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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2024/06/11

#みんな知らない高齢者の世界#インタビュー

耳が遠くなると認知症になる?知っておきたい難聴と認知症の関係|みんな知らない高齢者の世界

取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー thumnbail_1.jpg

「話しかけているのに返事をしてもらえない」「大きい声で話さないと会話を続けられない」など、高齢者とのコミュニケーションを困難に感じている方も多いのではないでしょうか。高齢者になると耳が聞こえづらくなることは広く知られていますが、最近の研究により、難聴になると認知症の発症リスクが2倍になることが明らかになっています。では、なぜ難聴が認知症の発症につながるのでしょうか。難聴と認知症の関係について、『耳が遠くなると、認知症が近づく』著書の真鍋 恭弘先生に話を聞いてみました。

1.難聴になると認知症を発症しやすくなる理由

ーーなぜ難聴になると認知症を発症しやすくなるのでしょうか。理由を教えてください。

大きく2つの原因があります。1つ目は、難聴によって脳が休眠状態になるためです。人間は耳から入ってくる情報を脳に送り、その情報をさまざまに処理しています。つまり、耳からの情報によって、脳は常に刺激を受けているのです。ところが、難聴になると耳から脳へ伝達される情報量が極端に少なくなるため、脳が休眠状態となり、結果として認知症の発症につながってしまいます。

2つ目は、難聴によって社会的に孤立してしまい、抑うつ状態に陥るためです。耳が聞こえづらくなると、相手が何を喋っているのか分からなくなり、人とコミュニケーションを取る機会がどんどん減少します。すると人と交流したり、外出したりする機会が減ることで、段々と抑うつ状態になり、最終的には認知症を発症してしまうのです。

2.難聴が原因の認知症を改善するにはどうすればいい?

ーー難聴が原因による認知症を改善するには、どのようなことに取り組むのがよいのでしょうか。

残念ながら、一度認知症を発症してしまった場合、その症状を改善することは非常に難しいといえます。そのため、「あれ?おかしいかも」と感じることが増えた認知症予備軍の段階で、なるべく早く病院を受診するようにしましょう。

病院を受診するか迷ったら、どのような物忘れが多いのかに注目してみてください。例えば、「食事を食べたかどうかなどの経験自体を忘れる」「日時や場所を忘れる」「忘れていることを隠す」などは代表的な症状です。家族の様子がおかしいと感じたら、認知症専門医の受診をおすすめします。


3.難聴を放置するとこんなリスクが...

ーー認知症の発症以外に、難聴を放置するリスクを教えてください。

やはり、社会的に孤立してしまうことは大きなリスクではないかと考えています。難聴になると、人との会話が難しくなり、結果として外出も億劫になってしまいがちです。しかし、このように家に閉じこもると、心理的な問題はもちろん、運動不足による身体的な問題も発生します。

現代の医学においては、孤独は高血圧や糖尿病と同程度の健康リスクであると認識されています。難聴でお悩みの方には、耳鼻科で治療を受けたり、ご自分に合った補聴器を装着したりして、積極的に他の方と交流していただきたいですね。

4.高齢者の難聴に気付くためのポイント

ーー周囲の人が高齢者の難聴に気が付くには、どのような点に注意すればよいでしょうか。

最も分かりやすいのは、聞き返しの頻度に注目することです。日常会話において、「え?」「今なんて言った?」といった聞き返しを頻繁に行う場合は、難聴になっている可能性が高いと考えられます。

また、それ以外にも、テレビの音量をいきなり大きくするようになったり、体温計などのピピっという電子音が聞こえなかったりすることも、難聴の症状の一つとなります。高齢者の様子を見ていて、なんだか耳の聞こえが悪そうだと感じた場合は、一度耳鼻科で検査を受けた方がよいでしょう。

5.難聴を予防する方法はある?

ーーそもそも、難聴を予防する方法はあるのですか。

難聴は生活習慣の見直しによっても予防できます。最も手軽な方法は、必要以上に大きな音を聞かないことです。耳はデリケートな器官なので、大きな音で刺激し続けると、ダメージを受け難聴になってしまいます。騒音が激しい環境に身を置く機会が多い場合は、耳栓を装着して耳を守りましょう。

また、少し意外に感じるかもしれませんが、動脈硬化を防ぐことも難聴の予防につながります。動脈硬化とは、血管の老化によって血管の詰まりなどが生じ、血流が悪くなる状態を指します。耳には細かな血管が縦横に走っているため、動脈硬化による血流の悪化により、耳の神経や細胞の働きが鈍くなることで難聴になってしまうのです。動脈硬化を予防するには、身体の負担にならない程度の適度な運動を続けることや、十分な睡眠時間を確保すること、バランスのよい食事を摂ること、生きがいを持って明るく元気に生きることなどが重要です。ぜひ、生活習慣を見直してみてください。

プロフィール

真鍋 恭弘(まなべ やすひろ)

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昭和36年、香川県生まれ。福井医科大学(現在の福井大学)医学部卒業。医学博士、耳鼻咽喉科専門医、補聴器適合判定医、めまい相談医、耳科手術暫定指導医。平成17年、日本耳鼻咽喉科臨床学会最優秀賞 受賞。著書『子育てハッピーアドバイス 知っててよかった小児科の巻』(共著)など。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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