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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2020/12/08

#サービス提供責任者#訪問#資格

訪問介護に必要な資格とは?向いている人は? 仕事内容別に解説

吉田匡和 社会福祉士・介護支援専門員・ 社会福祉主事 upskilling_20201208_1.jpg

訪問介護は、生活援助や身体介護などが必要な方の自宅を訪問し、食事・入浴・洗濯・掃除といった日常生活のサポートを専門に行う仕事です。介護業界では、無資格者でも働ける場合がありますが、訪問介護員(ホームヘルパー)として従事するためには資格が必須です。訪問介護に携わりたい方に向けて、訪問介護員の仕事内容や必要な資格についてお伝えします。

訪問介護に資格が必要な理由

訪問介護の仕事は、「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分けられます。特別養護老人ホームや介護老人保健施設などでは資格がなくても身体介護を行えますが、訪問介護に携わる場合は、所定の資格を取得している必要があります。身体介護を伴わない生活援助のみのサービスを行う場合でも、2018年に創設された「生活援助従事者研修」を修了していることが条件となります。
訪問介護は原則的に一対一でサービスを提供するという特性を持っているため、いざという時にはプロとしての対応が求められます。訪問介護員は、万が一の事故の際には大きな責任が伴うもの。一定の技術や知識が担保されている必要があるため有資格が条件となっているのです。

訪問介護の仕事内容

上述したように、訪問介護の仕事は「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分けられます。それぞれの具体的な仕事内容は以下の通りです。

身体介護 排泄・入浴・着脱の介助など、ご利用者の身体に直接触れて行う介助です。

施設内での介護サービスに比べて専門性が高く、ご利用者を安全に介助するためのスキルが求められます。
● 排泄・食事介助
● 清拭・入浴・身体整容
● 体位変換、移動・移乗介助・外出介助
● 起床及び就寝介助
● 服薬介助
● ご利用者の自立支援のための見守り的援助
生活援助 調理や洗濯、掃除や整頓といった家事全般を行います。

訪問介護の中でも需要が高いサービスです。
● 掃除
● 洗濯
ベッドメイク
● 衣類の整理・被服の補修
● 一般的な調理・配膳・片付け
● 買い物・薬の受け取り
通院等乗降介助 訪問介護員などが自らの運転する車両を使用して、通院等のための乗車又は降車の介助を行います。 ● 病院までの送迎
● 乗降介助
● 受診の手続き

●関連記事:訪問介護で行う生活援助とは?介護保険適応サービスと保険外サービスの違いを理解しよう

訪問介護の原則

訪問介護員は、ご利用者本人に直接関わることを原則とし、同居している家族に対して食事や洗濯といったサービスを行うことはできません。また、ケアマネジャーがご利用者やその家族の要望を聞いて作成したケアプランに基づいたサービスのみの提供となります。

2人で訪問介護を行うケース(2人介助加算算定)

通常の訪問介護では、ご利用者1人に対して、1人の訪問介護員によるサービス提供が基本です。しかし、場合によっては2人での介助が認められ、「2人介助加算」を算定することができます。ただし「2人で介助した方が楽だから」、「2人だと手早く介護できるから」といった訪問介護員側の理由では、2人介助加算を算定することはできません。2人介助加算を算定するには、ご利用者又は家族の同意を得る必要があり、具体的には以下のようなケースが対象となります。

2人介助加算に該当する事由

  1. ご利用者の身体的理由により、1人の訪問介護員等による介護が困難と認められる場合
    ......例)体重が重いご利用者に対して、入浴介助等の重介護において1人での介助が困難な場合など
  2. 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為などが認められる場合
    ......例)認知症によって暴れる、破壊行為が見られるご利用者など、1人では対応が難しいご利用者の場合
  3. その他、ご利用者の状況等から判断して、①又は②に準ずると認められる場合
    ......例)エレベーターのない建物に住み、2階以上から歩行困難なご利用者を外出させる場合。また、医療的な配慮により2人介助で対応しなければならない場合など。

たん吸引等が行える訪問介護員とは

たん吸引や経管栄養は医療行為に該当するため、これまでは医師や看護師にしか認められていませんでした。しかし、平成24年度の「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正により、現在は「喀痰吸引等研修」を受け、都道府県から認定証が交付された訪問介護員で、かつ所属している事業者が「登録特定行為事業者」として登録を行っている場合には、「認定特定行為業務従事者」として医師の指示のもと、看護師などと連携してたん吸引等を行うことができるようになりました。

訪問介護員(ホームヘルパー)に必要な資格と取得要件

訪問介護は、有資格者のみが従事できる仕事です。適切な資格を取得したうえで、訪問介護員を目指しましょう。

訪問介護員に必要な資格の種類

訪問介護

訪問介護員として働くためには、以下のうちいずれかの資格が必要です。

  • 介護福祉士
  • 介護職員初任者研修 修了者
  • 介護福祉士実務者研修 修了者
  • 生活援助従事者研修 修了者

いずれの資格でも訪問介護員として働けますが、「生活援助従事者研修」の修了者に限っては、基本的に生活援助中心型のサービス提供のみとなり、身体介護は行うことができません。基礎的な介護の知識を身につけるとともに、訪問介護員としてのキャリアを考えるのであれば、最初に取得しておきたいのが「介護職員初任者研修」です。

