介護美容とは?内容と意外な効果、必要な資格などを紹介
文/倉元せんり(社会福祉士)介護美容とは、介護が必要な方に対して、ヘアカットやメイクなどを提供する美容サービスです。ただし、このサービスの意義は、"外見をきれいにすること"だけではありません。外見が変わることで気持ちが前向きになったり、自分に自信を持てるようになったりと、介護美容には心理面でのプラスの効果も期待できます。また、人と会う機会が増えて、認知機能の低下予防にもつながるともいわれています。
介護職のなかにも、介護美容の仕事に興味を持っている方がいらっしゃいますが、必要な資格や働き方などが広く知られていないため、「どのように目指せばよいのかわからない」「具体的な仕事内容は?」という声を聞く機会が少なくありません。そこで本記事では、介護美容として働くために必要な資格、具体的な仕事内容、介護美容の仕事ができる場所などについて紹介します。
1.介護美容とは?
介護美容とは、介護が必要な方に対して、ヘアカットやヘアスタイリング、ネイルケア、メイクなどを提供するサービスです。
介護が必要な利用者さんのなかには、身体機能の低下によって、若い頃のように自分で身だしなみを整えることが難しい方もいらっしゃいます。そうした方を対象に、外見を美しく保つためのお手伝いをしたり、他者との交流に前向きになれるようサポートしたりするのが介護美容の仕事です。
介護美容は、利用者さんの状況や希望に応じて、自宅や介護施設、特設の美容スペースなどさまざまな場所で提供されます。移動が困難な方でも無理なく受けられるため、柔軟性の高いサービスだといえるでしょう。
2.介護美容の内容
介護美容には、以下の4つのサービスがあります。
- ヘアケア
- ネイルケア
- メイク
- アロマテラピー
では、それぞれについて詳しく紹介していきましょう。
ヘアケア
美容師や理容師の資格を持つ人が、自宅や介護施設を訪問して、通常のサロンと同様のサービスを提供します。具体例として、以下のようなメニューが挙げられます。
- ヘアカット
- ヘアカラー
- パーマ
- ヘッドマッサージ
- ひげそり など
介護が必要な方が対象となるため、なかには移動介助が必要だったり、意思疎通が難しかったりするケースもあります。また、寝たきりの利用者さんの場合は、ベッド上でヘアケアを行うなど、状態に合わせた臨機応変な対応が必要です。
ネイルケア
福祉ネイリストが、ネイルサロンに行くのが難しい方を対象に、爪を整えたりマニキュアを塗ったりなどのサービスを提供します。なお、福祉ネイリストとは、美容と福祉の両方の知識を身につけたうえで、ネイルケアやネイルアートを提供する専門職です。
介護美容としてのネイルケアには、単に爪を美しくするだけでなく、施術中のコミュニケーションをストレス解消につなげたり、心のケアを行ったりする目的もあります。そのため、利用者さんのニーズを理解したうえで、美容と福祉の要素を組み合わせたサービスを提供するのが一般的です。
メイク
メイクアップアーティスト、メイクケアセラピストなどが化粧を行うサービスです。化粧療法(メイクセラピー)ともいわれ、メンタルサポートや生活の質の維持・向上を目的として導入される場合もあります。
具体的には、以下のようなメニューを行います。
- スキンケア:肌の手入れや保湿
- メイクアップ:化粧の施術
- ハンドケア:手のマッサージや爪のケア
- 顔のストレッチ:表情筋を動かすエクササイズ など
化粧療法は女性だけでなく、男性の利用者さんにも適用できます。特に、スキンケアやハンドケア、顔のストレッチは性別を問わず提供できるでしょう。
アロマテラピー
アロマテラピーは、植物の香り成分が入った精油を使って心身を癒す自然療法です。具体的には、アロマランプなどの専用器具を使って芳香浴を楽しんだり、オイルを肌に塗布してのマッサージ(アロマトリートメント)を行ったりします。
香りの刺激によって集中力が高まったり、リラックス効果をもたらしたりするのがアロマテラピーの大きな特徴で、睡眠の質向上や免疫の強化などの効果も期待されています。マッサージによるスキンシップは、コミュニケーションの促進にもつながるでしょう。そのため、性別や年齢に関係なく幅広い方に提供できるサービスといえます。
