介護でのコミュニケーションの必要性・種類・上手に取るポイントを解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部介護の現場は、利用者や家族など人と関わる場面が多いため、高いコミュニケーション能力が求められます。しかし、言葉だけでは利用者に伝わらないケースも多く、どのようにコミュニケーションを取れば良いか悩むケースもあるでしょう。
当記事では、介護現場におけるコミュニケーションの必要性や言語的・非言語的に分類したコミュニケーションの具体例を紹介します。相手に合わせてさまざまなコミュニケーションの方法を試してみてください。
1.介護におけるコミュニケーションの必要性
コミュニケーションというのは、「自分の思いや感情、思考などを誰かと伝え合うこと」です。コミュニケーションの手段には、言葉で伝える「会話」や、体を使って表現する「ジェスチャー」があります。
介護職では、下記のようにさまざまな人とのコミュニケーションが求められます。
・利用者とのコミュニケーション
利用者のなかには、高齢で視覚や聴覚機能が低下していたり、認知症でスムーズな伝達ができなかったりと、対応に配慮が必要な方もいます。そのため高齢者介護の現場で働く際は、利用者の状況に合わせて、コミュニケーション方法を工夫する必要があります。
・職員同士のコミュニケーション
介護現場では、フルタイムやパートタイムなど、さまざまな勤務形態の介護職員がシフト制で働くのが一般的です。シフトの交代時には短時間で利用者の様子やその日の業務を伝えなければなりません。高齢者は日によって体調や気分が変化しやすいため、事故やトラブルを防止するためにも、職員同士の適切なコミュニケーションは重要です。
・利用者の家族とのコミュニケーション
利用者の家族に、施設で生活する利用者の様子を伝えることは、介護職の重要な役割。その日の様子や体調の変化などを丁寧かつ正確に伝えるには、こまめなコミュニケーションが必要です。困った時に相談できる信頼関係を築くことも大切でしょう。
介護現場では、利用者、職員、家族など多くの人と連携して仕事をするため、高いコミュニケーション能力が必要です。言葉やジェスチャーなどさまざまな方法を使って、相手に伝わるコミュニケーション方法を選択しましょう。
2.介護におけるコミュニケーションの種類
介護業界のような対人援助の世界では、相手の意図を正確にくみ取り、自分の思いを伝わりやすく表現するためのコミュニケーションが欠かせません。基本的には情報伝達の手段として扱われるコミュニケーションですが、下記のような多様な捉え方もあります。
【コミュニケーションの捉え方の例】
・一方的なものではなく、お互いが参加して双方向に行き交うものである
・相手と何かを共有するための「手段・道具」としての性格が強い
・高齢者の孤立を防止し、自我の確立に役立てることができる
・コミュニケーションは「する」ものではなく、複数人がいるだけで自然に「ある」ものだと捉える
上記のようにさまざまな捉え方があるため、自分の意図していないことであってもすべての行動がコミュニケーションにつながります。
また、コミュニケーションは「言語的コミュニケーション」と「非言語的コミュニケーション」の2つに分類されます。それぞれの主な内容は下記の通りです。
言語的コミュニケーション | 非言語的コミュニケーション |
---|---|
・話す言葉(あいさつ、会話など) ・手紙、メール |
・ジェスチャー ・合図 ・見た目(しぐさ、表情など) |
ここでは、「言語的コミュニケーション」と「非言語的コミュニケーション」について詳しく説明します。
言語的コミュニケーション
言語的コミュニケーションとは、あいさつや会話、手紙など言葉を使って相手に伝える方法です。言語的コミュニケーションを伝達手段に着目して分類すると、下記の通りになります。
音声言語 | 直接の対話や電話などで伝える話し言葉 |
---|---|
文字言語 | 手紙、メールなどで伝える書き言葉 |
記号 | 点字や手話などで伝える表象された言葉 |
また、伝える内容に着目すると、主に下記の2つに分類されます。
要求伝達系 | 「ティッシュを取って」「皿を洗って」など、明確な目的のために相手を動かす言葉 |
---|---|
相互伝達系 | 「おはよう」「今日も雨だよ」など、相手と関わることを目的とした言葉 |
自分の思いや考えを相手にストレートに伝えたい時は、言語的コミュニケーションを意識すると効果的です。相手に合った手段で、円滑なコミュニケーションを実現しましょう。
非言語的コミュニケーション
