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仕事・スキル 介護士の常識 2022/09/13

【作業療法士監修】寝衣交換の手順と注意点・スムーズに行うコツも解説

構成・文/介護のみらいラボ編集部 7.jpg

寝衣交換は、自力で着替えができなくなった利用者さんに対して行う介助行為の一つです。

「着替えをサポートする」というシンプルな介助ですが、適切なタイミングでスムーズに実施しなければ、利用者さんに痛みやストレスを与えてしまう可能性があるため、介助者は、適切な知識・技術を身につけておく必要があります。

そこで今回は、寝衣交換の概要や詳しい実施目的から、寝衣交換の手順とコツ、実施時の注意点までを徹底的に解説します。

1.寝衣交換とは?実施する目的も紹介

寝衣交換とは、「要介護者の苦痛を最小限に抑えつつ、ベッドの上で汗や排せつ物、食べ物などで汚れた寝衣(パジャマなど)を新しいものに取り替える介助行為」のことです。着脱介助、更衣介助とも呼ばれ、高齢者施設で働く介護職だけでなく、医療機関で働く看護師も行います。

寝衣交換を実施する主な目的として、「衛生環境の改善」が挙げられます。清潔な寝衣に交換することで、皮膚を清潔に保てるだけでなく、利用者さんの精神面を含めた衛生環境を改善することも可能です。

厚生労働省が発表している「訪問介護のサービス類型」では、各介護内容に応じて「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分類分されていますが、寝衣交換は更衣介助の一種とみなすことができるため、「身体介護」にあたります。

身体介護 ● 介護サービスの準備・記録
● 排せつ・食事介助
身体整容・更衣介助
体位変換・移動介助(移乗介助)・外出介助
起床介助・就寝介助
● 服薬介助
● 自立生活支援の見守り・援助
生活援助 ● 介護サービスの準備
● 掃除
● 洗濯
ベッドメイク
● 衣類整理・補修
● 調理・配膳
● 日用品の買い物
通院等乗降介助 ● 乗車・降車介助
● 乗車前・降車後の手続きや移動介助

(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」

2.寝衣交換を行う方法・手順

寝衣交換は、一見するとシンプルな介助のように思えますが、適切に行わないと利用者さんが痛みやストレスを感じたり、けがをしたりする可能性があります。そのため、十分な介護技術・知識を身につけておくことはもちろん、事前の準備もしっかり行っておきましょう。

ここからは、寝衣交換を行う方法と手順を、上半身と下半身に分けて詳しく説明します。

上半身

ベッドの上で寝衣交換を行う必要のある利用者さんの場合、寝衣交換を行いやすくするために、前開きの上着を着用してもらう必要があります。ここでは、前開きの上着を着用していることを前提とした寝衣交換(上半身)の方法を順に解説します。

(1)寝衣交換の準備をする
利用者さんが突然の介助に驚いてしまわないように、「寝衣交換をしますよ」「服を着替えましょうか」などと伝えた上でベッドの高さを調節します。この時、直後に行う動作についても声かけしながら介助を進めることがポイントです。

(2)上着のボタンをすべて外し、両肩の部分を脱がせる
利用者さんにあおむけになってもらい、声かけをしながら上着のボタン(あるいはファスナー)をすべて外します。ボタンを外し終わったら、肩の部分だけ上着を脱いだ状態にします。この後、横向きでしっかり脱がせていくので、ここでは肩から上着が外れる程度で問題ありません。

(3)体を横向きにし、袖を片腕から抜いて、着替えの袖を通す
利用者さんを横向きにしてやや腕を伸ばしてもらったら、上になった側の袖を丁寧に脱がせます。その後、着替えの服の袖を通し、肩から背中まで着せてください。次に、一度あおむけになってもらい、もう一方の袖も同様の手順で介助します。

(4)体をあおむけにして、前部分のボタンをすべて留めたら完了
両腕の袖通しが終わったら、体を再度あおむけにし、上着のボタンをすべて留めます。ボタンを留め終わったら、細かなシワやたるみを整えて完了です。

下半身

下半身の寝衣交換について、手順を説明します。全体的な流れとしては、上半身→下半身が一般的ですが、どちらから行っても問題はありません。

(1)寝衣交換の準備をする
上半身の寝衣交換と同様、突然の介助に利用者さんが驚かないように声かけから始めます。ベッドの高さを調節し、「今からズボンを交換しますよ」と利用者さんにも協力をあおぎましょう。

(2)片手で利用者さんの膝下を抱え、もう一方の手で足裏を支えながら膝を立てる
ベッドの高さを調節したら、片腕を添えるようにして利用者さんの膝下を抱え、もう一方の手で足裏を支えながら膝をゆっくりと立てましょう。

(3)膝を支えながらズボンを少しずつおろし、完全に脱がせる
膝を立てたら、足裏を支えていた手を膝上に置いて、膝を支えながらもう一方の手でゆっくりとズボンをおろしていきます。この時、体を少し傾けたり、片側ずつ下げたりしながら丁寧に行うことがポイントです。膝下から足首あたりまでズボンをおろしたら膝を伸ばしてもらい、足首を支えながら完全にズボンを脱がせましょう。

(4)着替えのズボンを足先から通す
着用していたズボンが完全に脱げたら、足先から着替え用の新しいズボンを通します。足を伸ばしてもらったまま、かかとから足首、ふくらはぎにかけて手の内側で支えながら行うのがポイントです。

