高齢者に喜ばれるイベント9選|レクリエーションの目的や進め方も
老人ホーム、デイサービスセンターといった高齢者施設で行われるイベントや行事は、利用者さんにとって大きな楽しみの1つです。そのため、企画を担当する職員は、事前にイベントについての知識(概要や実施する目的、注意点など)を身につけておく必要があるでしょう。
また、イベントにちなんだレクリエーションを企画する際は、利用者さんの状況を考慮して、より多くの人が参加できるように工夫することも大事です。
当記事では、高齢者施設で行われるイベントの目的や人気のあるイベントの概要、レクリエーションを実施するときの注意点などを紹介します。高齢者施設でイベント企画を担当している介護職の方は、ぜひ参考にしてください。
1.高齢者施設で行われるイベント・行事とは?
多くの高齢者施設では、季節ごとにさまざまなイベントや行事が行われます。お正月やひな祭り、七夕といった日本の伝統行事はもちろん、バレンタインデーやクリスマス、ハロウィンなど、海外発祥のイベントを取り入れる施設も多いのではないでしょうか。
イベント当日は、室内を飾りつけてレクリエーションを楽しんだり、特別な食事メニューを用意したりするのが一般的です。そして、レクリエーションや特別メニューといった「非日常的な体験」は、利用者さんにとってのよい刺激となり、心身の活性化につながるといわれています。
また、施設のイベントは利用者さんと施設スタッフ、地域の方たちがコミュニケーションを図る絶好の機会でもあります。その点も、高齢者施設でイベントを実施する理由の1つといえるでしょう。
2.高齢者向けのイベントを行う目的
高齢者施設で開催するイベントには、「施設での生活をより楽しいものにすること」や「心身のリフレッシュやストレス解消につなげること」「楽しみながら身体機能の維持・向上を目指すこと」などの狙いがあります。それでは、高齢者施設でイベントを行う目的やメリットについて詳しく見ていきましょう。
身体や脳の活性化
加齢によって筋力・体力が低下すると、運動する機会が減少します。そのため、イベントのレクリエーションに運動プログラムを盛り込み、運動不足の解消や身体機能の維持・向上を目指すことは、非常に大事な取り組みといえるでしょう。また、レクリエーションでは、普段の生活で使用しない脳機能を使うため、脳の活性化にもつながるとされています。
レクリエーションによっては、施設の外に出て季節の草花や風景に触れるケースもありますが、そうやって気持ちをリフレッシュすることも、心身の活性化や精神面の安定につながるはずです。
コミュニケーションの促進
介護が必要になると、外に出て他者とのコミュニケーションを楽しんだり、社会活動に参加したりする機会が減り、人とのつながりや生きがいを実感しにくくなります。しかし、施設で定期的にイベントを実施すれば、他の利用者さんや施設スタッフ、地域の方たちと深く交流することが可能です。
イベントを通じて他者との関係性を深めていけば、孤独感の解消にもつながるでしょう。
ストレス解消
高齢者は、定年退職による喪失感や身体機能・脳機能の低下などが理由で、若年世代とは異なるストレスを抱えることがあります。イベントのレクリエーションで体を動かしたり、他の利用者さんやスタッフと笑い合ったりすることは、そうしたストレスの緩和・解消に役立つでしょう。
高齢者のなかには季節のイベントを通じて、子ども時代や若い頃の出来事を思い出す方も多く、そうした懐かしい思い出が、精神面の安定につながるケースもあります。
QOLの向上
高齢者施設のイベントは、利用者さんのQOLを向上させるためにも重要な活動です。
QOLとは、Quality of Lifeの略で「生活の質」を意味する言葉です。利用者さんの世代には、以下の理由によってQOLが低下しているケースが多く見られるため、イベントあるいはレクリエーションを通じて改善を図ることが大切です。
・運動不足
・過剰なストレス
・食生活の乱れ
・意欲の低下
運動系のレクリエーションに参加することは、運動不足の解消やストレスの発散につながります。また、イベントが日常生活の楽しみや刺激になれば、いきいきとした毎日を送れるようになるでしょう。
高齢者施設のイベントでは、利用者さんに飾りつけや小道具の製作を手伝ってもらうことも珍しくありませんが、そうした活動がQOLの向上に役立つ場合もあります。任された役割を果たすことで、利用者さんの自尊心が高まり、活動の意欲が向上するからです。
3.高齢者に喜ばれるイベントとレクリエーション
