介護職系資格について

介護福祉士実務者研修とは?働くメリットや資格の取得方法を解説!

介護福祉士実務者研修は、将来介護福祉士を目標とする人にとって必須といえる資格です。
特別な受講資格は設けられておらず、実践的かつ専門的な知識と技術を身につけることでキャリアアップや収入アップも狙えるため、受講を検討している人は多いでしょう。

そこで今回は、介護福祉士実務者研修の概要と修了するメリットや合格率、取得方法について解説します。受験資格やカリキュラムの内容、取得費用の相場についても紹介するため、介護スキルの向上を考えている人はぜひ参考にしてください。

監修:馬淵敦士
「ベストウェイケアアカデミー」学校長。介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員(ケアマネジャー)・公認心理師。

1.介護福祉士実務者研修とは

介護福祉士実務者研修とは、介護職員がより質の高い介護サービスを提供できるよう、実践的な知識と技術の習得を目的として行う研修です。 介護福祉士実務者研修は平成24年からスタートしました。平成25年度には、ホームヘルパー1級と介護職員基礎研修を「実務者研修」へ一本化しています。そして、平成28年度からは、今まで実務経験が3年以上(540日従事)だけで介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができたものが、その要件に加え、介護福祉士実務者研修を修了することが義務づけられ、スキルアップには必須の研修になりました。

1-1.介護福祉士実務者研修と介護職員初任者研修の違い

介護職員初任者研修は、介護系の資格の中では初歩的な資格です。

介護福祉士実務者研修と介護職員初任者研修には、以下のような違いがあります。

・受講科目の差
介護職員初任者研修の受講科目は9科目130時間であるのに対し、介護福祉士実務者研修は20科目450時間の受講が必要です。

・介護福祉士の受験資格
国家資格である介護福祉士の資格を取得するためには、介護福祉士実務者研修の修了が必須となります。介護職員初任者研修は受験資格に含まれません。

・修了試験の有無
介護職員初任者研修では1時間の修了試験が行われます。
一方、介護福祉士実務者研修には試験の義務がありません。

・サービス提供責任者になれる
介護福祉士実務者研修を修了していれば、サービス提供責任者に就けます。(介護福祉士、旧ホームヘルパー1級でも就けます)。

・医療的ケアを学べる
介護福祉士実務者研修では、介護職員初任者研修にはない医療的ケアの学習が可能です。

介護職員初任者研修について詳しく知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。

初任者研修 とは

2.介護福祉士実務者研修を修了するメリット

すでに介護の現場で実績を積んでいる人の中には、介護福祉士実務者研修を取得する必要性を感じていない人もいるでしょう。
しかし、介護福祉士実務者研修を修了することで、いくつものメリットを受けることが可能です。

ここでは、介護福祉士実務者研修を修了するメリットを3つ紹介します。

2-1.介護福祉士の受験資格を得られる

介護福祉士国家試験の受験資格を得られることは、介護福祉士実務者研修を修了する最大のメリットです。

介護福祉士は介護系資格の中で唯一の国家資格であり、介護職において中核的な役割を担います。介護現場で働きながら介護福祉士の受験資格を取得するためには、3年以上の実務経験に加えて介護福祉士実務者研修を修了する必要があります。
また、介護福祉士実務者研修を修了すれば、介護福祉士国家試験で実技は免除となります。

介護福祉士になると、キャリアアップやスキルアップが望めるため、介護業界で働き続ける人はぜひ取得しておきたい資格です。

2-2.収入アップを期待できる

収入アップを期待できることが、介護福祉士実務者研修を修了するメリットです。

介護福祉士実務者研修の修了者は、専門的な知識や技術を身につけているとみなされるため、昇進や待遇の向上が期待できます。
また、介護福祉士実務者研修を修了することで、訪問介護事業所において重要なサービス提供責任者に着任することも可能です。

高い給与を設定している求人の中には、介護福祉士実務者研修の修了者であることを条件に入れていることもあります。介護福祉士実務者研修を修了することで、転職時に選択できる職場の幅が広がるため、収入アップにつなげられるでしょう。

