介護職が爪切りを行える条件とは?正しいやり方も解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部介護職として働いていると、爪が伸びている利用者を見かけることがあります。伸びた爪は皮膚を傷つけやすく、ケガの原因となります。足の場合は重心のバランスに影響し、歩行を困難にする可能性があるため、日頃から爪のケアは欠かせません。
介護職が利用者の爪切りを行うためには、いくつかの条件を満たす必要があります。当記事では、介護職が爪切りを行える条件と爪切りの正しい方法、爪切りの選び方について解説します。
1.利用者に対する爪切りは違法?
介護職として働いていると、「この行為は医師や看護師の資格を持っていない自分でもできるのか?」と不安を感じる場面もあるでしょう。ここでは、利用者に対する爪切りが違法か否かについて解説します。
医師法第17条では、介護現場での業務に関して以下のような記載があります。
■医師法 第17条
では、爪切りは「医行為(医療行為)」にあたるのでしょうか。
「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」では、爪切りは原則として医療行為に該当しないという見解を示しています。そのため、介護職でも利用者の爪切りを行うことができます。
ただし、介護職が爪切りを行うためには下記3つの条件を満たす必要があります。
・爪そのものに異常がない
・爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がない
・糖尿病などの疾患に伴う専門的な管理が必要でない
以上3つの条件をすべて満たすと、介護職は利用者に対して爪切りや爪ヤスリが行えます。利用者に糖尿病などの疾患がないかを確認したうえで、爪やその周囲の状態をチェックし、爪切りを行いましょう。爪やその周囲の状態の判断が難しい場合は、医師や看護師に相談します。
また、重度の歯周病などがない場合に歯ブラシや綿棒などを使用し、歯や舌を清潔にしたり耳掃除をしたりすることも、医療行為にはあたらないため介護職でも行えます。ストーマ装具のパウチに溜まった排泄物を捨てる、自己導尿に必要なカテーテルを準備し体位の保持をする、市販器具を用いた浣腸なども可能です。
医師法第17条では、爪切りの条件や介護職でも行える行為について、以下のように記載されています。
■医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知) 別紙注1-1
(1)爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること
(2)重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒又は巻き綿子などを用いて、歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること
(3)耳垢を除去すること(耳垢塞栓の除去を除く)
(4)ストーマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること。(肌に接着したパウチの取り替えを除く。)
(5)自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと
(6)市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器(※)を用いて浣腸すること
※ 挿入部の長さが5から6センチメートル程度以内、グリセリン濃度50%、成人用の場合で40グラム程度以下、6歳から12歳未満の小児用の場合で20グラム程度以下、1歳から6歳未満の幼児用の場合で10グラム程度以下の容量のもの
2.介護における正しい爪切りのやり方
医師法で定められている条件を満たす利用者の爪切りは、医療行為にはあたらないため、介護職が行っても問題はありません。しかし、爪切りも刃物の一種であり、利用者に刃物をあてる行為であるため、正しく行わないとケガにつながる恐れがあります。
以下では、爪切りの準備から爪切り中の姿勢、爪の切り方まで詳しく解説します。
爪切りの準備・爪切り中の正しい姿勢
利用者の爪を切るにあたって準備するものは、爪切りと爪ヤスリです。この2つを準備したら、利用者にこれから爪を切ることを説明し、本人の了承を得ましょう。
高齢者の爪は厚くなっていたり、固くなっていたりするため、入浴後の爪が柔らかい状態で爪切りを行うのがおすすめです。入浴後の爪切りが難しい場合は、足浴や蒸しタオルで爪を柔らかくします。爪を切る際は、背もたれがある椅子やベッドに座ってもらうと利用者の体勢が安定し、爪を整えやすくなります。
・手の爪を切る際の正しい姿勢
まずは利用者の隣に座り、自分の爪を切るときのような姿勢になります。次に、利用者の片腕を自分の両腕で挟み、利用者の腕が動かないように固定しましょう。認知症などで体動がある利用者の場合は、爪切りの最中に動いてケガをしないよう注意が必要です。