介護職員初任者研修とは

介護職員初任者研修は、介護の業務を行ううえで必要な知識・技術と、それを実践するための考え方やプロセスを身につけ、基本的な介護業務を行うことができるようになるための研修です。実施主体は「都道府県又は都道府県知事の指定した者」と定められており、おもに介護・教育関連企業や通信教育企業に委託されています。
受講料は時期や受講機関によって異なりますが、3万円台~10万円台と幅広く、環境によっては最短1ヵ月程度で取得できる場合もあります。受講の対象者となるのは「訪問介護事業に従事しようとする者、もしくは、在宅・施設を問わず、介護の事業に従事しようとする者」となっています。
介護職員初任者研修を修了すれば、訪問介護において身体介護を行うことができ、「介護福祉士実務者研修」へのステップアップが可能です。

資格取得には、130時間の研修を終了後、筆記による修了試験に合格する必要があります。
なお、看護師の資格があれば、介護職員初任者研修を修了したとみなされますが、訪問介護に従事する際の証明については各都道府県によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

介護職員初任者研修 研修科目及び研修時間数

職務の理解 6時間
介護における尊厳の保持・自立支援 9時間
介護の基本 6時間
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 9時間
介護におけるコミュニケーション技術 6時間
老化の理解 6時間
認知症の理解 6時間
障害の理解 3時間
こころとからだのしくみと生活支援技術 75時間
振り返り 4時間
合計時間 130時間

講義と演習は一体的に実施される必要があり、実習を行う場合には、所定の施設で行われます。

「ホームヘルパー(1~3級)」との違い

以前は、訪問介護員の資格として、ホームヘルパー1級・2級・3級課程や、介護職員基礎研修課程が実施されていました。しかし、平成25年4月より、「介護職員初任者研修課程(旧ホームヘルパー2級)」「介護職員実務者研修(旧ホームヘルパー1級)」に変更されました。平成25年3月には、上記の研修は廃止されていますが、ホームヘルパー3級は該当する新資格がないため、訪問介護に従事できなくなりました。一方で、過去にホームヘルパー1級、2級を修了している人は訪問介護員として継続的に従事することが可能です。

訪問介護員(ホームヘルパー)に向いている人

同じ介護従事者でも、施設勤務と訪問介護では働き方が異なります。訪問介護に向いている人は以下のようなタイプといえるでしょう。

1人で仕事をしたい人

基本的に、1人で訪問することが多く、仕事場はご利用者の自宅です。1日のうち、ほとんどを1人で行動することになるため、上司や同僚との人間関係にストレスを感じにくい傾向があります。

移動が苦にならない人

訪問介護では車の運転が必須です。時には遠方に行くこともあり、運転や1人での移動が苦痛に感じない人には向いています。

時間を守れる人

訪問介護は時間との勝負。常に時間厳守です。時間を守ることに意識を向けられる人は、訪問介護員に向いています。

責任感のある人

基本的にご利用者とマンツーマンで接するので、訪問介護員の責任は大きいです。責任をもって、しっかりとケアプランに沿ったサービスを提供できる人に向いています。

話を聞ける人

時にはご利用者の話し相手にもなります。サービスを提供しながら、丁寧に話を聞く姿勢を持てる人には向いています。

毅然とした態度をとれる人

ケアプランに定められたサービス以外の提供は出来ないにもかかわらず、ご利用者やその家族の中には、プラン外のことを依頼する人もいます。そのような時に、相手に不快感を与えないように注意しながら、なぜ対応できないのかを説明するスキルが必要です。また、断る勇気を持つことも大切です。

訪問介護員(ホームヘルパー)としてキャリアアップを目指すには

介護職員初任者研修を修了後には、「実務者研修」を受講してみてはいかがでしょうか。実務者研修修了後には、「サービス提供責任者」を目指すのもよいでしょう。
サービス提供責任者は、訪問介護事業所においてリーダー的な役割を担うほか、ケアマネジャーやご利用者、他の訪問介護員、介護サービス事業者など、さまざまな人に関わり、パイプ役となる存在です。サービス提供責任者という資格はありませんが、役職となることから実務者研修修了者や介護福祉士などの資格が必要です。平成29年度 介護労働実態調査結果によると、訪問介護員の平均月給が約20万円なのに対し、サービス提供責任者は約23万円と約3万円の差が生じており、年収の面でもメリットがあります。

実務者研修とは

実務者研修は、介護の現場を経験するだけでは得られない知識と技術を学べるなど、初任者研修より高いレベルの研修となっています。期間は6か月以上、450時間の授業を受ける必要があり、通学や通信などで受講可能です。また、介護資格で唯一の国家資格「介護福祉士」試験を受験する際に、実務経験3年以上の要件とともに必須となる研修です。

初任者研修との違い

  • 介護福祉士試験の受験資格となる
  • 実務者研修の受講時間は450時間、初任者研修は130時間
  • 学ぶ科目が多く医療的ケアも学べる

訪問介護はライフスタイルに合った働き方ができる

介護している介護師

短時間だけでも働ける訪問介護は、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができる仕事です。ただし、訪問介護員として従事するためには資格が必要であり、まずは資格を取得するために研修を受講する必要があります。資格取得後は希望に合わせてステップアップが可能で、年収アップにつながるようなキャリアプランも検討できるでしょう。介護の仕事において個別性を大切にしたい方や、施設勤務における職員同士のコミュニケーションに不安を感じている方は、訪問介護員としてのキャリアを検討してみてはいかがでしょうか。

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吉田匡和(Masakazu Yoshida)

社会福祉士・介護支援専門員・ 社会福祉主事

老人保健施設、特別養護老人ホーム、デイサービス等で勤務し、事務長代行など管理職も経験。その後社会福祉士及び介護福祉士養成校教員。人材育成に携わってきた経験を活かし、実践的で的確な情報を発信している。 Write House Bule Orca(ブーレオルカ)代表。

吉田匡和の執筆・監修記事

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