実務者研修 給料

2-3.就職先や利用者からの信頼を獲得できる

就職先や利用者からの信頼を獲得できることが、介護福祉士実務者研修を修了するメリットです。

介護福祉士実務者研修では、450時間かけて全20科目にわたる専門性の高い知識や技術を学習します。介護福祉士実務者研修を修了することで、喀痰吸引等研修(不特定多数の者対象)の基本研修を修了したとみなされます。その後、実地研修を修了すれば、 「喀痰吸引」や「経管栄養」を行えるように。専門性の高いスキルは、より高い信頼につながるでしょう。

介護福祉士実務者研修を修了することは、介護職に対する意識の高さや熱意を示すことにもなるため、就職先や利用者からの信頼を獲得しやすくなるといったメリットがあります。

3.介護福祉士実務者研修の合格率

介護福祉士実務者研修を実施しているスクールの多くは、受講者の合格率を公表していません。また、合否の判定基準がスクールによって異なるため、実際の合格率は明らかとなっていないのが実情です。

介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修と比べて難易度が高く、受講時間も長いため、時間の確保が難しい人は途中で断念を考えることもあるかもしれません。
しかし、介護福祉士実務者研修は基本的に講座内容を理解していれば合格できる可能性が高いです。コツコツと進めていけば問題なく修了できるでしょう。

4.介護福祉士実務者研修の取得方法

介護福祉士実務者研修の取得方法には、スクールに通う方法と、通信講座を利用して自宅で学習する方法の2つがあります。
どちらの方法も履修内容自体は同じです。自宅で学習する場合でも所定の受講内容は必ずスクールへの通学が必要です。

・通学講座を利用する
カリキュラムの全科目をすべてスクールで受講します。
平日の日中のみ・夜間のみ・土日のみなど、スクールによって設けられているコースが異なるため、通いやすい場所と時間を選ぶことが大切です。
直接講師に質問したり指導が受けられたりするため、介護職の経験がなくとも比較的学習しやすいでしょう。

・通信講座を利用する
テキストやWeb講義を見ながら自宅で学習してレポートを提出し、添削指導を受けながら学習を進めます。
都合に合わせて勉強する時間や場所を調整できる利点はあるものの、自分自身できちんとスケジュールを管理しなければなりません。
仕事や育児と両立したい人や、介護分野の基礎知識を身につけている人に適した学習方法です。

5.介護福祉士実務者研修の受講・受験資格

介護福祉士実務者研修の受講に特別な資格は必要なく、誰でも受講することができます。
ただし、保有している資格別に免除される科目があり、受講期間や費用に差が出ます。

また、決められた時間数で基礎から医療的ケアなどの高度な知識まで学ぶため、介護福祉士実務者研修はある程度介護の知識や経験がある人向けの研修といえるでしょう。
介護の知識や経験が浅い人は、介護職員初任者研修を受講してから実務者研修を受けると、研修内容の理解が深まります。

6.介護福祉士実務者研修のカリキュラム

介護福祉士実務者研修では、保有する資格によって所定のカリキュラムの受講が免除されるため、事前に確認しましょう。

下記は、介護福祉士実務者研修のカリキュラム表です。 「◯」と記載されている科目は免除対象となる講座です。

科目名 時間数 介護職員
初任者研修
生活援助
従事者研修
訪問介護員養成研修
1級 2級 3級
人間の尊厳と自立 5
社会の理解I 5
社会の理解II 30        
介護の基本I 10  
介護の基本II 20      
コミュニケーション技術 20        
生活支援技術I 20  
生活支援技術II 30    
介護過程I 20    
介護過程II 25        
介護過程Ⅲ(スクーリング) 45          
発達と老化の理解I 10        
発達と老化の理解II 20        
認知症の理解I 10    
認知症の理解II 20        
障害の理解I 10    
障害の理解II 20        
こころとからだのしくみI 20    
こころとからだのしくみII 60        
医療的ケア※ 50          
合計受講時間数 450 320 410 95 320 420

※医療的ケアは50時間の講義とは別に演習を修了する必要があります。
受講するスクールによって時間数などが異なるため、各スクールのスケジュールを確認しましょう。
出典:厚生労働省「実務者研修における「他研修等の修了認定」の留意点について

