実務務経験3年で介護福祉士を目指す!受験やパート勤務の計算方法を解説
文/渡口将生(介護福祉士・ケアマネジャー)
介護福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉士法」(1987年制定)によって定められた、介護資格で唯一の国家資格です。取得すればキャリアアップや給与アップが期待できるため、介護職のなかには「介護福祉士を取得したい」と考えている方も少なくないでしょう。
しかし、介護福祉士を受験するには、いくつかの要件を満たす必要があります。なかでも「実務経験3年以上」は、多くの方にとって気になるポイントではないでしょうか。
本記事では、実務経験3年について取り上げ、その定義や実務経験日数の計算方法、「見込み受験」ができるかどうかなど、事前に知っておくべきポイントを解説します。介護福祉士の資格取得を目指している方はもちろん、介護福祉士に興味のある方も、ぜひ参考にしてください。
1.介護福祉士の受験資格要件
介護福祉士の国家試験を受けるためには、受験資格を満たす必要があり、誰でも受験できるわけではありません。
国家試験の受験資格を得るには、大きく4つのルートがあります。
- 養成施設ルート
- 福祉系高校ルート
- 実務経験ルート
- 経済連携協定(EPA)ルート
以下で、それぞれの特徴を見ていきましょう。
養成施設ルート
介護福祉士養成施設(専門学校や短期大学など)に通い、厚生労働省が指定するカリキュラムを修了・卒業して、受験資格を得るルートです。2年以上の在学期間中に必要な知識と技術を習得し、卒業年度の1月末には「受験資格の取得見込み」として国家試験を受験できます。
ただし、働きながら通うのが難しいため、時間と費用(学費)に余裕がある方で、確実に試験合格を目指したい方に向いているルートといえるでしょう。
福祉系高校ルート
福祉系高校ルートは、福祉系高校を卒業することで介護福祉士の受験資格を得られるルートです。このルートは、「新カリキュラムルート」「旧カリキュラムルート」「特例高校ルート」の3つに分かれています。
①「新カリキュラムルート」2009年(平成21年)度以降に入学
2009年度以降に福祉系高校に入学した場合、卒業と同時に国家試験の受験資格を取得できます。
②「旧カリキュラムルート」2008年(平成20年)度以前に入学
2008年度以前に福祉系高校に入学した場合も、卒業と同時に国家試験の受験資格を取得できます。ただし、介護福祉士資格の登録申請前に「介護過程Ⅲ」を受講し、登録申請時に「介護過程Ⅲ修了証明書」を提出するなどしなければいけません。
③特例高校等
特例高校とは、介護福祉士養成の基準を満たす高校や中高一貫校を指します。2009年度以降に特例高校に入学した人は、卒業後に9か月以上(273日以上)かつ、従事日数135日以上の実務経験を積むことで、国家試験の受験資格を得られます。
実務経験ルート
介護職として実務経験のある方が、実務者研修を修了することで受験資格を得るルートです。過去には、実務経験が3年以上あれば受験資格が得られましたが、2016年度からは「実務者研修」の修了が必須となりました。
働きながら資格取得を目指す場合は、このルートを選ぶのが一般的で、国家試験受験者の80%以上が実務経験ルートで受験しています。
経済連携協定(EPA)ルート
ベトナム、インドネシア、フィリピンのEPA介護福祉士候補者が、日本での就労や研修を経て資格取得を目指すルートです。2024年度の第37回試験からは、実技試験が廃止され、筆記試験のみとなりました。
EPA介護福祉士候補者で、2024年5月以前に入国した方は、介護福祉士資格の登録を申請するまでに「介護過程Ⅲ」を受講し、申請時に「介護過程Ⅲ修了証明書」を提出する必要があります。一方、実務者研修を修了している方は、「実務者研修修了証明書」を提出することで登録申請ができます。
2.介護福祉士「実務経験ルート」の実務経験3年とは?
