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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2022/09/05

#認知症

認知症介護基礎研修が2024年に義務化!対象者や研修内容・免除の条件は?

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 1.jpg

「認知症介護基礎研修」という言葉を耳にしたことがあっても、具体的にどのような研修なのかを知らない方は、意外に多いのではないでしょうか。認知症介護基礎研修とは、医療・福祉関連の資格を取得していない介護従事者や、認知症介護の経験がない介護従事者に向けた研修のことで、そこでは認知症介護の基礎知識を学びます。

今回は、認知症介護基礎研修で学べる内容や受講手続きの方法、受講にかかる費用などを紹介します。また、認知症介護基礎研修は2024年度に完全に義務化されますが、義務化されても研修が免除されるケースについても解説します。

1.認知症介護基礎研修とは

認知症介護基礎研修とは、認知症の人への介護に求められる基本的な理解や対応方法を習得するための研修です。

認知症介護基礎研修は、2015年に策定された「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」にもとづき、将来における認知症患者の増加に対応するべく創設されました。厚生労働省は、将来的には介護に携わるすべての職員が認知症介護基礎研修を受講し、認知症介護の基礎的知識を持つことを目標にしています。

(出典:厚生労働省「認知症施策推進大綱」

研修受講対象者は、介護保険施設において介護サービスに直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を持っていない方や、認知症介護の経験がない方です。なお、認知症介護実践者研修など、他の認知症介護に関する研修を修了した方は認知症介護基礎研修の免除対象になります。

(出典:認知症介護研究・研修センター「認知症介護実践者等養成事業の実施について」の一部改正について」

認知症介護基礎研修は自治体・団体ごとに実施されるため、地域によって開催日程や費用などが異なります。研修の詳細については、受講を希望する自治体・団体の案内を確認しておきましょう。

研修で学べる内容

認知症介護基礎研修で学べる内容は、研修を実施している自治体・団体や、実施される年度によって細かな点が異なる場合があります。

認知症介護基礎研修は講義と演習で構成されており、講義と演習を合わせて6時間ほどのカリキュラムとなっています。ここでは、認知症介護研究・研修センターが実施する研修での学習内容を紹介します。

講義 1.認知症の人を取り巻く現状
2.認知症の人を理解するために必要な基礎的知識
3.具体的なケアを提供する時の判断基準となる考え方
4.認知症ケアの基礎的技術に関する知識
演習 1.認知症の人との基本的なコミュニケーションの方法
2.不適切なケアの理解と回避方法
3.病態・症状等を理解したケアの選択
4.行動・心理症状(BPSD)を理解したケアの選択と工夫
5.自事業所の状況や自身のこれまでのケアの振り返り

(引用:認知症介護研究・研修センター「認知症介護基礎研修シラバス」_引用日/2022/05/06)

演習の1と2、および3と4は一体的に行われます。

研修の受講手続き・費用

認知症介護基礎研修の受講手続きや費用は、実施する自治体・団体によって異なります。研修方法についても、研修会場に集合して研修を受ける集合形式や、eラーニングを使った通信形式などさまざまです。

例えば東京都(八王子市を除く)の場合は、研修実施機関として「認知症介護研究・研修仙台センター」を指定しており、eラーニングで研修を実施しています。認知症介護研究・研修仙台センターのeラーニングの受講方法は、パソコンやタブレットで講義動画を視聴し、その後に○×式の確認テストを解くという形です。

受講手続きについては、受講者自身が認知症介護研究・研修仙台センターのホームページから直接申し込みを行います。申し込みには自身が勤務する事業所の「事業所コード」が必要になるため、事前に入手しておきましょう。なお、東京都における認知症介護基礎研修の受講料は、3,000円となっています。

(出典:東京都福祉保健局「認知症介護基礎研修eラーニングについて」
(出典:認知症介護研究・研修仙台センター「認知症介護基礎研修e-ラーニングシステム」

研修の受講期間・難易度

認知症介護基礎研修の詳細な受講期間は、実施主体の自治体・団体により異なりますが、おおむね6時間程度で、1日で修了する研修です。

認知症介護基礎研修のカリキュラムや学習内容は、自治体・団体による差は特にありません。医療・福祉関連の資格を取得していない方や認知症ケア未経験の方を対象にした基礎的な研修であるため、内容は分かりやすくなっています。また修了試験などもなく、受講を終えると修了証書が発行されます。そのため他の介護系の資格などと比べると、比較的受講しやすい研修と言えるでしょう。

2.認知症介護基礎研修の義務化

認知症介護基礎研修は、2021年4月の介護報酬改定に伴って義務化されました。義務化の理由は、高齢化とともに認知症患者数の増加が見込まれ、認知症介護の知識やスキルを持った介護人材が必要になるためです。

