福祉用具専門相談員とは?業務内容や活躍する場所・必要な資格などを解説
文/鈴木康峻(理学療法士)
みなさんは福祉用具専門相談員について、どのくらい知っているでしょうか。介護福祉士やケアマネジャーなどと比べると、あまりなじみがない職種なので、「名称は知っているけれど、詳しい仕事まではわからない」という方もいるかもしれませんね。
福祉用具専門相談員は、介護を必要とする方が自立した生活を送るために、適切な福祉用具を選定する専門職です。そして、少子高齢化が進み介護の需要が増えるなか、福祉用具の重要度も高まっており、福祉用具専門相談員が活躍する場面も増えています。
そこで本記事では、福祉用具専門相談員の業務内容や必要な資格、活躍の場について解説します。気になる年収についても紹介しますので、福祉用具専門相談員の仕事を詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
- 目次
- 1.福祉用具専門相談員とは
- 福祉用具専門相談員の役割
- 福祉用具専門相談員の需要
- 取り扱う福祉用具
- 2.福祉用具専門相談員の業務内容
- 福祉用具の選定
- 福祉用具サービス計画の立案
- 適合・取り扱いの説明
- モニタリング
- 営業
- 3.福祉用具専門相談員が活躍する場所
- 福祉用具貸与・販売事業所
- 店舗の介護用品売り場
- 住宅改修を行う事業所
- 福祉用具メーカー
- 4.福祉用具専門相談員になるために必要な資格
- 講習のカリキュラム
- 免除される資格
- 5.福祉用具専門相談員の給料・年収
- 6.福祉用具専門相談員のやりがい
- 自立した生活を送れるように貢献できる
- 利用者に感謝される
- 達成感が得られる
- 7.福祉用具専門相談員に向いている人の特徴
- 細かな点に気づける人
- 体力に自信がある人
- 最新の情報をキャッチできる人
- まとめ:介護や福祉の領域で活躍したい方はぜひ挑戦を
1.福祉用具専門相談員とは
福祉用具専門相談員は、介護保険を利用する方が、自分に合った福祉用具を選べるように支援する専門職です。介護保険の指定を受けた「指定福祉用具貸与・販売事業所」に勤務し、介護保険サービスの一環として福祉用具のレンタルや販売を行います。
主な業務内容には、福祉用具の選定や利用計画の作成、使い方のアドバイス、使用状況のチェックなどがあります。
福祉用具専門相談員の概要を知るために、まずは役割や需要、取り扱う福祉用具などについて見ていきましょう。
福祉用具専門相談員の役割
福祉用具専門相談員の役割は、利用者の自立を支援することです。
介護保険を利用している方は、病気や障害によって、以下のような悩みを抱えている場合があります。
- 1人で起き上がれない
- トイレで用をたせない
- お風呂に入れない など
こうした悩みを解決するためには、身体機能の向上や動きやすさの改善を目指すだけでなく、生活環境を整えることも重要です。福祉用具専門相談員は、利用者の住まいに福祉用具を導入して環境を整え、安全で自立した生活を送れるように支援します。
福祉用具専門相談員の需要
少子高齢化の進展、介護の担い手の減少といった課題を抱えるわが国では、福祉用具専門相談員の需要が高まっていると考えられます。事実、近年のデータを見ると、福祉用具専門相談員の数と、福祉用具のサービスを利用する方の数が大きく増えていることがわかります。
厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)の報告によると、福祉用具専門相談員の数は2011(平成23)年に約2.1万人だったのが、2021(令和3)年には約3.5万人に増加しています。
一方、福祉用具をレンタルしている方の数は、2012(平成24)年が約140万人だったのに対して、2022(令和4)年には約258万人にまで増加しました。
こうした傾向から、今後も福祉用具専門相談員の需要は高まっていくのではないでしょうか。
●関連記事:福祉用具専門相談員に将来性はある?
