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仕事・スキル 介護士の常識 2025/06/23

生活相談員は資格なしでもなれる?資格要件と仕事内容、未経験からの道のりを解説

文/織田さとる(ケアマネジャー、介護福祉士、社会福祉士、公認心理師) thumb250623.jpg

利用者さんやご家族の相談に乗り、よりよい生活をサポートする「生活相談員」は、介護現場での経験を生かせるやりがいのある仕事です。

この記事では、現役の生活相談員である筆者が、生活相談員の仕事内容や必要な資格、無資格・未経験から生活相談員を目指すための方法、自分に合った職場探しのポイントを詳しく解説します。

「生活相談員には特別な資格が必要?」「未経験でも大丈夫?」といった疑問にもお答えしますので、生活相談員への一歩を踏み出したい方は、ぜひ参考にしてください。

1.無資格・未経験でも生活相談員になれる?

結論から言うと、無資格・未経験でも生活相談員になれる可能性はあります。ただし、自治体や施設によって資格要件が異なるので、それぞれが定めている要件をよく調べて、応募資格を満たしているかどうかを確認する必要があるでしょう。

無資格でも生活相談員になれる可能性がある理由は、介護業界の深刻な人材不足です。人手が足りないために、未経験者や資格取得見込みの方を積極的に採用したり、「資格取得支援制度」を設けたりしている事業所も少なくないのです。

ただ、生活相談員になるにはそれなりの経験が必要になります。介護業界未経験で入職してもすぐに生活相談員になるのは難しく、ある程度の経験を積まなくてはなりません。

そもそも生活相談員とは

ここでは、生活相談員の概要と資格要件について解説します。

生活相談員は、介護保険施設や介護サービス事業所に所属し、利用者さんやそのご家族の相談に応じたり、各種手続きのサポートをしたりする専門職です。「生活相談員」という資格があるわけではなく、あくまで職種を指します。

主な役割は、相談援助や関係機関との連絡調整、サービス計画作成のサポートなどです。特別養護老人ホームの場合、利用者さん100人に対して常勤1名の配置基準が設けられており、利用者さんとご家族の窓口となる役割を担います。

同じ相談援助職であるケアマネジャーと混同されることもありますが、ケアマネジャーはケアプランの作成を通じて、利用者さんやご家族を支援するのが主な業務。生活相談員は幅広い相談援助を通じて支援を行うため、役割が異なります。

生活相談員になるための主な資格要件

厚生労働省の「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」によると、生活相談員は「社会福祉法第十九条第一項各号のいずれかに該当する者」とされています。

具体的には、以下の資格取得者であるケースが多いです。

資格 要件
社会福祉主事任用資格 社会福祉に関わる相談援助を行う専門職。役所で働くことが多い。大学などで厚生労働大臣が指定する科目を3科目以上履修して卒業すると得られる
社会福祉士 福祉分野全般の相談を受けられる。福祉系の大学や養成校などで指定科目を履修し、国家試験に合格する必要がある
精神保健福祉士 精神障害を持っている方やその家族に対し援助を行う専門職。保健福祉系の大学などで指定科目を履修し、国家試験に合格する必要がある

また、「これと同等以上の能力を有する者」とも記載されており、自治体ごとに資格要件が定められています。

自治体によって異なる資格要件

前述したように、生活相談員の資格要件は自治体によって異なる場合があります。例えば東京都の場合、社会福祉主事任用資格や社会福祉士、精神保健福祉士のほかに、以下の要件が定められています。

  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)
  • 介護福祉士として1年以上の実務経験がある
  • 特別養護老人ホームで介護の提供にかかる計画作成業務の経験が1年以上ある
  • 老人福祉施設で施設長の経験がある

また、北海道では以下のように定められています。

  • 介護支援専門員
  • 社会福祉施設等において、実務経験が1年以上ある介護福祉士
  • 社会福祉施設等において、介護にかかる計画の作成に関する業務、または相談・援助業務の実務経験が2年以上ある

このように、資格や実務経験は自治体ごとに異なるため、自身の働く地域の情報を必ず確認するようにしましょう。

2.生活相談員の仕事と活躍できる職場

ここでは、生活相談員の主な仕事内容、活躍できる職場について解説するとともに、実際の1日の流れも紹介します。

生活相談員の仕事内容

生活相談員は、利用者さんが安心してサービスを利用できるように、多岐にわたるサポートを行います。主な業務は以下の通りです。

入所業務 ・施設見学から申し込み、事前面談、入所判定、契約、入所対応までの一連のサポート
相談援助 ・利用者さんの様子の報告
・本人への関わり方や手続きなどに関するご家族からの相談に対応
関係機関との連絡調整 ・行政や病院、地域の介護事業所、地域包括支援センターなどの関係機関と連携し、利用者さんが必要なサービスを受けられるように調整
サービス担当者会議への参加 ・ケアマネジャーが主催するサービス担当者会議に参加
・利用者さんの状況やサービス計画について情報共有や意見交換を行う
施設内の内部調整 ・介護職員や看護師、栄養士、リハビリスタッフといった施設内のスタッフと連携し、利用者さんへのケアが円滑に進むように調整
苦情対応 ・利用者さんやご家族からの苦情を受け付け、適切な対応を行う
その他 ・介護保険の請求業務や受診対応、職員への相談対応など

このように、生活相談員は利用者さんやご家族、そして関係機関をつなぐ重要な役割を担っています。

生活相談員が活躍できる職場

生活相談員は、高齢者の生活を支えるさまざまな場所で活躍しています。具体的な勤務先として、以下の施設・事業所が挙げられます。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護医療院
  • 有料老人ホーム
  • グループホーム
  • デイサービス(通所介護)
  • ショートステイ(短期入所生活介護)
  • 小規模多機能型居宅介護

