高齢者の脳トレにホワイトボードが適している理由は? 脳トレ方法も!
構成・文/介護のみらいラボ編集部
高齢者の脳トレにホワイトボードを利用するメリットから、ボードを使用した脳トレと効果を楽しむポイント・活用方法までを解説します。ホワイトボードの選び方も紹介するため、高齢者の脳トレを充実したものにしたい介護職の人はぜひ参考にしてください。

高齢者施設で欠かせないのが、レク(レクリエーション)の時間です。しかし、介護職員として働く人にとって、「毎日行っても飽きない」「全員参加できる」レク内容の考案を負担に思う人は珍しくありません。そのような中で注目が集まっているレクが、ホワイトボードを使用した脳トレです。
当記事では、高齢者施設で人気のホワイトボードを使用する脳トレ5選と成功させるポイント、ホワイトボードの選び方を解説します。脳トレ以外にも活用できるホワイトボードの使い方も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
- 目次
- 1.ホワイトボードを使った脳トレが高齢者施設で人気の理由
- 準備の手間が少ない
- 利用者が集まって取り組みやすい
- 利用者が理解しやすい
- 座ったままできる脳トレを実施しやすい
- 2.【高齢者向け】ホワイトボードを使った脳トレ5選
- しりとり
- クイズ
- 言葉あそび
- 数字あそび
- 連想ゲーム
- 3.ホワイトボードを使った脳トレを成功させるポイント
- 話し方を工夫する
- 参加しなくてもその場にいてもらう
- ときどき個人に問いかける
- 音や装飾で盛り上げる
- 4.高齢者の脳トレに使うホワイトボードの選び方
- 大きさ
- 素材
- 両面使えるかどうか
- 5.脳トレ以外にも!高齢者向け施設におけるホワイトボード活用法
- 他のレク・イベントなどで使える
- 掲示板・パーテーションとして使える
- 入居者・家族の説明会などで使える
- まとめ
1.ホワイトボードを使った脳トレが高齢者施設で人気の理由
レクは多くの利用者にとって大切な楽しみの1つであり、高齢者施設で欠かせません。近年では、レクの中でもホワイトボードを使った脳トレを取り入れる施設が多く、スタッフ・利用者の双方から人気が高い傾向です。
ここでは、ホワイトボードを使用した脳トレが高齢者施設で人気を高めている4つの理由を解説します。
準備の手間が少ない
レクの準備にかかる時間と手間が少なくて済むことが、脳トレがスタッフから人気が高い理由の1つです。
ホワイトボードを使った脳トレは、ホワイトボード・マーカー・イレーサーがあればすぐにレクを始めることができます。そのため、普段はホワイトボードを部屋の隅に置いておき、時間になったら場所を異動させるだけでレクの準備がほぼ整います。また、レクに使用する道具は、トレイなどに入れてホワイトボードとセットで置いておけるため、場所を取りません。
レクの内容自体もさほど複雑でないうえに、使い回しても飽きにくく、スタッフの負担が少ないことも特徴です。
利用者が集まって取り組みやすい
ホワイトボードを使った脳トレは、利用者が複数人で集まり1つの課題に取り組む種目が多く、賑わいや一体感を生み出しやすいことでも人気があります。また、レクの説明や進行はホワイトボードを中心に行うため、参加人数が多くても少ないスタッフで相手ができる点も人気の理由です。
また、MCI(軽度認知障害)の緩和因子として、運動・対人交流・ゲームなどが挙げられます
(出典:厚生労働省「認知症ケア法ー認知症の理解」)
そのため、利用者が互いにコミュニケーションを取りながらゲーム感覚で行うホワイトボードの脳トレは、認知症予防・ケア目的にも効果が期待できるレクといえるでしょう。
利用者が理解しやすい
ホワイトボードを使った脳トレは、スタッフがレクの内容を説明しやすく、利用者が内容を理解しやすいことが人気の理由です。
ホワイトボードに大きくはっきりと字や絵を描くことで、細かい字が見づらくなった人・耳が聞こえづらくなった人にも、レクのルールを把握しやすくなります。また、一度聞いただけでは理解しにくい人も自分でボードを見て確認できるため、「周りに遠慮して質問できないままゲームが進行する」恐れも避けることが可能です。
座ったままできる脳トレを実施しやすい
