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仕事・スキル 介護士の常識 2023/06/18

不適切なケアとなる言葉遣い|4つの種類と回避するポイントも

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

介護現場で業務を行うにあたっては、利用者さんに配慮した言葉遣いを心がける必要があります。しかし、「不適切な言葉遣い」についての知識が足りていないと、悪意なく失礼な言葉を使用し、利用者さんやご家族に不快感を与える可能性も出てくるでしょう。

当記事では、介護の現場で注意すべき不適切なケアについての概要、不適切な言葉遣いの具体例、回避するためのポイントについて解説します。不適切な言葉遣いについての正しい知識を学び、利用者さんやご家族との信頼関係を深めたい介護職の方は、ぜひご一読ください。

1.不適切なケアとは?不適切な言葉遣いと高齢者虐待の関係

不適切なケアとは、介護職の方が利用者さんに対して行う、「正しいとは言い難いケア」のことを指します。不適切なケアは、意図的に行われた行為に限ったものではなく、「配慮が足りず無自覚に行ったこと」や、「良かれと思って行った行為」などについても該当する場合があります。

不適切なケアを行うと、利用者さんやご家族を不快にさせたり、心に傷を負わせたりすることになりかねません。また、不適切なケアは高齢者虐待につながる可能性もあるため注意が必要です。

なお、ここで言う高齢者虐待とは、「高齢者が他者から不適切な扱いを受け、権利を侵害されたり健康が損なわれたりする状態に置かれること」です。身体的虐待や介護の放棄はもちろんのこと、著しい暴言を吐く、拒絶的対応をとるなどの心理的外傷を与えるような言動も、高齢者虐待の一部として定義付けられています。

それを踏まえて考えれば、不適切な言葉遣いでケアを行うケースも、高齢者虐待として扱われる可能性は十分にあるでしょう。

(出典:厚生労働省「Ⅰ 高齢者虐待防止の基本」
(出典:e-Gov法令検索「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」

2.不適切な言葉遣い4つ

わたしたちが日常的に使っている言葉のなかには、たとえ悪意がなかったとしても、利用者さんの自尊心を傷つけるようなものが存在します。ここでは、介護の現場でうっかり使いがちな不適切な言葉について、具体例と不適切である理由を紹介していきます。

タメ口などのなれなれしい言葉遣い

介護の現場では、以下のような形で悪意なくタメ口(友達言葉)を使うケースが見られます。

・「おはよう」
・「そろそろ食事の時間だよ」
・「トイレのチェックをするね」


なかには、利用者さんに親しみを持ってもらうために、あえてタメ口や距離感の近い言い回しを使っている方もいるでしょう。しかし、タメ口を使われることを快く思わない利用者さんや「目上の人間には敬意を払うべきだ」と考える利用者さんは、決して少なくありません。利用者さんへのタメ口は、利用者さん本人だけでなく、ご家族が不快に感じるケースもあるので配慮が必要です。

タメ口の主な問題点は、以下の通りです。

・「年下は年上に敬語を使うのがマナーである」という考えの利用者さんは少なくない
・「自分の家族であり尊敬している親が年下の介護職にタメ口を使われている」という状況が、利用者さんのご家族にとって不愉快に感じられる


子ども扱いするような言葉遣い

子どもに話しかけるような言葉遣いや幼児言葉も、不適切なケアにあたる可能性があります。具体的には、以下のようなものです。

・「上手にできたね」
・「おいしいでちゅか」


子ども扱いするような言葉遣いが不適切なケアにあたる理由は、以下の通りです。

・言われた側が「下に見られている」と感じやすい
・利用者さんに「自分は世話をしてもらっている立場の低い人間」というイメージを与え、プライドを傷つけてしまう可能性がある


命令するような言葉遣い

利用者さんに命令するような言葉遣いも、避けたほうが良いでしょう。

・「早く食べて」
・「そっちへ行かないで」


命令するような言葉遣いを避けるべき理由は、以下の通りです。

・利用者さんを怖がらせる可能性がある
・利用者さんの自信を失わせる可能性がある


何かを頼みたい場合は、命令口調ではなく「〇〇できそうですか」といった具合に、尋ねるように声かけを行うのが良いでしょう。

高齢者には通じないような言葉遣い

専門用語や若者言葉などが、「高齢者に通じないような言葉遣い」に該当します。介護の現場で仕事をしていると、介護職ならではの専門用語を使う機会も多いでしょう。しかし専門用語は、一般的な利用者さんには理解できないケースがほとんどです。介護職同士での会話以外では、避けるようにしましょう。

また、インターネットやテレビで流行っている言葉や、若い人の間でだけ使われているような言葉も避けたほうが無難です。高齢者に通じにくい言葉遣いを避けるべき理由は、以下の通りです。

