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仕事・スキル 介護士の常識 2025/07/25

サービス提供責任者(サ責)とは?資格要件や取得方法について解説

編集/中西紗羅(介護福祉士) thumb_2507118.jpg

訪問介護に従事している介護職の方のなかには、「ゆくゆくはサービス提供責任者になりたい」と考えている方もいるでしょう。今回は、サービス提供責任者についての概要、資格要件、主な仕事内容、求められる能力・スキル、サービス提供責任者として働く魅力について、それぞれ解説します。

1.サービス提供責任者(サ責)とは

サービス提供責任者(サ責)とは

サービス提供責任者は、訪問介護において、ケアマネジャーが考案したケアプランに基づき「訪問介護計画書」を作成し、それを元に訪問ヘルパーへ指示をする役割を担います。ケアマネジャーやヘルパーと連携をしながら、介護サービスの管理や調整をしたり、介護従事者と利用者との間を取り持ったりすることも仕事の一つです。

勤務先となる訪問介護事業所には、サービス提供責任者の配置要件が定められています。

  • 訪問介護員等のうち、利用者の数40人に対して1人以上(原則として常勤専従の者であるが、一部非常勤職員でも可)
  • 以下の要件を全て満たす場合には、直近3ヶ月の利用者50人につき1人

① 常勤のサービス提供責任者を3人以上配置
② サービス提供責任者の業務に主として従事する者を1人以上配置
③ サービス提供責任者が行う業務がIT活用などにより効率的に行われている場合

(参照:訪問介護の基準|厚生労働省

ケアマネジャーとの違い

サービス提供責任者とケアマネジャーは、活躍できる場所が異なります。サービス提供責任者は「訪問介護」において役割が課せられている職種ですが、ケアマネジャーは利用者の介護サービスをマネジメントする役割を担っており、「在宅介護」「施設利用」など「訪問介護」だけでなく、活躍できる場所を問わない点が、両者の大きな違いです。

ケアマネジャーは、利用者に対して介護サービスの内容や料金などを説明し、ケアプランを作成するのが主な仕事です。主に居宅介護支援事業所、介護施設などに勤務します。

生活相談員との違い

生活相談員は、主に介護施設にて、外部機関との連絡調整や、利用者、その家族からの相談対応を行う職種であり、ソーシャルワーカーとも呼ばれています。
生活相談員は、ケアマネジャーやサービス提供責任者と異なり、ケアプランや訪問介護計画書などは作成しません。勤務する施設の規模によって、配置人数が異なることが特徴です。

2.サービス提供責任者(サ責)になるための資格要件

サービス提供責任者(サ責)とは

「サービス提供責任者」という名称の資格は、正確には存在しません。前項で記載した各業務を行う者のことを、サービス提供責任者と呼んでいます。
ただし、サービス提供責任者として業務を行うには、厚生労働省が定めた下記の資格要件(2025年4月時点)を満たすことが必要です。

  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 旧介護職員基礎研修修了者
  • 旧ホームヘルパー1級課程修了者

(参考:訪問介護の基準│厚生労働省

このうち、「旧」と名のつく2つの研修は「介護福祉士実務者研修」として一本化され、すでに廃止されています。そのため、未経験でサービス提供責任者を目指したい場合は、介護福祉士国家資格を取得する、もしくは実務者研修を修了することが求められます。

3.サービス提供責任者(サ責)の資格要件の取得方法

サービス提供責任者(サ責)の資格要件の取得方法

サービス提供責任者の要件資格の取得方法を解説します。

介護福祉士

「介護福祉士」は、介護職で唯一の国家資格です。国家試験に合格して、所定の登録手続きを行うことで、介護福祉士を名乗ることができます。介護福祉士を取得するには、国家資格の受験要件を満たす必要があり、現在では下記4つのルートが存在します。

