入浴介助の手順と留意点をわかりやすく解説【初心者向け】
文/山本史子(介護福祉士)
入浴介助は、介護職員が担う大切な業務の1つです。しかし、介護経験が少ない方にとっては「具体的な方法が知りたい」「どんなことに注意すればいいのだろう」と悩むことがあるかもしれません。本記事では、入浴介助の目的や入浴手順、注意点を解説します。利用者さんに安全な介助を提供できるようスキルアップを目指しましょう。
1.入浴介助とは

入浴介助とは、自分でお風呂に入ることが難しい方に対して、介護職員は利用者さんができないところをサポートする仕事です。入浴介助には、次のような目的があります。
- 利用者さんの清潔を保つ
- リラックス効果
- 利用者さんの体に変化がないか確認できる
入浴は利用者さんの生活の質を向上するためにも必要です。次から詳しく解説します。
利用者さんの清潔を保つ
入浴の目的の1つに、利用者さんの体を清潔に保つことが挙げられます。汚れが付着したままでいると、かゆみやただれが起きるなどの皮膚トラブルの原因にもなります。また、入浴や着替えができていないと体臭がきつくなり、ほかの利用者さんを不快にさせるかもしれません。定期的な入浴は、利用者さんの健康を維持するためにも重要な役割があります。
リラックス効果
温かいお湯につかる入浴は、副交感神経が優位になり、リラックス効果が得られます。血行を促進し、冷えや筋肉のこわばりを解消するケースも少なくありません。お湯につかると浮力によって体が軽くなるため、特に重力を感じやすい背中や脚の負担を軽減し、こわばった体が緩みやすくなります。入浴は、気持ちがいいものだと感じてもらい、利用者さんの生活の質を向上させることも可能です。
利用者さんの体に変化はないか確認できる
入浴時は、利用者さんの全身を観察するよい機会です。体に発疹やけが、打ち身やむくみなどがないか、普段との変化がないか確認してみましょう。変化が見られた場合、必要に応じて家族やケアマネージャーに相談し、受診を促す場合もあります。早期発見により、症状が軽いうちに適切な処置ができます。
2.入浴介助の準備物と服装

安全に入浴介助をするためには、事前の準備が不可欠です。利用者さんの状態や施設の設備によって異なりますが、一般的に次のようなものを用意するとよいでしょう。
入浴介助の準備物
- バスタオルとフェイスタオル数枚
- 着替え
- ボディソープ(石けん)やシャンプー
- 温度計
- 洗面器
- 入浴用チェア
- 滑り止めマット
- ボディタオル(洗身用タオル)
- 爪切りやボディクリーム
可能であればタオル類は数枚用意しておきましょう。拭き取りだけでなく、プライバシーの保護のためにも使用するため、多めに用意しておくと安心です。入浴用のチェアや滑り止めマットを使用して、事故のないように介助することが大切です。準備物に不足があると、取りに戻ることになりその間、利用者さんを待たせてしまいます。その間に事故が起きることも十分に考えられるため、介助に入る前にしっかりチェックしておきましょう。また、高齢者の皮膚は乾燥しやすいため、入浴後は必要に応じてボディクリームを塗布します。入浴後は爪が柔らかいので、足の爪切りもしやすいでしょう。
次に、入浴介助する職員の服装を紹介します。
介護職員の服装
- 防水性のエプロン
- 動きやすい服装
- 滑りにくい履物
- タオル
- 手袋
利用者さんを安全に入浴してもらうためには、介助する人の服装にも気を付ける必要があります。入浴介助中は前かがみになったりしゃがんだりする動きが多いため、動きやすい服装を選びます。介助中に水がかかるのを防ぐために、防水エプロンを着用するとよいでしょう。また、浴室は水や石けんで滑りやすくなっています。利用者さんだけでなく、職員も転倒しないように滑りにくい長靴やサンダルなどを選びましょう。加えて、ゴム手袋があれば、衛生面で配慮でき、感染症の予防として役立ちます。
3.入浴介助の流れ

入浴介助の注意点は、入浴前後と入浴中とで異なります。それぞれの場面ごとに手順を把握しておくと、入浴介助を安全にスムーズに進められるでしょう。
入浴前
入浴前は次のような手順で入浴の準備をします。
1. お風呂にお湯をためる
2. 脱衣所や浴室の温度調節をする
3. 入浴の準備品を使いやすいようにセッティングする
