要介護2とは?特徴や認定基準、受けられるサービスを紹介|ケアの注意点も
文/中谷ミホ(介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士)介護保険の要介護認定は、自立の度合いに応じて要支援1〜2、要介護1〜5の7つの区分に分かれています。
介護の仕事をするうえで、介護度別の状態の違いや利用できるサービスの種類、ケアの注意点を知っておくことはとても重要です。
そこで今回は、介護職の方に向けて、要介護2の特徴やほかの介護度との違いについて紹介します。また、要介護2の方が介護保険で受けられるサービスの種類や、介護職がケアする際の注意点にも触れていきますので、ぜひ最後までお読みください。
1.要介護2とは
要介護2は、身体機能や認知機能の低下が見られ、日常生活を1人で送ることが難しい状態です。
これまでできていた立ち上がりや歩行などの動作が不安定になり、転倒のリスクも高まるため、日常的なサポートが必要です。また、移動に杖やシルバーカー、車いすなどが必要な方もいます。
日常生活動作では、食事や入浴、衣類の着脱に見守りや一部介助が必要です。排泄は自身でできる方が多いものの、歩行動作の低下によりトイレに間に合わないこともあり、紙パンツや尿取りパッドを使用する方もいます。
認知面では、判断力や思考力の低下が見られるため、家事などの生活援助や金銭管理、薬の管理が難しくなり、それらの活動にサポートが必要です。
もの忘れの回数が急に増えたり、もの忘れをしたという自覚がなくなったりするなど、認知症の初期症状が見られるケースもあります。
なお、厚生労働省が公表した「令和3年度 介護保険事業状況報告」によると、要介護2の認定者は、要介護(要支援)認定者全体の16.9%(116万人)にのぼります。これは、要介護1の20.7%に次いで2番目に多い数値です。
要介護2の認定基準
要介護2の認定は、厚生労働省が定めた「要介護認定基準時間」にもとづいて、介護が必要となる時間数を評価したうえで行われます。
以下の表は、厚生労働省が定める要介護度別の「要介護認定等基準時間」です。
要介護度 | 要介護認定等基準時間 |
---|---|
要支援1 | 要介護認定等基準時間が1日25分以上32分未満 |
要支援2 | 要介護認定等基準時間が1日32分以上50分未満 |
要介護1 | 要介護認定等基準時間が1日32分以上50分未満 |
要介護2 | 要介護認定等基準時間が1日50分以上70分未満 |
要介護3 | 要介護認定等基準時間が1日70分以上90分未満 |
要介護4 | 要介護認定等基準時間が1日90分以上110分未満 |
要介護5 | 要介護認定等基準時間が1日110分以上 |
要介護2は、1日のうちで介護が必要となる時間数が「50分以上70分未満または、これに相当する状態」となります。
なお、要介護認定等基準時間は、あくまでも介護の必要性をはかる「ものさし」として定められたものです。実際の介護サービスを受ける時間ではないので、注意しましょう。
要介護2と要介護1の違い
要介護1は、立つ・歩くといった動作に多少の不安定さが見られますが、食事や排泄といった身のまわりのことは、ほとんど自分で行える状態です。
一方、要介護2になると、立ち上がりや歩行時に支えなどの介助が必要になってきます。入浴や排泄、衣類の着脱といった身のまわりのことにも、見守りや部分的なサポートが必要です。
さらに認知面でも違いがあらわれます。要介護1でも認知機能の低下は見られますが、要介護2になると、さらに理解力や思考力が低下します。これまでできていた調理や金銭管理が難しくなるなど、日常生活に支障が出てくるケースもあるでしょう。
家族をはじめとするまわりの人が、認知症の初期症状に気付くのも要介護2の時期です。
要介護1と2の要介護認定等基準時間を比較すると、要介護1は「32分以上50分未満」であるのに対し、要介護2では「50分以上70分未満」となっています。
このことからも、要介護2になると介護にかかる手間や、介護を必要とする場面が要介護1よりも多くなることがわかります。
要介護2と要介護3の違い
要介護2と要介護3の大きな違いは、「日常生活における介護の必要度」です。
要介護3では、自力で立ち上がったり歩いたりすることが難しくなります。さらに、排泄や入浴、食事、着替えなどの日常的な動作も自分で行うことが難しく、全面的な介助が必要です。寝たきりの状態ではありませんが、24時間の介護を必要とします。
また、要介護2からさらに認知機能が低下するため、認知症の方が多くなるのも要介護3の特徴です。
意思の疎通は可能ですが、徘徊や暴言・暴力、大声を出すなど、認知症の行動・心理症状(BPSD)が出現する方が多い傾向にあり、昼夜問わずの見守りやサポートが必要なケースもあります。
このように、介護する側の負担が大きくなるのも、要介護3と要介護2の違いです。
2.要介護2で受けられるサービス
ここからは、要介護2の方が利用できる介護保険サービスを紹介していきます。
