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仕事・スキル 介護士の常識 2024/02/14

要介護4とはどんな状態?3との違い・受けられるサービス・かかる費用も解説

文/長谷部宏依(介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー) thumbnail.jpg

みなさんのなかには「要介護4に認定された人は、具体的にどのような身体状況なのか?」や、「どのような介護サービスを利用できるのか?」について、疑問を持ってる方もいるのではないでしょうか。

要介護4とは、2番目に要介護度が高い状態です。寝たきりの状態に近く、意思疎通が図れないケースも見られます。ただし、残存機能が活用できる場合もあるため、自分でできることは自分で行ってもらう必要があるでしょう。

本記事では、要介護4の身体状況や要介護3、5との違い、どのような介護サービスが利用できるのかを解説していきます。併せて、費用のことも説明しますので、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

1.要介護4とは

厚生労働省が公表している「要介護状態」の定義は、下記の通りです。

「身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(要介護状態区分)のいずれかに該当するもの(要支援状態に該当するものを除く)」

(引用:厚生労働省「要介護認定に係る法令」

要介護度は要支援1と2、要介護1~5の7段階に分けられ、要介護4は上から2番目に要介護度が高い状態です。具体的な身体状況は以下のようになります。

  • 立ち上がりや歩行、入浴、排せつなどは介助が必要
  • 支えなしで座るのが難しい
  • 車椅子での移動がほとんど
  • 食事や着替えにも介助が必要
  • 思考力や理解力が低下しており、意思疎通が困難な場合も多い

このように、要介護4は日常生活全般に介護を必要とします。

要介護4の認定基準

厚生労働省は、要介護認定の段階を判断するための指標として、「要介護認定等基準時間」を定めています。

要介護度 要介護認定基準時間
要支援1 25分以上32分未満
要支援2・要介護1 32分以上50分未満
要介護2 50分以上70分未満
要介護3 70分以上90分未満
要介護4 90分以上110分未満
要介護5 110分以上

(出典:厚生労働省「要介護認定のしくみと手順」

1日のうちで介護が必要となる時間数が「90分以上110分未満」と判定された場合は、要介護4と認定される可能性が高くなります。なお、要介護認定が決まるまでの流れは、以下の通りです。

・申請:役所や地域包括支援センターに申請する
・訪問調査:認定調査員が自宅などを訪問し、申請者の身体状況や日常生活の様子について聞き取り調査を行う
・意見書依頼:市区町村の依頼により、かかりつけ医が主治医意見書を作成
・一次判定:認定調査員が作成した認定調査票と主治医意見書をもとに、コンピュータで要介護認定等基準時間を算出する
・二次判定:一次判定の結果と主治医の意見書を合わせ、認知症の程度を加算したうえで要介護認定が決定される

認知症は「認知症高齢者の日常生活自立度」により判定基準が定められています。

ランク 判定基準
何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立している
日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立可能
Ⅱa 家庭外で上記Ⅱの状態が見られる
Ⅱb 家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる
日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする
Ⅲa 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる
Ⅲb 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる
日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護が必要
M 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療が必要

(出典:厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度」

認知症の症状は人それぞれで、個人差が大きいのが特徴です。今までできていたことを忘れてしまったり、新しい出来事が覚えられなかったりといった症状のほか、火の不始末や徘徊などが見られて、日常生活に支障が出てくる場合も多くあります。

要介護4と要介護3の違い

要介護4と要介護3の違いは、下記のようになります。

要介護度 状態の目安
要介護4 ・座位保持や両足での立位ができない
・移乗や移動に介助が必要
・自宅のお風呂に入ることが難しくなり、訪問入浴やデイサービスなどで入浴する場合もある
・寝たきりに近い状態になる場合もある
・思考力の低下がある。また、認知症が進んで行動・心理症状が出ている場合もある
要介護3 ・起き上がりや立ち上がり、寝返りができない
・歩行が不安定またはできない
・車椅子が必要になることが多い
・1人で入浴ができない
・排せつや衣服の着脱にも介助が必要
・日常の意思決定が難しい

(出典:厚生労働省「要介護認定のしくみと手順」

要介護4は要介護3より、「日常生活において自分ではできないこと」が増えている状態です。介護にも手がかかるようになり、夜間に支援が必要なケースも多くなるでしょう。

また、認知症が進んで、意思疎通が難しくなる場合もあります。

要介護4と要介護5の違い

要介護4と要介護5の違いは、下記のようになります。

要介護度 状態の目安
要介護4 ・座位保持や両足での立位ができない
・移乗や移動に介助が必要
・自宅のお風呂に入ることが難しくなり、訪問入浴やデイサービスなどで入浴する場合もある
・寝たきりに近い状態になる場合もある
・思考力の低下がある。また、認知症が進んで行動・心理症状が出ている場合もある
要介護5 ・身のまわりのことは全面的に介助が必要
・移動は車椅子
・1日中ベッドで過ごすことが多く寝たきり状態
・食事や排せつ、入浴は全面的に介助が必要
・認知症が進み、会話などの意思疎通が困難

