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学ぶ やさしい介護法律講座 2021/05/25

#判例#残業時間#中沢信介#介護の法律#介護施設#休憩時間

第11回 「休憩時間って労働時間なの?」

文:中沢信介 弁護士 法律講座11。休憩時間は労働時間?.jpg

こんにちは。
弁護士の中沢信介です。
今回は介護職にも関係のある休憩時間(仮眠時間)に関する判例をみていきたいと思います。

休憩時間に該当するか否かで介護職も残業代が増える?

中沢弁護士 今回は第8回第9回に関連した休憩時間(仮眠時間)についての判例を勉強したいと思います。

A奈美さん 第8回第9回は未払い賃金(残業代)の話ですよね。なぜ休憩時間の判例が「関連」になるのですか。

中沢弁護士 いい質問ですね。残業代というのはどういうときに支払われるか覚えていますか?

A奈美さん 法定労働時間という1日に8時間、週に40時間という制限時間を超えた分の労働に発生するんだったような気が......。

中沢弁護士 そうなんです。ですので休憩する時間に休憩できていない(つまり就業時間と認定される)と拘束時間9時間の場合(例えば9時から18時)、その拘束時間全部を働いたということになり、1時間分の残業代(未払い賃金 17時から18時の分)が発生することになるんです。

A奈美さん なるほど。

中沢弁護士 基本的に裁判で争う場合休憩時間か否かという点が単独で問題になることはあまりなく、今言ったように残業代の問題の争点の一つとして争われることがほとんどです。

A奈美さん いわれてみればそうなるのもわかりますね。裁判所に私の休憩時間は正当なものなのかそれだけ判断をしてもらうっていうのは現実的でないですものね。

ビルの管理人の仮眠時間は休憩時間?

中沢弁護士 前置きが長くなりましたが、今回の判例は、平成14年2月28日で最高裁判所において判決となった有名なものです。
この事件は介護の職場というわけではないのですが、介護の現場でも休憩時間にしっかり休みが取れていない場合(例えば電話が鳴ったら休憩中でも出なければならない場合)を考えるのに非常に有益ですのでお話をしたいと思います。

A奈美さん しっかり休めないって職員が少ない事業所だと結構あったりしますね。

中沢弁護士 それでは今回の判例の中身をみていきます。Xさんはビルなどの管理を行うY社の従業員として雇用されていました。

A奈美さん ビルの管理人という感じでしょうか。

中沢弁護士 そうですね。Xさんは24時間勤務と言って、(時間は23時間ですが)10時30分から翌日9時30分まで連続して勤務を行うシフトを月に数回こなしていました。この勤務を行う場合1時間ないし2時間の休憩時間が設けられており、その他に連続して7時間ないし9時間の仮眠時間が与えられました。

警報の対応だけでも労働時間になるのか?

A奈美さん 問題となったのは仮眠時間の方ですかね。

中沢弁護士 その通りです。Xさんは、仮眠室において睡眠をとってよいことになっていたのですが、一方で、警報が鳴るなどした場合は直ちに所定の作業を行うこととされていました。

A奈美さん 警報が鳴った場合に対応すること以外は特に何も求められていないんですか。

中沢弁護士 そうとまでは言えませんでした。勤務中ということもあり、当然のように飲酒も禁止されていますし、外出も禁止されています。

A奈美さん お酒が禁じられているのは当たり前な気がしますが、外出が禁止されているのは私たちがとる一般的に取得する昼間の休憩時間と結構違いますね。

中沢弁護士 また警報がなった場合はビル内の監視室に移動し、警報の種類を確認し、警報の原因が存在する場所に赴き、警報の原因を除去する作業を行うなどして対応をし、また、管理人が水漏れや蛍光灯の不点灯の発見を連絡したり、工事業者が打ち合せをするために、仮眠室に電話をしてきたような場合も、現場に行って補修をする等の作業を行わなければなりませんでした。

A奈美さん 実際にはそのような作業がどのくらいあったのですか。

中沢弁護士 実は6か月間で1回以上あることは認定されていますが、それ以上は正確には把握されていません。というのは作業が10分程度で完了した場合には、Xさんが報告をすることを省略したりしていたので正確な数が分からないのです。

労働者は労働からの解放が保証されていたのか

A奈美さん 結局その仮眠時間は休憩時間とされたのですか。それとも労働時間とされたのですか。

中沢弁護士 Xさんが不活動仮眠時間においてY社の指揮命令下に置かれていたものと評価できるかを客観的に判断されるとしています。

A奈美さん また難しい感じですね。

中沢弁護士 言葉だけみるとそうみえますね。とはいえそこまで難しくはないんです。
裁判所としては実際に作業に従事するのが警報や電話が鳴った時に限られるとしても、実際に鳴った場合に対応をした実績などがあることを考慮すると、労働からの解放(指揮命令下に置かれていない状況)にあったとはいえないとして、仮眠時間全体を労働時間であると認定しています。

A奈美さん そこまで含めて労働時間はいるのですね。

中沢弁護士 そうでなんです。結構しっかりと休憩時間というものが保証されていることはご理解いただけたのではないかと思います。

A奈美さん 確かに働く側としては安心できる判例ですね。



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プロフィール

中沢信介

弁護士

中沢信介さん

弁護士。1984年生まれ。2013年弁護士登録。 明治大学経営学部会計学科卒業後に弁護士になることを決意。明治大学法科大学院修了。法教育にも力を入れており年間十数件程度の小・中学校や高校を訪問している。 多数の医療関係の法人の顧問も務め、病院の第三者委員会の委員としての経験も有している。
所属
セブンライツ法律事務所 https://sevenlights-law.com/
東京弁護士会 https://www.toben.or.jp/

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