高齢者施設のイベントを実施する際は、当日に取り組むレクリエーションを事前に決めて、準備しておく必要があります。利用者さんの人数や状況にあわせて、より多くの人が楽しめるレクリエーションを計画しましょう。
ここでは、高齢者施設で行われる代表的なイベントとレクリエーションを紹介します。
節分
節分は季節の分かれ目を意味する言葉で、本来は立春、立夏、立秋、立冬の前日がすべて節分です。しかし、旧暦では立春が1年の始まりであることから、2月の節分がとくに重要視され、立春の前日が節分として定着しました。
また、古くから「季節の変わり目には邪気が生じやすくなる」といわれており、邪気を払う行事として節分に豆まきが行われるようになりました。
高齢者施設の節分イベントでは、鬼の格好をした職員に豆を投げて、邪気を払うレクリエーションがおすすめです。豆は座った状態でも投げられるので、多くの利用者さんが参加できます。
ただし、本物の豆を使うと誤嚥や窒息につながる恐れがあるため、安全確保を優先する場合は新聞紙を丸めて豆に見立てたり、豆のかわりにボールを使ったりするとよいでしょう。
●関連記事:節分におすすめの高齢者レクリエーション8選!実施のポイントも
お花見
春のお花見は、外出の機会が少ない高齢者に人気の高いイベントです。敷地の外に出かけてお花見をする際は、十分な時間をかけて安全確認や下見を行いましょう。
外出が難しい利用者さんがいる場合は、敷地内に咲く季節の花を楽しんだり、室内で切り枝の桜を観賞したりするのがおすすめです。あわせて、桜をモチーフにした壁面飾りを製作したり、桜の折り紙を楽しんだりすると、より季節感が味わえるでしょう。
お花見イベントでは、行事食をつくるレクリエーションもおすすめです。お花見団子をつくるときは、白玉粉に豆腐をまぜてやわらかくしたり、ごはんを使ったりして、安全性に十分配慮してください。
●関連記事:お花見とは?由来や歴史・介護施設でのお花見レクの例
七夕・夏祭り
七夕と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが「天の川」や「七夕飾り」です。七夕のレクリエーションでは、笹を用意して願い事を書いた短冊を飾ったり、星やちょうちんなどの七夕飾りをつくったりするとよいでしょう。紙を折ったり切ったりする作業は、楽しいだけでなく、手先のトレーニングにもなるといわれています。
夏のイベントといえば、夏祭りも忘れるわけにはいきません。縁日の飾りつけやイベント食の提供、輪投げや的当てといったゲームなど、レクリエーションのバリエーションが豊富なので、より多くの利用者さんが楽しめるイベントになるでしょう。
ちなみに、ゲームで提供する景品を手作りのものにすれば、イベントの準備期間も楽しく過ごすことができます。日常的なレクリエーションを兼ねて、当日までにさまざまな手作り景品を用意してはいかがでしょうか。
●関連記事:七夕におすすめのレクリエーションのアイデア5選
お月見
お月見には「秋の収穫に感謝する」という意味があり、稲に似ているススキや月に見立てた丸い団子を供えて、中秋の名月を楽しみます。
ただし、就寝時間が決まっている高齢者施設だと、夜の時間帯に外に出るのが難しいケースもあります。そうした場合は、室内の壁面に月やウサギの飾りつけをして雰囲気を盛り上げてください。
あわせて、月見団子づくりを楽しむのもおすすめです。つくるときはお花見団子と同様、白玉と豆腐をまぜたやわらかい団子にするなど、高齢者向けに工夫したレシピを用意しましょう。
●関連記事:9月】高齢者向けおすすめレクリエーションは?行事一覧も
クリスマス会
クリスマス会は年末のメインイベントとして、多くの高齢者施設で行われています。クリスマスツリーや壁面の飾りつけ、食事、音楽などクリスマスならではの要素も多く、さまざまな楽しみ方ができるイベントといえるでしょう。
クリスマス会には、ハンドベルや合唱などの音楽レクリエーションがおすすめです。それぞれにパートを決めてハンドベルの演奏を楽しんだり、職員の演奏にあわせて利用者さんが歌を披露したりすれば、クリスマス気分がぐんと盛り上がりますよ。
ただし、歌のレクリエーションを行う際は、選曲に注意が必要です。職員の間ではよく知られた曲でも、70歳代、80歳代の利用者さんにはなじみがない場合もあります。イベントの主役である利用者さんの視点に立ち、十分なリサーチをした上で準備を進めましょう。
●関連記事:高齢者に喜ばれるクリスマスレク5選!イベントを盛り上げるコツも
お誕生日会
誕生日会も、利用者さんに喜ばれる人気のイベントです。もしかすると、毎月のように誕生日会を行っている施設もあるかもしれませんね。
