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仕事・スキル 介護士の常識 2024/12/16

介助とは?介護との違いや意味・仕事内容を簡単に解説

構成・文/介護のみらいラボ編集部 2_0408.jpg

介護現場では、「介護」と「介助」という2つの言葉をよく耳にします。しかし、介護業界に入ったばかりだと「2つが違う意味なのはわかっているけれど、具体的にどう違うのかまでは説明できない」という人も多いかもしれません。

そこで、この記事では、介護にかかわる人が知っておくべき基礎知識として、介護と介助の違いや具体的な仕事内容などについて詳しく解説します。適切な介護を行うためにも、現場での使用頻度が高い用語の意味を正確に理解しておきましょう。

1.介護と介助の違いとは

介護と介助は、どちらも介護分野で頻繁に使われる言葉です。どちらの言葉も、法律などによる明確な定義はありませんが、厚生労働省では「介護を提供する手段」として「介助」を使用しています。

身体介護:利用者の身体に直接接触して行われるサービス等
(例:入浴介助、排せつ介助、食事介助 等)

(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」

上記の資料では、「身体介護」を提供する手段として、「入浴介助」「排せつ介助」「食事介助」があることを示しています。このことから、介護は「要介護者の自立支援を目指した行為全般」であり、それを実現するための具体的な手段(日常生活に不可欠な動作、行動をサポートすること)が介助だと捉えることができるでしょう。一般的には、介助より介護のほうが抽象的な概念となります。

介助とは

前述したように、介助とは利用者さんが自立した日常生活を送るうえで不可欠な動作、行動を手助けする行為です。

介助の内容は、利用者さんの心身の状態によってさまざまです。利用者さんのすべての動作を助けるケースもあれば、動作の見守りや必要な動作の手助けのみを行う場合もあります。介助の際は利用者さんのQOLの向上に重きを置く必要があり、利用者さん本人ができることは、できる限りやってもらうという視点を持つことが大切です。

介護とは

介護とは病気や加齢などが原因で、自力で日常生活を送るのが難しい方のために、自立支援を目指したサポートを行うことです。介護という言葉は、広い意味合いで使われるケースが多いものの、一般的には利用者さんの日常生活や社会生活の質の向上を目的としたサービス全般を指します。そのため、介助も介護のなかに含まれています。

なお、身体的なサポートだけでなく、精神的・社会的なサポートも含まれるのも介護の特徴です。

2.介護に関する2つの仕事内容

一般的に介護では、「身体介護」と「生活援助」という2つのサポートを行います。それぞれの仕事内容は次の通りです。

身体介護

直接利用者さんの体に触れて、日常生活に必要な動作をサポートするサービスです。具体的には、入浴・食事・排せつといった身のまわりの動作や、起き上がり・寝返り・立ち上がり・歩行などの基本動作を支援します。

身体介護では利用者さんの自立支援を目的としているため、介護者は利用者さんができない部分を見極めて適切にサポートする必要があります。

●関連記事:身体介護とは?訪問介護における位置づけと3つのサービス内容

生活援助

利用者さんが日常生活を送れるようにサポートするサービスです。訪問介護においては利用者さんの自宅を訪問し、自力で行うのが難しい掃除・洗濯・調理・買い物などの家事を代行します。身体介護と大きく異なるのは、利用者さんの体に触れない点です。

また、生活援助は利用者さん本人に向けて行われるサポートであり、ご家族への支援は行いません。

●関連記事:生活援助とは?介護保険適応サービスと保険外サービスの違いを理解しよう

3.介助に関する6つの仕事内容

介助には、食事介助・排せつ介助・入浴介助・歩行介助・移乗介助・更衣介助の6種類があります。それぞれの特徴や具体的な仕事内容は、以下の通りです。

食事介助

食事介助とは、咀嚼機能や嚥下機能、消化機能などの低下が原因で、うまく食事をとれない利用者さんをサポートすることです。

食事介助では、単に食事を提供するだけでなく、適切な高さのテーブル・椅子を用意したり、こぼしにくい食器・カトラリーを選んだりして、食事しやすい環境を整えることも大事です。