(出典:厚生労働省「要介護認定のしくみと手順」

要介護5は要介護度のなかでも、いちばん重度な状態です。

要介護4や5はともに寝たきりに近い状態ですが、要介護4では一部自分でできる動作もあります。一方、要介護5は認知症がかなり進行して、意思疎通がとれない場合が多いです。

2.要介護4は自宅での介護は可能?

要介護4でも、自宅で介護を受けながら生活を送ることは可能です。ただし、要介護4では、日常生活にほぼ全面的な介助が必要なため、介護者の負担が大きいことが課題といえます。

そのため、介助量の多い利用者さんの場合、介護サービスを上手に利用することが、在宅生活を継続するポイントになるでしょう。

介護者が休息をとるには、ショートステイが有効です。「用事もないのに預けるのは気が引ける」というご家族もいらっしゃいますが、介護負担の軽減はショートステイを利用する立派な理由です。

また、デイサービスやデイケアもおすすめです。1日滞在できるタイプなら、入浴や食事ができるほか、レクリエーションやリハビリで身体を動かすこともできます。

3.要介護4で受けられる介護サービス

要介護4は要介護度が高い状態で、下記の介護サービスが利用できます。

自宅で介護サービスを受ける ・訪問介護(ホームヘルプ)
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
施設に通い介護サービスを受ける ・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリ(デイケア)
・地域密着型通所介護
・療養通所介護
・認知症対応型通所介護
訪問や通い、宿泊サービスを組み合わせて利用する ・小規模多機能型居宅介護
・複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
短期間入居する ・短期入所生活介護
・短期入所療養介護
施設に入居する ・介護老人福祉施設
・介護老人保健施設
・介護医療院(介護療養型医療施設)
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・地域密着型特定施設入所者生活介護
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・特定施設入居者生活介護
福祉用具を利用する ・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売
住宅改修をする ・住宅改修
ケアプランを作成してもらう ・居宅介護支援

(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」

これらのサービスは、すべて介護保険を利用したサービスです。サービス内容は多岐にわたるため、ケアマネジャーと相談しながら、利用者さんに合った介護サービスを選びましょう。

4.要介護4で利用できる制度

要介護4の場合、介護保険のサービス以外にも利用できる制度がさまざまあります。介護の費用負担を減らすためにも、そうした制度を積極的に利用しましょう。

高額介護サービス費

高額介護サービス費とは、1か月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えたとき、 超えた分が払い戻しされる制度です。負担限度額は所得に応じて決められており、世帯全員が市区町村民税を課税されていない場合、世帯で月額24,600円が上限になります。

高額介護合算療養費制度

高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険における1年間(毎年8月1日~翌年の7月31日)の合算額が高額だった場合に、自己負担が軽減される制度です。医療保険上の世帯単位で計算され、各所得に応じた限度額を超えた場合、超えた分の全額が払い戻しされます。

介護保険負担限度額認定証

介護保険負担限度額認定証とは、介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)やショートステイを利用するときの食費、居住費を軽減する制度です。ただし、年金収入額や預貯金額が多い場合、対象外になってしまうことがあります。

おむつ代の助成

自治体がおむつ代を助成する制度です。例えば、東京都新宿区の場合、要介護1以上の認定を受けているなどの条件を満たせば、7,000円/月を上限におむつ費用が助成されます。

助成内容は自治体によって異なりますが、市役所や地域包括支援センターに問い合わせると申請方法や制度について詳しく教えてもらえます。有効に活用していきましょう。

障害者控除

障害者控除は税法上の制度で、本人または同一生計の配偶者、親族に障害がある場合、所得税や住民税、相続税の負担を減らすことができます。対象者は「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」に分かれており、判定基準や控除額もそれぞれ異なるため、市役所などで適用されるかどうかを確認するとよいでしょう。

要介護4の方の場合、身体状況や認知症の進行状態により、障害者控除が受けられる場合があります。

医療費控除

毎年1月1日~12月31日までの1年間に、税金を納める本人および生計を一にする親族が支払った医療費が10万円を超えた場合、確定申告をすることで医療費控除が受けられます。

医療費控除額は、医療費から「保険金などで補てんされる金額」と10万円を差し引いた金額です。ただし、総所得金額が200万円未満の人の場合、差し引かれるのは10万円ではなく、総所得の5%となります。