養成施設ルート

厚生労働大臣・文部科学大臣が指定した学校や、度道府県知事が指定する介護福祉士養成施設を卒業すると、国家試験の受験資格を得られます。高卒者の養成施設で2年以上、福祉系大学、社会福祉士養成施設、保育士養成施設を卒業した場合は、1年以上、介護福祉士養成施設で学ぶ必要があります。

実務経験ルート

「実務経験3年以上」と「実務者研修」の2つの条件を満たすと、国家試験の受験資格を得られます。未経験から介護福祉士を目指す場合、介護職として働きながら「実務経験」と「実務者研修」を満たすことで、最短3年で介護福祉士になることが可能です。

福祉系高校ルート

福祉系高校に進学し、特定の科目数・単位数を取得すると国家試験の受験資格を得られます。主に中学生や、中卒者が活用できるルートです。

EPAルート

EPAとは、「経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)」の略語であり、2つ以上の国々が経済発展などを目的に結ぶ協定のことです。
日本においては、EPA介護福祉士候補者として、研修を受けながら就労するインドネシア人、フィリピン人、ベトナム人が対象となっています。

実務者研修

実務者研修は、サービス提供責任者の要件資格の一つであり、「実務経験ルート」として介護福祉士を目指す場合にも必要となる研修です。
都道府県が運営主体となり、計450時間の研修のなかで、介護の基本から実践的な知識、技術を演習などで習得します。介護職未経験でも実務者研修の受講は可能ですが、受講期間は最短でも6ヶ月を要します。

4.サービス提供責任者(サ責)におけるその他の要件

サービス提供責任者(サ責)におけるその他の要件

訪問介護のなかでも、同行援護や行動援護のサービスを提供する事業所においては、サービス提供責任者として追加要件があります。

同行援護

同行援護とは、移動に著しい困難を有する視覚障害者等に対して、外出する際に必要な援助を行うことです。

同行援護サービスを提供する事業所のサービス提供責任者には、下記の要件が求められます。

●介護福祉士
●実務者研修修了者
●居宅介護職員初任者研修課程修了者+実務経験3年
のいずれか

●同行援護従業者養成研修(一般+応用課程)

なお、令和7年4月からは、同行援護の質向上やサービス提供責任者の人材確保を図るため、下記の2つの要件が加わったことで、要件は多少緩和されました。

●同行援護従業者養成研修(一般課程)+視覚障害者の介護等の業務3年
●同行援護従業者養成研修(応用課程)

(参考:同行援護のサービス提供責任者について|厚生労働省

行動援護

行動援護とは、知的障害、精神障害により行動上著しい困難があり、常時介護を有する人を対象とした介護サービスです。行動援護サービスを提供する事業所のサービス提供責任者には、下記の要件が求められます。

●行動援護従業者養成研修課程修了者または強度行動障害支援者養成研修(実践研修)修了者であって、知的障害・精神障害等がある方を直接介護した経験が3年以上ある

また、令和6年3月31日まで経過措置もあります。

●令和3年3月31日時点での介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修修了者、居宅介護職員初任者研修修了者等であって5年以上の実務経験

(参考:行動援護の概要|厚生労働省

5.サービス提供責任者(サ責)の主な仕事内容

サービス提供責任者(サ責)の主な仕事内容

サービス提供責任者の主な仕事内容は、下記のとおりです。
① 訪問介護計画の作成
② 利用申込みの調整
③ 利用者の状態変化やサービスへの意向の定期的な把握
④ 居宅介護支援事業者等に対する利用者情報の提供(服薬状況や口腔機能等)
⑤ 居宅介護支援事業者との連携(サービス担当者会議出席等)
⑥ 訪問介護員に対しての具体的援助方法の指示及び情報伝達
⑦ 訪問介護員の業務の実施状況の把握
⑧ 訪問介護員の業務管理
⑨ 訪問介護員に対する研修、技術指導等

(参照:訪問介護の基準|厚生労働省)

