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仕事・スキル 介護士の常識 2024/05/15

LIFE加算(科学的介護推進体制加算)とは?概要や算定要件・算定時の注意点などを解説

文/倉元せんり thumb_kasan.jpg

介護の質向上に向けた国の取り組みである、「科学的介護情報システム(LIFE:Long-term care Information system For Evidence)」をご存知でしょうか。LIFEは、介護事業所や施設から利用者の情報を収集し、利用者1人ひとりに最適なケアを提供できるようにデータを分析する仕組みです。

このシステムを活用した介護サービスでは、介護報酬に「LIFE加算」という仕組みが導入されており、LIFE加算を算定することで、質の高い介護の提供と事業所の業務効率化を両立できます。

この記事では、LIFE加算の概要や算定要件、算定時の注意点などについて、わかりやすく解説します。LIFE加算の活用方法についてきちんと理解したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

1.科学的介護情報システム(LIFE)とは?

科学的介護情報システム(LIFE)とは、介護の質向上を目指して、2021年度から厚生労働省が推進している取り組みです。

LIFEは、全国の介護施設や事業所から利用者の心身状態やケアプラン、実際に行ったケアの内容などのデータを収集し、それらを科学的に分析します。

分析されたデータは、それぞれの現場にフィードバックされ、介護施設・事業所はその内容をもとに、施策の効果や課題の把握、支援の見直しなどを行います。つまり、データの収集と分析、フィードバックという流れによって、各介護施設や事業所は利用者に対して、より質の高いケアを提供できるようになるわけです。

とはいえ、データの収集と分析、フィードバックによって介護サービスの質の向上を目指す取り組みは、LIFEがはじめてではありません。LIFE以前にも、「科学的に裏づけられた介護」の実現を目指してCHASE、VISITという2つのデータベースが活用されており、それをもとに、全国的な介護データの収集と分析を一元化したのが「LIFE」なのです。

このことから、LIFEは従来の取り組みを発展させた新しいシステムであり、介護における質の維持・改善を推進する役割を担っているといえるでしょう。

LIFEの目的

LIFEが導入された最大の目的は「科学的根拠(エビデンス)に基づいた介護の推進」です。

介護分野では長らく、医療分野のように科学的根拠に基づいたケアが行われていませんでした。そのため、介護の現場では介護士の経験や勘に頼る部分が大きく、結果として施設間で介護の質に差が生まれていました。

しかし、LIFEによって科学的に妥当性のある指標の収集・蓄積・分析が行われれば、介護分野でも科学的根拠に基づいたケアが実施でき、経験や勘に頼らない質の高いサービスが提供できます。また、そうした科学的な介護は、利用者さんの重度化防止にもつながるでしょう。

LIFEの役割

LIFEは介護施設や事業所が、サービスの質向上を目指した「PDCAサイクル」を回すためのツールでもあります。

PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)という4つのステップを繰り返すことで、業務の改善を目指すフレームワークです。

LIFEを活用したPDCAサイクルのイメージは、以下のとおりです。

  • P(Plan):利用者の基本情報に基づいてサービス計画書を作成
  • D(Do):サービス計画書にしたがってケアを実施
  • C(Check):利用者の状態やケアの実績などを評価し、LIFEにデータを提出
  • A(Action):LIFEからのフィードバック情報や利用者の状態を踏まえてサービス計画書を見直し、サービスの質の向上に努める

なお、介護施設や事業所へのフィードバックは、事業所単位・利用者単位で行われます。

  • 事業所ごとのフィードバック:同じサービスを提供する全国の施設・事業所における相対的な「位置」を確認できます
  • 利用者ごとのフィードバック:利用者の直近と過去の状態、それらに基づく「変化」を確認できます

このように、LIFEのフィードバックに基づいて、新たな計画立案・ケア実施などを継続的に行えば、利用者の状態改善につながっていくでしょう。また、他の施設・事業所との違いも見えるので、施設・事業所の改善ポイントを知ることにもつながります。

2.科学的介護推進体制加算(LIFE加算)とは?

