ケアマネジャーとは?仕事内容・給料・仕事のやりがいを紹介
文/中谷ミホ(介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士)ケアマネジャーは、介護が必要な方の生活の質を高め、自立をサポートする専門職です。みなさんのなかにも、介護職からのキャリアアップの選択肢として「ケアマネジャー」を検討している方がいらっしゃるのではないでしょうか。
また、「ケアマネジャーの仕事って、実際どんなことをするの?」「給料はどのくらいなの?」などケアマネジャーの働き方や収入について、もっと深く知りたい方もいるかもしれません。
そこで、本記事では、ケアマネジャーの仕事内容や1日の流れを紹介するとともに、気になる給料や仕事のやりがいについても詳しく解説していきます。介護職からのキャリアアップを目指している方、ケアマネジャーの仕事に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 目次
- 1.ケアマネジャー(介護支援専門員)とは
- ケアマネジャーの役割
- ケアマネジャーの資格
- 2.ケアマネジャーの仕事内容
- ケアマネジメント
- 介護保険の給付管理業務
- 要介護認定の申請代行
- 相談対応
- 3.ケアマネジャーの1日の流れ
- 居宅介護支援事業所のケアマネジャーの場合
- 施設ケアマネジャーの場合
- 4.ケアマネジャーの給料・年収
- 5.ケアマネジャーのやりがい
- 生活の質の向上に貢献できる
- 感謝の言葉を受け取れる
- 信頼関係を築ける
- 自己成長できる
- 6.ケアマネジャーに向いている人
- コミュニケーション能力の高い人
- 臨機応変に対応できる人
- スケジュール管理能力がある人
- 精神力と忍耐力のある人
- まとめ:キャリアアップしたい方はぜひ目指してみよう
1.ケアマネジャー(介護支援専門員)とは
ケアマネジャーは、2000年の介護保険制度導入に伴って誕生した公的資格です。正式には「介護支援専門員」と呼ばれます。
ケアマネジャーは、介護の必要な方たちができる限り自立した生活を送れるようサポートする専門職であり、介護現場に欠かせない存在です。
ケアマネジャーの役割
ケアマネジャーの役割は、介護の必要な方が最適な介護サービスを受けられるように支援することです。
具体的には、利用者の心身の状態や生活環境、家族の状況などを考慮しながら、「ケアプラン」を作成します。利用者やその家族の相談に応じたり、介護サービス事業者や市区町村などと連携してスムーズな支援が提供できるように調整したりするのも、ケアマネジャーの大事な仕事です。
ケアマネジャーの資格
ケアマネジャーの資格は国家資格ではなく、各都道府県が認定する公的資格です。ケアマネジャーになるためには、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格しなければなりません。
介護支援専門員実務研修受講試験には受験要件があり、介護職の場合は介護福祉士資格を取得後、5年以上(かつ900日以上)の実務経験が必要です。また、ケアマネジャーとして働くためには、試験に合格した後に都道府県が実施する研修を修了し、資格証の交付を受ける必要があります。
介護職からケアマネジャーになるには、介護福祉士としての実務経験と専門知識が求められることを覚えておきましょう。
2.ケアマネジャーの仕事内容
ケアマネジャーの主な業務は、以下の通りです
- ケアマネジメント
- 介護保険の給付管理
- 要介護認定の申請代行
- 相談対応
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ケアマネジメント
ケアマネジメントとは、介護を必要とする本人やその家族の相談を受け、課題を分析し、必要な支援を調整・管理する業務です。ケアマネジメントでは、利用者の尊厳を守り、「自己決定」や「自立」を支えることが主な目的となります。
ケアマネジメントの流れと、各段階のポイントは以下の通りです。
・インテーク(受付、初期面接相談)
利用者からの相談や依頼を受け、どのような支援が必要かを確認する最初の段階です。利用者やその家族との出会いの場であり、その後のケアマネジメントに大きな影響を与えることになるため、信頼関係の構築に努めることが大切です。
・アセスメント
利用者の心身の状態や生活環境を把握し、解決すべき課題を明確にする段階です。ここでは、利用者が抱える問題点やニーズを整理し、どのような介護サービスが必要かを具体的に見極めます。
・ケアプラン原案の作成
アセスメントで得た情報をもとに、具体的な支援内容や目標を設定してケアプラン原案を作成します。
・サービス担当者会議の実施
ケアマネジャーと介護サービス事業者、主治医、看護師などの関係者でサービス担当者会議を開き、ケアプラン原案の修正を行います。ケアマネジャーは会議を行うにあたって、関係者を招集するほか、司会進行も担当します。