生活相談員は、介護を必要とする方やそのご家族にとって身近な相談相手であり、頼れる存在です。活躍の場は多岐にわたり、今後ますます需要が高まることが予想されます。

生活相談員の1日のスケジュール例

ここでは、私の実例をもとに、特別養護老人ホームにおける1日のスケジュールを紹介します。

9:00 出勤、状況確認、ご家族連絡、申し送り、巡回
10:00 外部事業者との連絡調整、会議や研修の資料作成
11:00 見学対応、面会対応
12:30 休憩
13:30 入所前面談
15:00 面接記録の作成
16:00 入所前・定期カンファレンス
17:00 ご家族や外部事業者への連絡、記録
18:00 退勤

ただし、上記はあくまで一例です。1日事務作業をしていることもあれば、受診や地域の会議で外出することもあるといった具合に、日によって予定は異なります。

生活相談員のやりがい

筆者は現役の生活相談員ですが、そのやりがいは、自分で業務を組み立てられる自由度の高さにあると感じています。

介護職員は食事介助や入浴介助など、時間で区切られたケアが中心になりますが、相談員は自分で仕事を組み立てて、主体的に業務を進められます。もちろんその分責任は重く、稼働率のように数字で評価される厳しさもあります。

加えて、利用者さんやご家族から、直接「ありがとう」と言っていただけるのも、大きなやりがいの一つです。

「あのとき入所できなければ高額な施設に入るしかなかった」
「相談していなかったら家族はもっと早く亡くなっていたかもしれない」
「家族の生活まで救われた」

このように、人生の重要な場面で支えになれることや深い感謝の言葉をいただけることは、生活相談員にとって何よりの喜びです。

3.無資格・未経験者から生活相談員を目指す方法

資格も経験もないからといって、生活相談員をあきらめる必要はありません。無資格・未経験からでも,生活相談員になることは可能です。ここでは、その方法を3パターン紹介しましょう。

介護福祉士が生活相談員を目指す場合

介護福祉士の資格は、生活相談員の要件として多くの自治体で認められています。実務経験を要件とする自治体もありますが、介護福祉士としての経験は、利用者さんの状態把握やケアプラン作成への理解など、生活相談員の仕事に大いに生かせます。まずは、お住まいの自治体の要件を確認してみましょう。

介護福祉士以外の介護職員が生活相談員を目指す場合

介護福祉士以外の介護職員の場合、働きながら生活相談員に必要な資格を取得するのが一般的です。

多くの自治体では、介護職員としての実務経験も要件としているため、日々の業務で相談援助のスキルを磨き、先輩の生活相談員から学ぶことも重要です。積極的に研修に参加するのもいいでしょう。

介護業界がはじめての場合

介護業界未経験の場合、まずは介護職員として経験を積むのがおすすめです。「未経験OK」の求人を探し、介護職員初任者研修などの資格を取得しましょう。

とはいえ、いきなり相談員として配置されることはほとんどないため、介護職員として働きながら、生活相談員に必要なスキルや資格の取得を目指すのが現実的です。それを踏まえるなら、資格取得支援制度が充実している職場を選ぶのも、大事なポイントと言えます。

4.生活相談員としての職場探しのポイント

ここでは、生活相談員の職場探しのポイントや、転職活動の進め方を解説します。

求人情報のチェックポイント

求人情報で必ず確認すべきは応募資格です。まずは必要な資格(社会福祉士、社会福祉主事など)や実務経験、未経験可・不可などの記載をチェックしましょう。

勤務時間については、日勤・夜勤、残業時間、休日数、有給休暇取得率などを確認してください。また、具体的な業務内容も忘れずに確認しましょう。一般的な相談業務以外にどのような仕事があるのかも確認が必要です。

さらに、事業所の規模、運営方針、理念などをホームページやSNSでチェックすると、職場の雰囲気を知る参考になります。これらの情報を総合的に比較検討したうえで、職場探しを行ってください。

自分に合った職場を見つけるには

自分に合った職場を見つけるためには、自己分析が大切です。介護職員としての経験や相談援助の経験、コミュニケーション能力、PCスキルなどを整理し、将来どのような生活相談員になりたいかを具体的にイメージしましょう。

給与、勤務地、休日、仕事内容など、働くうえで重視する条件に優先順位を付け、自分が働きたい施設・事業所の種類(特別養護老人ホーム、デイサービスなど)を具体的にイメージすることも大事です。

自己分析を通して、自分の強みや希望を明確にすることで、より納得のいく職場選びができるでしょう。

転職エージェントの活用

転職エージェントを活用すると、非公開求人の紹介や応募書類の添削、面接対策、給与などの条件交渉、キャリアに関する相談といったサポートが受けられます。ただし、エージェントによって得意な分野やサポート体制が異なるので、複数のエージェントに登録し、自分に合ったエージェントを見つけるのがおすすめです。

まとめ:やりがいのある生活相談員の仕事

この記事では、生活相談員の仕事内容や必要な資格、職場探しのポイントなどを解説しました。

多くの自治体では、生活相談員に社会福祉士、社会福祉主事任用資格、精神保健福祉士などの資格や介護福祉士としての実務経験を求めていますが、無資格・未経験からでも生活相談員を目指すことはできます。

生活相談員は、利用者さんとそのご家族を支えるやりがいのある仕事です。この記事を参考に、ぜひ生活相談員を目指してみてください。

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織田さとる(Satoru Oda)

ケアマネジャー・介護福祉士・社会福祉士・公認心理師

介護業界で20年以上の実務経験を持つケアマネライター。専門学校卒業後、特別養護老人ホームで介護福祉士、ケアマネジャー、生活相談員として勤務。現在も施設で働きながら、介護・福祉分野の記事を執筆している。

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