介護の業種はサービス業?特徴や働く上で大切なことを解説

介護の仕事に就いている方の中には、自分の働いている業種について曖昧な理解で、漠然と疑問に感じられている方もいます。自分の仕事について理解を深めるためには、介護はどのような業種に該当するものであるのか、正しく理解することが大切です。
この記事では、介護はサービス業の一種に分類されることについて、総務省の「日本標準産業分類」をもとに解説します。介護の業種分類を詳しく解説しているので、働いている産業の分類について問われた場合の書き方が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. サービス業とは
サービス業と言えば、飲食業や宿泊業など、接客に関わる仕事をイメージする方も多いでしょう。しかし、サービス業は飲食業や宿泊業だけではありません。美容室やクリーニングなどの生活に関するサービス、運輸や郵便、テレビやラジオの放送局や制作会社、医療・福祉、不動産の仕事もサービス業です。
サービス業は幅広い意味で使用されており、一般的に「顧客の要望やニーズに応えてサービスを提供する」ことを指します。 商品の有無に関係なく、自分の能力や技術、知識を使用して顧客に価値を与える職業もサービス業です。
総務省の「日本標準産業分類」では、日本産業分類を以下のように基準を示しています。
【日本標準産業分類】
A 農業,林業
B 漁業
C 鉱業,採石業,砂利採取業
D 建設業
E 製造業
F 電気・ガス・熱供給・水道業
G 情報通信業
H 運輸業,郵便業
I 卸売業,小売業
J 金融業,保険業
K 不動産業,物品賃貸業
L 学術研究,専門・技術サービス業
M 宿泊業,飲食サービス業
N 生活関連サービス業,娯楽業
O 教育,学習支援業
P 医療,福祉
Q 複合サービス事業
R サービス業(他に分類されないもの)
S 公務(他に分類されるものを除く)
T 分類不能の産業
(引用:総務省「統計基準等|日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-目次」
/
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000023.html 引用日2023/03/30)
かつての産業分類では、「L 学術研究,専門・技術サービス業」から「R サービス業(他に分類されないもの)」までは、「サービス業」と分類されていました。この意味で、「L 学術研究,専門・技術サービス業」から「R サービス業(他に分類されないもの)」までにあるものが「サービス業」と分類できます。
(出典:総務省「統計基準等|日本標準産業分類(平成5年10月改定)」
/
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/5index.htm)
2. 介護の業種はサービス業?
総務省が示している「日本標準産業分類」では、 介護の業種は「P 医療,福祉」の「85 社会保険・社会福祉・介護事業」に分類されています 。「P 医療,福祉」は、「L 学術研究,専門・技術サービス業」から「R サービス業(他に分類されないもの)」までの間に入ることから分かる通り、日本標準産業分類ではサービス業に分類されます。
(出典:総務省「統計基準等|日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-分類項目名」
/
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000044.html)
ここでは、介護業種について詳しく確認しましょう。
2-1. 医療・福祉とは
医療・福祉とは、医療、保健衛生、社会保険、社会福祉及び介護に関するサービスを提供している事業所が該当します。
具体的には、以下のような事業所のことを指します。
・医療業
医師・歯科医師が患者に対して医業、医業類似行為を行う事業所や、関連するサービスを提供する事業所のことです。
・保健衛生
保健所や健康相談施設、検疫所などの、保健衛生に関連するサービスを提供する事業所のことを指します。ただし、動物検疫所や植物検疫所は含まれません。
・社会保険・社会福祉・介護事業
公的年金や公的医療保険、公的介護保険、労働災害補償などを担当する事業所が分類されます。また、児童や老人、障害者に対して社会福祉や介護などのサービスを提供する事業所も含まれます。
(出典:総務省「大分類P-医療,福祉」
/
https://www.soumu.go.jp/main_content/000290735.pdf)
2-2. 社会保険・社会福祉・介護事業とは
社会保険・社会福祉・介護事業とは、社会保険、社会福祉、介護事業及び更生保護事業を行う事業所のことを指します。
・社会保険
健康保険組合や国民年金基金、厚生年金基金、年金事務所など、公的年金や公的医療保険、公的介護保険、労働災害補償などの業務を担当している事業所のことを指します。
・社会福祉
都道府県にある社会福祉事務所、保育所、児童相談所などの、福祉事業を行う事業所のことです。
・介護事業
特別養護老人ホームや介護老人保健施設、通所・短期入所介護事業などで介護サービスや、必要な医療を提供している事業所のことを言います。