取り扱う福祉用具
福祉用具は、品目によってレンタルもしくは購入の対象となります。それぞれの品目を見ていきましょう。
レンタル対象の品目 | 購入対象の品目 |
---|---|
車いす(付属品含む) 特殊寝台(付属品含む) 床ずれ防止用具 体位変換器 手すり スロープ 歩行器 歩行補助杖 認知症老人徘徊感知機器 移動用リフト(つり具の部分以外) 自動排泄処理装置 |
腰掛便座 自動排泄処理装置の交換可能部品 排泄予測支援機器 入浴補助用具 簡易浴槽 移動用リフトのつり具の部分 |
レンタル対象品目のうち、単点杖(松葉杖以外)、多点杖、歩行器(歩行車以外)、固定用スロープについては、購入も選択できます。
2.福祉用具専門相談員の業務内容
ここからは、福祉用具専門相談員の主な業務内容を見ていきます。
福祉用具の選定
身体機能や認知機能、住宅環境、家族構成といった個々の状況を踏まえたうえで、利用者に合った福祉用具を選定します。その際は、利用者の自立を妨げている要因を把握し、最適な福祉用具を提案することが重要です。
福祉用具サービス計画の立案
選定した福祉用具を利用するための「福祉用具サービス計画」を立てます。サービス計画には、担当のケアマネジャーが作成したケアプランに基づいて、利用者の基本情報、選定する福祉用具の情報、福祉用具を利用して達成すべき目標などを記載します。
主な記載内容は、次のとおりです。
項目 | 記載内容 |
---|---|
基本情報 |
氏名・年齢・要介護度などの情報 相談内容 身体状況・ADL 介護環境 利用者の意欲・意向 など |
選定提案 |
福祉用具が必要な理由 具体的な種目とその価格 提案する理由 など |
利用計画 |
生活全般の解決すべき課題 福祉用具の利用目標 など |
なお、計画書の様式は特に定められていません。上の表は、一般社団法人全国福祉用具専門相談員協会が提供している様式を参考にまとめました。
適合・取り扱いの説明
選定した福祉用具が、利用者の身体機能や住宅環境に適しているかを判断し、使い方を説明します。福祉用具を使うことで逆に不自由になったり、誤った使い方でけがをしたりしないように、丁寧かつわかりやすく説明することが大事です。
モニタリング
福祉用具の使用状況や、目標の達成状況を確認するのがモニタリングです。モニタリングでは、福祉用具に不具合がないか、使い方は正しいか、現在の身体機能や住宅環境に合っているかなど、さまざまな観点から状況をチェックします。必要があれば、福祉用具サービス計画の変更も行います。
モニタリングは、2024(令和6)年の介護報酬改定により、実施時期を明確にしたうえで計画書に記載することが義務づけられました。モニタリングの頻度に規定はありませんが、利用者それぞれの状態や、住宅環境などに応じて設定する必要があります。
なお、レンタルと購入を選択できる品目のうちレンタルしたものは、少なくとも6か月以内に1回の頻度でモニタリングを行うと定められています。
営業
新規の利用者を紹介してもらうためには、営業活動が欠かせません。そのため、居宅介護支援事業所や地域の介護保険事業者を対象に、最新機器を紹介したり商品のパンフレットを配布したりすることも、福祉用具専門相談員の大事な業務となります。地域との接点を持ち、積極的にコミュニケーションをとることは、さまざまなニーズの把握にもつながるでしょう。
●関連記事:
・福祉用具専門相談員はどんな仕事?仕事内容や講習の内容は?
