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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2024/06/19

#みんな知らない高齢者の世界

補聴器を装着するメリットや効果は?耳鼻科医が教える補聴器を購入する際のコツも紹介|みんな知らない高齢者の世界

取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー thumb_3.jpg

「補聴器をつけてみたけれど、うまく聞こえなかった」「なんだかうるさく感じてしまった」といった理由により、周囲の高齢者が補聴器の装着をやめてしまったことはありませんか。補聴器は調整が難しいため嫌厭されがちですが、認知症の予防や孤独の解消など、装着にはさまざまなメリットが存在します。

では、高齢者に合った補聴器を選ぶには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。耳鼻咽喉科の医師であり、『耳が遠くなると、認知症が近づく』著書の真鍋 恭弘先生に話を聞いてみました。

1.補聴器を装着する3つのメリット

ーー補聴器の装着には、どのようなメリットや効果があるのでしょうか。

補聴器の装着には、大きく3つのメリットが存在します。最大のメリットは、QOLが上がることです。今まで聞こえにくかった音がスムーズに聞こえるようになるため、コミュニケーション不足による孤独が解消されるケースは非常に多いといえます。これまで難しかった家族や友人との会話も、何のストレスもなく楽しめるようになるでしょう。

2つ目は、交通事故や転倒防止に役立つことです。難聴になると、後方から近づいてきた車の音が聞こえず、事故に巻き込まれるケースも多く見られます。補聴器を装着すれば、周囲の音がはっきりと聞こえるようになり、危険を回避できるようになります。

3つ目は、認知症の予防ができることです。難聴になると耳から脳へ伝達される情報量が極端に少なくなるため、脳が休眠状態となり、認知症を発症しやすくなってしまいます。補聴器の装着によって脳へ届く情報量が増えれば、認知症の発症を抑えることも期待できます。

2.補聴器を装着した方の反応は?

ーー実際に補聴器を装着した方の反応はいかがですか。

補聴器を装着することで、とても明るくなる方が多いと感じています。難聴は非常にストレスとなるため、補聴器によってストレスから解放されることで、気分がよくなるようです。難聴の方は、家族や友人と話ができず、自分だけが仲間外れのように感じています。周囲の方と楽しく話せるようになり、まるで生まれ変わったような気持ちになる方もいらっしゃいますね。

3.軽い難聴でも補聴器をつけるべき?

ーー主にどのような方に補聴器の装着をおすすめしたいですか。軽い難聴でも補聴器をつけるべきなのでしょうか。

難聴の度合いが軽い方であっても、聞き返しをする頻度が多い場合は、補聴器を装着することをおすすめします。相手の発言を聞き返すということは、それだけ必要な情報が抜け落ちているということです。耳鼻科に行って、一度検査をしてみるとよいでしょう。

なお、片耳だけが聞こえにくいからと、片耳にだけ補聴器を装着される方もいらっしゃいますが、片方だけの装着はあまりおすすめしません。特に、認知症予防のために補聴器を装着する場合は、両耳に装着しないと予防効果を得ることはできません。予算の問題により両耳分の購入が難しいケースもあるかもしれませんが、できるだけ両耳に装着することで、より効果を感じやすくなるでしょう。



4.初めて補聴器を購入する際の注意点

ーー初めて補聴器を購入する際の注意点を教えてください。

初めて補聴器を購入する際は、耳鼻科を受診したうえで、病院と連携している補聴器店に行くことがおすすめです。家電量販店や眼鏡店で補聴器が販売されているのを見かけた方も多いと思いますが、病院と提携していない販売店では、細かな調整が難しいケースがあります。また、病院を受診していないと医療費控除の対象になりません。

耳鼻科では聴力検査を実施したうえで、診療情報提供書と呼ばれる書類を作成するため、その書類を持って補聴器店に行けば、自分にぴったりと合ったものを作成できます。ご家族や周囲の方が補聴器を作ることになったら、まずは病院の受診を勧めていただければと思います。

また補聴器を選ぶ際には、充電式が便利です。補聴器は電池式が多いものの、補聴器の電池は非常に小さく交換しづらいうえに、早いと2日〜3日で電池切れになってしまいます。近年は充電式の補聴器が増えているため、さまざまなタイプで迷った際には、充電が可能かどうかに注目してみてください。

5.補聴器は購入後、時間をかけて音量調節を

ーーその他に、補聴器に関する注意点はありますか。

補聴器は眼鏡や杖とは異なり、購入したその日から快適に使えるものではないことを理解していただきたいと思います。「高価な補聴器を購入したがよく聞こえなかった」という経験をした方も多いかもしれませんが、それは補聴器がぴったりとフィットしていないためです。補聴器の購入後は3ヶ月ほどの時間をかけて、徐々に音量を調整していく必要があります。病院と連携している補聴器店では、細かな調整にも対応しています。もし、ご家族や周囲の方の補聴器の聞こえに問題がありそうな場合は、耳鼻科や、耳鼻科と連携した補聴器店で相談してみるとよいでしょう。

プロフィール

真鍋 恭弘(まなべ やすひろ)

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昭和36年、香川県生まれ。福井医科大学(現在の福井大学)医学部卒業。医学博士、耳鼻咽喉科専門医、補聴器適合判定医、めまい相談医、耳科手術暫定指導医。平成17年、日本耳鼻咽喉科臨床学会最優秀賞 受賞。著書『子育てハッピーアドバイス 知っててよかった小児科の巻』(共著)など。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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