・言っていることが理解できず、困惑させてしまう可能性がある
・会話のなかに難しい言葉が混ざることで、不安感を与える可能性がある
・若者言葉には軽い印象があり、利用者さんやご家族が不快な思いをする可能性がある


3.不適切な言葉遣いを回避するポイント4つ

不適切な言葉は、十分に注意しているつもりでもつい使ってしまうことがあります。しかし、コミュニケーションのポイントをきちんと意識することで、不適切な言葉を回避することは可能です。ここでは、介護の現場で常に意識しておきたいコミュニケーションのポイントを4つ紹介します。

利用者さんを敬う気持ちを持って接する

常に利用者さんを敬う気持ちを持っていれば、不適切な言葉の使用頻度は減るでしょう。相手に敬意を払っていれば、プライドを傷つけるような言葉や、いい加減な言葉は出てこなくなるからです。

逆に、利用者さんへの敬意が足りないと、自分では丁寧な言葉を使っているつもりでも、無意識のうちに失礼なことを言ってしまう可能性があります。常に敬意を持って接するようにしましょう。

利用者さんを制限するスピーチロックに注意する

スピーチロックは「言葉の拘束」とも呼ばれており、言葉によって相手の行動を制限することを指します。具体的には、以下のような言葉です。

・「行っちゃダメ」
・「ちょっと待ってて」
・「やめてください」


スピーチロックを行うと、相手のプライドを傷つけたり、「人格を否定された」と感じさせたりするリスクがあります。行動を制限するような言葉はできる限り避け、「どうしましたか」と、利用者さんの行動理由を確認するような言葉をかけるようにしましょう。

利用者さんやご家族の気持ちに配慮する

介護を行う上では、利用者さんはもちろんそのご家族に対しても、不快にさせない言葉遣いをすることが大事です。

話しかけた利用者さん自身は気にしていなくても、利用者さんのご家族は「自分の家族に対して失礼な言葉を使っている」と不快に感じるかもしれません。また、失礼な言葉遣いが家族の尊厳を傷つけ、クレームにつながる可能性もあります。

利用者さんとご家族一人ひとりの気持ちを尊重して、丁寧に接するようにしましょう。

クッション言葉を適切に使う

介護の現場では、「クッション言葉」を積極的に用いるようにしましょう。クッション言葉とは、ダイレクトに伝えると傷つける可能性のある言葉を柔らかくするための言葉です。具体的には、以下のような言葉が該当します。

・お忙しいところ恐れ入りますが
・申し訳ありませんが
・大変お手数ですが


例えば、「〇〇してください」とだけ言うと、ぶっきらぼうな印象や厳しい印象、威圧感などを与えかねません。しかし、「お忙しいところ申し訳ありませんが、〇〇してもらえますか」と伝えられると、丁寧で柔らかな印象を受けます。厳しい印象や威圧感もなくなるため、快く引き受けてもらえるはずです。

クッション言葉を使って発言に優しい印象を持たせれば、利用者さんの安心感につながり、結果的に信頼関係の構築にもつながるでしょう。

まとめ

不適切なケアとは、介護職が行う「正しいとは言い難いケア」のことを指します。利用者さんを不快にさせたり、尊厳を傷つけたりする言葉を使用することは、悪意の有無に関係なく不適切なケアとして扱われる可能性があるでしょう。介護を行う上では、利用者さんやご家族を敬い、相手の気持ちに寄り添った言葉遣いを心がけてください。

「介護のみらいラボ」では、介護の現場で活躍する方に有益な情報を提供しています。介護に役立つ情報を得たい方は、ぜひ「介護のみらいラボ」を参考にしてください。

※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

介護の現場では丁寧な言葉遣い、敬語が基本です。敬語は利用者さんのことを尊重していることを言葉で伝えるものです。たとえ認知症があったとしても、人として尊重されているか否かはわかります。利用者さんを心から尊重して丁寧な言葉で話しかけ、話を聞くという姿勢を大切にする必要があります。
利用者さんの中には、敬語はかしこまった感じがする、よそよそしいん感じがするという方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的には敬語を使うように心がけましょう。
道灌山学園の創設者の高橋系吾先生がつくられた「その一言」という詩をご紹介します。

その一言で 励まされ  その一言で 夢を持ち  その一言で 腹が立ち
その一言で がっかりし  その一言で 泣かされる
ほんのわずかな 一言が  不思議に 大きな力持つ
ほんの一寸の 一言で

言葉は私たちを勇気づけてくれたり、夢を持たせてくれたりします。しかし、心もとない言葉は私たちの心をずたずたにします。昔から言葉は言霊といって、言葉遣いは人の幸不幸を左右するといわれてきました。利用者さんを思いやる気持ちを持って、自分が言われて嫌だと感じる言葉は使わないように気をつけたいものです。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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