高齢者の介護は「低栄養」に注意!原因から予防方法まで
構成・文/介護のみらいラボ編集部
高齢者にみられる「最近元気がない」「食べる量や食事の回数が減った」「体重が落ちてきた」などの症状は、もしかしたら低栄養状態が原因かもしれません。
高齢者が低栄養状態になるのは決して珍しいことではないため、できるかぎり元気で健康的な毎日を過ごしてもらうためには、栄養素の不足や偏りにいち早く気付いてケアを行うことが大切です。
この記事では、低栄養状態になる原因と症状、予防法について解説します。身近な高齢者に低栄養状態の疑いがある場合は、専門家に相談した上で適切にサポートできるように、正しい知識を身に付けておきましょう。
1.高齢者によくみられる低栄養とは?
低栄養状態とは、体に必要なたんぱく質やエネルギー、ビタミンなどが慢性的に欠乏した状態を指す言葉です。食事をしっかり取っていても、栄養素が十分でなかったり、食生活自体が乱れていたりすると、低栄養になってしまいます。また、低栄養から摂食・嚥下障害や生活機能の低下、食欲の低下、認知症、うつなど、健康上のさまざまな問題に発展する危険性もあります。
低栄養傾向にある65歳以上の高齢者は、男性が12.4%、女性は20.7%に上り、男性の10人に1人、女性の5人に1人が低栄養だというデータがあります。つまり、低栄養のリスクは決して低くなく、高齢者にとっての「身近な健康問題」として注意しておくべきでしょう。
(出典:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」)
ここでは、低栄養になると具体的にどのような症状が現れるのかを解説します。
低栄養状態の高齢者にみられる症状
日々の食事の量が足りない、または摂取する栄養素が偏っていることで低栄養に陥ると、以下のような健康障害が現れます。
・体重が減少する
・筋力や筋肉量が低下する
・免疫機能が低下し、かぜなどの感染症にかかりやすくなる
・下半身や腹部がむくみやすくなる
・傷や床ずれが治りにくくなる
・抜け毛が多くなる
なお、食事量が不足している場合は、同時に「食欲がない」「口の中が乾く」「皮膚が乾燥する」などの脱水症状がみられることもあります。脱水症状は、普段食事から摂取している水分が取れず、水分摂取量が減ってしまうことが原因で起こります。
高齢者における低栄養のリスク
さまざまな栄養素が不足し、低栄養が続くことで病気を引き起こす恐れもあります。低栄養による主なリスクには以下の通りです。
骨折 | 低栄養状態だと運動量が減少し、骨を作るためのカルシウムも不足します。その結果、骨の新陳代謝が低下し、骨がもろくなって骨折のリスクが高まります。骨粗しょう症を発症する場合もあります。 |
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意識障害 | 主食である米やパン、麺類を食べずにいると、炭水化物が不足して、体内の血糖値が下がります。すると「低血糖」と呼ばれる状態になり、めまいや眠気、集中力の低下などを引き起こします。 |
誤嚥性肺炎 | 細菌が唾液や食べ物などと一緒に気管に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」と言います。普段は誤嚥してもせきで異物を吐き出せますが、低栄養によってせきをする筋力や嚥下機能が落ちていると、誤嚥性肺炎につながりやすくなります。また、低栄養で免疫力の低下が起こっている場合、肺炎のリスクはいっそう高まります。 |
低たんぱく血症 | たんぱく質の摂取量が減ると、血中のたんぱく質量が減り、おなかに水がたまる腹水やむくみ(浮腫)の症状が現れます。 |
こうしたリスクを避けるためには、低栄養にいち早く気付くことが大切です。
2.高齢者が低栄養になる原因は?3つの側面
低栄養の原因は、「身体的側面」「精神的側面」「社会的側面」の3つに大別されますが、なかには複数の要因が絡み合って低栄養に陥っているケースもあります。以下では3つの要因を詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
【身体的側面】筋力低下など
加齢や慢性的な疾病が原因で身体機能が衰えると、筋力が低下します。また、筋力が低下したせいで長い距離を歩けなくなったり、重いものを運ぶのが難しくなったりすると、カップ麺やパンなどの軽いものしか買えなくなってしまい、栄養が偏ります。