ホワイトボードを使った脳トレは座ったままできる種目が多く、幅広い利用者が楽しめる点も人気の理由となります。介護度の軽重にかかわらず多くの人が参加できるため、仲間外れとなるさみしさを感じさせずに済むうえ、利用者同士のコミュニケーションがより活発になる傾向です。
また、体操のように身体を大きく動かしたり立ったりする必要がないため転倒リスクが低く、怪我の可能性を下げられます。
2.【高齢者向け】ホワイトボードを使った脳トレ5選
脳トレは、ホワイトボードなどがあれば手軽に実施できるうえ、利用者からの人気も高いため、気軽に取り入れやすいレクです。しかし、脳トレの種目は多岐にわたることもあり、何から試せばよいか分からない人もいるでしょう。
ここでは、簡単に実施できる脳トレを、5つのタイプに分けて紹介します。
しりとり
しりとりは、ほとんどの利用者が一度は参加したことがあるため、特にルール説明をしなくても全員が気軽に参加できる脳トレです。
【普通のしりとり】
前の人が言った単語の、最後の一文字から始まる言葉をつなげます。広く親しまれている分、ローカルルールに慣れている人も珍しくありません。小書き文字(ゃゅょ)や伸ばし棒(ー)の扱いをどうするかは最初に決めましょう。
【漢字しりとり】
「日本」→「本棚」など、熟語の最後の一文字から始まる言葉をつなげます。ゲームが長く続いた場合は、同じ読みの漢字に変換してもよい」などのルールを設けるとよいでしょう。
【絵しりとり】
ホワイトボードに描いた絵を推理しながら言葉をつなげるゲームです。可能であれば利用者本人に、難しい場合はスタッフが代わりに描きます。
しりとりの際は、利用者が前に何が出たか覚えていない・よく聞き取れなかった場合に備えて、ホワイトボードに既出の単語を書き出すとよいでしょう。また、「食べものの名前のみ」「4文字まで」などの縛りを設けることでも、脳トレ効果が期待できます。
クイズ
簡単に解けるレベルのクイズは楽しみながら挑戦できるうえ、正解すると達成感も得られます。
【都道府県クイズ】
スタッフがホワイトボードに都道府県の形やキーワードなどを書き、どこを指しているか当てるゲームです。都道府県名が出た後は、連想ゲームに派生させることもできます。 ●「都道府県名クイズ」問題集はこちら
【歌当てクイズ】
ホワイトボードに歌詞の中から抜き出したキーワードを書き、曲名を当ててもらうゲームです。イントロクイズなどにしてもよいでしょう。正解が出たら全員で合唱すると、レクに参加している実感を持ってもらえます。
【穴埋めクイズ】
百人一首や四字熟語、俳句、川柳などの一部を伏せ字にして、何が書かれていたかを当ててもらうゲームです。惜しい・面白い解答に対してもポイントをあげるようにすると、多くの人が楽しめます。 ●「ことわざ穴埋めクイズ」問題集はこちら
どのクイズも、利用者のほとんどが知っている・答えられる題材を選ぶことが大切です。
●関連記事:高齢者向けクイズで人気の5大ジャンルと問題例
言葉あそび
言葉あそびに使用する文字をマグネットシートで作成すると、都度書き出す手間を省けます。
【早口言葉】
多少言いにくい言葉で構成された文を、早口で音読してもらって正確さを競うゲームです。口やのど周辺を鍛えられるため、呼吸や嚥下機能への好影響も期待できます。
【文字消しゲーム】
五十音(「を」を除く)から単語に使用された文字を消し、より多くの文字を使い切ることを競うゲームです。1つの文字は1度しか使用できません。伸ばし棒・濁点・半濁点は複数回使用できるようにすると、解答しやすくなります。
【アナグラム】
ランダムに並べられた文字を入れ替えて、隠された単語を見つけるゲームです。ルールに慣れるまでは少ない文字数から始め、上達したら不要な文字を加えるなどするとよいでしょう。
利用者全員が均等に参加できるよう、指名する順番を考慮する・解答者のレベルに合わせて問題を調整するなどの工夫が大切です。
数字あそび
数字あそび用のカードは、マグネットシートで作成すると繰り返し使用できます。複数の色を用意するとよいでしょう。
【虫食い計算】
計算式の一部を伏せ字にして、当てはまる数字を答えてもらうゲームです。計算は得手不得手が分かれやすいため、解答者が偏らないよう順に当てる・ヒントを出すなど工夫しましょう。 ●「ことわざ穴埋めクイズ」問題集はこちら
【規則探し】
規則性のある数列の一部を伏せ字にして、当てはまる数字を答えてもらうゲームです。例えば、「1・3・?・7・9」であれば、答えは「5」になります。足し算や引き算など、単純で分かりやすい問題を選びましょう。