・福祉用具専門相談員の仕事はきつい? 対処法とやりがいも解説
3.福祉用具専門相談員が活躍する場所
福祉用具専門相談員が活躍する場所は、介護保険の指定を受けた事業所以外にも多くあります。ここでは、福祉用具専門相談員が活躍できる職場について紹介しましょう。
福祉用具貸与・販売事業所
多くの福祉用具専門相談員が、福祉用具貸与・販売事業所に勤務しています。事業所には2名以上の配置が義務づけられており、福祉用具のレンタルと販売が主な業務となります。
店舗の介護用品売り場
スーパーやホームセンターなどの介護用品売り場も、福祉用具専門相談員が活躍する場所の1つです。介護保険を利用していなくても、オムツや介護シューズなどが必要な方もいるため、専門的な知識を生かした販売業務には、一定の需要があると考えられます。
住宅改修を行う事業所
ハウスメーカーや工務店などに勤務し、介護保険を利用して行う住宅改修について、アドバイスしている人もいます。住宅改修の主な内容は次のとおりです。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 床材の変更
- 扉の取り替え
- 便器の取り替え など
介護や福祉の観点から専門的な知識を求められるため「福祉住環境コーディネーター」の資格を持っていると、活躍の幅が広がるでしょう。
福祉用具メーカー
福祉用具メーカーでは、商品の企画・設計といった製品開発や、営業・販売などの仕事があります。福祉用具メーカーは幅広い業務を担っているため、技術的な業務やマーケティング関連業務など、さまざまな分野にかかわれる可能性があるでしょう。
4.福祉用具専門相談員になるために必要な資格
福祉用具専門相談員になるには、都道府県知事の指定を受けた研修事業者が実施する「福祉用具専門相談員指定講習」の受講が必要です。受講に必要な資格は特に定められておらず、誰でも受けられます。
以下では、講習のカリキュラムを見ていきましょう。保有していると受講が免除される資格もあるので、あわせて紹介しておきます。
講習のカリキュラム
講習では、福祉用具の種類や特徴、高齢者の身体機能や心理状態、介護・医療の基礎知識、介護保険制度など、幅広い知識を学びます。詳細は下の表を参考にしてください。
科目 | 科目名 | 学習時間 |
---|---|---|
福祉用具と福祉用具専門相談員の役割 | 福祉用具の役割 | 1時間 |
福祉用具専門相談員の役割と職業倫理 | 1時間 | |
介護保険制度等に関する基礎知識 | 介護保険制度の考え方と仕組み | 2時間 |
介護サービスにおける視点 | 2時間 | |
高齢者と介護・医療に関する基礎知識 | からだとこころの理解 | 6時間 |
リハビリテーション | 2時間 | |
高齢者の日常生活の理解 | 2時間 | |
介護技術 | 4時間 | |
住環境と住宅改修 | 2時間 | |
個別の福祉用具に関する知識・技術 | 福祉用具の特徴 | 8時間 |
福祉用具の活用 | 8時間 | |
福祉用具にかかるサービスの仕組みと利用の支援に関する知識 | 福祉用具の供給の仕組み | 2時間 |
福祉用具貸与計画等の意義と活用 | 5時間 | |
福祉用具の利用の支援に関する総合演習 | 福祉用具による支援の手順と福祉用具貸与計画等の作成 | 5時間 |
合計 | 50時間 |
出典:厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)福祉用具・住宅改修」)
講習の最後に習熟度を確認する筆記テストを受け、修了となります。合格率は公表されていませんが、学習の理解度を確認するためのテストなので、不合格になることは少ないようです。なお、2021(令和3)年と2024(令和6)年の介護報酬改正などを踏まえて、2025(令和7)年度からはカリキュラムが変更になる可能性があります。
免除される資格
以下の国家資格保有者は、福祉用具に関する知識を有しているとみなされ、受講が免除されています。
- 保健師
- 看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 義肢装具士
ちなみに、2015(平成27)年の制度改正により、以下の資格は免除されなくなりました。福祉用具専門相談員として活動したい場合は、講習を受ける必要があります。
- 介護職員基礎研修課程1級、2級の修了者
- 介護職員初任者研修課程の修了者
