身体介護とは?訪問介護における位置づけと3つのサービス内容
構成・文/介護のみらいラボ編集部![3_0420.jpg](https://kaigoshoku.mynavi.jp/contents/kaigonomirailab/works/2022/05/3_0420.jpg)
社会の高齢化が進むにつれて、介護サービスの市場規模は年々膨らんでおり、今後も需要は高まっていくと予想されます。
当記事では、訪問介護のサービス類型の1つである「身体介護」について、サービス内容などを詳しく紹介します。身体介護という言葉は聞いたことがあるものの、明確な定義を知らないという人は、ぜひ当記事を読んで基礎知識を身に付けてください。
1.訪問介護における身体介護とは?
「身体介護」とは、ヘルパーなどの介助者が利用者の身体に直接触れて行う介助サービスのことで、訪問介護のサービス類型の1つです。訪問介護における身体介護は、下記のいずれかのサービスに該当するものと定義されています。
①利用者の身体に直接接触して行う介助サービス (そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)
②利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス
③その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等 に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のためのサービス
(引用:厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について」)
身体介護では、利用者の行うすべての動作を手助けするのではなく、状況や体調に合わせた介助を行います。ときには利用者自身の行動を促して傍で見守ったり、利用者と一緒に日常生活動作を行ったりすることも含まれます。また、利用者の自宅内における介助だけでなく、通院時の外出介助なども身体介護のサービス内容の1つです。
訪問介護における身体介護は、利用者を助ける介助サービスであると同時に、自立を支援するサービスでもあります。
生活援助との違い
「生活援助」は身体介護と同じく訪問介護のサービス類型の1つで、利用者にとって困難な家事などを代理で行い、利用者の日常生活を支援するサービスです。
身体介護と生活援助のサービス内容は、「利用者の身体に触れるかどうか」「利用者と一緒に行うかどうか」という点で異なります。
生活援助は、利用者本人や家族の遂行が困難な場合に行う支援サービスであるため、基本的に介助者のみで家事などを行います。それに対して身体介護では、日常動作の維持向上や自立を促す目的をもって利用者本人の動作・行動を介助します。
洗濯の家事を例に挙げると、利用者と一緒に洗濯物を干したりたたんだりする場合は「身体介護」となりますが、介助者が代理で行う場合は「生活援助」となります。
●関連記事 身体介護と生活援助の違いは?それぞれのサービス内容を解説! 訪問介護で行う生活援助とは?介護保険適応サービスと保険外サービスの違いを理解しよう
身体介護・生活援助以外の訪問介護サービス類型
訪問介護におけるサービス類型には、身体介護、生活援助の他に「通院等乗降介助」があります。
通院等乗降介助とは、利用者の通院等のための乗車または降車を介助するサービスです。乗車場所までの移動や、降車後の移動介助もサービス行為に含まれます。また、通院等乗降介助のサービスを利用できるのは、要介護認定で「要介護1から5」と認定を受けた人に限られます。
通院等乗降介助において、訪問介護員自らの運転する車両を利用する場合は道路運送法に基づく一定の手続きが必要になるため注意しましょう。手続きを行っていない自家用車の利用は通院等乗降介助と認められず、介護報酬算定の対象になりません。
通院等乗降介助では介護タクシー以外の交通機関の利用も認められています。ただし、一般のタクシーなどを利用する場合は、移動中の社内における介助の状況によって「身体介護」とみなされる場合もあります。介護報酬の算定時には注意しましょう。
2.訪問介護における身体介護の3つのサービス内容
訪問介護における身体介護は、サービスの内容や目的を基準として以下の3つに分けられます。
(1)利用者の身体に直接接触して行う介助サービス
(2)利用者の自立支援・重度化防止のためのサービス
(3)その他の専門的知識・技術を要する生活上のサービス
(出典:厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について」)
ここでは、利用者の日常生活動作をサポートする身体介護の具体例について詳しく紹介します。訪問介護の業務を把握する際の参考にしてください。
利用者の身体に直接触れる介助サービス
訪問介護において、利用者の日常生活動作を介助する機会は多く、身体に直接接触して行うサービスにはさまざまな種類があります。