【サイコロを使ったゲーム】
振ったサイコロの目と合致する数字のカードを取り、すべてのカードがなくなったチームの勝利となるゲームです。サイコロを2つ以上使用すると、足し算などの計算に取り組むこともできます。
数字あそびでは、利用者全員が参加できるように計算能力に合わせて難易度を調整することが大切です。
連想ゲーム
連想ゲームは答えやヒントを変化させれば、ほぼ無限に問題を作ることができます。
【「◯◯のつく□□は?」ゲーム】
「『あ』のつく『花』は?」など、カテゴリーの中で指定された頭文字がつく単語や名称を答えるゲームです。◯◯や□□の中身を変更するだけでよく、ネタ切れやマンネリ化を防ぐことができます。
【「◯◯な□□と言えば何でしょう?」ゲーム】
「『黄色』な『食べもの』と言えば何でしょう?」など、カテゴリーの中で指定された形容詞に当てはまる単語や名称を答えるゲームです。個人の主観が入りにくいテーマを選ぶと、多くの人が楽しめます。
【キーワードから連想ゲーム】
時間経過に応じて書き出される複数のキーワードから、正解を導き出すゲームです。例えば、答えがイルカの場合、「動物」→「頭がよい」→「ショーをする」→「水族館にいる」などのヒントを出します。
他に「りんご」→「赤い」→「紅葉」など、連想できる言葉を順につなげるタイプの連想ゲームも、世代や知識を超えて遊べることで人気です。
3.ホワイトボードを使った脳トレを成功させるポイント
ホワイトボードを使った脳トレは手軽なため、すぐにでも実践したい人は多いでしょう。ただし、高齢者施設の利用者に喜ばれ、積極的に参加してもらうためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
ここでは、ホワイトボードを使った脳トレを成功に導くためのコツを3つ解説します。
話し方を工夫する
ホワイトボードを使った脳トレでは、参加者全員が内容を理解できるよう工夫することが重要です。
ホワイトボードの使用時はスタッフと参加者の距離が開くため、通常の話し方では声が届きにくくなる・言葉が聞き取りづらくなるケースが少なくありません。後方に座る利用者にも伝わるよう、大きな声で滑舌よく話しながら書く練習をしましょう。
また、難易度が低いゲームから始める場合は、参加者に「子ども扱いされた」「馬鹿にされた」と感じさせない配慮も重要です。相手が大人であることを意識して言葉を選び、自尊心を傷つけないよう敬意を持って接しましょう。
参加しなくてもその場にいてもらう
レクには利用者全員の参加が望ましいものの、中には「参加したくない」人もいます。集団でのレクに参加したくない人に対し、無理強いは厳禁です。
「意欲はあるが心身機能の不都合で参加できない」人の場合、皆が楽しく過ごしている場の雰囲気だけでも味わいたいことは珍しくありません。脳トレ自体に参加しなくても、同じ時間と空間を共有できるようにしましょう。
「個別のレクに変更する」「同じ場でレクの輪に入れる」など、本人の意思を尊重した対応が大切です。どちらの場合にも、利用者へ「仲間外れにされた」と感じさせない配慮が重要です。
ときどき個人に問いかける
答えの数が限られるクイズ系ゲームの注意点として、積極的に発言する人や頭の回転が速い人に解答数が偏り、不公平感が生まれやすい点が挙げられます。
引っ込み思案だったり、周囲の思考速度に追いつけなかったりして取り残される人を出さないためには、進行役が解答者を指名する方法が有効です。また、参加者を複数のグループに分け、先頭から順に答えてもらう進め方もあります。
参加者全員が一度は発言できるよう問題の種類と難易度を調整し、必要ならヒントを出す準備をしましょう。正答が出なくても「○○さんはどうですか?」など、個別に認識して声をかけるだけでも利用者の満足感を高めることができます。
音や装飾で盛り上げる
参加者が問題に正解したら、打楽器やパフパフラッパなどで効果音をつけると、盛り上がりやすい傾向です。また、レク中に音楽をかければ、ホワイトボードに記入している間を持たせることもできます。
同時に、ホワイトボードに簡単な装飾を施す、ペンやマグネットに使用する色数を増やすなどの工夫もおすすめです。ただし、やりすぎると騒音に感じられて苦情が出たり目がチカチカして読みにくくなったりするため、程よく加減しましょう。