(出典:総務省「大分類P-医療,福祉」
/
https://www.soumu.go.jp/main_content/000290735.pdf)
3. サービス業としての介護の特徴
介護という業種はサービス業に分類されるので、サービス業の特徴・性質の多くが該当します。 ここでは、サービス業としての介護の特徴にはどのようなものがあるのか、具体的に解説します。
3-1. 同時性
サービスの生産と消費が同時に起こる特徴のことを「同時性」と言います。 例えば、公共交通機関などでサービスを利用する場合には、バスや電車が動いているその場所にいなければサービスを受けることができません。
介護の現場では、サービスを受ける利用者さんと、サービスを提供する介護職の方が、同じ時間に同じ場所にいることが「同時性」に該当します。
3-2. 無形性
サービスにはモノが存在するサービスと、モノが存在しないサービスがあり、モノが存在しないサービスを「無形性」と呼びます。 介護では、生活介護やレクリエーション、機能訓練などが、モノが存在しないサービスです。
モノが存在しないので、利用者さんにサービスの価値を理解してもらうことが難しい面があります。サービスの価値を理解してもらえるような行動が、価値を高めるポイントとなるでしょう。
3-3. 個別性
サービスを受ける側のニーズや要望に合わせてサービスを提供することを「個別性」と言います。 サービスを提供する際には、それぞれの顧客に合わせた柔軟な対応が大切です。
介護施設では、介護度が異なるさまざまな利用者さんにサービスを提供しており、利用者さん全員に同じサービスを提供することはできません。認知症の方や身体介護が必要な方など、さまざまな方が施設内で過ごしています。利用者さんの状態・状況に合わせてサポートする必要があります。
食事や入浴、排泄などの生活介護は、利用者さんの個性に応じた柔軟な対応が大切です。
3-4. 新規性
時代の変化によって、サービス業における顧客のニーズは変化するので、変化に合わせたサービスの提供が重要です。サービス業では、時代の変化とともに、新しい種類のサービスが次々と誕生します。新たなサービスが誕生することを「新規性」と呼び、新規性はサービス業の特徴の1つです。
介護の現場では、新しい介護サービスの開発や、利用者さんのニーズ、生活習慣、価値観が変化することで、介護サービスの提供内容が変わることもあります。新規性によって、施設独自の介護サービスなどが誕生するきっかけにもつながるでしょう。
3-5. 非反復性
サービスを提供するのは人間であり、完全に同じサービスを顧客に提供するのは難しい場合があります。人間が手作業で作った商品などは、同じように作成してもわずかな違いが出ることも珍しくありません。このような、いつも同じ商品・サービスの提供が難しい性質を「非反復性」と呼びます 。
人間が提供するサービスも同様に、内容などの差が生じるのが一般的です。介護では、介護を提供するスタッフの方によって、サービスを提供する技術や方法が違う場合があります。例えば、食事介助でも担当するスタッフが変わると、介助方法が異なります。
4. 介護という業種で働く上で大切なこと
サービス業の特徴・特性を持つ介護業界では、さまざまな点に気を配って働くことが大切です。 具体的には、以下の3点を意識して勤務することを心掛けましょう。
・利用者さんのことを考えたサービスを提供する
介護サービスを提供する際には、利用者さんのことを考えて対応することが大切です。利用者さんそれぞれの状態やニーズに合わせた介護サービスの提供は、安心感を与えるでしょう。
・接遇スキルを身につける
介護の現場では、言葉遣いや表情、身だしなみが大切です。丁寧な言葉遣いや優しい表情は、利用者さんに与える印象が良くなります。利用者さんやその家族の方と信頼関係を構築するためにも、接遇スキルを身につけましょう。
・忙しくても丁寧な対応を心掛ける
介護現場は、日々さまざまな業務に追われます。人手不足の現状から、利用者さん1人に対応するのに時間が掛けられないということもあるでしょう。しかし、忙しさを理由に対応がおろそかにならないように、注意することが必要です。可能な限り利用者さんの話を聞いてあげるなど、利用者さんに寄り添った対応を心掛けましょう。
介護が未経験の方はもちろん、すでに介護職として勤務している方も、上記のことを意識して行動してみることをおすすめします。
まとめ
介護はサービス業の一種で、医療・福祉の社会保険・社会福祉・介護事業に分類される業種です。サービス業に分類される業種であることから、サービス業の特徴・性質の多くが該当します。具体的に介護の仕事には、同時性・無形性・個別性・新規性・非反復性の性質を備えています。
サービス業の性質を持つ介護の仕事では、利用者さんの目線に立って丁寧なサービスを提供することが大切です。介護職としてのスキルやキャリアを大切に考えている場合は、働く職場の選び方も重要です。マイナビ介護職ではキャリアアドバイザーが丁寧な転職サポートを提供しているので、自分のスキル・キャリアを大切に考えている方は、ぜひ利用をご検討ください。
※当記事は2023年8月時点の情報をもとに作成しています
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