●臥位
がい
臥位とは、横たわった体位。あおむけになって横たわる姿勢を「仰臥位(ぎょうがい)」と呼び、就寝時や休息時などに用いられます。長期間この体位を継続すると褥瘡(床ずれ)を起こしやすいことに注意します。循環器や肺に疾患がある人で、呼吸が困難になる場合には、睡眠確保のため半座位にすることもあります。横向きに寝る姿勢を「側臥位(そくがい)」と呼びます。片方の上肢はそのまま体側に伸ばすか顔の近くに軽く曲げ、上側になる足は軽く前に曲げ、身体全体のバランスをとります。うつ伏せに横たわる姿勢を「腹臥位(ふくがい)」と呼びます。窒息しないよう頭は横にすること、女性は乳房に圧力がかからないように注意します。
●臥床/離床
寝具に横たわった状態を「臥床」といいます。就寝介助の過程のひとつ「臥床介助」は、車いすからベッドに移乗して横たわってもらう介護技術のことです。臥位から身体を起こすことを「離床」といいます。ベッド等で臥位の状態にある人を、食事や排せつ、入浴に誘導するため、起き上がってもらう介護技術を「離床介助」と呼びます。睡眠から目覚めて日常生活に移行するための一連の介助をする「起床介助」とは区別されます。
●体位変換
体位変換とは、長期間臥床していて(寝たきりで)自力で寝返りができない人に対して、身体の向きを変えること。内臓の機能低下や褥瘡を予防するため、定期的に行います。一般に、おおむね2時間おきに体位変換することが褥瘡予防の基本とされています。褥瘡予防用具を使用している場合も、おおむね4時間ごとに体位変換をすることが推奨されています。
●ベッドメイキング
ベッドメイキングとは、疾病で臥床している人のベッドを調製する作業のことで、介護の基本のひとつです。ベッドメイキングの目的は、➀安全で安楽な環境を作り、安心して生活を送れるようにすること、➁生活環境を清潔に保ち、爽快感を保ち、褥瘡や感染症の予防につなげる、という2つが挙げられます。ベッドメイキングを行う場合は、臥床している人にその必要性を理解してもらい、可能な限り、希望等に沿うものにします。
●介護用ベッド
介護用ベッドとは、長期療養などで寝たきりの状態が続く人に、介護を受ける人と介護する人の負担軽減など、双方のための機能をもつベッド。介護保険では「特殊寝台」と呼び、福祉用具の貸し出し対象のひとつです。臥床する人の起き上がり、立ち上がりを助ける機能や、背上げ、膝上げで体位を変える機能があります。快適な睡眠や、呼吸機能障害を補助することが期待できます。背上げや膝上げなどの形態移動を手動で行うものと、電動(モーター)で動かす電動式ベッドがあります。「ギャッチベッド」とも呼びます。
●ギャッチアップ
ギャッチアップとは、介護用ベッド(ギャッチベッド)の背もたれや膝の角度を調整すること。ギャッチアップ機能により、介護を受ける人の起居や移動を助け、褥瘡や誤嚥を予防し、介護する人の介護負担を軽減することが期待できます。
●歩行器(ピックアップ)
歩行器とは、疾病や障害により、歩くことが困難な人の歩行を補助する福祉用具のひとつで、杖よりも歩行の安定性の確保が期待できます。介護保険では福祉用具貸与の対象となっています。車輪がついておらず、歩行器を持ち上げて使用する固定式を「ピックアップ歩行器」と呼びます(前脚を車輪に代えたものもあります)。ほかにも左右のフレームを動かせる「交互式」や「肘当て付き四輪歩行車」などがあり、利用者の状態に応じ、理学療法士や福祉用具専門相談員など、専門職の意見を参考に最適なものを選択します。
●シルバーカー、歩行車
歩行器や杖とともに、自力で歩ける人で歩行に不安を感じる人や、足腰が弱まり歩く途中で疲れて一時的な休息が必要な人、間欠性跛行がある人などの歩行を補助する福祉用具が「シルバーカー」です。正式な用語の分類ではなく、歩行車、疲れたら椅子の部分に腰掛け、買物の荷物を収納できる手押し車も含まれます。
●T字杖(一本杖)
T字杖とは、前腕の固定部と支持部のない一本の杖で、一本杖とも呼ばれます。歩行に不安がある、麻痺などで自立歩行に注意を要する人の、歩行時における身体の支持やバランスを補助します。折り畳めるものもあり、フレームと握りの接続の仕方によりT字型、L時型、オフセット型など。理学療法士や福祉用具専門相談員など専門職に相談し、利用する人の身体状況や障害の症状に合わせ、適切な選択が重要となります。なお、介護保険の給付で利用できる福祉用具の対象にはなりません。
●多点杖(四点杖)
多点杖とは、歩行が不安定な人や、筋力の低下、麻痺のある人が利用します。一本の杖の先端が複数に分かれていて、3本に分かれているものを「三点杖」、4本に分かれているものを「四点杖」と呼び、四点杖のほうがより普及しています。一本杖と異なり、手を離しても杖自身が自立するため、トイレの中や玄関先での使い勝手がよいという利点があります。右用と左用があり、利用者の症状や用途に合わせ、理学療法士など専門職の意見を参考に、適切に使用できることが望ましいです。介護保険の福祉用具貸与の対象となっています。
監修者:永嶋 昌樹(ながしま まさき)
現職:日本社会事業大学社会福祉学部 准教授(「高齢者福祉論」「介護過程の展開と実践」)
略歴:社会福祉事業団に就職後、特別養護老人ホーム介護職員、在宅介護支援センター相談員・介護支援専門員(ケアマネジャー)など約12年間の現場実務を経て、大学の専任教員として福祉専門職養成に携わる。
学位資格:博士(社会福祉学)、介護福祉士、社会福祉士
社会活動:公益社団法人東京都介護福祉士会会長、介護福祉士国家試験委員、東京都介護保険審査会委員など
著書:『保育・福祉のための社会福祉援助技術事例研究』(共著, 建帛社)、『これからの訪問介護と施設介護の視点』(共著, ぎょうせい)、『アクティブラーニングで学ぶ介護過程ワークブック』(共著, みらい)、『介護教育方法の理論と実践』(共著, 弘文堂)など
制作/エディポック