対面の姿勢で爪を切ろうとすると、自分の爪を切るときの目線と反対になるため爪が切りにくく、失敗しやすくなります。
・足の爪を切る際の正しい姿勢
まずは、利用者の隣に膝をついてしゃがむか、低い椅子などを用意して座ります。次に、介助者の腿の上に利用者の膝から下を乗せます。そして、片腕を利用者の足の上側から回し、介助者の腕と腿で利用者の足を挟むようにして固定しましょう。
介助者の腿に利用者の足を乗せるときは、利用者の体が後ろに倒れないようゆっくりと持ち上げます。膝を伸ばせない利用者の場合は、膝は曲げたままで持ち上げましょう。車いすは前傾姿勢になると転落事故が起こる危険性があります。フットレストから足を下ろし、足裏を床につけた状態で爪切りを行いましょう。
爪の正しい切り方
爪と指の間の薄い皮膚に注意し、指先の皮膚を押し下げるようにして爪だけを切ります。一度で切ろうとすると爪にヒビが入りやすいため、少しずつ切るのがコツです。足の爪は手の爪よりも厚く割れやすいことを念頭に置いて、丁寧に爪を切りましょう。
深爪にならないよう、爪の白い部分は1~2mm程度残します。爪の角を残すことで、巻き爪防止になります。爪は指の丸みに沿って切るのではなく、四角(スクエアカット)にするイメージでまっすぐに切りましょう。最後に爪ヤスリを使い、角の尖った部分を軽く落とします。
変形した爪やもろい爪を無理に切ると、痛みを感じる可能性があります。足の爪は、痛みがあると歩くのが苦痛になり健康への影響も懸念されるため、爪切りでのカットが難しいと感じた場合は、爪ヤスリで手入れして形を整えるとよいでしょう。
3.介護で役立つ爪切りの選び方
介護の現場で利用者に対して爪切りを行う場合、爪切りについて知識を持つことが大切です。爪切りという道具に対する知識を持ち、適切な爪切りを行いましょう。
以下では、爪切りに関する基礎知識として、爪切りの構造と刃形状の種類・特徴について解説します。爪切りを選ぶ際の参考にしてください。
爪切りの構造の種類
爪切りは大きく分けて3種類あり、各爪切りの構造やメリットはそれぞれ以下の通りです。
●グリップ型
グリップ型は、市販の爪切りで最も多い構造です。グリップ型の爪切りは、てこの原理を使うため軽い力で切ることができます。入手しやすく、手の大きさに合わせてさまざまなサイズが選べます。一方で、爪にかかる負担が大きく、爪が割れたり二枚爪になったりする場合があります。また刃の開きが狭い商品が多く、分厚い爪が切りにくいため足の爪を切る際にはあまり向いていません。
●ニッパー型
ニッパー型の爪切りは、工具のニッパーと似た構造が特徴です。刃先が出ていて鋭利なため、巻き爪や固い爪、分厚い爪を切るのに適しています。爪への負担が小さく、切り口が比較的滑らかな一方、扱い方が難しく、切った爪の飛散を防止するカバーがない点には注意が必要です。
●ハサミ型
ハサミ型の爪切りは、赤ちゃん用の爪切りとしても販売されており、薄い爪でも負担を最小限にして切ることができます。刃先が丸く加工されていて安全性が高く、爪が弱い利用者にもおすすめです。
爪切りの刃形状の種類
爪切りの刃形状にも、さまざまな種類があります。爪切りの刃形状は4種類あり、それぞれの特徴は以下の通りです。
●曲線刃
曲線刃は刃先がカーブしていることが特徴で、グリップ型の構造とのセットが多い傾向です。指の丸みに沿ってラウンド型の爪にしやすい刃形状です。
●直線刃
直線刃は刃先が直線になっているため、爪を真っ直ぐに切ることができ、簡単にスクエア型の爪にできます。少しずつ切ったり、細かく切ったりしやすい点も特徴です。
●斜め刃
斜め刃は、直線刃のように刃が直線状になっていますが、刃の角度は斜めについています。先端部分で細かい作業ができるため、巻き爪の対処に向いているといわれています。
●凸刃
凸刃は、曲線刃と同様に刃先はカーブしていますが、カーブの向きが曲線刃とは反対になっていることが特徴です。凸刃は出っ張った部分で爪を少しずつ切り進められるため、失敗を防ぎやすい利点があります。また巻き爪で痛みがある場合でも、巻いている部分に触れずに爪の中央だけを切ることができます。
まとめ
爪とその周囲に異常がなく、糖尿病など疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合、介護職でも利用者の爪切りを行えます。介護現場で利用者の爪切りを行う際は、利用者の隣に座り、自分の爪を切るときの目線で行いましょう。また爪は少しずつ切り、スクエアカットに仕上げます。爪切りは構造も刃形状もさまざまなため、用途に合ったものを選ぶことがポイントです。
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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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