社会福祉士は簡単すぎる?試験の難易度について解説
文/倉元せんり(社会福祉士)社会福祉士になるには、社会福祉士試験に合格する必要があります。そのため、社会福祉士を目指している方の間では、「社会福祉士試験は難しいか、簡単か」が話題になることがしょっちゅうです。ときには、インターネットなどで「社会福祉士の試験は簡単すぎる」という言葉を見かけることもありますが、本当のところはどうなのでしょうか。
結論から言うと、試験内容が幅広く、科目数も多い社会福祉士試験は、簡単に合格できるものではありません。この記事では、社会福祉士試験の合格率や実際の難易度、試験に合格するコツなどにについて、詳しく説明していきます。社会福祉士試験に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.社会福祉士試験は簡単?
前述したように、社会福祉士試験は「簡単すぎる」とは言えません。試験は19科目から出題され、範囲も福祉や行政、医学など幅広いため、精神保健福祉士や介護福祉士の試験と比べると、試験勉強に多くの時間を割く必要があります。また、法律や制度の改正があった場合には、新しい内容を覚え直さなければなりません。
社会福祉士試験に合格するのに必要な勉強時間は、およそ300時間といわれており、一般的には1年ほどの試験対策が必要です。
そうしたことから、社会福祉士試験は「難易度の高い試験」と言って良いでしょう。
2.社会福祉士試験の合格率
出典:2023年「社会福祉士国家試験(第35回)」合格発表|合格者数や合格率、合格後の手続きについて
社会福祉士試験の受験者数は例年34,000〜46,000人前後で推移しており、合格率は30%前後となっています。
2022(令和4)年度の試験は、受験者数36,974人、合格者数16,338人で、合格率は過去最高の44.2%となりました。内訳は新卒者の合格率が65.0%、既卒者は28.2%となっており、社会人の合格率がやや低いことがわかります。
ちなみに、同じ福祉系の資格である介護福祉士の2022年度の合格率は84.3%で、精神保健福祉士の合格率は71.1%です。この数字と比べても、社会福祉士試験は難易度が高いことがわかるでしょう。
3.社会福祉士試験の難易度が高くなる理由
社会福祉士試験の難易度が高くなる理由として、以下のようなことが考えられます。
- 受験資格が必要
- 出題範囲が広い
- 合格基準が厳しい
- 勉強時間の確保が難しい
つまり、試験に合格するまでの間にさまざまなハードルがあるわけです。ここからは、上記の項目について詳しく説明していきます。
受験資格が必要
社会福祉士になりたいからといって、誰でも試験に挑戦できるわけではありません。
社会福祉士試験の受験資格を得るためには、大学や短大、養成施設などの学校で学ぶ必要があり、最低でも4年以上はかかります。資格取得までのルートは12通りあるため、まずは上の図を見ながら、自分がどのルートなら取得できるのか、取得しやすいのかを検討してみましょう。
筆者の場合は、ケアマネジャーの仕事をしながら、福祉系大学の通信教育部に編入学。2年間自宅で勉強したり、スクーリングを受講したりしながら、卒業に必要な単位を取得しました。
なお、4年制の大学で卒業に必要な単位を取得するには、社会福祉士試験と直接関係のない科目も勉強しなければなりません。そのため、「社会福祉士の受験資格を得ること」が目的であれば、養成施設に通うことをおすすめします。
出題範囲が広い
社会福祉士試験は全19科目(18科目群)から出題され、学習の範囲が非常に広くなっています。科目の内容は以下の通りです。
人体の構造と機能及び疾病 | 7問 |
心理学理論と心理的支援 | 7問 |
社会理論と社会システム | 7問 |
現代社会と福祉 | 10問 |
地域福祉の理論と方法 | 10問 |
福祉行財政と福祉計画 | 7問 |
社会保障 | 7問 |
障害者に対する支援と障害者自立支援制度 | 7問 |
低所得者に対する支援と生活保護制度 | 7問 |
保健医療サービス | 7問 |
権利擁護と成年後見制度 | 7問 |
社会調査の基礎 | 7問 |
相談援助の基盤と専門職 | 7問 |
相談援助の理論と方法 | 21問 |
福祉サービスの組織と経営 | 7問 |
高齢者に対する支援と介護保険制度 | 10問 |
児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度 | 7問 |
就労支援サービス | 4問 |
更生保護制度 | 4問 |
「就労支援サービス」と「更生保護制度」は1つの科目としてカウントされます。
問題数は全部で150問あり、そこには医療分野から社会理論、就労支援など、幅広い分野が含まれます。
合格基準が厳しい
