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仕事・スキル 介護士の常識 2024/01/16

要支援1とは?認定基準や受けられるサービス・費用がまるわかり

文/福田明(松本短期大学介護福祉学科教授) thumb1.jpg

介護保険サービスを利用するために欠かせないのが、要介護認定です。「要支援1」は要介護認定の1つで、最も軽度な状態になります。

ここでは、要支援1とはどのような状況なのか、どのようなサービスを受けられるのか、要支援1で1人暮らしは可能なのかなどについて解説していきます。そのうえで、「要支援1の方が自分らしい生活を送るためには、何が求められているのか」についても考察していきますので、ぜひ最後までお読みください。

1.要支援1の意味は?どんな状態?

要介護認定と要支援1

介護保険制度のサービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定とは、対象となる人がどの程度の支援・介護を必要とするかを判定し、その結果を要介護度として表すものです。

具体的には、日常生活に支援を必要とする要支援が「要支援1・2」の2段階に分けられ、日常生活に介護を必要とする要介護は「要介護1~5」の5段階に分けられます。

介護保険制度は2000年度から始まっていますが、当初の要介護度は現在の7段階ではなく、要支援と要介護1~5からなる6段階でした。しかし、要支援に該当する人が予想以上に多かったため、2005年度からは要支援を2段階に再編し、新たに要支援1と要支援2が創設されたのです。

要支援と要介護では、要介護のほうが状態は重く、数値が高くなるにしたがって介護の必要性も高くなります。つまり、最も介護を必要とするのが要介護5であり、要支援1は最も軽い状態に位置づけられるわけです。

要支援1の人数と割合

要介護認定の結果を見ると、2021年度は要支援1が97.4万人で全体の14.1%を占め、要介護1の20.7%、要介護2の16.9%に次いで3番目に多くなっています。

2021(令和3)年度における要介護認定の結果
要支援1 97.4万人 14.1%
要支援2 95.2万人 13.8%
要介護1 142.9万人 20.7%
要介護2 116.2万人 16.9%
要介護3 91.8万人 13.3%
要介護4 87.4万人 12.7%
要介護5 58.6万人 8.5%
総数 689.6万人 100.0%

出典:厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告」

要支援1となる主な原因

要介護度別に、支援や介護が必要となった主な原因を確認すると、要介護1~3では「認知症」が最も多く、要支援1では「高齢による衰弱」(19.5%)、「関節疾患」(18.7%)、「骨折・転倒」(12.2%)の順番でした。

「骨折・転倒」は要介護1~5の主な原因にもなっているため、「要支援1は要介護につながる危険信号」と考え、軽視しない姿勢が大切です。特に筋肉や関節、骨などの衰えには注意が必要でしょう。

要支援1・2、要介護1~5となった原因
要介護度 1位 2位 3位
要支援1 高齢による衰弱 19.5% 関節疾患 18.7% 骨折・転倒 12.2%
要支援2 関節疾患 19.8% 骨折・転倒 19.6% 高齢による衰弱 15.5%
要介護1 認知症 26.4% 脳血管疾患 14.5% 骨折・転倒 13.1%
要介護2 認知症 23.6% 脳血管疾患 17.5% 骨折・転倒 11.0%
要介護3 認知症 25.3% 脳血管疾患 19.6% 骨折・転倒 12.8%
要介護4 脳血管疾患 28.0% 骨折・転倒 18.7% 認知症 14.4%
要介護5 脳血管疾患 26.3% 認知症 23.1% 骨折・転倒 11.3%

出典:厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」

要支援1と要支援2の違い

要支援1と要支援2は、ともに要介護の一歩手前にあたる状態です。具体的には食事や排泄、入浴などの介護までは必要としないものの、日常生活に多少の見守りや支えが必要という点が共通しています。

では、要支援1と要支援2の違いはどこにあるのでしょうか。ポイントは下肢機能にあります。例えば、要支援1では立ち上がりに支えが必要ですが、歩くときに特別な支えは必要ありません。しかし、要支援2では立ち上がりに加え、歩く際にも支えが必要となります。

要支援1と自立(非該当)の違い

要介護認定で支援や介護が必要でないと判定された場合は、自立(非該当)となります。自立(非該当)の人は、日常生活を1人で支障なく送ることができるため、介護保険制度によるサービスを利用することはできません。

一方の要支援1は、日常生活に何かしらの支援が必要な状態であるとともに、適切な支援があれば、介護が必要な状態を防げる段階です。そのため、要支援1に認定された場合は、介護保険制度によるサービスを利用することができます(ただし、サービスの種類や回数などには制限があります)。

2.要支援1と認定されるには?