サービス提供責任者は、主に利用者が適切な介護サービスを受けられるように、ケアマネジャーなどとの連携を図りながら訪問介護計画書を作成し、最適なサービス調整を行います。事業所に勤務する介護ヘルパーの教育や指導、研修の実施なども、サービス提供責任者の役割です。
また、実際にサービス提供責任者が利用者の訪問介護を行うことも可能性としてはあるため、利用者やその家族との適切なコミュニケーション、連携なども求められます。

6.サービス提供責任者(サ責)として働く魅力

サービス提供責任者(サ責)として働く魅力

サービス提供責任者として働く魅力を紹介します。

ヘルパーよりも平均給与が高い

厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」における、訪問介護事業所に勤める労働者の平均給与は下記のとおりです。

  • サービス提供責任者:367,190円
  • サービス提供責任者でない:322,800円

サービス提供責任者はヘルパーよりも平均給与が高いため、サービス提供責任者になることで給与アップが目指せるでしょう。

夜勤がない・土日休みの職場がある

サービス提供責任者が勤務する訪問介護事業所は、介護施設などとは異なり、夜勤がなく、カレンダー通りの休みがもらえる職場があります。そのため、夜勤を含めたシフト勤務に比べると、ワークライフバランスが充実しやすいでしょう。

身体的負荷が少ない

サービス提供責任者は、利用者を直接介護するケースが減るため、自身の身体的な負担も少なくなります。そのため、怪我や年齢などの理由があっても、ヘルパーよりも仕事を続けられやすいでしょう。

キャリアアップを視野に入れられる

サービス提供責任者から次に目指せるキャリアとして、ケアマネジャー、事業所・施設管理者、独立開業などがあげられます。キャリア選択の幅が広がると、自身の求める働き方や条件を実現しやすくなるでしょう。

7.サービス提供責任者(サ責)に求められる能力・スキル

サービス提供責任者(サ責)に求められる能力・スキル

サービス提供責任者に求められる能力・スキルを解説します。

介護の知識

サービス提供責任者(サ責)として、利用者一人ひとりに最適な訪問介護計画書を作成することや、適切な介護サービスを検討するためには、介護職としての専門的な知識が求められます。実務経験で学んだ内容や、最新の介護関連の情報、法改正など、多角的な視点から情報を収集し、活かしていくことが大切です。

コミュニケーションスキル

サービス提供責任者(サ責)には、ケアマネジャーやヘルパー、利用者とその家族、地域の関係機関の職員など、多種多様な人物との交流が求められます。一人ひとりのケアプランに基づき、その人に合った訪問介護計画書を作成するためには相手の置かれた立場を理解する必要があり、ニーズを汲んだりするには高いコミュニケーションスキルが必要です。

マネジメントスキル

ヘルパーの教育や指導、研修の実施なども、サービス提供責任者(サ責)が担うべき役割の一つです。また、業務を遂行するにあたって、職員の教育スキルや、マネジメント能力、シフト管理などの調整能力も求められます。

まとめ

まとめ

サービス提供責任者は、訪問介護において「訪問介護計画書」を作成したり、ヘルパーへ指示を出したりする役割を担います。サービス提供責任者の資格取得のための要件は厳しいものの、ヘルパーよりも平均して高い給与水準があり、身体的な負荷が少なく、先々のキャリア選択肢が広がるなどの魅力があります。
介護職としてさらなる高みにチャレンジしたい、スキルアップ・給与アップを図りたい場合は、一つの選択肢としてサービス提供責任者を目指してみてはいかがでしょうか。

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中西紗羅(Sara Nakanishi)

介護福祉士

2014年介護福祉士養成校を卒業し、介護福祉士の資格を取得する。その後、従来型の介護老人福祉施設にて4年勤務する。「より個人に寄り添ったケアを実現したい」という想いから、ユニット型の介護老人福祉施設に転職する。ユニットリーダー研修を受講し、利用者様が「ありのまま自分らしく」過ごしていただけるよう、1人ひとりに寄り添ったケアを目指し6年勤務する。

中西紗羅の執筆・監修記事

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