●関連記事:高齢者が楽しめるゲームとレクを盛り上げるコツ
4.高齢者の脳トレに使うホワイトボードの選び方
ホワイトボードを選ぶ際は、使用する施設の状況に合ったものを選ぶことが大切です。しかし、初めてホワイトボードを購入する場合、どのような商品を選べばよいか迷う人は少なくありません。
高齢者施設で使用する場合、異動させやすいキャスターつきのホワイトボード、または壁かけ型の大型ホワイトボードが便利です。さらに、以下で紹介する3つのポイントを基準に選ぶとよいでしょう。
大きさ
高齢者施設のレクで使用する場合、大きな文字ではっきりと書く必要があることから、ホワイトボードもできるだけ大きな商品にすることをおすすめします。ただし、大きなホワイトボードの場合、保管場所も広めに確保しなければなりません。
保管場所に加えて、レクを行う場所・移動経路でどの程度の空間を必要とするかの確認も重要です。特にキャスターつきの場合は、横だけでなく前後の幅もチェックしましょう。
素材
ホワイトボードの素材は、スチール製とホーロー製の2種類に大別されます。スチール製は多少耐久力が劣るものの、比較的安価で磁石に対応しており、軽量なことが特徴です。一方、ホーロー製は多少高価となり重量が増す反面、書き味がよく消しやすい点にメリットがあります。ただし、ホーロー製のホワイトボードは、商品によっては磁石に対応していません。
スチール製・ホーロー製ともにキャスターつき・壁かけ型の双方があるため、予算と扱いやすさで選択するとよいでしょう。
両面使えるかどうか
ホワイトボードが両面タイプか片面タイプかも、チェックのポイントです。片面タイプのほうが安価なものの、使用できる面積が少なくなります。両面タイプであれば、裏面にクイズの答えを書いておいたり、次のプログラムの準備を済ませておいたりすることが可能です。
また、ホワイトボードとしては片面だけでも、裏が掲示板仕様になっており、ピンで書類やお知らせを貼れるタイプの商品もあります。
5.脳トレ以外にも!高齢者向け施設におけるホワイトボード活用法
ホワイトボードは使用場所・保管場所を広く取ることから、導入を迷う人もいるでしょう。ホワイトボードは脳トレのレク以外にもさまざまな場面で活用できるため、施設に1つあると非常に便利な商品です。
ここでは、高齢者向け施設で脳トレ以外にホワイトボードを活用する方法を解説します。
他のレク・イベントなどで使える
ホワイトボードが活躍する場面は、脳トレだけではありません。下記のようなレクやイベント時にも、さまざまな使い方が可能です。
●合唱曲の歌詞を掲載
●ビンゴゲーム
●イベント時の装飾
●事故防止など安全対策のレク
ビンゴゲームで当たりの数字を書き出しておけば、利用者がゆっくりと数字を確認することができます。合唱曲の歌詞や安全対策のレクでは、ホワイトボードに書き出す以外にプリントや写真などを貼り出す方法もおすすめです。
●関連記事:座ってできるレクリエーション15選!盛り上がるポイントも
掲示板・パーテーションとして使える
ホワイトボードの置き場所によっては、不使用時に掲示板やパーテーションとして活用することができます。磁石に対応しているホワイトボードであれば、予定表やお知らせを貼ったり剥がしたりすることも容易です。
大きめのホワイトボードなら、簡易のパーテーションとして使用することもできます。また、キャスターつきの商品なら、急ぎの告知事項がある場合に目立つ場所へ移動させやすい点も便利です。
入居者・家族の説明会などで使える
入居者や家族への説明会では、複数の参加者へ同時に対応するケースが少なくありません。口頭のみで手元のパンフレット内容を説明するよりも、ホワイトボードを使用したほうが的確に伝えることができます。重要項目はホワイトボードに書き出すなり、スクリーン代わりに映し出すなりして、直接ポインターで指し示したほうが分かりやすいでしょう。
また、移動が容易なキャスターつきであれば、施設内で迷いやすい場所へ設置して案内板として使用することもできます。
まとめ
ホワイトボードを使用する脳トレは、準備の手間が少なく飽きにくい上に、利用者からも人気の高いレクです。話し方を工夫したり取り残される人が出たりしないよう気を配ることで、より多くの利用者に楽しんでもらえるでしょう。
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