・モニタリング
介護サービスの利用開始後も継続的に利用者の状況を確認し、新たなニーズや課題が発生した場合には、ケアプランを見直します。この段階では、利用者が常に適切なサービスを受けられるよう、状況の変化に柔軟に対応することが求められます。
介護保険の給付管理業務
介護報酬の給付管理業務も、ケアマネジャーの重要な仕事の一つです。
ケアマネジャーは「給付管理票」を作成し、国民健康保険団体連合会(国保連)に毎月10日までに提出します。この書類は、介護サービス事業所が介護報酬を受け取るために必要なものです。
提出期限を過ぎると介護給付費の支払いが遅れるため、ケアマネジャーはきちんとスケジュールを管理して、ミスがないように注意しなければなりません。
要介護認定の申請代行
利用者が介護保険を利用するには、要介護認定の申請が必要です。しかし、申請手続きは複雑で、利用者やその家族の負担になることがあります。そのような場合は、ケアマネジャーが代行して手続きを行うことも珍しくありません。介護保険の更新や区分変更の手続きもケアマネジャーによる代行が可能です。
相談対応
利用者やその家族からの介護に関する悩み、心配事などの相談に対応するのも、ケアマネジャーの重要な業務です。相談対応では、必要に応じて介護サービス事業者や医療機関、市区町村と連携し、利用者が安心して介護を受け続けられるように支援します。
3.ケアマネジャーの1日の流れ
ケアマネジャーの1日の流れは、所属する事業所や施設によって異なります。
ここでは、居宅介護支援事業所に所属する「居宅ケアマネジャー」と、施設に所属する「施設ケアマネジャー」について、1日の仕事の流れを紹介します。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーの場合
居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャー(以下、居宅ケアマネ)が担当するのは、自宅で生活する要介護者や、有料老人ホームなどに入居して外部の介護サービスを利用する要介護者です。
以下は、勤務時間が9〜18時の居宅ケアマネのスケジュール例です。
●9時 出勤
出勤したら、まず1日のスケジュールの確認と情報共有を行います。その後、必要な資料や書類をそろえて仕事の準備を整えます。
●9:30 利用者宅訪問(1件目)
モニタリングのために利用者宅を訪問します。利用者と面会して、健康状態や生活状況、介護サービスの提供状況が適切かを確認します。
●10:30 利用者宅でサービス担当会議(2件目)
介護サービス提供者、医療関係者、利用者の家族などが参加し、サービス内容について話し合います。利用者の状態や今後の介護方針を共有し、ケアプランを調整します。
●12:00 休憩・昼食
●13:00 区役所で手続き
区役所へ出向き、要介護認定の代行申請を行います。利用者に代わって必要な手続きを行うのもケアマネジャーの重要な役割です。
●14:00 事務所でデスクワーク
事務所に戻り、ケアプランの作成や電話対応、地域包括支援センターからの新規相談の対応などを行います。
●16:00 利用者宅訪問(3件目)
モニタリングのため訪問します。午前と同様に利用者の状態を確認し、介護サービスの提供状況が適切かを確認します。
●17:00 事務所でデスクワーク
書類の作成やサービスの調整、翌日の準備といった事務作業をこなします。
●18:00 退勤
施設ケアマネジャーの場合
施設ケアマネジャー(以下、施設ケアマネ)が担当するのは、介護施設に入居する要介護者です。施設ケアマネは、施設内での業務が中心となります。
以下は、勤務時間が8時30分〜17時30分の施設ケアマネのスケジュール例です。
●8:30 朝礼・申し送り
朝礼に参加し、前日の状況や引き継ぎ事項を確認します。ほかのスタッフと情報を共有し、利用者の状態を把握します。
●9:00 入居者の様子を確認
担当する入居者の居室を訪れ、コミュニケーションを図りながら生活状況を確認します。
●10:00 新規入居者・家族と面談
新規で入居する方やその家族と面談を行います。その際、入居予定者の心身状態や生活状況などをアセスメントし、どのような支援が必要かを確認します。面談のない日は、施設の行事やレクリエーションの補助に入ることもあります。
●11:00
ケアプランの作成や、入居者に関する事務作業を行います。
●11:30
担当フロアに出向き、昼食の配膳や食事介助を行います。
●12:30 休憩・昼食
●13:30 サービス担当者会議
入居者本人やその家族、介護・看護スタッフ、リハビリスタッフ、管理栄養士などが参加して、サービス内容について話し合います。利用者の状態や今後の介護方針を共有し、ケアプランを調整します。
●15:00 デスクワーク・電話対応
