介護食とは?種類や選び方・作り方のポイントなどを紹介
文/中谷ミホ(介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士)
食事の介助や食事作りなど、利用者さんの食事に関わる支援も、介護職にとっての重要な仕事です。
そこで今回は、介護食の種類や作るポイント、食事をサポートする際の注意点などを解説します。
介護食や食事介助に関する知識は、介護の専門職として適切な介護サービスを提供するために欠かせないものです。介護の現場で大いに役立ちますので、介護職を目指している方や介護職をはじめたばかりの方は、ぜひ参考にしてください。
1.介護食とは
介護食とは、食べる人の身体の状態に合わせて、食べ物のやわらかさや形状を調整した食事のことです。
利用者さんの中には、加齢や疾患によって身体機能が低下し、「かむ」「飲み込む」といった動作がスムーズに行えない方も少なくありません。
介護食は、そうした咀嚼(※1)や嚥下(※2)の機能が低下した方に対して、食事が食べやすくなるように調理方法が工夫されています。
※1:食べ物をかみ砕き、唾液と混ぜ合わせ、やわらかく飲み込みやすい食塊(しょっかい)にすること
※2:飲み込むこと
2.介護食の種類
介護食は基本的に「きざみ食」「ソフト食」「ミキサー食」「ゼリー食」の4種類に分類されます。それぞれの特徴を理解しておくと、利用者さんの咀嚼や嚥下の状態に応じた、適切な食事形態を選ぶことができるでしょう。
介護食の種類と特徴を以下にまとめました。
きざみ食
・特徴
きざみ食とは、食材を細かくきざんで食べやすくした食事のことで、それほど咀嚼しなくても飲み込める点に特徴があります。
一方で、きざみ食は口の中でパラパラしてしまい、うまくまとまらないことがあります。また、飲み込んでも喉の奥に残り、気道に食べ物が入ってしまうケースも見られます。そのため、使う食材によっては、とろみをつけて飲みやすく調整することが大切です。
・向いている人
歯がない人、入れ歯が合っていない人、かむ力が弱い人
・不向きな人
唾液の少ない人、飲み込む力が弱い人
ソフト食(軟菜食)
・特徴
食材をよく煮込んだりゆでたりして、やわらかく仕上げた食事です。食材の形が残っているので、味も見た目も普通食と変わりません。そのため、食べる楽しみを実感しやすいでしょう。
ソフト食は食材がとてもやわらかく、歯茎や舌で押しつぶして食べられるのが特徴です。口の中で食べ物がまとまりやすいため、誤嚥のリスクも少なくなります。
ただし、調理に手間と時間がかかるのが難点です。
・向いている人
歯のない人、かむ力と飲み込む力ともに衰えてきた人
ミキサー食
・特徴
食材にだし汁やスープなどの水分を加え、ミキサーにかけてポタージュ状にしたものがミキサー食です。ポタージュ状のため、かまなくても飲み込める点に特徴があります。ただし、ミキサー食は口の中でまとまりにくいので、喉に流し込む際にむせやすく、せき込むことがあります。そのため、誤嚥防止に「とろみ剤(とろみ調整食品)」を加えるのが一般的です。
ミキサー食は見た目があまりよくないため、「食欲がわきにくい」という人も多く見られます。また、水分が多いのでおなかが膨れやすく、必要な栄養素が十分にとれない可能性もあります。
・向いている人
かむことがほぼできず、飲み込む力も弱い人
ゼリー食
・特徴
食材をミキサーにかけてペースト状にし、ゼラチンや寒天、でんぷんなどを加えてゼリーのようにやわらかく固めたものです。口内でつぶさなくても、スプーンですくってそのまま食べることができます。
ゼリー食は食道での滑りがよく、口の中でパラパラすることもありません。そのため、誤嚥を引き起こすリスクが低い食事形態といえるでしょう。
ただし、食材のすべてがゼリー状なので、食欲を損ないやすいのが難点です。調理の際には、ゼリーを型抜きして見た目を工夫するとよいでしょう。
・向いている人
かむ力、飲み込む力の両方が弱くなった人
ミキサー食では飲み込みづらく、むせやすい人
3.介護食の選び方
就職先が、訪問介護事業所の場合、介護食の調理に使用する食材の買い物や介護食の調理を任されることがあります。そのような場合に備えて、咀嚼や嚥下の機能が低下した人が食べにくい食材や、介護食に適した食材を把握しておくことをおすすめします。
ここでは、食べにくい食材と介護食にしやすい食材を紹介しましょう。
咀嚼や嚥下の機能が低下した人が食べにくい食材
下の表は、咀嚼や嚥下の機能が低下した人が食べにくい食材の一覧です。食材を選ぶ際の参考にしてください。
加熱してもやわらかくなりにくいもの | かまぼこ、いか、ハム、長ねぎ |
パサパサしたもの | パン、ふかし芋、焼き魚、ゆで卵 |
固いもの | ナッツ類、焼肉、生野菜、さくらえび |
繊維の多いもの | 青菜類、ごぼう、れんこん、柑橘類 |
ベタつくもの | 餅、ミキサーにかけたおかゆ |
張りつきやすいもの | 焼きのり、わかめ、レタス |
口の中でまとまりにくいもの | ふりかけ、つくだ煮、長ねぎのみじん切り |
介護食にしやすい食材
・肉の場合
脂身の多いもの、やわらかくかみやすいもの
<食材の例>牛肉はヒレやサーロイン、豚肉はもも肉やロース肉、鶏肉はささみや胸肉
・魚介類の場合
煮たり焼いたりしてもあまり身がしまらずやわらかいもの、脂ののったもの
<食材の例>うなぎ、カレイ、鯛、カニなど
・野菜の場合
根菜類のように煮込むとやわらかくなるもの
<食材の例>かぼちゃ、里芋、大根など