障害者手当

障害の程度により、障害者手当が出る場合があります。ただし、障害者手帳の取得や所得制限などの条件もあるため、お住まいの自治体に確認が必要です。

例えば、愛知県の場合、身体障害者手帳で2級以上などの条件を満たせば、「愛知県特別障害者手当」が月額27,980円~34,830円支給されます。

5.要介護4でかかる費用

在宅・施設のどちらで介護するかによって、金額が異なります。事前におおよその金額を知っておくと、将来の介護プランが立てやすくなるでしょう。

在宅介護の場合

要介護4の方を対象に、利用が多い介護サービスや回数をシミュレーションしてみました。あくまでも概算ですが、必要な方は参考にしてみてください。

介護サービス 1週間の利用回数 1か月あたりの利用回数 1回あたりの金額 1か月あたりの金額
訪問介護 1回 4回 3,170円 12,680円
訪問看護 2回 8回 5,460円 43,680円
訪問リハビリテーション 2回 8回 3,370円 26,960円
通所介護 2回 8回 10,560円 84,480円
福祉用具貸与(車椅子、介護ベッドなど) 20,100円
合計 187,900円
自己負担1割の場合 18,790円

厚生労働省「介護サービス概算料金の試算をもとに筆者作成

通所介護の場合、介護保険適用外の費用として食費やおむつ代などの日用品費が必要です。在宅介護の場合も、医療費や日用品費が必要になります。

施設入居の場合

施設入居に必要な費用は介護施設によって異なりますが、介護サービスと自己負担分を合わせた費用が必要になります。

特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 介護付き有料老人ホーム
介護サービス費用(自己負担1割の場合) 29,730円 33,418円 22,140円
自己負担分の費用 75,900円(個室) 83,760円(多床室) 190,500円
1か月あたりの合計 105,630円 117,178円 212,640円

介護サービス費用は、施設の体制や加算状況によって異なります。部屋代や食費もそれぞれの施設ごとに設定されています。

なお、介護付き有料老人ホームの場合は、入居申込金や入居保証金が必要な場合もあるため、事前の確認が必要です。

6.要介護4の区分支給限度額

介護保険では、要介護度に応じて1か月に利用できるサービスに上限があります。上限は「区分支給限度額」と呼ばれており、次のように決められています。

要介護度 区分支給限度額
要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

(出典:新宿区「在宅サービスを利用する場合の費用」

要介護4の場合は309,380円/月になり、区分支給限度額内の介護サービスであれば、利用者さんそれぞれに決められた自己負担割合(1~3割)を支払うことで利用できます。例えば、負担割合が1割の方の場合は30,938円、3割の方は92,814円が自己負担額です。

しかし、区分支給限度額を超えた部分は、全額自己負担(10割)となります。要介護4で1割負担の方が1か月で400,000円のサービスを受けた場合、介護保険内の自己負担額は30,938円ですが、さらなる自費負担分90,620円が発生します。

7.要介護4の利用者さんをケアする際の注意点

先に解説したように、要介護4の利用者さんは、日常生活全般に介助が必要な状態です。しかし、なかには自分でできる動作もあり、残存機能の維持・向上のためには「できることは自分でやってもらうこと」が大切になります。

例えば、食事介助の際、スプーンに乗せるまでは介助し、口に運ぶのは本人にやってもらうといった具合です。衣服着脱では、服を脱ぐときにボタンを外す行為は本人ができるかもしれません。入浴介助では、頭や背中など手の届かない部分は介助し、前面は本人に洗ってもらうなどの方法もあります。

まとめ:要介護4は自分でできることが少なく多くの介助が必要

要介護4とは、身のまわりのことがほぼ1人ではできない状態です。そのため、介護サービスを利用する際に、食事や排せつ、入浴など介護職員が介助する場面は多いでしょう。

自宅では夜間の介護も必要になり、家族の負担が大きくなってきます。介護者の健康状態がよくても、長期間の介護によって心身ともに疲れてしまうケースは、けっして少なくありません。

そうならないためにも、ショートステイやデイサービスなどの介護サービスを利用して、介護負担の軽減を図ることが必要です。また、自宅で介護ができなくなった場合を想定して、施設入所についてケアマネジャーと相談しておくのもよいでしょう。

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長谷部宏依(Hiroe Hasebe)

介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー

介護職員として介護老人保健施設に入職。その後介護福祉士を取得し訪問介護や訪問入浴、デイサービスで働く。ケアマネジャーは20年の実績があり、100名以上の高齢者を担当。認認介護・老老介護・介護拒否など困難事例も多く経験。現在はWebライターとしてさまざまな記事を執筆している。福祉住環境コーディネーター2級も取得。

長谷部宏依の執筆・監修記事

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