ケアプランの作成や電話連絡、入退所の調整業務などを行います。
●17:30
1日の業務が終わったら、申し送りを行って退勤します。
4.ケアマネジャーの給料・年収
次に、ケアマネジャーの給料について見ていきましょう。
介護職員処遇改善支援補助金を取得(届出)している事業所のケアマネジャー(常勤勤務)の平均月収と年収は、以下の通りです。
- 平均月収:36万1,770円
- 平均年収:434万1,240円(平均月収×12か月)
以下の表は、ケアマネジャーの給与を事業所で働く他職種と比較したものです。
職種 | 平均月収 | 平均年収 (平均月収×12か月) |
---|---|---|
ケアマネジャー | 36万1,770円 | 434万1,240円 |
介護職員 | 31万7,540円 | 381万480円 |
看護職員 | 37万3,750円 | 448万5,000円 |
生活相談員・支援相談員 | 34万2,330円 | 410万7,960円 |
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」)
ケアマネジャーの給与は、看護職員に次いで2番目に高い水準にあり、介護職員と比べると月に約4万円の差があります。このことから、ケアマネジャーは比較的高収入を得られる職種であることがわかります。介護職からケアマネジャーを目指す方にとっては、魅力的なキャリア選択の一つといえるでしょう。
なお、施設ケアマネの場合は、勤務先によって夜勤手当が加算されることがあり、居宅ケアマネよりも高収入になる傾向があります。
5.ケアマネジャーのやりがい
ケアマネジャー(介護支援専門員)の仕事には、多くのやりがいがあります。仕事を通じて感じられるやりがいは、以下の通りです。
生活の質の向上に貢献できる
利用者の生活の質の向上に貢献できることは、ケアマネジャーのやりがいにつながります。
自分が作成したケアプランによって、利用者が生活しやすくなったり、健康状態が改善したりした場面では、大きな達成感を得られるでしょう。
感謝の言葉を受け取れる
利用者やその家族から「ありがとう」の言葉を受け取ったときにも、やりがいを感じます。感謝の言葉や笑顔は、仕事のモチベーションにつながるはずです。
信頼関係を築ける
利用者やその家族とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築けたときも、ケアマネジャーとしてのやりがいを感じるでしょう。
信頼関係を築いて、利用者やその家族から安心して相談してもらえるようになれば、結果として支援の質も高まります。
自己成長できる
ケアマネジャーとしての経験を積むことで、主任介護支援専門員や事業所の管理者など、キャリアアップのチャンスが広がります。責任ある役割を担うことで、さらに成長していけるのもこの仕事の魅力です。
6.ケアマネジャーに向いている人
最後に、ケアマネジャーとして活躍するのに望ましい特性を紹介しましょう。
コミュニケーション能力の高い人
ケアマネジャーは、利用者やその家族、医療機関、介護サービス提供者など、さまざまな関係者と連携を取る必要があります。そのため、円滑なコミュニケーションを取れる人がこの仕事に向いています。
臨機応変に対応できる人
利用者の状況は日々変化するため、ケアマネジャーには都度適切に対応する柔軟性が求められます。急な体調の変化や家族の意向の変化など、予期せぬ事態にも冷静に対処できる人は、ケアマネジャーに向いているでしょう。
スケジュール管理能力がある人
ケアマネジャーの業務範囲は広く、多くの業務を効率よくこなしていかなければなりません。そのため、利用者宅の訪問やケアプランの作成、会議や手続きなどの業務を効率よく進めるスケジュール管理能力が必要です。
精神力と忍耐力のある人
ケアマネジャーは、時に困難な状況に直面することもあります。また、利用者や家族との板挟みになることも珍しくありません。それを踏まえるなら、精神的な強さと忍耐力もケアマネジャーに必要な特性といえます。
ただし、ここで紹介したすべての特性を完璧に備えている必要はありません。ご自身の強みを生かしながら、足りない部分は経験や工夫で補っていくとよいでしょう。
まとめ:キャリアアップしたい方はぜひ目指してみよう
ケアマネジャーは、介護が必要な方の自立した生活をサポートする専門職です。介護サービスの調整やケアプランの作成、利用者や家族の相談対応など幅広い役割を担っており、介護現場には欠かせない存在だといえます。
資格取得には実務経験や研修が必要ですが、その分やりがいも大きく、給与面も他の介護職と比べて高い水準となっています。介護職の経験を生かしてキャリアアップを図りたい方は、ケアマネジャーを目指してみてはいかがでしょうか。
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