要支援1と認定されるためのポイントは大きく3つあります。1つ目は、立ち上がりや起き上がりの状態で、立ち上がったり座ったりする際にふらつくことが多くなったという人は、要支援1に認定される可能性があります。

その際は、判断力や理解力が保たれているかどうかの確認も大事です。もし、認知症などによって判断力や理解力が低下しているとしたら、要支援1ではなく要介護1以上に認定されることがあるからです。

2つ目は、介護保険制度の要介護認定を受けることです。要支援1だけでなく、要支援2や要介護1~5も、「黙っていれば誰かが認定してくれる」というものではありません。要介護認定は市区町村によって行われるため、まずは最寄りの市町村に申し出て、要介護認定を受ける必要があります。

なお、要介護認定には本人あるいは家族などによる申し出が必要です(申請主義)。申請に不安がある人は、事前に市町村の介護保険制度の担当窓口や、地域包括支援センターに相談してみるのもよいでしょう。

3つ目は、支援や介護にかかる時間を示す要介護認定基準時間(介護にかかる時間の目安)です。例えば、その人の要介護認定基準時間が32分以上50分未満と判断されれば、要支援2または要介護1に認定されやすくなります。一方、それよりも短い25分以上32分未満であれば、要支援1と認定される可能性が高くなるでしょう。

3.要支援1で1人暮らしはできるか?

要支援1では、立ち上がりや調理、掃除などに支えや見守りを必要としますが、食事や排泄、入浴などの動作は基本的に自分1人で行えます。そのため、要支援1であっても1人暮らしをしている人は少なくありません。事実、要支援1の人がいる世帯の状況を確認してみると、1人暮らしを示す「単独世帯」が約4割にのぼっています。

ただし、1人暮らしにはいくつかの不安要素もあります。例えば、調理するのが面倒になり、食生活の乱れから体調不良を起こすケースもその1つです。また、自宅にこもりがちな生活になると体力・筋力が低下し、転倒などの危険性が増してしまうでしょう。ほかの人と関わる機会が減ることで、孤独感やさびしさを感じたり、日々の生活に楽しみや喜びを見出せなくなったりするおそれもあります。

こうした不安を「現実のもの」にしないためにも、介護保険制度などを活用して1人ひとりに適したサービスを利用することが重要です。そのうえで、バランスのよい食事や適度な運動を心がけ、社会的な交流の機会を図ることができれば、要支援1でも1人暮らしの継続は十分に可能でしょう。

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出典:厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」

4.要支援1で受けられるサービスは?

介護保険制度では、要介護度によって受けられるサービスの種類が異なります。要支援1の場合は、介護が必要な要介護状態となるのを防ぐためにサービスを利用するため、サービス名に「介護予防」の冠が付きます。要支援1で利用可能な主なサービスは以下のとおりです。

自宅で受けるサービス

○介護予防訪問入浴
自宅の浴槽では入浴が難しい場合は、浴槽を積んだ入浴車に自宅を訪問してもらい、入浴の支援を受けることができます。

○介護予防訪問看護
かかりつけ医(主治医)が必要と認めた場合は、看護師や保健師などに自宅を訪問してもらい、血圧・脈拍測定などの健康チェックや病状の確認、薬の飲み方の指導など、療養上の世話や診療の補助が受けられます。

○介護予防訪問リハビリテーション
かかりつけ医(主治医)が必要と認めた場合は、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士に自宅を訪問してもらい、筋力維持・向上や歩行の訓練、調理の練習、福祉用具の提案など、必要なリハビリテーションや支援が受けられます。

