社会福祉士はやめとけと言われるのはなぜ?働くメリットや向いている人を解説
文/倉元せんり(社会福祉士)
社会福祉士を目指している方のなかには、WebメディアやSNSで「社会福祉士はやめとけ」といった口コミを見て、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
社会福祉士は、さまざまな困難を抱えるクライアントの生活の質を高め、社会全体の福祉向上に貢献できるやりがいのある仕事です。しかし、人間関係にストレスを感じたり、努力が報われにくかったりと、精神的な負担を感じることも多くあります。
本記事では、社会福祉士はやめとけと言われる理由を解説するとともに、社会福祉士として働くメリットや、やりがいについても紹介します。社会福祉士になりたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 目次
- 1.社会福祉士はやめとけと言われる5つの理由
- 人間関係にストレスを感じやすい
- 努力が報われにくい
- 離職率が高い
- 給料が低い
- 処遇面での評価が十分でない
- 2.社会福祉士として働くメリット
- 社会的信頼を得やすい
- 就職や転職の幅が広がる
- スキルアップの機会が得やすい
- AIに代替されにくい
- 3.社会福祉士に向いている人
- 福祉分野に興味がある人
- 責任感が強い人
- 人と関わるのが好きな人
- 協力して仕事をするのが得意な人
- 4.社会福祉士のやりがい
- 支援によってクライアントの生活の質を高められる
- 人から感謝される機会がある
- 福祉分野で幅広く必要とされる
- 5.社会福祉士はやりがいのある仕事!興味があるなら挑戦してみよう
1.社会福祉士はやめとけと言われる5つの理由
社会福祉士はやめとけと言われる理由として、以下の5つが考えられます。
- 人間関係にストレスを感じやすい
- 努力が報われにくい
- 離職率が高い
- 給料が低い
- 処遇面での評価が十分でない
1つずつ詳しく紹介します。
人間関係にストレスを感じやすい
社会福祉士は、日常生活に問題や困難を抱えたクライアントを支援する役目を担います。そのため、クライアントからネガティブな感情をぶつけられることや、生活習慣、価値観の違いに直面することも少なくありません。時には、クライアントから強い口調で罵られたり、他職種から無理な調整を依頼されたりする場合もあります。
それを踏まえるなら、人間関係にストレスを感じやすく、精神的な負担が大きい職種と言えるでしょう。
努力が報われにくい
社会福祉士の仕事は、長期的な関わりを必要とするケースが多く、支援の成果が目に見えにくいのが特徴です。クライアントの自己決定を尊重しながら支援を続けていても、思うような成果が得られず、クライアントとの関係性が悪化してしまう場合もあります。
また、制度や社会資源には限界があるため、適切なサービスを提供できないケースや、問題解決の手段が見つからないケースもあります。
このように、日々の努力や熱意が成果につながらない場合は、「報われない」と感じてしまうかもしれません。
離職率が高い
社会福祉士のなかには、過重な業務負担や精神的なストレスにより、心身のバランスを崩して離職する人が少なくありません。2020(令和2)年度に公益財団法人社会福祉振興・試験センターが行った調査によると、約3割の社会福祉士が「心身の健康状態の不調」を理由に離職したと回答しています。
特に、経験の浅い社会福祉士は、理想と現実のギャップからバーンアウトしやすく、早期に離職してしまう傾向にあるようです。
給料が低い
福祉業界全体の給与水準は、他業種と比較して低い傾向にあります。社会福祉士を含む福祉ソーシャルワーカーと、すべての給与所得者の給料の違いは、以下の通りです。
職種 | 平均年収 |
---|---|
社会福祉士などの福祉ソーシャルワーカー※1 | 425万円 |
すべての給与所得者※2 | 460万円 |
(※1 出典:職業情報提供サイト(日本版O-NET))
(※2 出典:令和5年分 民間給与統計調査)
社会福祉士などの福祉ソーシャルワーカーの平均年収は、すべての給与所得者に比べて30万円以上低い水準となっています。精神的な負担が大きいにもかかわらず給料が低いことで、「割に合わない」と考えている人もいるでしょう。
処遇面での評価が十分でない
社会福祉士は業務独占の資格ではないため、資格の有無による処遇の差が小さい傾向にあります。職場によっては、資格手当が少額もしくは設定されていない状況で、資格取得のための努力が待遇に結びついていません。
専門職としての評価・待遇が十分でないことで、徐々に仕事へのモチベーションが低下するケースもあるでしょう。
2.社会福祉士として働くメリット
社会福祉士はやめとけと言われる一方で、社会的信頼を得やすかったり、就職・転職の際に評価されやすかったりするメリットもあります。
ここでは、社会福祉士として働くメリットを4つ紹介します。
社会的信頼を得やすい
社会福祉士は福祉分野の国家資格であり、専門知識とスキルを持つ専門職として公的に認められた存在です。無資格でも相談員業務はできますが、国家資格を持つ社会福祉士は、クライアントや家族にとって「より安心して相談できる相手」であり、信頼も得やすいでしょう。
他職種との連携においても、専門性を持つ支援者として認められ、スムーズな協力関係が築きやすい立場にあります。
就職や転職の幅が広がる
社会福祉士の資格があると、高齢者や障害者分野、児童分野など、自身の興味や適性に合わせた分野で活躍できるため、経験やキャリアの幅を広げやすくなります。
また、医療ソーシャルワーカーなど一部の職域では、社会福祉士の資格が採用の必須条件となっているため、たとえ未経験であっても、就職・転職のチャンスが広がるでしょう。