また、履修した研修によっても所定の講座の受講が免除となります。

履修済みの研修 免除対象講座
介護職員基礎研修 医療的ケア以外の全科目
認知症実践者研修 認知症の理解I・II
喀痰吸引等研修 医療的ケア

カリキュラムの受講が免除される資格を保有していない場合、介護福祉士実務者研修を修了するまでの受講期間は少なくとも6ヶ月かかりますが、有資格者は期間を短縮して修了することができます。
なお、介護福祉士実務者研修では、修了試験の実施は義務ではありません。
しかし、スクールによっては各科目の筆記試験と実技試験が実施されているため、心配な人は事前に確認するとよいでしょう。 修了試験のないスクールの場合は、全カリキュラムの受講を終えることで修了証明書が交付されます。

7.介護福祉士実務者研修取得費用の相場

介護福祉士実務者研修の費用は、保有している資格によって変わります。
大手法人の提供する研修コースなど見てみると、保有資格による費用の違いは大まかに下記の通りです。

保有資格 取得費用
無資格 12~20万円
ヘルパー1級 7.5万円前後
介護職員基礎研修 3~5万円
介護職員初任者研修 10~15万円
ヘルパー2級 10~15万円

無資格者の場合は12~20万円、ホームヘルパー1級の場合は7.5万円程度かかることが多いようです。介護職員初任者研修とホームヘルパー2級取得者は10~15万円程度となります。介護職員基礎研修修了者は免除される科目が最も多いため、3~5万円ほどで受講することができるでしょう。

介護福祉士実務者研修は教育訓練給付制度の対象であるほか、介護福祉士実務者研修受講費用貸付制度などの各種補助金や助成金を受けることができます。
経済的な不安がある場合は、補助金や助成金の利用も視野に入れるとよいでしょう。

8.介護福祉士実務者研修を仕事で活かす

介護福祉士実務者研修では、痰の吸引と経管栄養の基礎知識を学ぶことができます。そのため、介護福祉士実務者研修を修了し、実地研修を修了すれば介護職員であっても特別養護老人ホームなどの介護施設や在宅における痰の吸引・経管栄養を行うことができます。

また、介護福祉士実務者研修修了者は、訪問介護事業所のサービス提供責任者になれます。在宅で活躍したい人にとっても、介護福祉士実務者研修はメリットの大きい資格といえるでしょう。

なにより介護福祉士実務者研修を修了する最大のメリットは、実務経験を3年以上積むと、介護福祉士国家試験の受験資格を得られることです。

介護現場で実務経験を積みながら介護福祉士実務者研修を受講し、介護福祉士へのキャリアアップを目指しましょう。

まとめ

介護福祉士実務者研修を修了することで、専門的な知識と実践的な技術を活かし、良質な介護サービスを提供することが可能となります。
受講に特別な資格は必要ないものの、介護の基礎から医療ケアなどの高度な知識まで学習するため、介護福祉士実務者研修は介護経験や基本的な知識がある人向けの研修です。

介護福祉士実務者研修を修了することでスキルアップできるほか、転職にも有利となるため収入アップも狙えます。
いずれは介護福祉士を目指したい人や長く介護の現場で活躍したいと考える人は、介護福祉士実務者研修をぜひ受けましょう。

プロフィール

馬淵 敦士(まぶち あつし)

「ベストウェイケアアカデミー」学校長。介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員(ケアマネジャー)・公認心理師

馬淵敦士さん

(株)ベストウェイ代表取締役社長。奈良教育大学大学院教育学研究科修了。ホームヘルパー・在宅介護コーディネーター・ケアマネジャーを歴任し、「かいごのがっこう ベストウェイケアアカデミー」を設立。 修士(教育学)・介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・公認心理師・小学校教諭及び特別支援学校専修免許状を持つ。多くの介護関連資格の受験勉強をし合格してきたため、試験のポイントを熟知している。介護現場から起業して社長となり、10年以上経営、人材育成に力を注ぐ。 福祉系受験対策講座を全国で行い、『ケアマネジャー試験 過去問解説集2021(中央法規出版)』『ケアマネに合格する人はなぜ質問をするのか(三恵社)』など執筆。