誕生日会は、主役(その月に誕生日を迎える人)に特別感を与えるだけでなく、それ以外の人も楽しめるイベントにしなくてはなりません。開催頻度が高いため、内容のマンネリ化にも気をつける必要があるでしょう。
誕生日会では、ケーキや手紙といったプレゼントを贈るほか、いつものゲームにひと工夫を加えたレクリエーションを楽しむのがおすすめです。誕生日の人にチームリーダーを任せたり、ゲームの得点を2倍にしたりして、誕生日の人が活躍できるアイデアを取り入れてください。
●関連記事:介護施設で使える!高齢者向け誕生日メッセージの例文と書き方のポイント
運動会
運動型のレクリエーションは種類が多く、楽しみ方もいろいろです。そのため、運動会は高齢者施設でとくに盛り上がるイベントとなっています。運動の前後に開会式や選手宣誓、準備体操、閉会式などを行えば、より運動会らしい雰囲気を演出できるでしょう。
運動会を行う際は、利用者さんの運動能力にあわせてレクリエーションを選ぶ必要があります。場合によっては、ルールやアイテムをアレンジしてもよいでしょう。たとえば、玉入れを実施する場合、使用するかごを大きくすることで難易度を下げられます。
また、見ている人も盛り上がれるように、応援合戦やダンスといったパフォーマンス要素を取り入れるのも一案です。
●関連記事:高齢者向けの体操レクリエーション6選! 座ったままできる体操も!
家族を招くイベント
母の日、父の日、敬老の日といった特別な日には、利用者さんの家族を招いてイベントを行うのもおすすめです。家族参加のイベントは、施設や利用者さんの様子を家族に知ってもらう貴重な機会。利用者さんの家族が施設に訪問したときに、レクリエーションへの参加をすすめてみましょう。
家族を招く際に、日頃の感謝やねぎらいを伝えるレクリエーションとしておすすめなのが、2人1組でできるハンドマッサージです。ハンドマッサージは、リラックス効果やタッチセラピー効果が期待できるといわれているので、参加者全員で癒しの時間を楽しみましょう。
なお、家族参加のイベントを行うにあたっては、家族が参加できない利用者さんへの十分な配慮が必要です。場合によっては別室でゆっくり過ごしてもらうなどして、孤独感を覚えることがないように対応しましょう。
地域の方々と交流するイベント
地域の人たちと交流するイベントは、利用者さんが社会とのつながりを感じたり、生きがいを発見したりできる貴重な機会です。
交流イベントとして人気が高いのは、「流しそうめん」や「もちつき」などです。その際、ただ食べるだけでなく、準備の過程を共有したり、思い出話(郷土料理のことや料理にまつわる思い出など)を語り合う時間を設けたりすると、参加者全員で盛り上がれるでしょう。
流しそうめん、もちつきのような季節のイベントを実施するときは、うちわを使った風船バレーやすごろくなど、それぞれの季節に合ったレクリエーションを組み合わせるのもおすすめです。
認知症グループホームで行われる「イベントを通じた地域の方々との交流」は、支援の輪を広げる取り組みとしても評価されています。
(出典:厚生労働省「認知症グループホームの強みを活かして!」)
4.高齢者イベントの進め方
イベントのレクリエーションを滞りなく進行するには、当日の人員配置やレイアウトをよく検討することが大事です。加えて、レクリエーションの流れを記載した台本を用意しておくと、安心して当日を迎えられるでしょう。
高齢者施設で行うレクリエーションの一般的な進め方は、以下の通りです。
(1)参加者の誘導 | 事前に計画した通りに会場を準備し、参加者を誘導する |
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(2)挨拶 | 進行役が簡単な挨拶を行い、当日のプログラムを発表する |
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(3)やり方の説明 | レクリエーションの内容、ルール、注意点を説明する |
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(4)ゲーム開始 | ゲームや余興の最中は、参加者1人ひとりの様子を観察し、必要があればフォローにあたる |
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誘導に時間がかかる場合は、先に入場した方を飽きさせないように、高齢者に人気の音楽を流すのも一案です。参加者全員がそろったら、進行役が簡単な挨拶を行います。長くならないように注意しながら、場をなごませるような挨拶を心がけましょう。