オンラインで受けられる講習もあるため、「近隣の地域で講習が開催されない」「移動の負担を減らしたい」という方も受講しやすくなっています。詳細を知りたい方は、実施機関に問い合わせてみましょう。
5.福祉用具専門相談員の給料・年収
厚生労働省の「職業情報提供サイト」に掲載されている福祉用具専門相談員の年収は、全国平均で394.3万円です(令和6年8月現在)。
また、マイナビ介護職に掲載されている福祉用具専門相談員の求人情報を見てみると、月収で17.6万円~33.5万円、年収で300~450万円と少し幅が広くなっています(令和6年8月現在)。
給料はスキルや職場の規模、勤続年数、活動地域などによって変わります。売り上げや契約件数などに応じてインセンティブを導入している会社もあるため、働き方次第で収入アップも期待できるでしょう。
●関連記事:福祉用具専門相談員の平均給与は?相場や年齢による差も解説
6.福祉用具専門相談員のやりがい
ここでは、福祉用具専門相談員のやりがいを3つ紹介します。
自立した生活を送れるように貢献できる
たとえば、部屋に閉じこもりがちだった方が歩行器を使って自分で歩けるようになると、意欲が向上したり生活範囲が拡大したりします。そんなふうに、提案した福祉用具によって利用者の"自立した生活"に貢献できたときは、このうえない喜びを感じるでしょう。
利用者に感謝される
福祉用具専門相談員は、利用者から感謝の言葉をもらえることも少なくありません。たとえば、特殊寝台を導入して楽に寝起きできるようになると、利用者だけでなく介護する家族からも感謝してもらえます。
そうした場面で受け取る「ありがとう」という言葉は、仕事への誇りややりがいにつながるはずです。
達成感が得られる
職場によっては、福祉用具専門相談員も営業ノルマを課される場合があります。ノルマのためにきつい思いをすることもありますが、自身の営業によって契約がとれたときの達成感は大きいものです。
売り上げや契約件数に応じてインセンティブが発生する会社であれば、達成感はより大きくなるでしょう。
●関連記事:福祉用具専門相談員向け履歴書の書き方
7.福祉用具専門相談員に向いている人の特徴
福祉用具専門相談員に向いている人の特徴は、大きく次の3つです。
細かな点に気づける人
福祉用具は使い方を誤ると、自立を妨げるだけでなく、重大な事故を招く可能性があります。そのため、福祉用具専門相談員には、用具の細かな不具合や誤った使い方などにいち早く気づく洞察力が必要です。
交換・修理によって不具合を解消したり、計画内容を変更したりといった柔軟な対応ができる人は、福祉用具専門相談員に向いています。
体力に自信がある人
福祉用具のなかには、特殊寝台や移動用リフトといった大型の商品もあり、搬入・組み立て・設置など、多くの作業が必要です。
大型の商品は複数人で取り扱うものの、重量物を運ぶ作業には体力を使います。体力に自信がある人のほうが、スムーズに仕事をこなせるでしょう。
最新の情報をキャッチできる人
福祉用具は、日々新しい商品が開発されており、最適な福祉用具を提案するためには、常に商品の知識をアップデートしておかなければなりません。
目まぐるしく変わる福祉用具の情報をキャッチし、知識をアップデートし続けられる人は、福祉用具専門相談員に向いているといえます。
●関連記事:福祉用具専門相談員に向いているのはどんな人?仕事内容も解説
まとめ:介護や福祉の領域で活躍したい方はぜひ挑戦を
福祉用具専門相談員は、少子高齢化が進むわが国において、需要の高い仕事となっています。利用者が安全で自立した生活を送るために、今後もその専門性が求められるでしょう。
福祉用具専門相談員の指定講習は、全国各地で受けられ、オンライン受講も可能です。講習を受ければ福祉用具のレンタルや販売業務に従事できるので、福祉用具専門相談員の仕事に興味のある方は、ぜひ挑戦してみてください。
●関連記事:
・福祉用具専門相談員と福祉用具プランナーの違い
・福祉用具専門相談員はケアマネとどう関わる?
・福祉用具専門相談員は女性も活躍できる?
【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む
スピード転職も情報収集だけでもOK
マイナビ介護職は、あなたの転職をしっかりサポート!介護職専任のキャリアアドバイザーがカウンセリングを行います。
はじめての転職で何から進めるべきかわからない、求人だけ見てみたい、そもそも転職活動をするか迷っている場合でも、キャリアアドバイザーがアドバイスいたします。

SNSシェア