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高齢者レクリエーション 高齢者レクリエーションのノウハウ 2022/10/27

#認知症ケアの現場から

認知症がある利用者さんに塗り絵を提供する時のポイント|認知症ケアの現場から(1)

文・写真/安藤祐介 D兼サムネイル.jpg

文:安藤祐介(作業療法士)

介護現場では認知症がある利用者さんに、日中の作業活動として塗り絵を提供することがあると思います。塗り絵は準備も容易で、利用者さんが余暇を楽しみ、集中して取り組むことで心身を賦活する効果も期待できる活動ですが、提供の仕方次第では楽しさを感じていただけず、短時間で手が止まってしまうこともあります。そこで本記事では、認知症がある利用者さんに塗り絵を提供する時のポイントを6つご紹介します。

1.ポイント①姿勢を整える

塗り絵をする時の姿勢が崩れていると、色鉛筆を持つ手が動かしにくかったり、手元が見えにくかったりして、十分に活動を楽しめなくなります。車椅子に座っている利用者さんは臀部を座面の奥まで座り直す介助を行い、前傾姿勢を取りやすくすると共に、両足を高さの調整されたフットサポートに乗せてもらったり、足台に乗せてもらったりしましょう。

また、家具の椅子での座位保持が可能な利用者さんは車椅子から椅子への移乗介助を行うことで、より活動的で安定した座位姿勢を取ってもらうことができます。

●関連記事:【作業療法士監修】移乗介助の正しい方法―コツや注意点も

2.ポイント②無理に提供しない

作業活動はご本人のやりたい気持ちが大切です。「塗り絵のお時間なのでやりましょう」といった一方的な提供の仕方では意欲に結びつかない利用者さんがいるので、「季節の作品作りに協力してくれませんか」「お時間があったら1枚だけお願いできませんか」など声かけを工夫し、導入が円滑になるように働きかけます。

"ぬりえ"という言葉に稚拙な印象を抱いていたり、抵抗感を示したりする利用者さんには「色付けをしてもらうお仕事です」「座ったままできる簡単な手作業なのですが」など関心を示してもらえるように声かけしますが、無理強いはしないようにします。

3.ポイント③取り組みやすい環境

塗り絵の紙だけを渡すと塗っている最中に紙が動いてしまい上手く塗れなかったり、紙が破れてしまい失敗体験につながったりする利用者さんがいるので、紙を固定できるバインダーなどに挟んだ状態で提供します。

また、どの色を使用すればいいのか混乱しやすい利用者さんは、色鉛筆を似た色同士で区分けしたり、あらかじめ必要な色だけを用意したりします。事前準備として、先が丸くなった塗りにくい色鉛筆は削ったり、全体が短くなり持ちにくいものは新しい色鉛筆に交換したりと、利用者さんに失礼にならないような配慮も欠かせません。

4.ポイント④利用者さんに応じた段階付け

提供する塗り絵が職員から見て綺麗な図案でも、認知症がある利用者さんが複雑で理解しにくいものや馴染みのないキャラクター関連のものを長時間集中して取り組むことは困難です。認知症の進行度合いにもよりますが、重度の利用者さんほど書かれている線が多く、立体的な図案は理解しにくいため、線の1本1本が太くて視認しやすく、何が書かれているのかわかりやすいシンプルな図案のほうが取り組みやすいです。

例えば、認知症が中~重度の利用者さんに、秋の作品として柿の塗り絵を提供するのであれば、実とヘタを太い線で見やすく書いた上で、活動への耐久性に応じて柿が1~3つのものを用意したり、複数の色を使い分けるのが難しい方にはあらかじめ柿の実をオレンジ色に塗り、ヘタだけ塗ってもらうものを用意したりすると、利用者さんの状態に応じた段階付けがしやすくなります。

また、塗り絵の図案はインターネットや介護雑誌などから入手したものでも対応できますが、職員が手書きすることで「この柿、私が書いたんですよ」「あんまり上手じゃないけど一生懸命書いたので塗ってくれませんか」など導入時の声かけがしやすくなることもあります。

●関連記事:高齢者に寄り添うコミュニケーションの方法と5つのポイント

5.ポイント⑤労いの言葉

塗り絵が終了したら利用者さんに感謝の気持ちを表し労いの言葉をかけます。この時は「よく塗れていますね」「すごいですね」といった抽象的な言葉よりも、「はみ出しなく丁寧に塗れていますね」「色々な色が使われていて華やかですね」など取り組みの様子や作品の良い所を具体的に伝えると「この人はよく見てくれている」「やってよかった」と思えて次回の活動への意欲に結びつくやすくなる利用者さんがいます。

6.ポイント⑥飾り付けの工夫

D兼サムネイル.jpg

塗り絵はそのまま壁や居室に飾るだけでも作品として成立しますが、他の利用者さんと協力して季節の掲示物などに転用することができます。

例えば、完成した柿の塗り絵を利用者さんの許可を得た上でハサミの扱いが上手な方に切ってもらい、次に張るのが得意な方に紐などに貼り付けてもらうことで、柿の吊るし飾りとしてもう1つの作品を完成させることができます。その作品をフロアなどに張り出すことで塗り絵をやった方々もさらに満足度や貢献した気持ちが高まったり、「あの柿は私が塗ったのよ」「あの柿はあんまり美味しそうじゃないね」など利用者さん同士の話が弾むこともあります。

利用者さんの中には塗り絵は苦手だけどハサミで切るのが好きな方や、夢中になってノリで貼り付けてくれる方など、得意や好みや適応も人によって様々なので、利用者さんに合わせて活動の幅を広げられるとより作業活動の場が盛り上がると思います。

素材選びの参考にしたい「高齢者向け塗り絵」一覧はこちら

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安藤祐介(Yusuke Ando)

作業療法士

2007年健康科学大学を卒業。作業療法士免許を取得し、介護老人保健施設ケアセンターゆうゆうに入職。施設内では認知症専門フロアで暮らす利用者47名の生活リハビリを担当し、施設外では介護に関する講演・執筆・動画配信を行っている。

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