実務経験ルートで介護福祉士の受験資格を得るには、「実務経験3年以上」が求められます。実務経験とは、実務経験要項の対象施設(事業所)および職種に従事した期間です。
実務経験3年以上は、「従業期間」「従事日数」どちらの要件も満たす必要があります。日数のカウントは、短時間勤務でも「1日」としてカウントすることが可能です。また、複数の職場で働いた場合は、それぞれの実務日数を合算できます。
ただし、同じ日に複数の事業所で勤務した場合は、1日としてカウントされるため注意が必要です。
従業期間
3年以上とは、具体的に「1,095日以上」のことを指します。この期間には、産休・育休・病休などの休職期間も含まれます。一方、休暇・欠勤・出張・研修などで介護業務を行わなかった日は含まれません。
従事日数
従事日数とは、雇用契約に基づいて実際に介護業務を行った日数で、「540日以上」を満たす必要があります。ただし、休暇・欠勤・出張・研修などで介護業務に従事しなかった日は含まれません。
従業期間や従事日数が足りているかは、公益財団法人社会福祉振興・試験センターの自動計算ツールを利用すると確認できます。
3.見込みでも受験可能
介護福祉士国家試験の当日に「実務経験3年以上」を満たしていない場合でも、見込みで受験することができます。
見込み受験は、受験実施年度の3月31日までに、実務経験を満たせる場合に限ります。例えば、2025年度の受験申し込み期日に実務経験が3年に満たなくても、2026年3月31日までに実務経験3年以上を満たせれば、見込み受験が可能です。
ただし、申し込み後に従業期間・従事日数を満たした時点で、あらためて実務経験証明書の提出が必要になります。
4.パートの場合、実務経験の計算方法は変わる?
実務経験3年以上の要件では、働き方(パートタイマーや時短勤務など)は問われません。つまり、対象となる施設や事業所で該当する職種に就き、実際に介護業務を行っていれば、勤務時間に関係なく1日としてカウントされます。
例えば、3年間で週4日以上働けば、合計620日以上になるので、欠勤や有給を考慮しても十分に条件を満たせるでしょう。仮に、週3日と週4日を交互に働いた場合でも、合計540日以上になるため条件をクリアできます。
5.実務経験の対象となる施設・職種一覧
実務経験としてカウントされるのは、介護保険法や障害者総合支援法に基づいた施設・事業所での介護業務に限られます。
実務経験としてカウントされる分野は以下の通りです。
- 児童分野
- 障害者分野
- 高齢者分野
- その他の分野
- 介護などの便宜を供与する事業 など
高齢者分野には、以下のような施設・事業所が該当します。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
- 有料老人ホーム
- グループホーム
- デイサービスセンター
- 小規模多機能型居宅介護事業所
- 訪問介護事業所 など
これらの施設で介護業務に従事していれば、パート勤務や契約社員、派遣社員でも実務経験としてカウントされます。ただし、事務職や掃除など介護業務以外の仕事は、実務経験として認められません。
詳しくは、公益社団法人社会福祉振興・試験センターのホームページで確認してください。
6.実務経験以外の受験資格要件
2016年度(第29回)の介護福祉士国家試験から、実務経験に加えて実務者研修の修了が受験資格の要件に加わりました。
より質の高い介護サービスを提供するため、厚生労働省が2007年に「社会福祉士及び介護福祉士法」を改正し、一定の教育過程を経た後に国家試験を受験する形になったのです。適用は当初、2012年度(第25回)試験からの予定でしたが、2016年度(第29回)試験からの適用に延期されました
実務者研修は、介護技術の向上や法的知識を深めるための研修で、無資格の方や初任者研修を修了した方が受講できます。
7.まとめ:実務経験3年のハードルは決して高くない!ぜひチャレンジを
介護福祉士の資格取得までの道のりは平坦ではありませんが、実務経験を積み、試験を突破することでキャリアアップ、収入アップの可能性が高まります。資格を取得した後は、活躍できる職場も増えるでしょう。
パートタイマーや時短勤務であっても、「実務経験3年」という条件を満たせば受験資格を得られるため、決してハードルが高いわけではありません。介護福祉士の国家資格に興味のある方は、ぜひ資格取得を目指してみてください。
●関連記事:
・介護福祉士とは?取得方法から資格を活かすポイントまで
・介護福祉士の受験資格は? 実務経験3年の計算方法も解説
・介護士(介護福祉士)になるには?資格取得方法・試験内容を解説
スピード転職も情報収集だけでもOK
マイナビ介護職は、あなたの転職をしっかりサポート!介護職専任のキャリアアドバイザーがカウンセリングを行います。
はじめての転職で何から進めるべきかわからない、求人だけ見てみたい、そもそも転職活動をするか迷っている場合でも、キャリアアドバイザーがアドバイスいたします。

SNSシェア