3.介護美容の効果
幸福感を高める
介護美容で身だしなみを整えることは、利用者さんの幸福感を高めるきっかけになります。きれいに整った自分の姿を見ることで、気持ちが前向きになったり、自分に自信がついたりするなどさまざまな効果につながるでしょう。
実際に、ヘアセットや化粧をした自分の姿を見て笑顔になるケースや、外見が整うことで外出への意欲が高まる方も多く見られます。
もちろん個人差はありますが、利用者さんにとって介護美容のサービスを受けることは、心理面にプラスの効果をもたらすと考えてよいでしょう。
身体機能の維持や改善につながる場合がある
先に述べたように、介護美容を利用して身だしなみが整うと、外出意欲が高まって、身体機能の維持・改善につながる可能性があります。一方、身だしなみを整える機会が減ると、社会との接点も少なくなり、認知症などのリスクが高まるかもしれません。つまり介護美容は単に美しくなるだけでなく、利用者さんの心身の健康維持にも寄与しているわけです。
また、化粧療法を通じて自分で化粧をする場合も、手指の細かい動作が身体機能の維持・回復につながるでしょう。首を動かしてさまざまな角度で顔を確認したり、口や眉を動かしたりするなど、通常の生活では行わない動きも、身体機能にプラスの効果をもたらすと考えられます。
コミュニケーションの機会が増える
ヘアカットをしてもらったり、ネイルケアをしてもらったりする際は、美容師や福祉ネイリストと自然にコミュニケーションをとることになります。身だしなみを整えているうちに、昔話に花が咲き、利用者さんの表情が明るくなることも多いでしょう。
さらに、外見が変わると、まわりから「似合っているね」「素敵だね」と声をかけられることも増え、コミュニケーションが活性化するはずです。
そうした明るく前向きな交流は、利用者さんの社会的つながりを強めたり、孤独感を軽減したりするなどのメリットにつながるでしょう。
4.介護美容の仕事に必要な資格
介護美容では、サービスの種類によって必要な資格が異なります。例えば、ヘアケアを行う場合は美容師免許が必須です。また、介護が必要な方に特化した「福祉美容師」として働く場合は、美容師免許のほかに、厚生労働省やNPO団体などが認定する介護関係の資格の取得が必要となります。
福祉美容師として働きたい方は、以下の資格取得を検討してみましょう。
- ヘアメイク・セラピスト(日本訪問理美容推進協会)
- 福祉理美容士(日本理美容福祉協会)
- 認定福祉美容介護師(医療福祉情報実務能力協会)
- 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
これらの資格は、通信学習とスクーリング(あるいは実技講習)で取得できるので、仕事が忙しい方でも取得しやすい傾向にあります。特に、介護職員初任者研修は、介護の仕事を始める際の入門的な資格です。要介護者に関わるのが初めての方は、ぜひ取得しておきましょう。
5.介護美容関連の資格を生かせる場所
介護美容の仕事は、企業やネイルサロン、美容室などに所属している方が、介護施設や自宅を訪問するケースがほとんどです。ただし、必要な資格を取得した後、フリーランスとしてサービスを提供する道もあります。
「介護美容の仕事に興味がある」「仕事の内容を詳しく知りたい」という方は、求人サイトにアクセスし、【介護美容】【訪問美容】などのキーワードで検索してみましょう。介護施設や福祉関連の求人サイトを確認するのもおすすめです。
6.まとめ
近年は、高齢者人口の増加に伴い、介護美容の需要が増加しています。介護美容は、見た目をきれいにするだけでなく、身体機能の維持・改善、コミュニケーションの活性化などにもつながるやりがいのある仕事です。
美容分野に興味がある方はもちろん、利用者さんの心身の健康や生活の質向上に貢献したい方もぜひ挑戦してみてください。
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