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仕事・スキル 介護士の常識 2023/10/11

介護とは?介助や看護との違いや仕事内容・資格を解説!

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

急速な高齢化が進む近年、「介護」という言葉は多くの方にとって、身近なものとなりました。そうしたなか、共働き世帯の増加も相まって、介護施設・介護職員のニーズも年々高まっています。また、今後の日本を支えるために、介護職員を目指す方も決して少なくありません。

しかし、「介護とは何か?」や「具体的にどのような行為をするのか?」について、十分に理解している方がどのくらいいるかと言えば、そう多くないのが実情でしょう。そこで本記事では、介護の基礎知識として、介助・看護の違いや具体的な仕事内容、資格などを詳しく解説していきます。高齢者と介護の現状についても紹介しますので、これから介護業界で活躍したいと考えている方は、ぜひ当記事をお役立てください。

1.介護とは何か?

介護とは、大まかに言うと「加齢や心身の障害などの原因で、日常生活を営むことに支障がある方に対して、身の回りのお世話や自立した生活の支援を行うこと」です。また、介護保険サービスにおいて「介護する側」である介護福祉士は、社会福祉士および介護福祉士法の第2条によって次のように定義されています。

この法律において「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。

(引用:e-GOV法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法」_引用日/2022/10/02)

この記述からも分かる通り、病院や介護施設・事業所で患者さんや利用者さんに介護を行う場合は、専門性の高いスキルが必要となります。

介護と介助・看護の違い

介護と類似する言葉として、「介助」や「看護」が挙げられます。いずれも病院や介護施設などで提供されるサービスですが、それぞれに違いがあることを覚えておきましょう。

介護 日常生活を営むのに支障がある高齢者、障害者などに対して「身の回りのお世話」や「自立した生活の支援」を行うこと。
介助 対象者のそばに付き添って、日常生活を送る上で必要な行動、動作などを手助けすること。
看護 病気やけがなどを負った方の治療・療養のサポートをすること。あるいは、健康回復をサポートすること。

介助は「手助けする行為そのもの」を指す言葉であり、介護を行うための手段の一つだと考えるのが良いでしょう。なお、介護・介助業務は主に介護職員の仕事であり、看護業務は主に看護師の仕事となります。

●関連記事:
介護と看護の違いとは?
介護と介助の違いとは?

介護の仕事内容

介護サービスは、「施設サービス」と「居宅サービス」の2つに大別されます。サービスの種類によって仕組みや対象者は異なりますが、介護職員が行う支援の内容に関して大きな違いはありません。

介護職員の主な仕事内容には、下記のようなものが挙げられます。

身体介助(食事介助、排せつ介助、入浴介助、移乗介助など)
生活援助(掃除、洗濯、調理、買い物など)
レクリエーション活動の実施
● 利用者さんやそのご家族に対する心身的なケア


介護職員は利用者さんと直接的に関わることの多い職種ですが、利用者さんに適切な介護ケアを提供できるように日々介護記録をつけたり、医師や看護師、生活相談員、リハビリスタッフといった他職種と連携したりすることも重要な役割となります。

(出典:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「施設介護員」

介護の仕事場所

介護の仕事には、「居住系・入所系サービス」と「通所系サービス」、そして「訪問系サービス」の3つの類型があります。サービスごとの特徴や職場の詳細は、以下の通りです。

居住系・入所系サービス
特徴 ● 介護施設・事業所に入所・入居した要介護・要支援状態にある高齢者に対して提供されるサービスです。
● 主に介護職員が24時間の生活に必要な支援を提供します。
職場 ● 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
● 介護老人保健施設
● 介護医療院(介護療養型医療施設)
● 介護付き有料老人ホーム
● 認知症対応型共同生活介護
● サービス付き高齢者向け住宅

(出典:厚生労働省「介護業界で働いてみませんか ~ハローワークで聞いてみよう!~」

通所系サービス
特徴 ● 自宅で暮らす要介護・要支援状態にある高齢者に対して提供されるサービスです。
● 事業所で日中を過ごしてもらい、主に介護職員が必要な支援を提供します。
職場 ● 通所介護(デイサービス)
● 通所リハビリテーション(デイケア)