4. 利用者さんの血圧・体温・脈拍などに異常がないかチェックする
5. 排せつを済ませておく
浴槽にためるお湯の温度は、38度〜40度の温度が適切です。浴室や脱衣所は、利用者さんを安全に介助しやすいようにセッティングし、脱衣所と浴室の温度差が大きくならないように室温を整えます。急激な温度差があると、脳梗塞や心筋梗塞の原因になるため注意が必要です。施設では入浴時間が決まっている場合が多いものの、可能であれば食事の直前や直後は避けましょう。入浴前には利用者さんの体調や顔色に変化がないか確認し、トイレを済ませてから入浴を促します。なかには、そのタイミングで入浴をしたくないと考える利用者さんもいます。本人の意思を尊重し、時間をずらしたり清拭に変更したりして、無理のない介助をしてください。
入浴中
入浴中は、次のような手順で介助します。
1. お湯で椅子や床を温める
2. 衣類を脱いでもらう
3. シャワー・浴槽の温度をチェックする
4. 洗髪・洗身をする
5. 利用者さんの状態に合わせて介助し、浴槽につかる
6. 体が温まったら、立ち上がりや歩行の介助をし、浴槽から出る
7. 軽く水分を拭き取り、脱衣所へ戻る
高齢になると、腕や脚の可動域が小さくなり、自身で衣類の着脱をするのが難しい方もいます。自分でできるところはしてもらい、難しいところは手伝うようにしましょう。体にお湯をかける前は必ず声かけをし、シャワーの温度を確かめてから、やさしくかけます。シャワーの温度が急に変わる可能性も考え、常に職員の手にシャワーが当たるようにしながら、流していきましょう。洗髪・洗身後はシャンプーや石けんの泡が体に残らないように十分に洗い流します。すすぎ残しがあると、皮膚トラブルや転倒を招きます。移動や浴槽をまたぐときは、手すりをしっかり握ってもらい、体を支えるように介助しましょう。
入浴後
入浴後の手順は、次のとおりです。
1. タオルで体や髪の水分を拭き取る
2. 必要であれば保湿をする
3. 衣類を着る
4. 髪を乾かす
5. 水分補給をする
6. 体調に変化がないかチェックする
入浴後はタオルで体や髪の水分を十分拭き取ります。胸の下や指の間など、皮膚が重なっている部分はきれいに拭き取りしにくいため、声かけをしながら介助します。水分が残っていると湯冷めしやすくなるため、拭き残しがないように注意しましょう。入浴後は疲れやすく血圧の変動も大きいので、座って着替えてもらいます。入浴後は水分補給を十分行い、脱水症状といった体調に変化がないか様子を観察します。
4.利用者さんの体を洗う手順

利用者さんの体は、基本的には上から順番に洗います。顔や頭は比較的清潔な部位であり、汚れが多い下半身から上半身へ汚れが移るのを防ぐためです。しかし、利用者さんの好みの洗い方もあるため、確認しながら洗うようにしましょう。
体を洗う手順
1. 足元からお湯をかける
2. 洗髪する
3. 上半身を洗う
4. 下半身を洗う
① 体にお湯をかけるときは、足元からゆっくりかけていきます。いきなり体にお湯をかけると、心臓に負担がかかります。シャワーで流すときはその都度、必ず介護員が温度を確認し、熱すぎたり冷たすぎたりしないように調整しましょう。体にかける前に利用者さんの手のひらにかけて、熱くないか確認してもらう方法もあります。
② 髪を洗うときは耳にお湯が入らないように、介護職員が片手で耳を押さえながら、片側ずつ流します。可能であれば、利用者さんに耳を押さえてもらいましょう。シャンプーする際は爪を立てずに指の腹で洗い、すすぎ残しがないように、しっかり洗い流します。顔や目にお湯がかかるのが苦手な方にはシャンプーハットを使用する方法もあります。
③ 上半身を洗うときは手先から腕といったように、末端から体の中心へ向かって洗います。高齢者の皮膚は薄いため、ゴシゴシ洗うと皮がすれて表皮剥離の原因になります。けがを予防するためにも、柔らかいタオルでやさしく洗いましょう。おなかや胸の下、そけい部などは洗い残しが出やすく、皮膚トラブルが発生しやすくなります。洗い残しがないように注意しましょう。
④ 下半身を洗うときは足の指の間など、手が届きにくい部分は介助し、陰部や肛門などのデリケートな部分や自分で洗える部分は洗ってもらいましょう。立ち上がってからも体を流し、足元までしっかり泡を流します。突然お湯をかけたり体に触れたりすると、利用者さんは驚いてしまいます。介助をするときは、1つの動作ごとに声かけをすることも重要です。