これらの食材を工夫して調理することで、利用者さんに安心でおいしい食事を提供できるでしょう。
4.介護食を作る際のポイント
次に、介護食を作る際のポイントを見ていきましょう。
ポイント①かみやすくする工夫
かむ力が弱い人でも食べやすくするには、いくつかのポイントがあります。
肉類の繊維(筋)や野菜の繊維は、繊維に対して垂直に包丁を入れると、食べやすくなります。また、魚は焼くよりも蒸したほうが、肉類は煮込んだほうがやわらかくなるので、かむ力が弱い人でも食べやすくなります。
ポイント②飲み込みやすくする工夫
飲み込む力が弱くなっている人がいる場合は、飲み込みやすく調理して誤嚥を防ぐ必要があります。
そのためには、油脂を含んだ食品を用いたり、つなぎの食品を利用したりするとよいでしょう。油脂を含んだ食品として挙げられるのは、ホワイトソースやマヨネーズなどです。喉の滑りがよくなるので飲み込みやすくなります。
一方、片栗粉やくず粉などのつなぎ食品を使うと、食べ物がまとまりやすくなるほか、口の中に食べ物が残りにくくなります。
さらに、市販の「とろみ剤(とろみ調整食品)」を使用するのも方法の1つです。とろみ剤のメリットは、冷たいものから温かいものまで、食品の温度に関係なく利用できる点です。ただし、使用量が多いと、ベタついてかえって飲みにくくなることもあるので注意しましょう。
ポイント③おいしく見える工夫
食べやすく工夫した料理であっても、見た目がおいしそうでなければ、食欲がわきません。食欲が低下すると、低栄養につながる可能性が高まるため、介護食を作る際は「見た目」にも十分配慮してください。
介護食の中でもきざみ食やミキサー食、ゼリー食は、「おいしく見せるのが難しい」と思われがちですが、工夫次第で見た目をよくできます。
彩りのよい食材を加えて華やかに見せたり、形をアレンジしたりすることで、食べる人が「おいしそう」と感じるような見た目に仕上げましょう。
ポイント④栄養バランスを考慮
介護食を作る際には、栄養バランスも考慮しなければなりません。栄養が不足すると体力や免疫力が低下し、病気にかかりやすくなったり、病状が悪化したりするリスクが高まります。
特に、高齢者は筋力が低下しやすい傾向があるので、毎食たんぱく質を摂取することが重要です。加えて、カルシウムやビタミン、ミネラルなどもきちんと取り入れ、栄養バランスのよい献立に仕上げましょう。
5.食事のサポートをする際の注意点
食事介助をする際には、いくつか注意しなくてはならないことがあります。以下に注意点を挙げておくので、事前に確認しておいてください。
目覚めていることを確認する
うとうとした状態で食事をすると、誤嚥の可能性が高まります。しっかり目覚めていることを確認してから、食事介助をはじめましょう。
正しい食事姿勢をとる
食事介助では、正しい食事姿勢をとることも大切です。ここでいう正しい食事姿勢とは、前かがみで食べ物を飲み込みやすい体勢のことです。逆に身体が後ろに倒れたような姿勢になると、食べ物が気道や肺に入りやすくなるので注意してください。
正しい食事姿勢をとるには、食べる人の体格に合ったテーブルと椅子を使用することも大切です。高すぎるテーブルは、首が上向きになるので、誤嚥しやすくなります。椅子は前傾姿勢になりやすいように、足底がつく高さのものを用意しましょう。椅子の高さが調節ができない場合は、足台などを使って調整するのがおすすめです。
車椅子に座ったまま食事をする場合も、食事の姿勢は同じです。座った姿勢が不安定にならないように、フットレストから足を下ろし、前傾姿勢で食事がとれるように調整しましょう。
目線を合わせる
食事介助の際は、食事をする人と同じ目線で介助することが大事です。介助者が立ったまま食事介助を行うと、利用者さんは目線を上に上げることになります。そうすると、あごが上向きになり飲み込みにくくなったり、誤嚥しやすくなったりするので気をつけましょう。
食べる順番を工夫する
食べる順番も工夫しましょう。食べ物と水分(水やゼリー)を交互に食べてもらうことで、口の中や喉の奥に残った食べ物をきれいに飲み込むことができます。
一口分の量に気をつける
一口分の量が多く、口いっぱいに食べ物が入ってしまうと、かんだり飲み込んだりする動作が難しくなります。一口分の適切な量を把握するには、少なめの量からスタートし、相手の様子を見ながら徐々に量を増やしていくとよいでしょう。
飲み込めたか確認する
飲み込めたか確認することも、重要なポイントです。食べ物を飲み込むと、喉仏が上下するので、飲み込んだことがわかります。介助者は、喉仏が上がって下がったことをしっかりと確認してから、次の一口を運びましょう。
併せて、口の中に食べ物が残っていないかを確認することも大切です。ただし、一口ごとに口の中を確認するのは大変なので、飲み込んだら利用者さんに「はい」「いいよ」などと言葉を発してもらうとよいでしょう。
口の中に残っていると、食べ物が溢れたり痰が絡んだような声になったりします。このような様子がなければ、確実に飲めたと判断できます。
まとめ
咀嚼や嚥下が難しい方のために介護食を準備し、食事介助を行うことも介護職の重要な仕事です。介護食や食事介助の方法について学び、適切に対応できるように準備しておきましょう。
本記事の内容を参考にしながら、利用者さんが安全かつおいしく食事を楽しめるようにサポートしてください。
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