筋力低下によって長時間立っているのが苦痛になり、加工食品で料理をすませたり、品数を減らしたりしてしまうことも、低栄養の要因に挙げられるでしょう。
加えて、加齢によって発生するかむ力や味覚の衰え、下痢・便秘といった消化機能の問題なども、食欲の低下や栄養障害につながってしまいます。
【精神的側面】死別など
配偶者やペットとの死別が精神的ストレス(喪失体験)となり、食欲が低下するケースもあります。また、身体的な衰えによって、以前できていたことができなくなるような状況も同様のストレスを生み、食欲がなくなったり、他者との関わりを閉ざしてしまったりすることにつながります。
認知能力が低下し、「同じものばかり買ってしまう」「味付けが分からなくなる」「限られた料理しか作らなくなる」といった症状が現れることで、栄養が偏ってしまう場合もあります。
【社会的側面】孤立・貧困など
「家の近くにスーパーがなく、買い物に行く回数が限られる」「食費が限られている」などの地理的・金銭的理由があると、買い物の頻度が減り、日持ちしない生鮮食品の購入を避けることが多くなります。長期間保存ができ、値段も手頃な加工食品・レトルト食品ばかりで食事を済ませると、低栄養のリスクが高まるでしょう。
3.高齢者の低栄養を防ぐ!予防法3つ
低栄養になるとエネルギーが足りず、疲れやすくなるため、体を動かすのがおっくうになります。そして、体を動かさずにいると、筋力がさらに低下するだけでなく、日常生活でのエネルギー消費量が少なくなり、食欲が湧かずに食べる量が減っていくという悪循環に陥ります。
そうした状況を防ぐためにも、食事内容を見直し、きちんと栄養対策をすることが大切です。
ここでは、低栄養を予防できる方法を3つ紹介します。無理をせず、まずはできることから取り入れていきましょう。
栄養バランスに優れた食事を摂取する
菓子パンや即席麺などの加工食品だけで食事を済ませず、肉、魚、卵、大豆、乳製品など、たんぱく質を多く含む食品を毎食取り入れましょう。ただし、量をたくさん食べたからといって、一気に栄養不足が解消されたりはしません。主菜や副菜に多種多様な食品を取り入れることで、バランスよく栄養を摂取することが大事です。
栄養補助食品を利用する
食事で摂取するのが難しい栄養素を補う際には、栄養補助食品を取り入れるのも一つの方法です。栄養補助食品にはゼリータイプやドリンクタイプのものが多く、かむ力が衰えていても摂取できます。味や風味も食べやすいように工夫されているため、無理なく栄養を取ることができるでしょう。
また、栄養補助食品は、エネルギー補給用、たんぱく質補給用、ビタミン補給用と、目的ごとに豊富な種類の商品が販売されているのもうれしいポイントです。
適度な運動を実施する
健康的な毎日を送るためには、十分な栄養を取るのと同時に体を動かすことが大事です。とはいえ、低栄養の方が運動をすると、ただでさえ不足しているエネルギーをさらに使ってしまい、低栄養状態が悪化する恐れがあります。
まずは、ウオーキングや椅子を使用したスクワット、安定したものにつかまりながらの片足立ち、椅子に座っての足上げなど、無理のない運動から始めましょう。運動の際には水分補給も忘れないようにしてください。
なお、運動後にたんぱく質を補給すると、筋肉量の維持が期待できます。
まとめ
低栄養とは、たんぱく質やビタミンなどの栄養が慢性的に不足している状態を指す言葉で、それによって免疫力や筋力が低下するなど、体に不調が現れてしまいます。高齢者が低栄養になってしまう背景には複数要素が絡み合っており、食事の量を取っていても、栄養素が足りなければ低栄養になることもあります。
低栄養を予防するためにも、バランスの良い食事と適度な運動を心がけるように促しましょう。また、高齢者の不調にいち早く気づき、低栄養状態から脱することができるように、サポートしていくことも大切です。
「介護のみらいラボ」では、高齢者と関わることの多い介護の現場で活躍する方に向けて、役立つ情報をお伝えしています。「もっとたくさんの情報が知りたい」という方は、ぜひ「介護のみらいラボ」をご覧ください。
※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
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