5.入浴介助で起こりやすいリスク

利用者さんは、入浴を楽しみにしている方が多いものの、危険も伴います。入浴介助には、次のようなリスクがあります。
- 転倒・滑倒・けが
- 溺水
- やけど
- 脱水症状
- 温度差による体調不良
浴室の床はぬれており、転倒しやすい環境です。利用者さんの体がぬれているため、介助の手も滑りやすくなります。加えて、利用者さんは裸なので、転倒時は体への衝撃も強くなります。転倒や滑倒によるけがが発生しないように、しっかり支える必要があります。
また、高齢者は筋肉量が減っており、浴槽に入ったときに体が浮きやすい傾向にあります。体が浮くとバランスを崩して溺れやすくなるため、体重の軽い方は半身浴を心がけましょう。介護員が体を支え、入浴してもらう方法もあります。
加えて、入浴時間が長くなると脱水症状が起きやすくなります。高齢者は体調が変わりやすいため、入浴時間は5分くらいを目安にして上がってもらうようにしましょう。冬場は温度差(ヒートショック)による心臓への負担も考え、あらかじめ浴室と脱衣所を温めておくことも大切です。
6.入浴介助の種類

入浴介助には次の3つの種類があり、利用者さんの体の状態や体調に合った対応が可能です。
- 一般浴
- 機械浴
- シャワー浴
次から解説します。
一般浴
一般浴は、複数人で使用できる共同浴槽や個浴を利用するもので、自立者や一部介助が必要な利用者さんに適した入浴方法です。ひとりで入浴したい方や感染症で共同風呂が使えない方は、個浴を利用します。浴槽の出入りや歩行時は転倒のリスクが高くなるため、けがや体調不良に注意し、転倒しないようにサポートするようにしましょう。
機械浴
機械浴は、特殊な浴槽やリフトを使用して入浴してもらう方法で、自立入浴が難しい方や寝たきりの方の入浴をサポートする方法です。機械浴は利用者さんが体を動かせなくても、安全に入浴してもらえる点がメリットです。利用者さんも介護職員にも負担が少ない方法だといえるでしょう。
機械浴にもさまざまな種類があり、座ったまま機械の中に入った後、下からお湯がたまっていくタイプや、たまったお湯に寝た状態のまま入るタイプもあります。特殊浴槽は椅子やベッドが固定されているのに対して、リフト浴は浴槽に設置し、椅子を機械で上下左右に動かして入ります。しかし機械浴に慣れないうちは、椅子の動きに驚く利用者さんも少なくありません。また、初めて機械浴を操作する介護職員には、操作に慣れるまで時間が必要かもしれません。操作時は、浴槽の温度や体の挟み込みに注意が必要です。
●関連記事:機械浴とは?種類と入浴介助で利用する際の注意点
シャワー浴
シャワー浴は、浴槽につからずシャワーだけで体を洗い流す方法です。短時間で全身を清潔にできるため、体力がないときや皮膚トラブルがあるときに対応できます。シャワー浴で体を温まってもらうためには、体にタオルを当ててシャワーをかけたり足浴をしたりすると体が温まりやすくなります。浴槽につかるときよりも、長めにシャワーを浴びてもらいましょう。
●関連記事:清拭介助の手順とは?全身清拭で配慮するべき注意点
7.入浴介助時のポイント

利用者さんのなかには、入浴があまり好きではない方もいます。職員としては、なんとか入ってほしいと考えてしまいますが、利用者さんにも入浴拒否をする理由があるため、気持ちに寄り添うことが大切です。
利用者さんが入浴を拒否する理由として、例えば「家のお風呂で転倒したことがある」「人前で服を脱ぐのが恥ずかしい」などの声をよく聞きます。入浴は好きでも、服の着脱が面倒だと感じたり、体調の変化に不安を感じていたりする方もいます。入浴拒否があった場合には、まず利用者さんと話をして、その後の対応を考えましょう。例えば、脱衣所での清拭や足浴に切り替えて、入浴の雰囲気に慣れてもらうことから始めるのもよいでしょう。
また、利用者さんは肌を見せることに対して、羞恥心や不安を感じることも少なくありません。服を脱がせるときはバスタオルなどを使用し、安心してもらえるような対応を心がけます。また、プライベートにかかわる部分はなるべく自分でしてもらい、利用者さんの確認を取りながら、介助するとよいでしょう。
●関連記事:入浴拒否をする利用者さんへの適切な声かけとは?