○介護予防居宅療養管理指導
医師、歯科医師、歯科衛生士、薬剤師、管理栄養士などに自宅を訪問してもらい、健康管理や歯科指導、服薬指導、栄養指導などが受けられます。

自宅から通って受けるサービス

○介護予防通所リハビリテーション
かかりつけ医(主治医)が必要と認めた場合に、介護老人保健施設や病院、診療所などに通い、必要なリハビリテーションや食事、入浴などのサービスを受けられます。デイケアとも呼ばれます。

短期間の宿泊サービス

○介護予防短期入所生活介護
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などに短期間宿泊し、食事や入浴などのサービスを受けられます。

○介護予防短期入所療養介護
介護老人保健施設や病院、診療所などに短期間宿泊し、食事や入浴などのサービスを受けられます。介護予防短期入所生活介護とともに、ショートステイとも呼ばれます。

通い・訪問・短期間の宿泊がセットになったサービス

○介護予防小規模多機能型居宅介護
利用者の希望や状況に応じて、通いによるデイサービス、訪問によるホームヘルプサービス、短期間の宿泊であるショートステイの3つを組み合わせ、同じ事業所からサービスを受けられます。

福祉用具のレンタルと購入のサービス

○介護予防福祉用具貸与
貸与とはレンタルのことです。要支援1の場合は、以下の福祉用具が1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)負担でレンタルできます。要支援1であっても、手すりや杖などの福祉用具を活用して転倒を防止することはとても重要です。

一方、車いすや介護用ベッド、移動用リフトなどのレンタルは、要介護2以上が対象となっています。そのため、要支援1と認定された利用者が車いすや介護ベッドなどをレンタルする場合は、費用が全額自己負担となります。

<要支援1の対象品目>

・手すり
・スロープ
・歩行器
・歩行補助杖(4点杖・多点杖)


○特定介護予防福祉用具販売
入浴、排泄などの際に身体に直接触れて使用するため、レンタルには向かない以下の福祉用具を販売するサービスです。要支援1の場合は、購入費の9割(一定以上の所得がある場合は8割または7割)が戻ってきます。ただし、同じ年度内(4月~翌3月)に福祉用具の購入費が上限の10万円を超えた場合、超えた分は全額自己負担となります。

<特定介護予防福祉用具販売の対象品目>

・腰掛便座
・自動排泄処理装置の交換可能部品
・排泄予測支援機器
・入浴補助用具
・簡易浴槽
・移動用リフトのつり具の部分


住宅改修サービス

○介護予防住宅改修費
高齢になっても住み慣れた家で暮らし続けられるように、以下のような小規模な住宅改修(リフォーム)を行った場合、改修費の9割(一定以上の所得がある場合は8割または7割)が戻ってきます。ただし、住宅改修費が上限の20万円を超えた場合、超えた分は全額自己負担となります。

<介護予防住宅改修費の対象>

・手すりの取り付け
・段差の解消
・すべりの解消
・引き戸等への取り替え
・洋式便器等への取り替え
・付帯して必要な工事


5.要支援1で訪問介護と通所介護を利用できる?

訪問介護は、ホームヘルパー(訪問介護員)が自宅を訪問し、食事や排泄、入浴などの支援を提供するサービスです。一方、通所介護は利用者がデイサービスセンターなどに通い、食事や排泄、入浴などの支援や機能訓練などを日帰りで受けるサービスです。

以前は、要支援1でも利用できる介護予防訪問介護や介護予防通所介護がありましたが、2015年度の介護保険法改正で、それらのサービスはなくなりました。

一方、訪問介護と通所介護は現在も残っていますが、サービスを利用するためには要介護1~5の認定を受ける必要があります。つまり、要支援1・2では、訪問介護と通所介護を利用することができないのです。

ただし、要支援1・2と認定された人は、市町村が行う介護予防・日常生活支援総合事業のなかにある訪問型サービスや、通所型サービスを利用することができます。訪問型サービスでは掃除や洗濯などの支援、通所型サービスでは体操や交流などの支援を提供しており、ともに介護予防や日常生活の自立を図ることが目的となっています。

なお、要支援1の場合、訪問型サービスは週1~2回、通所型サービスは週1回程度の利用が目安となります。こうした利用回数については、市区町村ごとに異なる場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

6.要支援1で施設に入居できる?