科学的介護推進体制加算(LIFE加算)とは、LIFEを活用した介護サービスを提供した場合に算定される、介護報酬の加算です。

介護施設が取得できる加算のなかには、LIFEへのデータ提出を算定要件としているものもあります。収益向上につながるLIFE加算の算定は、施設や事業所にとって大きなメリットになるでしょう。

なお、LIFE加算を算定するためには、利用者の同意を得て、心身の状況などのデータをLIFEに提出する必要があります。

3.LIFE加算の該当する介護サービス種別

LIFE加算が対象となるのは、以下の介護サービスです。

【通所系・居住系サービス】

  • 通所介護
  • 通所リハビリテーション(予防含む)
  • 地域密着型通所介護
  • 認知症対応型通所介護(予防含む)
  • 特定施設入居者生活介護(予防含む)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

【施設系サービス】

  • 介護老人福祉施設
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院

居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスなど、多くの介護サービスがLIFE加算の対象です。これらのサービスを提供する事業者は、LIFEに登録することで、次に紹介する加算を算定できます。

4.LIFE加算の種類と単位数

通所系・居住系・多機能系サービスにおけるLIFE加算は1種類です。一方、施設系サービスは介護老人福祉施設および地域密着型老人福祉施設入居者施設介護、介護老人保健施設、介護医療院で単位数が異なります。また、それぞれに加算が2種類あります(表のⅠとⅡ)。

いずれの加算も利用者1人ごとに算定が必要なので、算定漏れのないように注意が必要です。

加算の名称 対象施設 単位数
科学的介護推進体制加算(LIFE加算) 対象となる通所系・居住系・多機能系サービスすべて 40単位/月
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)(Ⅰ) 対象となる施設系サービスすべて 40単位/月
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)(Ⅱ) ・介護老人福祉施設 ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 50単位/月
・介護老人保健施設 ・介護医療院 60単位/月

5.LIFE加算の算定要件

ここでは、LIFE加算の算定要件について解説します。

通所系・居宅系・多機能系サービスの算定要件

通所系・居宅系・多機能系サービスの算定要件は、以下の通りです。

• 利用者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況、その他の心身の状況などに係る基本的な情報を、LIFEを使って厚生労働省に提出していること
• 必要に応じて通所介護計画を見直すなど、サービス提供にあたって、(1)に規定する情報とその他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること


介護老人福祉施設(地域密着型含む)の算定要件

介護老人福祉施設における科学的介護推進体制加算は、(Ⅰ)と(Ⅱ)にわかれます。算定要件は、以下の通りです。

●科学的介護推進体制加算(Ⅰ)

(1)入居者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況、その他の心身の状況などに係る基本的な情報を、LIFEを使って厚生労働省に提出していること
(2)必要に応じて施設サービス計画を見直すなど、サービス提供にあたって、(1)に規定する情報とその他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること


●科学的介護推進体制加算(Ⅱ)

(3)加算Ⅰの(1)に規定する情報に加えて、入居者ごとの疾病状況などの情報を、LIFEを使って厚生労働省に提出していること
(4)必要に応じて施設サービス計画を見直すなど、サービス提供にあたって、(1)に規定する情報とその他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること


介護老人保健施設・介護医療院の算定要件

介護老人保健施設・介護医療院における科学的介護推進体制加算は、(Ⅰ)と(Ⅱ)にわかれます。算定要件は、以下の通りです。

●科学的介護推進体制加算(Ⅰ)

(1)入居者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況、その他の心身の状況などに係る基本的な情報を、LIFEを使って厚生労働省に提出していること
(2)必要に応じて施設サービス計画を見直すなど、サービス提供にあたって、(1)に規定する情報とその他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること


●科学的介護推進体制加算(Ⅱ)