スキルアップの機会が多い
社会福祉士には、スキルアップためのさまざまな学習機会が用意されています。各都道府県の社会福祉士会が開催する研修に参加したり、認定社会福祉士制度を活用したりすることで、体系的な学習ができるでしょう。
また、精神保健福祉士や介護支援専門員などの関連資格を取得して、福祉分野の専門性をさらに高めることもできます。
このように、意欲のある方であれば、着実にスキルアップ・キャリアアップできる環境が整っているのも、社会福祉士として働くメリットです。
AIに代替されにくい
近い将来、多くの仕事がAIやロボットなどに代替されると言われています。しかし社会福祉士の仕事には、クライアントの状況に応じた柔軟な支援ときめ細やかなコミュニケーションが必要です。
そうした個別性の高い対人支援はAIによる対応が難しいため、将来的にも社会福祉士の専門性や存在価値は維持されると考えられます。
3.社会福祉士に向いている人
社会福祉士はやめとけと言われることもありますが、以下のような人は社会福祉士に向いています。
- 福祉分野に興味がある人
- 責任感がある人
- 人と関わるのが好きな人
- 協力して仕事をするのが得意な人
1つずつ詳しく紹介します。
福祉分野に興味がある人
社会福祉士は、社会保障制度や福祉サービスに関心があり、社会全体の福祉向上に貢献したいという意欲を持っている人に向いています。なお、福祉分野には、高齢者福祉や障害者福祉、児童福祉などさまざまな領域があり、幅広く学び続ける姿勢が求められます。支援を必要とする人の気持ちに寄り添い、問題解決に向けて積極的に行動する姿勢も必要とされるでしょう。
責任感が強い人
社会福祉士は、支援を必要とする人の生活に深く関わる仕事なので、強い責任感を持って取り組める人が向いています。仕事をするにあたっては、引き受けた支援に責任を持って対応し、約束したことは必ず実行する誠実さが求められます。また、相談者のプライバシーを守り、専門家として適切に判断することも大事です。
誠実なコミュニケーションができる人
社会福祉士の仕事では、さまざまな価値観や生活背景を持つ人たちと関わります。そのため、相手の話をよく聞き、誠実なコミュニケーションができる人や、積極的に信頼関係を築こうとする人が向いています。困難な状況にある方と関わるケースもあるため、精神的なストレスに適切に対処できる「強さ」を持っていることも大切です。
協力して仕事をするのが得意な人
社会福祉士の仕事は、1人で完結できるものではありません。多職種連携やチームアプローチが基本となるため、ほかの専門職と協力しながら、さまざまな支援に取り組める人が向いています。異なる専門職の意見を尊重し、適切に調整するためのコーディネート力も求められるでしょう。
4.社会福祉士のやりがい
社会福祉士の仕事は大変なことも多いですが、クライアントに適切な支援ができたときやまわりから感謝されたときなど、やりがいを感じる場面も少なくありません。
ここでは、社会福祉士の仕事のやりがいについて解説します。
支援によってクライアントの生活の質を高められる
社会福祉士としてクライアントに適切な支援を提供できたときは、大きな達成感があります。
私は以前、医療ソーシャルワーカーとして病院に勤務し、入院患者さんの支援に携わっていました。治療を終えて退院するときは、本人だけでなくご家族も「身の回りのことを自分でできるだろうか」「仕事に復帰できるだろうか」など、大きな不安を抱えています。そうした不安な思いに丁寧に耳を傾け、解決方法を考えていくなかで、「あなたに相談してよかった。頑張ってみる」という言葉をいただいたときは、支援者冥利に尽きる思いでした。
社会福祉士は、社会参加の方法を一緒に考えたり、複雑な課題を整理したりすることで、クライアントがよりよい生活を送れるようにサポートします。直接的なリハビリや介護は行いませんが、そうした支援を通じてクライアントが前向きになっていく姿を見ると、支援者として大きなやりがいを感じるでしょうです。
人から感謝される機会がある
支援を通じて、クライアントやご家族から「ありがとう」という言葉をいただけることは、何物にも代えがたい喜びです。特に、支援を受け入ることに消極的だったクライアントが、信頼関係を築くなかで心を開き、感謝の言葉を伝えてくれたときは、社会福祉士としての仕事の価値を強く実感できます。
また、他の専門職から支援内容を評価され、感謝されることも、専門職としての自信につながります。
福祉分野で重要な役割を果たせる
社会福祉士は専門性の高さから、福祉分野のさまざまな場面で重要な役割を果たします。ケース会議でコーディネーターとして中心的な役割を果たしたり、地域の福祉課題に対して新しい支援の仕組みを提案したりするのも、その一例と言えるでしょう。
また、経験と知識を重ねることで、後進の社会福祉士への指導や助言ができるようになるのも、専門職としてのやりがいの1つです。
5.社会福祉士はやりがいのある仕事!興味があるなら挑戦してみよう
社会福祉士は、さまざまな困難を抱える方を支援し、生活をよりよくするやりがいのある仕事です。人間関係のストレスが大きかったり、離職率の高かったりするため、やめとけと言われることもありますが、社会的な信頼が得やすい点や、福祉分野で幅広く活躍できる点は大きなメリットと言えます。
福祉に関心があり、支援を必要とする方を支えたいと考えている人は、ぜひ社会福祉士に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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