要支援1の場合、食事や排泄、入浴などの介護を必要としません。そのため、要介護状態にある利用者を対象とした介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設、介護医療院などに入居することはできません。

前述したとおり、要支援1であれば、サービスを利用しながら自宅での1人暮らしが可能です。しかし、「1人暮らしはさびしい」「何かあったときに心配」「自宅が古くて、段差もあり危険」「持ち家の管理ができなくなった」というような理由から、要支援1でも施設への入居を希望するケースが一定数見られます。

それを踏まえるなら、「要支援1だから施設への入居は必要ない」とは必ずしもいえません。1人ひとりの状況によっては、施設への入居を検討する必要もあるでしょう。そこで、以下では要支援1でも入居できる主な施設を紹介しておきます。

ただし、特徴やサービス内容、利用料金などは、施設ごとに異なるため注意が必要です。

○有料老人ホーム
介護付有料老人ホームや住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホームなど、その種類はさまざまです。受けられるサービスや利用料金などにも幅があります。

○ケアハウス
自宅での生活が難しい60歳以上の人を対象とした施設です。低料金で食事や洗濯などのサービスが受けられます。

○サービス付き高齢者向け住宅
安否確認や生活相談などのサービスが受けられます。また、施設内はバリアフリーとなっています。

7.要支援1でサービスを利用した際にかかる費用は?

介護保険制度では、要介護度にあわせて区分支給限度額(介護保険から給付される1か月あたりの上限額)が定められており、要支援1の区分支給限度額は 1か月あたり50,320円 となっています。この区分支給限度額の範囲内であれば、1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)負担で介護保険制度のサービスを利用することが可能です。

区分支給限度額を超えてサービスを利用した場合、超えてしまった費用については全額自己負担となりますが、実際には区分支給限度額を超えないようなサービスの組み合わせを、ケアマネジャー(介護支援専門員)が検討してくれます。

ちなみに、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などへの入居、居宅療養管理指導といったサービスは、区分支給限度額の対象外となっています。また、先に述べたとおり、福祉用具の購入や住宅改修については異なる利用限度額が適用されているので注意が必要です。

<要介護度別の区分支給限度額と自己負担額>

要介護度 区分支給限度額 自己負担額
1割負担 2割負担 3割負担
要支援1 50,320円 5,032円 10,064円 15,096円
要支援2 105,310円 10,531円 21,062円 31,593円
要介護1 167,650円 16,765円 33,530円 50,295円
要介護2 197,050円 19,705円 39,410円 59,115円
要介護3 270,480円 27,048円 54,096円 81,144円
要介護4 309,380円 30,938円 61,876円 92,814円
要介護5 362,170円 36,217円 72,434円 108,651円

※2019年10月から適用された区分支給限度額(1単位10円の場合)

まとめ:要支援1だからと軽視しないで

要支援1は、日常生活に介護は必要ないものの、立ち上がりや調理、洗濯などに支援が必要な状態です。要支援2との違いは、歩く際に支えを必要とするか・必要としないかにあります。

要支援1になってしまう主な原因には、「高齢者による虚弱」「関節疾患」「骨折・転倒」が挙げられます。なかでも「骨折・転倒」は要介護状態につながる要因でもあるため、特に注意が必要です。「要支援1だから大丈夫」と軽視するのではなく、食事や運動、社会的な交流を意識しながら介護予防を図り、要支援1の状態をできる限り維持するように努めましょう。

要支援1の人が、自分らしい生活・よりよい生活を送れるように支援するためにも、まずは要支援1の実態を把握することから始めてみてください。

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福田明(Akira Fukuda)

松本短期大学介護福祉学科教授 博士(社会福祉学)

1977年、長野県生まれ。介護老人保健施設で勤務した後、2006年度から母校である松本短期大学介護福祉学科で教鞭を執り始め、現在に至る。この間、九州保健福祉大学大学院連合社会福祉学研究科社会福祉学専攻博士(後期)課程を修了。主な所持資格は、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員。

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