(3)加算Ⅰの(1)に規定する情報に加えて、入居者ごとの疾病状況、服薬状況などの情報を、LIFEを使って厚生労働省に提出していること
(2)必要に応じて施設サービス計画を見直すなど、サービス提供にあたって、(1)に規定する情報とその他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること


なお、どのサービスにおいても、科学的介護推進体制加算(Ⅰ)と科学的介護推進体制加算(Ⅱ)を同時に算定することはできないので、重複しないように注意しましょう。

6.LIFE加算取得のためのデータ提出頻度

前述した通り、LIFE加算を算定するためには、LIFEを使って厚生労働省に利用者の情報を提出する必要があります。情報は、利用者ごとに次の(1)〜(4)で定める月の翌月10日までに提出することが定められています。

(1)算定を開始しようとする月にサービスを利用している利用者は、当該算定を開始しようとする月
(2)加算の算定を開始しようとする月の翌月以降にサービスの利用を開始した利用者については、当該サービスの利用を開始した日の属する月
(3)上記のほか、少なくとも6か月ごと
(4)サービスの利用を終了する日の属する月


現状では初回のデータ提出から6か月ごとにデータの提出が必要ですが、令和6年の介護報酬改定によって、3か月に1回の提出に見直される可能性があります。ただし、いずれも期日までにデータを提出できない場合は、利用者全員分について算定できなくなることに注意が必要です。

また、LIFEに入力した情報をもとに、ほかの加算も算定している場合は、提出の頻度が異なります。例えば、個別機能訓練加算やリハビリテーションマネジメント加算は3か月ごとに情報を提出しなければなりません。

事業所の損失を防ぐためにも、データの入力漏れを未然に防ぐ体制を整備しましょう。

7.LIFE加算を算定する際の注意点

LIFE加算を算定する際の注意点は、以下の3つです。

LIFE加算を算定する際は本人・家族への説明が必要

LIFE加算に限りませんが、新たな加算を算定する場合は、本人・家族への説明が必要です。LIFEの概要やデータの活用目的、個人情報保護の取り組みなどを十分に説明し、理解を得るように努めましょう。

利用者ごとに算定要件を満たさなければならない

LIFE加算は、利用者ごとに算定要件を満たさなければ算定できません。そのため、利用者1人ひとりの必要情報がLIFEへ提供されていることや、PDCAサイクルが活用されていることなどの要件を満たす必要があります。

利用者によってデータ提出が欠けていれば、その利用者分は算定できないことに注意しましょう。

LIFEの登録情報はこまめに保存する

LIFEは、ログイン後データの入力がしばらく行われない場合、20分程度で自動的にログアウトされる仕組みになっています。また、ログアウトされると、入力途中のデータが消失して、最初から入力が必要になってしまう可能性もあります。

効率よく入力を進めるためにも、小まめに保存をするなどして、データ消失を防ぎましょう。

まとめ

これまで介護の分野では、医療分野のような科学的根拠に基づいたケアが行われていませんした。そうしたなか、「科学的根拠に基づいた介護の推進」や介護の質の向上を目指して誕生した仕組みがLIFEです。

LIFEを活用して利用者の情報を提供すると、LIFE加算という介護報酬がつきますが、それには対象サービスがあり、算定要件も決まっています。算定する際には、本人・家族への説明が必要になるなどいくつかの注意点があるため、あらかじめ把握しておきましょう。

勘や経験ではなく「科学的根拠に基づいた介護ケア」の実現へ。その流れは、LIFEによって一気に加速していくに違いありません。そして、今後より多くのデータが蓄積されれば、フィードバックの精度が増し、介護の質も格段に向上することでしょう。

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倉元せんり(Senri Kuramoto)

社会福祉士

大学卒業と同時に社会福祉士の資格を取得。約8年、医療ソーシャルワーカーとして勤務。出産・育児と同時に退職し、現在は福祉・金融系webライターとして、福祉やお金にまつわるさまざまな記事を執筆している。

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