(出典:厚生労働省「介護業界で働いてみませんか ~ハローワークで聞いてみよう!~」

訪問系サービス
特徴 ● 居宅で暮らす要介護・要支援状態にある高齢者に対して提供されるサービスです。
● 主に訪問介護員が利用者の居宅を訪問して必要な支援を提供します。
職場 ● 訪問介護
● 訪問リハビリテーション
● 訪問入浴介護

(出典:厚生労働省「介護業界で働いてみませんか ~ハローワークで聞いてみよう!~」_2022/10/02)

介護の資格

職場や仕事内容によっては無資格・未経験からでも働けますが、介護関連の資格を取得すれば、仕事の幅が広がりキャリアアップにも役立つでしょう。ここでは、取得しておきたい介護資格を10種ピックアップして紹介します。

介護職員初任者研修 介護職員初任者研修は、介護職としてキャリアを積んでいく上での「最初のステップ」と言われています。研修では、介護における基本的な知識を習得することができます。

介護職員初任者研修について詳しく知る
介護福祉士実務者研修 介護職員初任者研修の上位資格であり、より実践的な知識・技術を身に付けられます。また、実務者研修を修了することで、介護福祉士国家試験の受験要件を満たすことができます。

介護福祉士実務者研修について詳しく知る
介護福祉士 介護職唯一の国家資格です。取得することで、専門性の高い介護の知識・技術が身に付くのはもちろん、ご家族に対する支援や介護職員の指導など、幅広い業務に携われるようになります。

介護福祉士について詳しく知る
ケアマネジャー 利用者さんやご家族の相談に応じて、適切なケアプランの作成や関係各所(自治体、介護サービス事業者など)との調整・連携を行います。介護保険法に基づき誕生した資格で、「介護支援専門員」、ケアマネとも呼ばれます。

ケアマネジャーについて詳しく知る
喀痰吸引等研修 たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部など)と経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養など)を行える介護職員等を養成するための研修です。

喀痰吸引等研修について詳しく知る
ケアクラーク 介護保険に関する知識やパソコンを用いた介護事務や経理業務のスキルを身に付けていることを証明するものです。介護報酬の請求やサービス利用料に関する書類の作成など、事務作業全般を担います。ケアクラーク技能認定試験の合格者には「ケアクラーク」の称号が付与されます。
レクリエーション介護士 高齢者向けレクリエーション活動に関する知識や実施スキル、高齢者とのコミュニケーションスキルを身に付けるための民間資格です。資格には2級・1級・マスターがあります。
介護予防運動指導員 高齢者の方を対象に、介護予防プログラムの作成や筋力トレーニングの実施など、各機能ケアのサポートを行うための民間資格です。指定の研修を受講すると資格を取得できます

介護予防運動指導員について詳しく知る
福祉用具専門相談員 福祉用具が必要な方を対象に、利用者さんやご家族の要望に応じて適切な福祉用具の選び方、使い方のアドバイスを行うための資格です。

福祉用具専門相談員について詳しく知る
認定介護福祉士 より質の高い介護実践・介護サービスマネジメント・介護と医療の連携強化・地域包括ケア等に対応するための考えかたや知識を認定介護福祉士養成研修で修得した介護福祉士です。介護福祉士の上位資格です。

認定介護福祉士について詳しく知る

介護関連の資格には、働きながら取得を目指せるものも多くあります。前述したように、資格を取得することでキャリアアップ、収入アップを目指せるほか、幅広い仕事を任されるようになるため、やりがいにもつながるでしょう。

2.高齢者と介護の現状

内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は2021年10月1日時点で1億2,550万人とされています。

そのうち65歳以上の人口は3,621万人で、総人口に占める割合は28.9%でした。つまり、約3.5人に1人は65歳以上の高齢者と言えるわけです。

また、前期高齢者となる65歳〜74歳は総人口の14.0%、後期高齢者となる75歳以上の割合は14.9%であり、後期高齢者の割合の方が多くなっています。高齢者の人口増加は、2042年まで上昇することが予測されています。

(出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

65歳以上の方の介護の現状

介護保険制度における要介護認定・要支援認定を受けた方の人口は、2022年6月時点で以下の通りでした。

要支援者数 1,901,967人
要介護者数 4,915,850人

(出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定) 令和4年6月分」

たとえ65歳以上の高齢者であっても、介護の必要がない方は当然存在します。しかし、厚生労働省のデータを見る限り、介護が必要な高齢者の割合は決して少なくありません。そして、要介護者の多くは、同居する配偶者や子どもに介護をしてもらっているのが現状です。