自宅で受けられるサービス
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
施設に通うサービス
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
施設に宿泊するサービス
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
訪問・通い・宿泊を組み合わせたサービス
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
その他サービス
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
- 住宅改修
施設に入所して受けるサービス
要介護2の方は、以下のような入所施設が利用可能です。
■公的施設(自治体や社会福祉法人が運営する)
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- ケアハウス
- 介護療養型医療施設(2024年3月末に廃止決定)
■民間施設(主に民間企業が運営する)
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- グループホーム(認知症対応型入居者生活介護)
※特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上が入所対象となっているため、要介護2の方は入所できません。ただし、特例で認められれば入所できるケースもあります。
3.要介護2に必要な福祉用具
介護保険では、要介護2の方が自立した生活を送るために必要な福祉用具を購入、レンタルすることが可能です。以下で詳しく見ていきましょう。
福祉用具の購入(販売)
介護保険で購入できる福祉用具の正式名称は、「特定福祉用具」です。
原則として年間10万円を限度に、代金の1〜3割(所得に応じて変動)で購入することが可能です。残りの7〜9割は介護保険から支給されます。
対象となる特定福祉用具は、以下の5種類です。
- 腰掛便座(ポータブルトイレ)
- 自動排泄処理装置の交換可能部品(チューブやタンクなど)
- 入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴槽内すのこ、浴室内すのこ、入浴用介助ベルト)
- 簡易浴槽(空気式や折りたたみ式のもの)
- 移動用リフトのつり具の部品
なお、上記の特定福祉用具を「特定福祉用具販売」の指定を受けていない事業所で購入すると、給付対象外となるため注意しましょう。
福祉用具のレンタル
介護保険を利用すると、福祉用具を1〜3割の自己負担でレンタルできます。
ただし、希望すればどれでも借りられるわけではなく、要介護2の方がレンタル可能な福祉用具は厚生労働省により指定されています。
要介護2の方がレンタルできる福祉用具は、以下の12品目です。
1. 手すり(工事をともなわないもの)
2. スロープ(工事をともなわないもの)
3. 歩行器
4. 歩行補助杖(松葉杖、多点杖など)
5. 車いす
6. 車いす付属品(クッション、電動補助装置など)
7. 特殊寝台(介護用ベッド)
8. 特殊寝台付属品(マットレス、ベッド柵など)
9. 床ずれ防止用具
10. 体位変換器
11. 認知症老人徘徊感知機器
12. 移動用リフト(つり具部分を除く)
13. 自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引する機能のもの)
福祉用具をレンタルするメリットは、福祉用具の専門相談員が自宅に訪問して、身体状況や自宅の環境に合ったものを提案、設置してくれることです。レンタル後も利用状況の確認や定期的なメンテナンスを受けられるので、安心して使用し続けられます。
なお、介護保険で福祉用具をレンタルするには、ケアマネジャーが必要性を認めたうえで、ケアプランに組み入れてもらう必要があります。
4.要介護2の区分支給限度額
介護保険サービスには要介護度に応じた支給限度額が設定されています。支給限度額内の利用であれば介護保険が適用され、利用者の負担割合は所得に応じて1〜3割になります。
要介護2の区分支給限度額の上限は「1か月あたり197,050円」です(1単位=10円で計算)。
つまり、1割負担の方は「19,705円」、2割負担の方は「39,410円」、3割負担の方は「59,115円」の範囲内であれば、介護保険内でサービスを利用できるということです。
なお、支給限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となります。
参考:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」<居宅サービスの1ヶ月あたりの利用限度額>
5.要介護2は1人暮らしができる?
厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、要介護2で1人暮らしをする方の割合は、要介護者全体の16.5%にのぼります。つまり、要介護2の認定を受けている方の6人に1人は、1人暮らしをしているわけです。
このことから、要介護2の方でも1人暮らしは可能といえるでしょう。
しかし、これまで説明してきたように要介護2の方が日常生活を送るには、見守りや部分的な介助が必要です。そのため、要介護2の方が安全に1人暮らしをするためには、介護保険サービスなどを有効に活用する必要があるでしょう。
例えば、訪問介護サービスを利用すれば、調理や掃除、洗濯などの家事支援を行う「生活援助」や、排泄や入浴などをサポートする「身体介助」、通院時の支援といったサービスが受けられます。
さらに、住宅改修を利用して、段差解消や室内に手すりを付けるなどのリフォームを行い、自宅内を安全に移動できるようにすれば、転倒リスクも抑えられるでしょう。
ただし、介護保険の範囲内で利用できるサービスには上限があるため、場合によっては自治体や、民間企業が提供する介護保険外サービスの利用を検討する必要があるかもしれません。
介護保険外サービスには、お弁当を届けてくれる「配食サービス」や、金銭などの管理を行うサービス、買い物代行サービスなどがあります。これらのサービスと介護保険によるサービスを組み合わせることで、生活の質を維持することができるでしょう。
6.要介護2の利用者さんをケアする際の注意点
最後に、要介護2の方をケアする場合の注意点を確認しましょう。
利用者さんができることはやってもらう
要介護2の方は、見守りや部分的な介助があれば、家事をはじめとする身のまわりのことを自分で行えます。
介護の仕事をしていると、本人が自分でできることまでついやってしまうこともありますが、介護者側の都合で利用者さんの「できる能力」を奪ってはなりません。
介護職は「あくまでもできないことをサポートする役目」という視点を持ち、本人が自立した生活を維持できるように支援することが大切です。そのためにも、「できること・できないこと」を見極めたうえでサポートするように心がけましょう。
自尊心を傷付けないように接する
要介護2の場合は、身体機能の衰えに加えて、認知機能も低下するため、これまで当たり前にできていたことを失敗したり、自力でできなかったりする場面が増えてきます。
排泄の失敗があったときなどに、「情けない」「恥ずかしい」と感じ、自尊心が傷付くこともあるかもしれません。
そうした状況では、手早く後始末をして「大丈夫ですよ」と声をかけましょう。間違ってもネガティブな言葉がけはしないように注意してください。
また、よかれと思って本人ができることまでやってしまうのも、自尊心を傷付けかねません。前述したように、必要なことのみを見極めてサポートするようにしましょう。
まとめ
要介護2は、身体機能や認知機能の低下が見られる状態で、日常生活に見守りや部分的な介助を必要とします。しかし、介護保険のサービスを利用するなど周囲のサポートがあれば、1人暮らしも可能です。
介護職が要介護2の方にサービスを提供する際は、「利用者さんができることは自分で行えるようにサポートする」という視点が大切です。できないことがあったとしても、ネガティブな言葉をかけるのは慎んでください。
利用者さんの意思を尊重し、自立した生活ができるよう支援していくことが、状態の悪化を防ぎ、利用者さんの生活の質を向上させることにつながるでしょう。
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