まとめ:入浴は利用者さんの楽しみの1つ!意思を尊重して安全に入浴してもらおう

入浴介助は、自分でお風呂に入ることが難しい方の入浴をサポートし、安全で快適に入浴してもらうものです。入浴は、利用者さんの清潔を保つことに加え、血行促進やリラックス効果など、利用者さんの心身にとってよいものです。しかし、安全で快適な入浴を提供するためには、転倒ややけどなどのリスクを常に意識し、適切な対策を取ることが不可欠です。利用者さんの気持ちやプライバシーに配慮しながら介助することで、より質の高いケアを提供できるでしょう。
●関連記事:
・介助とは?介護との違いや意味・仕事内容
・三大介護(三大介助)とは?それぞれの業務内容や役割
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入浴介助は、高齢者施設や在宅ケアセンターで働く際に発生する日常業務の一つです。また、身体を清潔に維持することは、人として生きていく上で必ず発生する欲求にあたります。入浴日を心待ちにする利用者のためにも、正しい知識を身に付けて、安全な入浴介助を提供しましょう。
この記事では、介護スタッフとして働く上で知っておきたい入浴介助の基礎知識を解説します。入浴介助のコツを知り、介護スタッフとしてのステップアップを目指したい人は、ぜひ参考にしてください。
入浴の目的と介護の心得
入浴には被介護者の身体を清潔に維持し、床ずれ・感染症を予防する効果が期待されます。肌に汚れがついた状態を放置することは、被介護者にとってのリスクです。そのため、定期的に入浴し、身体の隅々まで洗うことが求められます。また、身体を芯から温めて血液循環を促進し、筋肉の緊張をほぐすことも、入浴の目的の一つです。筋肉の緊張をほぐすことには、関節などの痛みを和らげる働きが期待されます。
さらに、入浴時間は被介護者の身体の状態を確認するよい機会です。洗体する際に被介護者の身体を観察し、肌の乾燥・傷・痣はないかを確認しましょう。
介護の現場で働く人が入浴介助する際に心掛けたいポイントは、下記2点です。
●被介護者の安全を最優先に考える
浴室は、急激な温度変化による体調不良や転倒事故を起こしやすい環境です。被介護者の安全を最優先に考えて、入浴介助にあたってください。
●被介護者のプライバシーに配慮する
入浴時間は本来、自分だけで過ごすプライベートな時間です。被介護者が「恥ずかしい」と感じることがないように配慮して、過剰な支援を控えましょう。「股間を洗う」などとくに恥ずかしさを感じさせるリスクの高い行為は極力、被介護者自身に任せることが理想です。
なお、近年利用者が増えている、自宅で利用者を介護をする訪問介護では、入浴に加えて排せつや食事、掃除なども行います。そのため、安全性やプライバシーの配慮に加えて、サービスの提供に必要な設備を用意しておくことも大切です。
(出典:厚生労働省「訪問介護・訪問入浴介護」)
入浴介助の手順
入浴介助をスムーズに実践するためには、一連の手順を把握しておく必要があります。また、入浴は被介護者の身体に対する負担が大きく、事故を起こすリスクの高い行為です。入浴介助の正しい手順やポイントを理解しておくことは、事故の防止に役立ちます。
ここで紹介する入浴介助の手順とポイントを十分に理解して、安全な入浴介助を実践しましょう。
準備の手順とポイント
入浴の予定日には、あらかじめ被介護者に声を掛けて、心の準備を整えさせます。被介護者の気分が乗らない日に無理強いすることは避け、一人ひとりの気持ちに配慮した介護を実践しましょう。入浴当日は下記の手順に従って、事前準備を進めてください。
●準備物を用意する
入浴介助には、バスタオル・着替え・ボディソープもしくは石鹸・爪切りが必要です。被介護者の状態によっては、シャワーチェア・転倒防止マット(浴室フロア用と浴槽内用)も準備しましょう。
●体調の確認を行う
被介護者の体温・血圧・脈を測定し、顔色や呼吸の状態を見て、健康チェックを行います。看護師同伴で入浴サービスを提供する場合は、被介護者の健康状態を相談し、入浴が可能であるかの判断をあおいでください。
●服を脱ぐ手伝いを行う
更衣介助の基本ルールは、麻痺や痛みのない側の腕・足から脱がせることです。麻痺や痛みのある部分に力を加えることがないように注意しつつ、上着・ズボンを脱がせてください。
★準備のポイント
(1)冬場は暖房器具を適時使用し、浴室や脱衣所を温めましょう
(2)介護スタッフは入浴介助を始める前に、濡れてもよい服装に着替えましょう
