介護と介助の違いとは?それぞれの種類や仕事内容を紹介
構成・文/介護のみらいラボ編集部介護現場では、「介護」と「介助」の2つの言葉をよく耳にします。両者の意味がなんとなく違うことは分かっているものの、どのように異なるかまではよく分からない人も多いのではないでしょうか。
適切な介護を行うためにも、現場での使用頻度が高い用語の意味を正確に知っておくことが大切です。そこで、この記事では介護にかかわる人が知っておくべき基本知識として、介護と介助の違いや具体的な仕事内容などについて詳しく解説します。
1.介護と介助の違いとは?
介護と介助は、どちらも介護分野で頻繁に使われる言葉です。どちらの言葉も、法律による明確な定義があるわけではありません。ただし、厚生労働省などでは概念的に「介護」を提供する手段として「介助」を使用しています。
(例:入浴介助、排せつ介助、食事介助 等)
上記の文章では、「身体介護」を提供する手段の例として「入浴介助」「排せつ介助」「食事介助」があることを示しています。介護とは、要介護者の自立を目指すものです。そして、それを実現する具体的な手段が介助であると捉えられています。一般的には、介助より介護のほうが抽象的な概念となります。中には例外もあるものの、基本的に介助とは介護を実現する手段であるといえるでしょう。
2.介護の意味・2つの仕事内容
介護とは、高齢者などのサポートを必要とする方の活動を支援することを通じて自立を実現することです。一般的に介護に分類される仕事には、主に「身体介護」と「生活援助」の2種類があります。それぞれについて説明しましょう。
身体介護
直接利用者の身体に触れて、日常生活に必要な動作をサポートするサービスのことです。たとえば、「入浴・食事・排せつなどの身の回りの動作」や「寝返り・立ち上がりなどの基本動作」を介助することです。
身体介護の目的は、利用者の自立支援です。介護者は必要以上に介助行為を行うのではなく、利用者ができない部分を見極めて適切にサポートする必要があります。
生活援助
利用者が日常生活を送れるように行うサービスです。たとえば、訪問介護で利用者が自力で行うことが難しい、掃除・洗濯・調理・買い物などの家事を代行します。身体介護と大きく異なるのは、利用者の身体に直接触ることがない点です。
3.介助の意味・6つの仕事内容
介助とは、高齢者などのサポートを必要とする方の起居動作を手助けすることです。介助の具体的な仕事内容には、6つの種類があります。それぞれの具体的な特徴や仕事内容について見ていきましょう。
食事介助
加齢に伴う咀嚼機能や嚥下機能、消化機能の低下などが原因でうまく食べられない利用者に対するサポートです。誤嚥や窒息の危険性があるため、利用者が正しい姿勢を保てるように工夫する必要があります。口に運ぶ量やペースにも注意します。
排せつ介助
利用者の状態に応じて、トイレ介助やポータブルトイレ介助、オムツ介助、便器・尿器を使用する介助の4種類があります。排せつは非常にデリケートな行為です。介護行為とはいえ、スタッフに排せつを手伝ってもらうことは利用者の尊厳にかかわります。プライバシーに配慮し、できる限り自分の力で行ってもらうことも大切です。
入浴介助
入浴は体力を使う行為です。入浴の前には必ず利用者の体調をチェックしましょう。脱衣所や浴室を暖めておくなど環境も整えておきます。介助中は床で滑って転倒しないように細心の注意が必要です。利用者の体調が思わしくない場合は、湯船に浸からず清拭のみ行うこともあります。
歩行介助
利用者が安全に歩けるようにサポートする介助で、以下のような種類があります。
・寄り添い介助:介助者が利用者の身体を支えて介助
・手引き歩行介助:介助者が利用者と向き合い、手を引いて介助
・後ろからの歩行介助:介助者が利用者の脇を後ろから支えて介助
・杖の歩行介助:杖を使う利用者の脇と膝を支えて介助
このほかにも、歩行器やシルバーカーを使う際の介助などもあり、利用者の状況に応じて支援することが求められます。
移乗介助
ベッドから車いすへ、またその逆へ移動するときに手助けする介助です。移動介助の際は、利用者がベッドや車いすから落ちると、打撲や骨折の原因となりうるほか、皮膚がはがれたりする可能性があります。移乗介助の前に、必ず車いすの角度を確かめ、ブレーキがかかっていることも忘れず確認しましょう。