食器類やティッシュペーパー、エプロンなど必要なものを準備したら、以下の手順で食事介助を行います。

【食事介助の手順】

(1)正しい姿勢で座る
自力で座れる利用者さんには、誤嚥などの事故を防ぐために、正しい姿勢で椅子や車椅子に座ってもらいましょう。

(2)口内を湿らせる
最初に水やお茶を飲んでもらい、口のなかを湿らせます。

(3)食事を提供する
利用者さんのペースに合わせ、水分の多いものや利用者さんが食べたいものから、少しずつ口に運びます。

(4)摂取量を確認する
利用者さんが食べ終わったら、どのくらい食べたかを確認し、記録しておきましょう。

(5)口のまわりや口内のケアを行う
口のまわりや手を拭き、必要に応じて歯磨き・入れ歯洗浄なども行います。


食事介助が必要な利用者さんは誤嚥や窒息の危険性があるため、正しい姿勢を保ちながら食べられるように工夫する必要があります。口に運ぶ量やペースにも注意しましょう。介助者は立った状態ではなく、利用者さんの隣に座って介助を行うと、誤嚥のリスクを減らせます。

●関連記事:
食事介助の正しい手順と注意点―高齢者の食事の特徴も
介護食の種類4つ|食事を楽しんでもらうポイントも紹介

排せつ介助

排せつ介助では、排せつのための動作が困難な方や、排せつ機能に問題がある方をサポートします。排せつ介助は、利用者さんの状態に応じて4つの方法に分類でき、トイレ介助・ポータブルトイレ介助・おむつ介助・便器や尿器を使用する介助があります。排せつ介助は利用者さんの尊厳にかかわるデリケートな行為のため、利用者さんのプライバシーに配慮し、可能な限り自分の力で行ってもらうことが重要です。

排せつ介助の手順は、実施する方法によって違います。以下では、利用者さんがトイレまで移動できる場合のトイレ介助について、詳しい手順を紹介します。

【排せつ介助の手順】

(1)トイレまで誘導する
利用者さんの状況に応じて、体を支えたり車椅子を使ったりしながらトイレまで移動します。

(2)便座に腰かける
必要に応じて脱衣や便座に座ることをサポートします。利用者さんが座った状態をキープできる場合、介助者はいったんトイレから出ます。

(3)清拭や着衣を行う
排せつが終わったら声をかけてもらい、再びトイレに入りましょう。トイレットペーパーで清拭を行って排せつ物を流し、必要に応じて着衣の手助けをします。


排せつ時には、利用者さんの体調に異変が生じる可能性もあるため注意が必要です。待機中になかなか合図がない場合は、急かさないように気をつけながら声かけをし、状況を確認しましょう。

●関連記事:
排泄介助の正しい方法と手順―トイレ・おむつなど種類別に解説
介護用ポータブルトイレの機能と特徴|種類・選び方・利用方法も

入浴介助

浴室は事故が起こりやすい空間です。また、入浴には体力を使います。入浴介助を行う際は、事前に利用者さんの体調や浴室の状況をチェックするなど、安全の確保に努めましょう。必要に応じて、排せつを済ませておく、脱衣所や浴室を暖めるなどの準備をすることも大切です。

入浴介助は、一般的に以下のような手順で行います。

【入浴介助の手順】

(1)浴室に入る
必要に応じて脱衣をサポートし、浴室に入ります。床や椅子などの肌に触れる部分はあらかじめ温めておき、足元に注意しながら椅子に座ってもらいましょう。

(2)お湯の温度を確認する
お湯の温度を確認した後、声をかけてから利用者さん自身にも確認してもらいます。

(3)体を洗う
体に負担をかけないようシャワーを使い、足元から体の上部まで徐々にお湯をかけてきます。その後、髪、顔、上半身、下半身の順に丁寧に洗い、泡を洗い流しましょう。

(4)浴槽に入る
体を支えるか手すりにつかまってもらいながら、ゆっくりと浴槽に入ってもらいます。お湯につかる時間の目安は5分程度です。

(5)浴室を出る
ゆっくりと浴槽から出たら、髪や体をタオルで拭き、着衣をサポートします。


入浴介助中は、利用者さんが滑って転倒しないように細心の注意が必要です。なお、利用者さんの体調が思わしくない場合は、お湯に浸からず清拭のみを行うこともあります。

●関連記事:
【介護スタッフ向け】入浴介助の手順・注意点とは?

