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仕事・スキル 介護士の常識 2024/01/19

要支援2とは?受けられるサービスや要介護1との違いがまるわかり

文/長谷部宏依(介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー) thumb2.jpg

「家族が介護保険の申請をしたら要支援2と認定された」
「要支援2は要介護1とは何が違うの?」
「要支援2はどのような介護サービスが使えるの?」

みなさんは仕事をするなかで、このような声を聞いたことがありませんか? 介護保険の認定には、要支援1〜2、要介護1〜5があります。そのうち要支援2は2番目に軽い認定です。要支援2の身体状況を簡単に説明すると、「基本的に身の回りのことは1人でできるものの、一部介助が必要な状態」ということになります。

この記事では、要支援2の状態やほかの介護度との違い、利用できる介護サービスについて紹介していきます。

1.要支援2とは?どんな状態?

先に紹介したように、要支援2とは、介護が必要な状態ではないものの、日常生活において部分的に支援が必要な状態です。

また、要支援2は適切に介護サービスを利用することで、これ以上身体の状況が悪化しないように予防していく段階でもあります。

ここでは、要支援1や要介護1との違いについて説明していきます。

要支援1と要支援2の違い

要支援は「要支援1」と「要支援2」に分かれています。要支援の状態にある人は要介護状態に移行しないように、適切な介護サービスを利用して、身体機能の維持・向上をはかる必要があります。

要支援1と要支援2の違いは以下の通りです。

要支援1 ・食事や排泄はほとんど1人でできる
・起き上がりや立ち上がりにふらつきが見られる場合がある
・家事を行う際、一部動作に見守りや手助けが必要
要支援2 ・食事や排泄はほとんど1人でできる
・起き上がりや立ち上がりにふらつきが見られる
・歩行状態が不安定なことが多い
・家事や入浴の際に一定の手助けが必要

要支援2は要支援1と比べると筋力が低下しており、動作のふらつきや不安定さが見られます。そのため、要支援2では生活習慣の見直しや身体機能を維持するための運動などを行い、介護予防に取り組むことが大事です。

要支援2と要介護1の違い

要介護1は要介護の5段階のなかでいちばん軽い段階です。しかし、要支援2と比べると、身体の機能低下や認知機能の低下が見られる場合もあります。

要支援2と要介護1の違いは以下の通りです。

要支援2 ・食事や排泄はほとんど1人でできる
・起き上がりや立ち上がりにふらつきが見られる
・歩行状態が不安定なことが多い
・家事や入浴の際に一定の手助けが必要
要介護1 ・排泄や入浴などに一部介助が必要
・起き上がりや立ち上がりが不安定
・歩行に一部介助が必要
・認知機能低下が見られる場合がある

要支援2と要介護1を比較した場合、まず身体機能の違いがあります。要支援2は身体を動かすときにふらつきや不安定さはありますが、一部介助や見守り程度で済むことがほとんどです。また、食事や排泄は1人で行えます。

一方、要介護1は足の筋力が落ちている場合が多く、立ち上がりや歩行には一部介助が必要となります。排泄や入浴の際にも見守りや介助が必要です。

また、思考力の低下が見られ、日常生活の意思決定に支援が必要となるケースもあります。主治医から「認知症」と診断されている場合は、要介護1以上に認定されるのが一般的です。

要支援2は要介護1になる一歩手前のため、日常生活でのリスクを最小限に抑えつつ、要介護度が進まないようにサポートする必要があります。

2.要支援2と認定されるには?

要支援2の認定を受けるには、まず市区町村の介護保険窓口で要介護認定の申請を行います。申請は、ご家族や地域包括支援センターが代理で行うことも可能です。申請が受理されたら、本人の状態を確認するために認定調査員が自宅を訪問し、認定調査が実施されます。

その後、認定調査の結果をもとにコンピュータが一次判定を出しますが、要介護度を認定する基準の1つに「要介護認定基準時間」 があります。「要介護認定基準時間」というのは、介護に必要な時間を定めたもので、これによって「要支援1〜2」「要介護1〜5」または「自立」の認定が出されます。

要支援2の要介護認定基準時間は「32分以上50分未満」で要介護1とまったく同じ基準時間ですが、前述したように状態が同じなわけではありません。そのため、主治医が作成した「意見書」の情報なども参考にしながら、最終的な要介護度を決めることになります。