次回のイベント予定がすでに決定している場合は、すべてのプログラムが終わった後に、次回の予定を発表してもよいでしょう。最後に、あらためて進行役が挨拶を行い、イベントを終了します。
(出典:京都府「レクリエーションの進め方」)
5.高齢者にイベントを楽しんでもらうための注意点
高齢者にイベントを楽しんでもらうためには、いくつかの注意点があります。準備にかかった時間と労力を利用者さんの笑顔につなげるためにも、以下の点を意識して運営にあたりましょう。
始まる前にアイスブレイクをはさむ
イベントに参加する利用者さんのなかには、場の雰囲気に溶け込めず、不安や緊張を感じている方がいるかもしれません。リラックスした気持ちでイベントを楽しんでもらうためにも、適宜アイスブレイクをはさんでみましょう。
アイスブレイクとは、多くの人が集まる場の緊張をとき、積極的な参加を促すために行う雑談やゲームのことです。以下では、高齢者施設のイベントで活用できるアイスブレイクの具体例を示します。
・後出しじゃんけん(スタッフの1人が参加者の前に立ってグー、チョキ、パーのいずれかを出し、ほかの人は後出しでそれに勝てる手を出すゲーム。スタッフがパーを出したら、ほかの人はチョキを出すという具合)
・握手(着席した状態で周囲の方と握手してもらい、その人数を競うゲーム)
ただし、アイスブレイクを担当する施設スタッフが緊張していたのでは、場の雰囲気がやわらかくなりません。楽しい雰囲気に誘導するためにも、リラックスして笑顔で進行することを意識しましょう。
イベントの説明を丁寧に行う
高齢者施設には、聴力や認知機能が低下した利用者さんがいる場合もあります。ゲームのやり方を説明するときは、利用者さんが聞き取りやすいように、大きな声でハキハキと話しましょう。スタッフによるデモンストレーションを行って、やり方をきちんと理解してもらうのもよい方法です。
ゲームの最中に困った様子の利用者さんを見つけたら、声をかけてサポートしてください。個別に声かけをする際のポイントは、以下の通りです。
・丁寧な言葉を使う
・立ち止まって声をかける
・落ち着いたトーンで話す
たとえイベントの最中であっても、利用者さんには敬意を持って接する必要があります。最低限のマナーとして、丁寧な言葉でわかりやすく話すことを心がけましょう。
参加者の性格を把握する
高齢者施設の利用者さんの性格は、1人ひとり異なります。大勢で行うイベントを好む方もいれば苦手意識を持っている方もいるので、イベントへの参加を強要するのはやめましょう。
ただし、高齢者施設のイベント、レクリエーションには、先に紹介したようなメリットがあります。参加に消極的な利用者さんがいる場合は、「一緒に参加してもらえませんか」「手伝ってもらえませんか」など、丁寧な言葉でいったんは行動を促してみてください。
イベントに誘う際は、利用者さんの性格を考慮した上で、相手にあわせたアプローチを行うことが大事です。
孤立している人がいないか確認する
盛り上がった雰囲気になじめない利用者さんは、参加者の輪から孤立してしまう可能性があります。イベント中は1人ひとりの様子をよく観察して、「十分に楽しめているか」や「他の方と交流できているか」をチェックしましょう。
コミュニケーションが苦手な利用者さんにはとくに配慮し、サポートすることが必要です。不安な様子が見られた場合は、スタッフのほうから声かけをし、周囲の輪に溶け込めるように援助してください。
参加者に体調の変化がないか確認する
イベントは季節の変わり目に行うことも多いので、途中で体調を崩す方が出る可能性もあります。イベント中は利用者さんの様子をよく観察し、安全管理を徹底してください。
イベントの開始前に体調不良を訴えた方がいたら、けっして無理をさせず、場合によっては参加を見合わせてもらいましょう。
まとめ
高齢者施設におけるイベントやレクリエーションは、「心身のリフレッシュやストレス解消」「身体機能の維持・向上」「コミュニケーションの活性化」などの効果を期待して行われます。
高齢者施設でイベントを企画する際は、利用者さんの人数や状況を考慮してレクリエーションを選びましょう。家族や地域の人たちと交流できるレクリエーションもおすすめです。
介護のみらいラボでは、介護の現場で働く人に向けて、現場で役立つ情報を数多く発信しています。レクリエーション企画に困ったときや、介護に関する悩みや疑問を感じたときは、ぜひご参考にしてください。
※当記事は2024年3月時点の情報をもとに作成しています
●関連記事:高齢者向けのレクリエーションとは?楽しく盛り上がるレク21選
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