歩行介助

歩行介助では、利用者さんが安全に歩けるようにサポートします。歩行介助はいくつかの種類に分けられますが、以下では代表的な3つについて解説しましょう。

【歩行介助の種類】

(1)見守り歩行
利用者さんの体に直接触れないで行う介助方法です。ほぼ自力で歩ける方をサポートする方法であり、1人での歩行に自信がない方や、杖を使えば自分の力で歩ける方などが対象になります。介助者は利用者さんの斜め後ろから見守り、バランスを崩したらすぐに支えられる距離を保ちます。

(2)寄り添い歩行
利用者さんの横に寄り添って行う歩行介助であり、主に歩行が不安定な方が対象となります。寄り添い歩行はお互いが前方を見ながら歩けるため、障害物を確認しやすい点がメリットです。介助者は、利用者さんの利き手の反対側に立つのが基本ですが、片麻痺がある場合は麻痺のある側に立ちます。

(3)手引き歩行
介助者が利用者さんと向かい合い、両手を取って歩行をサポートする方法です。手引き歩行は、両手をしっかり支えられるので利用者さんが安心しやすい点にメリットがあります。ただし、介助者は後ろ向きで歩くため、周囲や足元の確認がほとんどできません。手引き歩行はベッドから車椅子に移るときなど、短い距離の移動に適した介助方法と言えるでしょう。


上記のほかにも、後ろから介護者を支える歩行介助や、歩行器やシルバーカーを使った歩行介助などがあり、利用者さんの状況に応じて適切に実施することが求められます。

●関連記事:
歩行介助の正しい方法と労災を防ぐための注意点
歩行器の4つの種類と選び方とは?介護の場面で使用するメリット

移乗介助

移乗介助はベッドから車椅子、もしくは車椅子からベッドに移動する際のサポートです。移乗介助の際に利用者さんがベッドや車椅子から落ちると、大きなけがの原因になります。移乗介助の際には車椅子の角度を確認したり、確実にブレーキをかけたりして、安全に配慮しましょう。

以下では、ベッドから車椅子に移乗する場合の手順を紹介します。

【移乗介助の手順】

(1)利用者さんを車椅子の近くに移動させる
あおむけの状態で、利用者さんをベッドのわきまで移動させます。利用者さんには胸の前で腕を組み、膝を立ててもらうと移動しやすくなります。

(2)利用者さんに座ってもらう
利用者さんの体を横向きにした後、上体を起こしてベッドのわきに浅く座ってもらいます。

(3)ベッドと車椅子を調整する
ベッドの高さや車椅子の位置を調整します。車椅子は、ベッドの側面に対して30度〜45度の位置に置きましょう。

(4)車椅子に移乗する
利用者さんに声かけした後、両わきから腕を通し、かけ声とともに方向転換して車椅子に移乗してもらいます。その際、利用者さんには前かがみの姿勢をとってもらい、介助者の肩に体重がかかるようにするとよいでしょう。


移乗介助では、声かけをしながらお互いにタイミングを合わせることが大事です。

●関連記事:
移乗介助の正しい方法―コツや注意点も

更衣介助

更衣介助では、利用者さんの着替えをサポートします。更衣介助を行う際は、着替えや下着、靴下などはもちろん、利用者さんの体にかけるタオル・ブランケットも準備しましょう。前開きのシャツや伸縮性にすぐれた上着など、着脱のしやすい衣服を選ぶことも重要です。また、必要に応じてカーテンで仕切るなど、利用者さんのプライバシーにも十分配慮してください。

