介護口腔ケア推進士とは?取得するメリットや勉強方法も紹介
構成・文/介護のみらいラボ編集部
介護口腔ケア推進士は、要介護者の口腔機能維持・向上への寄与が期待される、口腔環境のエキスパートです。食事をおいしく食べること、楽しく食べることは、高齢者がいきいきと生きていくために重要な要素です。
この記事では、介護口腔ケア推進士の概要と取得するメリット、介護業界で口腔ケアが重視される理由を解説します。検定試験へ合格するための勉強方法も紹介するので、高齢者の口腔ケアに興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
1.介護口腔ケア推進士とは?
介護口腔ケア推進士とは、「一般社団法人 総合健康支援推進協会」が認定する民間資格です。主に介護現場で働く介護士や看護師を対象としており、正しい口腔ケアの知識を学び実践することで、要介護者のQOL向上に寄与することが期待されています。この資格が開始されたのは2014年で、今や介護業界における主要な民間資格の1つとなりました。
介護口腔ケア推進士の資格は、個人受験・団体受験・通信教育などから取得可能です。介護口腔ケア推進士には上級試験もあり、こちらは通常試験に合格した上で研修会に参加することで受講資格が得られます。
●受験資格
介護口腔ケア推進士の検定試験には、受験制限が設けられていません。また、「一般社団法人 総合健康支援推進協会」が認定する通信教育講座であれば、受講修了により認定証が発行されます。
●試験日時・場所・費用
下記は、2022年開催予定の介護口腔ケア推進士検定試験の概要です。
【介護口腔ケア推進士 検定試験】
試験日程 | 第27回 | ・1月10日~12月26日 ・60分 |
申込期間 | ・1月6日~12月23日 | |
試験会場 |
・全国各地のテストセンター(220か所以上あり) ・通信講座の場合は在宅受験可 |
|
費用 | 受験料 | 8,460円 |
認定証発行手数料 | 3,000円 |
●試験内容
介護口腔ケア推進士資格試験は5肢択一・CBT方式を取っており、公式テキストからの基礎・応用問題および最近の時事問題が出題範囲となります。合格基準は、正答率70%以上(問題の難易度によって多少の補正あり)です。
【介護口腔ケア推進士試験 公式テキスト】
■Part1 口腔ケアの基本
第1章 介護と口腔ケア
第2章 口腔と関連器官の構造
第3章 口腔に見られる症状と関連する疾病
第4章 口腔ケアの実際
■Part2 口腔ケアの実践
第1章 口腔ケアの意義
第2章 環境の観察法
第3章 症例に応じた口腔ケア方法
第4章 専門家・専門機関との連携
(引用:一般社団法人 総合健康支援推進協会「介護口腔ケア推進士検定試験 」)
引用日2022/03/26
試験終了後は即座に合否が判定され、受験日当日中に結果レポートが受け取れます。なお、介護口腔ケア推進士資格に更新制度はありません。
(出典:総合健康支援推進協会「「介護口腔ケア推進士」検定試験」)
(出典:総合健康支援推進協会「「介護口腔ケア推進士 検定試験」(個人受験・CBT)」)
(出典:総合健康支援推進協会「「介護口腔ケア推進士上級」検定試験(個人受験)」)
介護口腔ケア推進士を取得するメリット
介護口腔ケア推進士の資格取得で得られるメリットには、下記のものが挙げられます。
・口腔ケアの正しい知識とスキルが身につく
・要介護者に食べる喜びを提供できる
・職場での教育に説得力が増す
・利用者家族への指導に役立てられる
・家族を介護する際の手助けになる
正しい口腔ケアを実施することで、利用者に喜ばれたり感謝されたりすることは、介護職で働く人として、何よりも大きなやりがいを得られるでしょう。ただし、介護口腔ケア推進士は民間資格のため事業者への加算や補助に影響はなく、この資格取得によって直接的に給料が上がることは多くありません。
しかし、近年は要介護者に対する口腔ケアの重要性が認知されており「口腔ケアについて正しく理解している」ことは、1つのスキルとして評価される傾向です。資格を取得することで仕事に対する姿勢やスキルのアピールとなり、昇進や昇給につながる場合があります。
2.介護業界で口腔ケアが重視される理由
介護業界では、高齢者の口腔ケアに対する注目度が上がっています。高齢者の口腔ケアが重視される理由のひとつに、歯の本数が多く、よく噛んで食事ができる高齢者ほど健康を保ちやすく、総合的な医療費が少なく済むことが挙げられます。また、脳卒中患者に対して急性期から口腔ケアを実施すると、入院期間の短縮が見込めるとの報告もあります。