認知症高齢者の介護は、通常の介護に比べて「難しい」と感じる方が多く、特に認知症介護に慣れていない介護職員や、認知症に関する知識がない介護職員は対応に苦慮する場合があります。そのため研修の受講を義務化し、より多くの介護職員に認知症介護の基礎的な知識を身に付けてもらうことで、介護業界全体の認知症介護の質を上げようとしているのです。

ただし、なかには義務化の影響を受けず、認知症介護基礎研修を免除される方もいます。ここでは、研修が免除となるケースと、義務化の経過措置について紹介します。

(出典:厚生労働省「介護保険最新情報-Vol.952」

免除されるケース

認知症介護基礎研修を免除されるのは、下記のような医療・福祉関連の資格を持っている人です。

医師、歯科医師、薬剤師、看護師、准看護師、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護支援専門員、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員養成研修(一級課程、二級課程)修了者、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師など

(出典:山口県介護保険情報総合ガイドかいごへるぷやまぐち「認知症介護基礎研修の受講義務免除資格等について」

また、下記のケースに当てはまる人も、認知症介護基礎研修を免除されます。

・認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修などを修了済みの人
・福祉系高校で認知症に関わる科目を受講している人
・養成施設で認知症に関わる科目を受講している人
・人員配置の基準上、従業員数に算定される従業者ではない人や、介護に直接携わる可能性がない人

(出典:厚生労働省「「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A」

福祉系高校や養成施設で認知症に係る科目を受講している場合は、卒業証明書などで受講を確認できることが免除の条件です。

認知症サポーター等養成講座の修了者や医療・福祉関連の資格を持っていない外国人介護職員は免除対象ではないため、認知症介護基礎研修を受ける必要があります。

●関連記事:無資格の介護職への研修義務化、必要な人と免除される人解説 厚労省通知

義務化の経過措置

認知症介護基礎研修が完全に義務化されるのは2024年4月からで、2021年4月から2024年3月までの3年間は経過措置期間です。

経過措置期間中の研修受講は努力義務とされているため、現時点で研修対象者が認知症介護基礎研修を受講していなくても、介護職員として働けなくなるわけではありません。

また、認知症介護基礎研修の義務化は介護サービス事業者に対して課されているもので、2024年4月以降、研修の受講対象の介護職員に受講の配慮をしない事業所は、行政処分の対象になります。

3.認知症介護基礎研修と初任者研修のどちらを選ぶべき?

介護の現場で働く新任職員向けの研修には「介護職員初任者研修」もあり、どちらを受講するべきか迷う方も多いでしょう。ちなみに初任者研修は、介護業務を行う上での最低限の知識や技術を身に付け、基本的な介護業務ができるようにする研修です。

初任者研修を修了すれば、介護施設や訪問介護において、身体介護や排せつ介助など、利用者さんの体に直接触れる介護ができるようになります。しかし、認知症介護基礎研修を修了しても訪問介護では利用者さんの体に直接触れる介護はできず、この点が大きな違いと言えます。

また、認知症介護基礎研修は約6時間で終わる研修ですが、初任者研修の修了には約130時間かかります。介護における必要最低限の知識が身に付くため、就職・転職に有利になったり、給料アップにつながったりする可能性もあるでしょう。

そのため、長く介護の世界で活躍したい場合は、介護職員初任者研修を修了するのがおすすめです。

●関連記事:介護職員初任者研修とは?資格の取得方法も詳しく解説!

まとめ

認知症介護基礎研修とは、医療・福祉関連の資格を取得していない介護従事者や、認知症介護の経験がない介護従事者が、認知症介護の基礎的な知識・技術を身につけるための研修です。研修は自治体・団体が実施するため、受講手続きや費用、スケジュールは実施主体によって異なります。受講を希望する自治体・団体の情報を確認しておきましょう。

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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

●関連記事:認知症介護実践者研修とは?取得するメリット・難易度・受講方法
●関連記事:認知症介護実践リーダー研修とは?受講資格や研修内容を紹介

▼監修者からのアドバイス

高齢者白書によると、認知症高齢者数は、2025年には700万人程度(高齢者人口の約20%)と予測されています。2025年には団塊の世代の人たちがすべて後期高齢者(75歳以上)となり、高齢者数の増加に伴い、認知症高齢者数は増加しています。このような中にあっては、認知症の人が介護が必要になっても自分らしく暮らし続けられるための対応を考えていかなければ、認知症の人のQOL(生活の質)が低下してしまいかねません。認知症介護基礎研修は、その対応力向上のために必要な研修です。
認知症介護の基本的な知識やスキルを学べる認知症介護基礎研修は、猶予期間(2023年度まで)であっても、介護職員として入職したい方は受講しておいたほうがいいと思います。
認知症介護基礎研修は、介護関連の資格がない人や認知症介護が未経験の人を対象として行われる研修です。受講するにあたって、厚生労働省ホームページ(認知症の症状―中核症状と行動・心理症状)などであらかじめ予習して臨めば、よりよい認知症介護基礎研修の場となるでしょう。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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