更衣介助の方法は、利用者さんの状況や衣類の種類によっても異なりますが、以下では座った状態でTシャツを着脱するときの手順を紹介します。

【更衣介助の手順】

(1)背中の部分をまくる
利用者さんに少し前かがみになってもらい、Tシャツの背中の部分をまくり上げましょう。

(2)片腕を抜く
痛みや麻痺が少ないほうの腕を袖から抜きます。

(3)Tシャツを脱ぐ
Tシャツから頭を抜き、反対側の袖を抜いて脱衣完了です。

(4)片腕を袖に通す
痛みやしびれが強いほうの腕を、着替えの袖に通します。

(5)頭ともう片方の腕をTシャツに通す
頭からTシャツをかぶり、反対側の腕を袖に通して着衣完了です。


更衣介助では、利用者さんができる範囲は自分でしてもらうことが重要です。更衣の際は、利用者さんがバランスを崩して転倒しないように注意しましょう。

●関連記事:
更衣介助の正しい手順と注意点―着患脱健の考え方も

4.介助の4つの段階

どこまで介助するかは、介護を必要とする方の自立の度合いによって異なります。例えば、多少の手助けがあれば自分でできる方に対して何もかも介助してしまうと、自立の妨げになりかねません。

過介助や介助不足にならないよう、介護者は利用者さんがどこまでできるかを見極め、適切にサポートすることが大切です。ここでは、日常生活動作の指標となっている「自立度」を取り上げ、4つの段階に分けて解説します。

自立

食事や着替え、排せつなど、日常生活において必要な基本的な動作が自分でできる段階です。介護者が利用者さんを介助する必要はありませんが、転倒したりしないように注意を払いましょう。

部分介助

「一部介助」ともいい、基本的なことは自分でできるものの、部分的に援助や見守りが必要な段階です。例えば、「自立歩行はできるものの、ふらつきの恐れがある」などのケースでは一部介助が必要と判断されます。また、身体機能の低下に伴い、これまで自立していた動作で転倒が起こるような場合も、見守りが必要となり一部介助の段階に入ります。

介助あり

「半介助」ともいい、介護者などの援助があればある程度は自分で行動できる段階です。例えば、「着替えの際に袖に腕を通すときだけ手伝いが必要で、他は自力でできる」といったケースが該当します。利用者さんが自力ではできない部分を見極めたうえで、必要な援助を行い、過介助にならないように注意しましょう。

完全介助

自力では特定の動作をするのが困難な段階で、介護者が全面的に介助する必要があります。ただし、介護の目的が自立支援であることに変わりはありません。完全介助が必要な利用者さんであっても、本人ができることを探り、能力を引き出す方法を検討することが大切です。

5.介護と介助における「自立」の概念の違い

介護の大きな目的の一つに、利用者さんの自立支援があります。一般に、「自立」は「他の人に頼らず、自分の力で生活する」という意味を持ちますが、介護における自立は意味合いが異なります。

2004年に行われた社会保障審議会福祉部会の参考資料によると、福祉や介護の分野では、「自立」を以下のような意味で使う場合があると述べています。

・自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと
・障害を持っていても、その能力を活用して社会活動に参加すること

(出典:厚生労働省「社会福祉事業及び社会福祉法人について(参考資料)」

つまり、「介護」における自立は「支援を受けながら、自分の能力を生かして生活すること」を指しているわけです。このような自立観は、人権意識の高まりやノーマライゼーションの考え方に基づくものと言えるでしょう。

一方、介助においては、従来使われてきた概念と同様の意味合いで、自立と言う言葉を用いる場合があります。前述した利用者さんの自立度の考え方では、自立した状態での介助は必要ないとしており、自立と介助の必要性を対極的なものとして捉えていることがうかがえます。それを踏まえるなら、介護における自立は理念的、介助における自立は実務的な言葉とも言えそうです。

まとめ

介護の現場では、「介護」と「介助」という2つの言葉がよく使われます。この2つを簡単に説明するなら、介護は要介護者の自立支援を目的とした行為全般で、介助は日常生活をサポートする行為、すなわち介護を提供する手段のことです。

介助には食事介助や排せつ介助、入浴介助などの6種類があり、利用者さんの自立度によってどこまで支援するかは異なります。利用者さんの自立を妨げないためにも、必要な援助を見極め、できる動作は自分でしてもらうように心がけましょう。

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