要支援2は介護が必要な状態ではありませんが、要介護1になると日常生活の基本的な動作にも介護が必要になります。また、認知症がある場合や、半年以内に急激に体調が悪化する可能性がある場合は、要介護1になる可能性が高いでしょう。

そうした点を踏まえた上で、日常生活の一部に支援が必要と認められれば、要支援2と認定されます。

3.要支援2で受けられるサービス例

要支援2になると「介護予防サービス」や「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下総合事業)が利用できます。

利用できるサービスは以下のようになります。

訪問型 訪問型サービス(※)
介護予防訪問入浴介護
介護予防訪問リハビリテーション
介護予防訪問看護
介護予防居宅療養管理指導
通所型 通所型サービス(※)
介護予防通所リハビリテーション(デイケア)
介護予防認知症対応型通所介護
短期宿泊 介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)
介護予防短期入所療養介護(医療系ショートステイ)
入所 介護予防特定施設入居者生活介護
介護予防認知症対応型共同生活介護(要支援2~利用可能)
その他 介護予防福祉用具貸与
介護予防住宅改修費

※市区町村による事業のため、さまざまな呼び方があります。

要支援2の場合、こうした介護予防サービスを積極的に利用して、症状が悪化しないように努めることが大事です。

なお、要支援2は基本的に介護を必要としない状態ですが、1人にしておくのは不安という場合もあります。以下は、筆者がケアマネジャーとして担当していた利用者さんの話です。

あるとき、1人の利用者さんのご家族から「可能なら旅行に行きたいのだけれど、利用者さんを1人にしてしまうのは心配」との相談がありました。その方は、普段通所型サービスを利用していたのですが、ほかによい方法があれば知りたいというのです。そこで、ご家族には介護予防短期入所生活介護の利用をおすすめし、利用者さんがショートステイを利用できるように手配することにしました。その後、ご家族は安心して旅行に行かれたようです。

このように、区分支給限度基準額(その人が利用できる介護サービスの上限)を超過しなければ、複数のサービスを組み合わせて利用できることも覚えておきましょう。

4.ヘルパー・デイサービスの利用回数

以前は、要支援の人がヘルパーやデイサービスを利用する際、区分支給限度基準額を超えなければ自分が希望する回数を利用できました。しかし、2017年4月から開始された総合事業によって、ヘルパーやデイサービスは市区町村が管理することになり、それぞれの自治体が利用回数を決めています。

ヘルパーの利用回数

多くの市区町村は以下のような回数を定めています。

週1回程度 要支援1、要支援2
週2回程度 要支援1、要支援2
週2回を超える程度(最大3回) 要支援2

「週2回を超える程度」については、要支援2だけが利用可能です。また、区分支給限度基準額を超える場合に、ヘルパーの利用を制限されるケースもあります(詳しくは、「要支援2でかかる費用の例」の項をご覧ください)。

例えば、要支援2の人が週1回のヘルパーの利用計画を立てていた場合、月によっては1か月5回の利用となることがありますが、その際は5回目を休みにして、4回の利用に抑えるのが一般的です。

サービスの利用時間は制限がありませんが、おおよそ1回1時間程度に設定されています。

参照:福岡市 介護予防・日常生活支援総合事業 介護予防ケアマネジメントマニュアル

デイサービスの利用回数

デイサービスも要支援の場合は回数に制限が設けられています。

週1回程度 要支援1
週2回程度 要支援2

もちろん、要支援2の人でも週1回の利用回数にすることは可能です。その分、費用は安くなります。

デイサービスもヘルパーと同様で、要支援2の人が週2回の利用計画を立てていた場合、月によっては1か月9回の利用となることがあります。その際には、9回目はお休みにして8回の利用に調整することが多いです(詳しくは、「要支援2でかかる費用の例」の項をご覧ください)。