150点満点のうち正解率6割程度で合格となりますが、合格基準は問題の難易度によって変動します。また、合計得点が合格基準に達していても、0点の科目があると不合格になるため、すべての科目で1点以上得点しなければなりません。
つまり、得意か苦手かにかかわらず、全科目をまんべんなく勉強する必要があるわけです。
勉強時間の確保が難しい
働きながら勉強する社会人の場合、勉強時間の確保が課題です。
日々の仕事に追われると、心身の疲れからなかなか勉強が進まず、焦ってしまう場面もあるでしょう。また、苦手科目がある場合は、対策するのに多くの時間がかかります。
働きながら勉強時間を確保するには、今までの生活を見直す必要があるでしょう。
4.社会福祉士試験に向けた勉強のコツ
社会福祉士試験は、1問1点の150点満点となっており、合格するには6割程度の得点が必要とされています。そのため、90問以上の正解を目指して勉強に励む必要があるでしょう。
ここからは、社会福祉士試験に合格するための勉強のコツを紹介します。
法改正を確認する
社会福祉士試験を何度か受験している方の場合、以前の知識のまま解答すると不正解になる可能性があります。高齢者福祉や障害者福祉に関連する法改正があった場合、情報が古くなってしまうためです。
法改正などがあった際は、古いテキストを自分で修正する方法もありますが、それだと修正漏れが発生する可能性があります。ミスを防ぐためにも、受験する年度の新しいテキストや問題集を購入するのが良いでしょう。
試験までの間は、常に新しい知識にアップデートすることで合格に近づけるはずです。
試験日までの学習計画を立てる
試験に合格するには、計画を立てて学習を進めることが大切です。社会福祉士試験では、0点の科目があると不合格になるため、すべての範囲をまんべんなく学習する計画を立てましょう。
とはいえ、大学や養成施設に通いながら、または働きながら学習時間を確保するのは大変です。細かすぎる計画では、予定通り進まなかったときにモチベーションが低がってしまうため、月単位・週単位で学習範囲を決めていくのがおすすめです。
試験範囲を網羅し、学習の進みが遅くなっても調整が可能な学習スケジュールを立てましょう。
勉強時間を捻出する
社会福祉士試験に合格するには、試験勉強に充てる時間を捻出する必要があります。
先ほどお伝えした通り、試験に合格するには300時間程度の勉強が必要ですが、休日にまとめて勉強しようとすると、できなかったときにモチベーションが低下してしまいます。そうならないためにも、平日の昼休憩や寝る前などのすきま時間を上手に使って、コツコツと進めていくようにしましょう。
スマートフォンのアプリを使うのも、すきま時間を上手に活用する1つの方法です。
過去問題に取り組む
限られた時間で勉強を進めるには、過去問題集を利用するのがいちばんです。
社会福祉士試験では、幅広い範囲の勉強が必要なため、テキストをすべて覚えようとすると時間が足りません。過去問題を繰り返し解くことで、毎年出題されているような問題や押さえておくべきポイントを把握すれば、効率よく試験対策ができるでしょう。
その際のコツは、過去5年分を目安に、なるべく多くの問題を解くことです。そうすることで問題に慣れてくるほか、出題の傾向や時間配分などもつかめるでしょう。加えて、不正解の問題を繰り返し解くことも大事です。問題と解答、解説を暗記できるほど読み込めば、確実に理解が深まります。
筆者の場合、入学した大学から模擬問題集の配布がありましたが、優先したのは過去問題でした。繰り返し解いていくことで、「同じような問題が毎年出ている」とか、「テキストに書いてあるけど問題には出ていない」などの傾向がわかります。また、実際に過去問題を解いてみることで、自分の理解度もつかめるはずです。
まとめ:すきま時間をうまく活用してぜひ挑戦を
社会福祉士試験は簡単に合格できるものではありません。試験範囲が広いうえに、0点の科目があると不合格になるため、難易度の高い試験と言って良いでしょう。
筆者の場合、ケアマネジャーの仕事をしながら受験勉強をしていたこともあって、なかなかまとまった勉強時間が確保できませんでした。そのため、以下のような形で、すきま時間を活用することが多かったです。
- 暗記することを紙に書いて台所に貼り、調理中に見る
- 通勤電車の中でスマートフォンアプリを使って問題を解く
- 食事を早く終わらせて昼休憩に勉強する
- 寝る前の10分間は必ず勉強する
このように短い時間でも勉強はできます。これは個人的な感想ですが、まとめて勉強するより、毎日少しずつやるほうが記憶に残りやすいようにも感じます。
社会福祉士試験はけっして簡単ではありませんが、「手の届かない資格」というわけでもありません。社会福祉士の資格があれば仕事の幅も広がるため、ぜひ資格取得に挑戦してみてください。
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