 アセスメント(課題の明確化)

STEP3 ケアプラン作成

STEP4 サービス調整

STEP5 サービス担当者会議

STEP6 モニタリング(把握・評価)

モニタリングは、ケアプランに沿って提供されているサービスが利用者さんやご家族のニーズに合っているかをチェックする工程です。上記のプロセスは、「計画を立てて実行し、その結果を評価した上で改善を図る」というサイクルを回しながら実施されます。

以下では、各ステップの業務内容を詳しく解説します。

STEP1:インテーク

インテークは、ケアマネジャーと利用者さんが初めて出会う場です。インテークでは、利用者さんの状況や環境、ケアマネジメントに求めるニーズなどについて、利用者さんやご家族からヒアリングを行います。

インテークで確認しておくべきポイントは、下記の通りです。

・主要な症状
・守秘義務
・ケアマネジメントの目的や概要
・ケアマネジャーと利用者さんの役割
・今後の進め方への理解と同意 など

なかには、症状や不安な気持ちをうまく言葉にできない方もいます。緊張している利用者さんやご家族も多いため、できるだけ話しやすい環境づくりを心がけましょう。

STEP2:アセスメント

アセスメントとは、利用者さんの課題やニーズを抽出・分析することです。このプロセスでは、利用者さんに必要なサービスを見極めるために、自立支援に向けての課題を明確化する必要があります。

アセスメントで把握すべきポイントは、次の通りです。

・利用者さんの現状
・生活における支障や要望
・心身機能低下の要因
・解決すべき課題 など

利用者さんの状況や自立の妨げとなっている要因を明確にすることで、利用者さんとご家族が取り組むべき課題の発見や予後の予測にもつながります。

STEP3:ケアプラン作成

ケアプランとは、利用者さんに提供すべきサービスや目標達成時期、費用などを記載する計画書です。ケアプラン作成は、インテークやアセスメントで分かった情報をもとに行われます。

ケアプラン作成を含めたケアマネジメントをスムーズに進めるには、利用者さんだけでなく、ご家族や介護サービス事業者、生活相談員などにも積極的に関わってもらう必要があります。なお、介護サービス事業者は、利用者さんまたはご家族に指定してもらうのが基本です。指定がない場合は、条件に合う事業者情報を提示して選んでもらいましょう。

STEP4:サービス調整

ケアプランの原案をもとに、受け入れ可能な介護サービス事業者との連絡調整を行います。

サービス調整は、実際にケアプランを実施するための大事なプロセスです。サービス調整の際は、下記のポイントをチェックしましょう。

・提供するサービス内容が利用者さんに適しているか
・利用者さんやご家族のニーズと相違がないか

この段階で、利用者さんやご家族のニーズをしっかりすり合わせることで、利用者さんの自立した生活の実現や課題の克服を目指しやすくなります。

STEP5:サービス担当者会議

サービス担当者会議では、専門的な視点からケアプランに問題がないかどうかを判断します。

サービス担当者会議の主な参加者は、下記の通りです。

・ケアマネジャー
・医師
・介護関連スタッフ(介護職員・介護福祉士・訪問介護員など)
・リハビリ関連スタッフ(理学療法士・作業療法士など)
・サービス提供責任者
・利用者さんとそのご家族 など

参加者はよりよいサービスの提供に向けて、情報の共有や意見交換を行い、利用者さんの同意を得た上でサービス提供が開始されます。

STEP6:モニタリング

モニタリングでは、ケアプランに沿ってサービスを提供した結果、状況がどのように変化したかを確認・評価します。モニタリングで確認すべきポイントは、下記の通りです。

・サービス提供後の利用者さんの変化
・サービス内容の適否
・新たな生活目標 など

モニタリングは、ケアプランの問題点や新たな課題を見つけ出すことにもつながります。また、サービスを評価した後は、再度アセスメントによるケアプランの修正が必要です。

利用者さんがサービスを必要としなくなった場合は、ケアマネジメントの終結となります。

●関連記事:介護のアセスメントとモニタリングの違いは?実施時のポイントも

3.近年推進されている「適切なマネジメント手法」とは?

「適切なマネジメント手法」は、ケアマネジメントの質を確保するためのガイダンスです。

近年は、高齢者の生活スタイルが多様化したり、健康寿命が延びたりしているため、要支援者や要介護者に適切なケアマネジメントを行うには、多くの情報収集と分析が必要です。

そのため、「適切なマネジメント手法」では、すべての利用者さんに一定水準以上のケアマネジメントを提供できるように、想定される支援内容を体系化しています。

「適切なマネジメント手法」を活用するメリットは、下記の通りです。

・アセスメントの抜け漏れを防げる
・多職種との連携が取りやすくなる
・ケアプランの見直しがスムーズになる など

「適切なマネジメント手法」を活用することで、ケアマネジメントを効率良く、かつ利用者さんに合った形で進めることができるでしょう。

(参考:厚生労働省「適切なケアマネジメント手法の策定、普及推進」

「適切なマネジメント手法」を取り入れる際の注意点

「適切なマネジメント手法」を取り入れる際の注意点は、下記の通りです。

・「基本ケア」と「疾患別ケア」を組み合わせる
・生活におけるケアやサポートに意識を向ける
・利用者さん1人ひとりに合ったケアを心がける

高齢者の機能や生理に関するケアを「基本ケア」、疾患に応じて留意すべきケアを「疾患別ケア」と言いますが、疾患別ケアは基本ケアを押さえた上で行う必要があるため、2つはセットで用いることが大切です。

また、「適切なマネジメント手法」は、あくまで個別性の高いケアプランを作成するための手引書です。ケアプランを標準化する目的で作られたものではなく、「利用者さん1人ひとりに合ったケアプランを実践するためのもの」であることを理解しておきましょう。

まとめ

ケアマネジメントは、ケアマネジャーが主体となって、アセスメントやケアプラン作成を含む6つのステップを経て実施されます。サービス提供の後は状況をモニタリングし、必要に応じて再アセスメントを行うことで、より利用者さんに合った支援が可能となります。

また近年は、厚生労働省による「適切なマネジメント手法」の普及推進が行われており、利用者さん1人ひとりにふさわしいケアプランの作成・実践が求められていることも理解しておきましょう。

「介護のみらいラボ」では、介護現場で役立つお役立ち情報を数多く発信しています。ケアマネジャーなどの専門職を目指す方はもちろん、専門職として活躍されている方も、ぜひご活用ください。

※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています

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