口腔機能の状態は、人と会話する際の発声・発語・表情の変化といった、コミュニケーションへの影響が少なくありません。同時に、口腔機能が衰えると、咀嚼機能や嚥下機能が落ち、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。口腔状態が悪くなり食べ物を食べにくくなると、食べられる食材が偏ったり量が減ったりして低栄養に陥りやすくなることも、大きな問題です。
口腔機能を健全に保つことは、高齢者の健康維持に欠かせません。しかし厚生労働省の調査によると、現状、80歳で20本以上の歯を維持している方の割合は20%超にすぎません。また、介護施設の利用者を中心とした、要介護・有病高齢者の口腔機能は劣悪な状態にあるとの指摘もあります。
多くの後期高齢者は、入れ歯などを使用した口腔機能の維持や回復が必要です。しかし介護施設と医科・歯科の連携不足も指摘されており、介護業界においては口腔ケアの推進が急がれる状況です。
(出典:厚生労働省「専門的口腔ケアが高齢者の健康や生活機能に与える効果」)
3.介護口腔ケア推進士に合格するための勉強方法
介護口腔ケア推進士の検定試験は、受験資格に制限がありません。また、頻繁に試験が実施されているため、比較的自分に都合のよいスケジュールで受験できるでしょう。
介護口腔ケア推進士資格の一般的な勉強方法は、出版されている公式テキストを使用した独学です。過去問題集や公式問題集などは出版されていないため、テキストを読み込んで学習項目の理解と記憶に励みましょう。時事問題も出題されるため、日頃から新聞やニュースなどをチェックすることも大切です。
独学が不安な場合は通信講座で勉強する方法も
独学に不安を感じる場合は、通信講座の利用も検討するとよいでしょう。
例えばユーキャンの通信講座では、イラストや図解入りで分かりやすく解説したメインテキスト2冊を教材として勉強します。口腔ケアの実践手順を動画で確認できるDVDや、介護現場で役立つQ&A集もついているため、独学が苦手な方は効率よく学べるでしょう。
学習期間の目安はおよそ3か月、2回の添削課題と最後の検定試験に合格すれば、介護口腔ケア推進士の資格を取得できます。通常の検定試験とは異なり、在宅のままで受験可能です。また、受講期間内であれば、3回まで試験を受け直すこともできます。近くにテストセンターがない方や、自宅で資格を取りたい方にも向いた受講方法です。
(出典:ユーキャン「介護口腔ケア推進士講座」)
4.さらに口腔ケアを深く学びたい方には「研修会」もおすすめ
介護口腔ケア推進士の資格を管理する「一般社団法人 総合健康支援推進協会」では、資格と連動して「実践的な口腔ケア研修会」も実施しています。公式のテキストから得た知識に加えて、介護現場で実際に活用できる手技や、利用者とコミュニケーションを取る方法を学ぶ研修会です。
2022年には、以下のような学習内容の研修会が予定されています。
●誰でもできる誤嚥予防
摂食・咀嚼・嚥下・誤嚥の基礎知識や、日々実施できる誤嚥予防につながる口腔ケアを学びます。
●認知症の人の食事介助
認知症・脳梗塞・麻痺がある方の食事介助や口腔ケアなど、食べることに主眼をおいた内容です。
介護口腔ケア推進士上級資格保有者以外は参加費がかかるものの、希望すれば誰でも研修を受けることが可能です。この研修会は上級の検定試験に必要な研修会とは異なりますが、興味がある場合やさらに口腔ケアについて深く学びたい場合は参加してみるとよいでしょう。
まとめ
介護口腔ケア推進士は、要介護者の健康維持・向上が期待できる、正しい口腔ケアの知識や技術を学べる資格です。給料や役職への直接的な影響は多くないものの、資格取得を通じて仕事に対する姿勢やスキルの高さをアピールすることができます。
「介護のみらいラボ」では、介護口腔ケア推進士以外にも介護現場で役に立つさまざまな資格や最新の耳寄り情報などを掲載中です。介護職の方が抱きやすい悩みやその解決策なども紹介しているため、介護職としてさらにスキルアップを目指す方は、ぜひ「介護のみらいラボ」をチェックしてみてください。
※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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