(例)利用者の身体に直接触れる介助サービス
介助サービス | 内容 |
---|---|
排泄介助 | トイレまでの移動、脱衣、排泄の介助、オムツ交換など |
食事介助 | 調理、摂食介助、服薬介助、口腔ケアなど |
入浴介助 | 全身浴または部分浴の介助、洗髪や湯あみの介助、身体の洗浄など |
清拭 | 衣類の着脱、全身清拭(入浴が難しい場合) |
身体整容 | 爪切り、髭の手入れ、耳掃除などの身支度 |
更衣介助 | 着替えの準備、衣服の着脱など |
体位変換 | 利用者への声掛け、寝返り介助など |
移乗介助 | 座位や臥位の状態からの自立、または車いすへの移乗を介助 |
移動、歩行介助 | 車いすや自立の状態での動作介助、動線の安全確認など |
外出介助 | 乗り物への乗降介助、外出先(病院など)での代理手続きなど |
(出典:厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について」)
身体に直接触れて行う介助サービスは利用者の衛生面に関わる内容も多く、利用者の健康維持には欠かせないものばかりです。また、利用者の安全確保や清潔保持に配慮するため、サービス行為の一連の流れには着替え準備や動線の確保、後片付けといった業務が伴います。
利用者の自立支援・重度化防止のためのサービス
利用者の自立支援・重度化防止のためには、できることは利用者本人が行うよう促す必要があります。介助者が安全を確保しつつ、常時介助できる状態で利用者を見守ることで、「利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上」が期待できます。
(出典:厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について」)
ADLは食事や入浴といった基本的な「日常生活動作」、IADLは外出や調理など少し複雑な「手段的日常生活動作」、QOLは「生活の質」をそれぞれ意味しています。
自立支援・重度化防止のためのサービスを行う際の注意点は、利用者本人の自己決定を尊重することです。利用者自身がやりたいことと、そのために障害となる事柄を把握し、必要に応じて介助者が手伝いながら一緒に家事などを行いましょう。
利用者の希望と実際に可能な動作があまりにもかけ離れている場合は、利用者が納得するよう説明して、現状に見合った内容に落とし込む必要があります。
(例)自立支援・重度化防止につながるサービス
声掛け・見守り | 利用者と一緒に行う |
---|---|
・服薬 ・入浴 ・更衣 ・移動時の歩行 ・ベッドの出入り(自立)など |
・洗濯 ・ゴミの分別チェック ・調理、配膳、後片付け ・部屋の掃除や整理整頓 ・シーツや布団カバーの交換など |
(出典:厚生労働省「「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について」)
立位や歩行を伴う動作を見守る際は転倒防止の声掛けを適宜行い、介助が必要となったら即時に対応できるよう準備して付き添いましょう。また、上記のようなサービスを行う前後は利用者の疲労度や体調に気を配ることも大切です。
専門知識・技術を要する日常生活上・社会生活上のためのサービス
身体介護のうち、専門的知識・技術を要する生活上のサービスには「たんの吸引」や「経管栄養」といった医療行為が含まれます。また、嚥下困難者に提供する流動食など特段の専門的配慮をもって行う調理も、専門知識・技術を要する生活上のサービスの1つです。これらは、利用者が日常生活を営む上で必要な行為として、医師の指示がある場合に限って行うことが認められます。
たんの吸引などの医療行為を行う際は、介護事業者から都道府県への事前申請や登録が必要です。さらに、現場でサービスを行う人については「介護福祉士および一定の研修を受けた介護職員など」に限られています。
(出典:厚生労働省「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度について」)
まとめ
「身体介護」は訪問介護におけるサービス類型の1つで、食事や入浴といった利用者の日常生活に必要不可欠な行為を介助するサービスです。身体介護は、利用者の身体に直接触れることが特徴で、「生活援助」とは異なります。
また、訪問介護で身体介護を行う際は、利用者の状況や意志を把握した上で、適切なレベルの介助を提供する必要があります。利用者の自立した行動を促し見守ることは、利用者の生活機能や暮らしの質向上によい影響が期待できます。
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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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