更衣介助
更衣介助は着替えの介助です。何から何まで手伝うのではなく、上衣の着脱など利用者ができることは自分でしてもらうことも必要です。伸縮性のある衣類を選べば、自分で着替えやすくなり、利用者の負担が減ります。カーテンで仕切るなどプライバシーに配慮することや、バランスを崩して転倒しないよう見守ることも大切なポイントです。
4.介助の4つの段階
どこまで介助するかは、介護を必要とする方の自立の度合いによって異なります。多少の手助けがあれば自分でできる方に対して何もかも介助してしまうと、生活機能の低下につながり、自立の妨げになりかねません。
過介助や介助不足にならないよう、介護者は利用者がどこまでできるかを見極め、適切な介護度でサポートすることが大切です。ここでは、日常生活動作の指標となっている自立度の4つの種類について解説します。
自立
食事や着替え、排せつなど、日常生活において必要な基本的な動作が自分でできる段階です。介護者は、特に利用者を介助する必要はありません。ただし、利用者が転倒することのないよう、動作中は十分に注意を払う必要があります。
部分介助
一部介助ともいい、基本的なことは自分でできるものの、部分的に援助や見守りが必要な段階です。たとえば、「自立歩行はできるものの、ふらつきの恐れがある」などのケースでは一部介助が必要と判断されます。また、身体機能の低下などに伴い、これまで自立していた動作中に転倒が起こるようになった場合は見守りが必要となり、一部介助の段階に入ります。
介助あり
半介助ともいい、介護者などの援助があればある程度は自分で行動できる段階です。たとえば、「着替えの際に袖に腕を通すときだけ手伝いが必要で、他は自力でできる」などのケースが該当します。利用者が自分だけではできない部分を見極めて必要な援助だけを行うようにし、過介助にならないようにしましょう。
完全介助
手助けがあっても、自力では特定の動作をするのが困難な段階です。介護者が全面的に介助する必要があります。ただし、介護の目的が自立支援であることに変わりはありません。完全介助が必要な利用者であっても、本人ができることを探り、能力を引き出す方法を検討することが大切です。
5.介護と介助における「自立」の概念の違い
介護を行う目的は、サービス利用者の自立を実現することです。一般に、「自立」とは「他の人を頼ることなく、自分の力で生活すること」を意味します。介護や介助においても、自立は同様の意味で使われているのでしょうか。ここでは、介護や介助における自立の概念について考えてみましょう。
2004年に行われた社会保障審議会福祉部会の参考資料では、福祉や介護の分野において「自立」は以下のような意味で使うこともあると述べています。
・障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること
つまり、「介護」における自立とは、「介護サービスを利用することで高齢者や障害を持つ人などの自立を目指し、実現する」ことを意味しています。その意味で、介護における「自立」は抽象的で理念的な概念です。このような自立観は、人権意識の高まりやノーマライゼーションの考え方に基づくものといえます。
一方、「介助」における自立は、介護で用いられる自立の概念とは必ずしも一致しません。介助においては、従来使われてきた概念と同様の意味合いで自立が用いられることがあります。前述した利用者の自立度の考え方では、自立した状態のときには介助は必要ないとしており、自立と介助の必要性を対抗的な概念として捉えていることが伺えます。その意味で、介助における「自立」は、具体的かつ実務的な概念です。
まとめ
介護の現場では、介護と介助の2つの言葉がよく使われます。介護は利用者の自立を目指して行われるものであり、介助は基本的に介護を提供する手段です。介助には食事介助や排せつ介助、入浴介助など6種類があり、利用者の自立度によってどこまで支援するかは異なります。必要な援助を見極め、利用者ができることは自分でしてもらうことも大切です。
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※当記事は2022年3月時点の情報をもとに作成しています
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