加えて、今後は要介護度の高い高齢者がさらに増えると見込まれています。少子高齢化の急速な進展や共働き世帯の増加によって、介護の担い手の確保が急がれていることは、現在の日本における大きな課題と言えるでしょう。

介護に従事する職員数の現状

介護のニーズが高まるなか、近年は「介護業界で活躍したい」と考える方も増加傾向にあります。2018年~2020年の3年間における全国の介護職員数の推移は、以下の通りです。

年度 介護職員数
2018年 約194.4万人
2019年 約210.6万人
2020年 約211.9万人

(出典:厚生労働省「介護職員数の推移」

ただし、介護職員数が徐々に増加しているとはいえ、多くの介護施設では依然として人材不足の傾向にあります。ちなみに、2021年における介護関連職種の有効求人倍率を見てみると3.64倍という高い数値でした。

そうした介護業界の人材不足を改善すべく、政府は介護スタッフの確保に向けたさまざまな取り組みを行っています。

政府が行う介護人材の確保に向けた取り組み例
● 人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度
● 介護現場における多様な働き方導入モデル事業
● 介護に関する仕事の普及啓発
● 介護人材確保地域戦略会議 など

(出典:厚生労働省「介護人材確保に向けた取り組み」

こうした取り組みを実施するなかで、介護職員の給与水準も年々増加傾向にあります。今後も介護職員の需要が高まることを考えれば、給与や労働環境はより改善されていくでしょう。

まとめ

介護施設や事業所で行われる「介護」とは、大まかに「加齢や心身の障害などの原因で、日常生活を営むことに支障がある方に対して、身の回りのお世話や自立した生活の支援を行うこと」です。介護サービスは、「施設サービス」と「居宅サービス」の2つに大別され、身体介助や生活援助、レクリエーション活動の実施などが介護職員の主な仕事内容となります。

日本は「20年後も高齢者の人口が増え続ける」と予測されており、介護職員や介護施設は欠かすことのできない存在です。そのため政府は、介護人材の確保に向けた取り組みを実施しながら、介護職員の労働環境改善にも注力しています。

「介護のみらいラボ」では、介護業界で活躍している方やこれから介護職を目指す方に向けて、仕事に役立つさまざまな情報を掲載しております。介護についてのより深い知識を得たい方は、ぜひ他の記事もご覧ください。

※当記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

介護の業務は、社会福祉士及び介護福祉士法第2条第2項に、「心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者日常生活を営むのに必要な行為であって医師の指示のもとに行われるものを含む)」と、「介護に関する指導」とされています。これは介護福祉士国家資格の名称を用いて行う業務を規定する法律であり、介護福祉士の名称を用いずに介護を行っている介護職員にも準用されているのが現状です。
2011年の社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、看護の業務独占の医療行為であった喀痰吸引等が介護福祉士にも可能になり、介護福祉士の活躍の場が医療分野にも広がりました。
看護の業務(役割)について、日本看護協会は、「健康のあらゆるレベルにおいて個人が健康的に正常な日常生活を援助すること」としています。高齢化の進展、生活習慣病、慢性疾患、認知症の増加により、健康に課題を抱えて施設や医療機関、在宅で生活する高齢者はますます増加すると考えられます。高齢者を支えていくためには、介護と看護の連携・協働は欠かせません。
介護の本質について、介護にあたるすべての介護職を対象にして、一番ヶ瀬康子氏は、「介護という仕事は、人間の尊厳とプライドを最後までしかも日常的に生活面から保持するために不可欠の仕事であり、人権保障の最後の総仕上げを担う働き」と述べています。介護は、要介護者の人権・尊厳を守り、生活や命も守る尊い職業だと思います。
近年では職場環境や給与面が改善されており、介護の実践者として働きたいと思っている人は増えています。
入職してから介護について学ぶのもいいと思いますが、資格を持っていない方は、介護職員初任者研修など、介護についての基礎知識を学んだあとに入職するのが望ましいのではないかと思います。ハローワークの職業訓練(いくつかの条件があります)として介護福祉士の資格を取得する方法もあります。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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