非言語的コミュニケーションとは、表情や視線、声のテンポなど、言葉以外の要素(視覚・聴覚)で相手に伝える方法です。人間は視覚・聴覚から93%の情報を得ているというデータもあり、非言語的コミュニケーションは情報をやりとりする重要な手段だといえます。
非言語的コミュニケーションを伝達手段に着目して分類すると、下記の通りになります。
近言語(バラ言語) | 声の大小・テンポ、言葉の連続性など、話す言葉の表情 |
---|---|
身体表現 | 容姿や化粧、髪型、視線、姿勢など相手の身体の表情 |
物 | 服装、所有物、創作物など持っている物に現れる自我 |
話す言葉よりも先に、視覚・聴覚から相手が情報を得るケースは少なくありません。話す相手に合わせた身だしなみや声の表情を意識することで、より良い信頼関係の構築につながるでしょう。
3.介護の現場で利用者と上手にコミュニケーションを取るポイント
高齢者のなかには、言葉での意思疎通がスムーズでなかったり、何度も同じ話を繰り返したりと、コミュニケーションに悩む人が多く見られます。
ここでは、介護業務のなかで利用者とコミュニケーションを取る際に役立つポイントを5つ紹介します。
●声のトーンを低くしつつ明瞭に話す
高齢者は周波数の高い音が聞き取りにくいため、声のトーンを低くして話しましょう。ただし、大きすぎる声の場合、怒鳴っていると感じる高齢者もいます。口元がよく見えるよう明瞭に話しかけると、しっかり伝わります。
目線を合わせて話す
相手と目を合わせて話すことで、相手に伝わりやすくなります。また、話を聞く時にもアイコンタクトを意識すると、しっかり話を聞いていることが伝わります。より良い信頼関係を構築するには、相手と目線を合わせて話す・聞くのが効果的です。
●聞き上手になる
介護の現場では、相手の話にしっかり耳を傾ける「傾聴」の姿勢が重要です。利用者や家族のなかには不安や不満を抱える人も少なくありません。親身になって相手の話を聞き、受け入れることで、介護者への信頼感や印象アップにつながります。
●表情やしぐさにも気を付ける
表情やしぐさなど、言葉以外の非言語的コミュニケーションをうまく使うこともポイントです。利用者の話を聞く時に、無表情であったり腕を組んだりすると、不信感を与える可能性があります。身だしなみに気を配り、話の内容に合わせて表情やしぐさをコントロールしましょう。
●相手の価値観に共感する
自分の気持ちと違ったとしても、一旦は相手の価値観を受け入れるように意識しましょう。ただし、さまざまな価値観を受け入れたからといって、すべての期待や要望に応える必要はありません。信頼関係を継続させるには、相手の価値観に共感した上で、「できないことはできない」と伝えることが重要です。
上記5つのコツは、コミュニケーションの基本であり、こうした日々の積み重ねが利用者との信頼関係構築に結びつきます。相手に寄り添った話し方・聞き方を意識して、上手なコミュニケーション方法を身につけましょう。
4.介護の現場で求められるカウンセリングの基本的態度
介護の現場で、利用者や家族とコミュニケーションを取る際には、カウンセリングの基本的態度である「受容」「傾聴」「共感的理解」を意識することが大切です。
受容 | 相手の考えを否定も肯定もせずに受け入れることです。相手の話を聞くなかで、「この意見は間違っている」と感じても、一旦はすべて受け止めます。 |
---|---|
傾聴 | 相手の話に真摯に耳を傾けることです。分からないところは質問するなどすると、「自分の話をしっかり受け止めてくれている」と好意的に受け取ってもらえます。 |
共感的理解 | 相手の立場で話を理解しようと努めることです。自分とは価値観が違う相手だとしても、自分ごとのように喜んだり怒ったりする態度を示します。 |
自分と違う価値観を持つ「相手」の話を聞くことに、とまどいや疲れを感じる方もいるでしょう。しかし、介護の現場では自分自身の感情を一旦抑え、カウンセリングの基本的態度を活用したコミュニケーションを心がけることが大切です。
まとめ
介護スタッフが利用者との信頼関係を築くためには、コミュニケーションスキルを高めることが重要です。意思や感情は、言葉だけでなく表情やしぐさ、見た目などの非言語的コミュニケーションによっても伝えることができます。利用者に合わせたコミュニケーションを考慮し、お互いの思いを正確に伝え合える関係を目指しましょう。
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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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