なお、サービスの利用時間には制限がなく、半日や1日など事業所によって異なります。

参照:福岡市 介護予防・日常生活支援総合事業 介護予防ケアマネジメントマニュアル

5.要支援2でレンタルできるもの

要支援2の認定を受けると、介護保険「介護予防福祉用具貸与」が利用できます。要支援2で利用できるのは以下の福祉用具です。

  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行器
  • 歩行補助つえ

ただし、認定調査の結果やケアマネジメント的な判断、医師の判断などで利用が認められた場合は、要支援2でもベッドや車いすなどをレンタルできる場合があります。

6.要支援2でかかる費用の例

要支援2の人が介護サービスを利用した場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。利用できる上限である区分支給限度基準額とあわせて説明していきます。

要支援2の区分支給限度基準額

要介護認定を受ければ、際限なく介護サービスが利用できるわけではありません。要介護ごとに利用できる上限(区分支給限度基準額)が決められており、その範囲内であれば介護保険の補助があります。

要介護状態区分 支給限度額
要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

(1単位10円)

要支援2の場合は、1か月で105,310円の介護サービスが利用できます。つまり、この範囲内であれば自費負担は発生しません。

要支援2でヘルパーを利用する場合

以下では、要支援2でヘルパーを利用する場合の費用を説明します。要支援2は1週間に1〜3回利用でき、それぞれ費用も異なります。

週1回程度 11,760円/月
週2回程度 23,490円/月
週2回を超える程度 37,270円/月

(1単位10円)

利用料金はすべて月額で、この金額からそれぞれに応じた負担割合(1〜3割)を支払うことになります。

上の表からわかるように、要支援2の人が週2回ヘルパーを利用した場合、1か月あたりの費用は23,490円です。区分支給限度基準額は105,310円のため、残りは8万円程度になります。

ほかの介護サービスも併用して使う場合は、区分支給限度基準額を超過しないように、利用回数を調整するのが一般的です。

要支援2でデイサービスを利用する場合

以下は、要支援2でデイサービスを利用する場合の費用となります。要支援2は週2回まで利用可能です。

週1回程度 16,720円/月
週2回程度 34,280円/月

(1単位10円)

デイサービスの利用料金もヘルパーと同様月額で、この金額から指定されている負担割合(1〜3割)を支払います。

例えば、週2回デイサービスを利用したい場合は、月額34,280円かかります。区分支給限度基準額は105,310円のため、残りは7万円程度です。

ヘルパーと同時にデイサービスを利用しても区分支給限度基準額は超過しませんが、ほかの介護サービスと併用する場合は、利用するサービスや回数を調整する必要があるでしょう。

7.要支援2で1人暮らしはできる?

要支援2は、立ち上がりや歩行時などに一部支援が必要な状態です。そのため、1人暮らしをする場合はご家族が不安に思うかもしれません。しかし、要支援2でも、介護サービスを上手に利用すれば1人暮らしは十分可能です。

自宅に段差が多く手すりがないのであれば、介護予防住宅改修費を利用してリフォームができます。入浴や家事で困ることがあれば、デイサービスに行ったりヘルパーに支援を依頼したりすることも可能です。

筆者がケアマネジャーとして担当していた利用者さんのなかも、1人暮らしをしている要支援2の女性がいらっしゃいました。その方は多少ふらつきはあるものの、自宅に手すりを取りつけることで転倒なく歩行できていました。調理や食事なども問題ありません。ただ、入浴には少し不安があったため、週2回ヘルパーにきてもらうことでサポートしました。

ちなみに、定期的に介護サービスを利用することは体調確認や安否確認にもなるので、ぜひ覚えておいてください。

まとめ

要介護認定で要支援2の認定を受ければ、介護保険の介護予防サービスを利用できます。要支援2は要介護状態になる一歩手前といわれますが、できるだけ体を動かすように心がけたり、社会参加したりすることで、身体機能は維持向上していくでしょう。

サービスの詳細がわからない場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみてください。きっと利用者さん1人ひとりに合った介護サービスを提案してくれるはずです。

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長谷部宏依(Hiroe Hasebe)

介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー

介護職員として介護老人保健施設に入職。その後介護福祉士を取得し訪問介護や訪問入浴、デイサービスで働く。ケアマネジャーは20年の実績があり、100名以上の高齢者を担当。認認介護・老老介護・介護拒否など困難事例も多く経験。現在はWebライターとしてさまざまな記事を執筆している。福祉住環境コーディネーター2級も取得。

長谷部宏依の執筆・監修記事

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