(5)膝を立てたら少しずつズボンを上げ、太ももまで上がったら膝を伸ばしてウエストまで上げる
両足に着替えのズボンを通したら、再度膝を立てて、ズボンを少しずつ上げていきましょう。膝上から太もものあたりまで上がったら膝を伸ばしてもらい、片側ずつウエストまで上げていきます。ウエストまで上がったら、細かなシワやたるみを整えて完了です。

3.寝衣交換をスムーズに行うコツ

寝衣交換をスムーズに行うためには、下記のコツを押さえておきましょう。

●着脱しやすい服を選ぶ
前開きでない服や伸縮性のない服は着脱しづらく、寝衣交換を受ける利用者さんや介助する職員に負担がかかる可能性があります。ボタンやファスナーのある服や伸縮性のあるスウェットなど、着脱しやすいものを選びましょう。

●脱健着患を心がける
体の片側に麻痺のある利用者さんの寝衣交換を行う際は、「脱健着患(だっけんちゃっかん)」を意識しましょう。脱健着患とは、「衣服を脱ぐ時は麻痺のあるほうから、着る時は健康なほうから行う」という意味で、そうすることで無理なく衣服の着脱ができます。

●常に声かけをする
動作を行う前に、次の動作についての声かけをしないと、何をされるかわからない利用者さんが、意図しない部位に力を入れてしまう可能性があります。スムーズに寝衣交換を行うためにも、動作が変わる際には必ず声かけをするように心がけましょう。

4.寝衣交換を行う際の注意点4つ

寝衣交換を行う際は、下記の点に注意してください。

●部屋の温度調整をする
着替えの際は、肌の露出が増えます。室内が低いと体を冷やしてしまう可能性があるため、事前に室内温度を調節しておきましょう。

●プライバシーに配慮する
普段は見せない部分の肌を露出することとなるため、利用者さんが他人に見られることを嫌がる可能性もあります。そのため、周囲に他の利用者さんや職員がいない状態で行う、露出してしまう箇所にバスタオルをかけるなど、プライバシーには十分配慮しましょう。

●皮膚状態の観察を忘れずに行う
着脱介助の際は、皮膚が乾燥していないか、傷やあざがないか、褥瘡ができていないかなど、皮膚状態をチェックする必要があります。早期発見・早期治療に努めることが、重症化の予防につながるため、日々の変化や異常を見逃さないようにしましょう。

●残存能力を活用する
利用者さんに可能な限り自立した生活を送ってもらうためにも、できることは極力自分でやってもらうことが重要です。寝衣交換においてもすべてを介助するのではなく、利用者さんの残存能力を活用して、「できない部分だけをサポートすること」を心がけましょう。残存能力を活用することは、身体機能の維持だけでなく、利用者さんの尊厳を守ることにもつながります。

まとめ

汗や排せつ物などで汚れた寝衣をベッドの上で取り替え、清潔な状態にする介助行為が「寝衣交換」です。寝衣交換を行うことで、皮膚を清潔に保てるだけでなく、利用者さんの精神面を含めた衛生環境を改善することができます。

寝衣交換の際は、上半身・下半身でやり方が異なるため、手順を1つずつ確認しながら、ゆっくりと丁寧に行いましょう。また、常に声かけをしたり、利用者さんの残存能力を活用したりすることも大きなポイントです。

「介護のみらいラボ」では、新人介護職をはじめとした介護業界で働く方たちに、有益な情報を提供しています。寝衣交換のほか、日々の業務で役立つ基礎知識を身に付けたいという方は、ぜひほかのコラムも参考にしてみてください。

※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

寝衣交換は記事に書かれているようにベッドに寝た姿勢(臥位姿勢)で行う場合もあれば、ベッドや車椅子に座った状態(座位姿勢)で行う場合、手すりなどに掴まり立った状態(立位姿勢)で行う場合もあり、取っている姿勢によって介助時の難易度が変わります。

私たちが衣服を着替える場面に照らし合わせて考えるとわかりやすいと思いますが、多くの方が日々の着替えを座位姿勢や立位姿勢で行っており、臥位姿勢で行う方はごくわずかなのではないでしょうか。それは臥位姿勢が身体の多くの部分がベッドに接しており、座位姿勢や立位姿勢に比べて身体を自由に動かしにくく、着替えに適した姿勢ではないからです。

ベッドに寝ている利用者さんの寝衣交換を行う際も、一時的にでも座位姿勢や立位姿勢になることが可能であれば、その姿勢を取り入れながら介助することで寝衣交換の難易度が下がり、双方の負担を軽くすることできます。例えば、寝衣交換の最初から最後まで座位姿勢を取ることが難しい方も、上衣を交換する時だけ座位姿勢になり、下衣は臥位姿勢で行うだけでも寝衣交換が行いやすくなることがあります。利用者さんの疾患や障害によっては臥位姿勢以外を取ることが難しいこともあるため、身体の状態に詳しいスタッフの判断を仰ぎながら行ってください。

●関連記事:更衣介助の正しい手順と注意点―着患脱健の考え方も

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安藤祐介(Yusuke Ando)

作業療法士

2007年健康科学大学を卒業。作業療法士免許を取得し、介護老人保健施設ケアセンターゆうゆうに入職。施設内では認知症専門フロアで暮らす利用者47名の生活リハビリを担当し、施設外では介護に関する講演・執筆・動画配信を行っている。

安藤祐介の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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