浴室や脱衣所の温度が低いと、寒暖差によるヒートショックを起こす危険性が高まります。浴室暖房や暖房器具を有効に活用し、浴室や脱衣所を、22度~25度程度に温めてください。
入浴中の手順とポイント
入浴は、シャワーチェアに腰掛けさせて全身を洗い、浴槽に入る流れで進めます。手順の詳細は、下記の通りです。
●身体を洗う
滑らないように注意しつつ、シャワーチェアに被介護者を腰掛けさせます。その後、心臓に遠い足先・手先から始め、体幹に近い部位へ進む流れで、洗体を進めてください。
●浴槽に入る
健常者には浴槽用手すりをつかませて、介護スタッフが身体を支えつつ、浴槽に入ってもらいます。身体に麻痺がある人の場合はシャワーチェアを用意して、麻痺のない側から先に、浴槽へ入れましょう。麻痺のある側は介護スタッフが介助し、安全面に注意して、浴槽へ入らせます。浴槽の中にいる時間は、5分~10分程度が目安と考えてください。
●浴槽を出る
急激に立ち上がると立ちくらみを起こすリスクがあるため、ゆっくり身体を起こさせます。浴槽のふちに一旦腰掛けてもらうと安全に、浴槽を出ることが可能です。麻痺がある人の場合はシャワーチェアを使用して、外側の足から順番に浴槽を出てもらいます。
★準備のポイント
(1)浴槽のお湯の温度は、38度~40度程度に設定しましょう
(2)シャワーチェアは、お湯を掛けて温めましょう
浴槽のお湯の温度が熱すぎる・冷たすぎる場合、適温となるまで入浴できません。待つ間に身体を冷やすと風邪のリスクがあるため、あらかじめ適温に設定しましょう。
入浴後の手順とポイント
入浴後は速やかに身体を拭き、湯冷めを防止することが大切です。その後、更衣介助や入浴後のサポートを提供します。
●服を着る手伝いを行う
脱がせる場合とは反対に、麻痺や痛みのある側の腕・足から服を着せます。可能であれば麻痺や痛みのない側は、自分自身で着てもらいましょう。
●入浴後のサポートを行う
入浴後は爪が柔らかくなるため、爪切りを行うよい機会です。被介護者を椅子に座らせて、白い部分を1mm~2mm残す程度まで、手や足の爪を切ってください。また、皮膚科で処方された軟膏・保湿剤を必要に応じて塗りましょう。
★準備のポイント
(1)入浴後は、身体状況に合う服を着せましょう
(2)水分補給用の飲み物を用意しましょう
身体の一部に麻痺や痛みのある被介護者には、着替えやすく柔らかい素材の服がおすすめです。かぶるタイプの服は着替えしにくいケースがあるため、注意しましょう。入浴後の水分補給を怠ると、脱水症状を引き起こすリスクがあります。血液中の水分が失われることで脳梗塞のリスクが高まるケースもあるため、十分な水分補給を行うように促してください。
入浴介助を行う際の注意点
最後に、入浴介助を行う際の注意点を解説します。注意点を意識することなく入浴介助にあたると、被介護者の尊厳を損なったり事故を招いたりする可能性があり、非常にハイリスクです。下記の内容を頭に入れておくことで、被介護者の心身の健康を保つことができます。
●被介護者が行えることは本人に任せる
過剰介護(被介護者の行えることまで支援すること)は、被介護者の自立を妨げるリスクがあります。被介護者が行えることの範囲を適切に見極めて、必要最小限の介助に留めることが大切です。
●絶対に目を離さないで介助する
介護スタッフの不注意に起因する入浴中の事故は、少なからず存在します。入浴介助中は被介護者から目を離さず、細心の注意を払い、サポートにあたってください。
●空腹時や食事直後の入浴を避ける
空腹時の入浴は、脱水や血糖値の低下によるめまい・貧血などを引き起こすリスクがあるため、推奨されない行為です。食事直後の入浴は、胃腸の働きを低下させて消化吸収不良を引き起こすリスクがあります。食事後に入浴させる場合は1時間程度、時間をあけるとよいでしょう。
まとめ
入浴は、心身のリラックスを促すとともに被介護者の身体を清潔に保ち、感染症を防止するためのよい手段です。入浴時間を有効に活用するためには、介護スタッフが正しい知識を持ち、適切な介助を提供する必要があります。
なお、介護スタッフとしてステップアップするためには、入浴介助以外の業務の知識も深めることが大切です。「介護のみらいラボ」では、介護スタッフに役立つ情報を多数掲載しております。ワンランク上の介護スタッフとして、高齢者や高齢者の家族を支援したい人はぜひ「介護のみらいラボ」をご参考ください。
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