老人ホームの夜勤事情|仕事内容やメリット・デメリットを解説

介護施設は、大きく分けて「利用者さんが住む介護施設」と「利用者さんが通う介護施設」の2つがあります。利用者さんが住む介護施設では、職員が24時間365日体制でサポートを提供しなければならないため、日中の勤務だけでなく夜勤もこなす必要があります。
老人ホームは、利用者さんが住む介護施設の1つです。老人ホームでの夜勤は、日勤とは業務内容や働き方が異なります。無駄な疲労を感じてしまわないためにも、あらかじめ老健の夜勤事情について知っておくことが大切です。
そこで今回は、老人ホームにおける夜勤事情や、老人ホームで夜勤をするメリット・デメリットを詳しく紹介します。
目次
1. 老人ホームとは?
そもそも老人ホームとは、入居型の高齢者施設の総称です。主に公的施設と民間施設の2種類に分けられ、公的施設は「社会福祉法人や自治体が運営母体の老人ホーム」、民間施設は「民間企業が運営母体となる老人ホーム」が該当します。
公的施設 | 民間施設 |
---|---|
●特別養護老人ホーム ●介護老人保健施設 ●介護医療院 ●ケアハウス など |
●介護付き有料老人ホーム ●住宅型有料老人ホーム ●グループホーム ●サービス付き高齢者向け住宅 など |
社会福祉法人や自治体が運営する公的施設は、社会福祉の観点から低所得者や要介護度の高い高齢者の支援が最大の目的となっており、入居条件が厳しい傾向にあります。一方で、民間企業が運営する民間施設は、あらゆるニーズに対応すべく多種多様な介護ケア・サービスが展開されており、公的施設の老人ホームに比べて入居条件が緩いことが特徴です。
老人ホームは24時間体制の入居型施設であるため、基本的に老人ホームで働く介護職員は夜勤にあたることとなります。なお、施設によっては日勤のみで働く職員もいれば、夜勤専従で働く職員もいます。
また、老人ホーム勤務において介護資格の取得は必須条件ではなく、無資格者・未経験者でも働くことが可能です。しかし、介護現場でより多くの業務を任されながら、着実にキャリアアップを図りたいなら介護職員初任者研修や介護福祉士の資格取得がおすすめとなります。
2. 老人ホームにおける夜勤事情
老人ホームで働く介護職員の主な業務は、利用者さんの身体介助や生活援助、コミュニケーションなども挙げられます。しかし、夜勤中は利用者さんの睡眠時間となるため、どのような業務を担当するかイメージしにくいと考える方も多いでしょう。
ここからは、老人ホームの夜勤事情について、仕事内容・形態・頻度・休憩の取り方を挙げながら詳しく紹介します。
2-1. 夜勤の仕事内容
老人ホームでの夜勤は、利用者さんが睡眠中に働くこととなります。利用者さんと直接関わる機会は日勤と比較して少ないものの、夜勤中でもやるべき業務は多岐にわたります。
【老人ホームにおける夜勤の仕事内容】
●夕食や朝食の配膳・食事介助・後片付け
●身体介助(起床介助・離床介助・入浴介助・排せつ介助)
●就寝援助(口腔ケア・更衣介助・移乗介助)
●定期巡回(見守り・体位変換・おむつ交換)
●介護記録の記入 など
仕事内容を羅列すると、介助業務が多くバタバタするようなイメージも受けますが、実際には定期巡回や介護記録の記入といった事務作業が大きな割合を占める傾向です。利用者さんの就寝中は比較的ゆったりと過ごせることが多いものの、利用者さんの体調が突然悪化した場合は救急対応を行うケースもあります。
2-2. 夜勤の形態
老人ホームにおける夜勤形態には、「2交替制」と「3交替制」、さらに「夜勤専従」の3つがあります。2交替制は日勤・夜勤の2パターン、3交替制は日勤・準夜勤・深夜勤の3パターンのシフトとなります。夜勤専従はすべてのシフトが夜勤となり、日中に働くことはほとんどありません。なお、具体的な勤務時間帯は職場によって異なることも覚えておきましょう。
最も代表的な夜勤形態は2交替制であり、2交替制の場合は1回あたりの夜勤で16時間勤務となることも多々あります。拘束時間は長いものの、休憩時間は2時間あり、定期的にほかの職員と交代で仮眠も取れるため、比較的ゆったりと働くことが可能です。
2-3. 夜勤の頻度
老人ホームにおける夜勤の頻度は、2交替制・3交替制ともに月4~5回が平均夜勤回数 となっています。つまり、週に1日のペースで夜勤を担当することとなるでしょう。しかし、夜勤専従の場合は月10回近く夜勤にあたるケースもあり、夜勤形態だけでなく施設の規模や職員の確保状況によっても大きく異なるといえます。
(出典:日本医療労働組合連合会「2021年介護施設夜勤実態調査結果概要」
/
http://irouren.or.jp/research/69ae27ef682eb89b88d6ef404b4b7fc0f700ee00.pdf)
週に1日ペースと聞くとやや気楽にも思えますが、裏を返せば「週に一度生活リズムが乱れる日がある」ということとなるため、疲労を蓄積させたり体調不良を起こしたりしないよう注意する必要があります。
2-4. 休憩の取り方
老人ホームの夜勤でも、日勤と同様に当然休憩時間が設けられています。8時間勤務の場合は1時間、16時間勤務の場合は2時間の休憩を取ることができ、加えて合計10~30分程度の仮眠時間を取ることも可能です。
老人ホームには、基本的に職員が利用できる仮眠室が設けられています。 眠気を感じたり集中力が途切れてきたりした際は、仮眠室で10分程度の仮眠を取る職員がほとんどです。しかし、活動している職員が全員一斉に仮眠を取ることは不可能なため、ほかの職員と交代しながら業務にあたる必要があります。
また、日本医療労働組合連合会が発表している調査データによると、特養・老健の休憩時間と仮眠時間の合計平均時間は下記の通りとなっていました。
休憩時間と仮眠時間の合計平均時間 | ||
---|---|---|
特養 | 2交替制 | 1時間10分 |
3交替制 | 1時間25分 | |
老健 | 2交替制 | 2時間35分 |
3交替制 | 0時間57分 |
(出典:日本医療労働組合連合会「2021年介護施設夜勤実態調査結果概要」
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http://irouren.or.jp/research/69ae27ef682eb89b88d6ef404b4b7fc0f700ee00.pdf)
夜勤で働く老人ホームの職員は、休憩のほかに仮眠を取れるとはいえ、16時間勤務であることを考えると不十分であることも実情となっています。一刻も早い改善が必要とされており、今後はさらに働きやすい環境の整備が見込まれるでしょう。
3. 老人ホームにおける夜勤のメリット
老人ホームで夜勤にあたることには、いくつかのメリットがあります。
メリット(1)夜勤手当がつく |
---|
介護職員が老人ホームの夜勤にあたることで、基本給に加えて夜勤手当が加算されます。夜勤手当は、夜勤1回につき得られる報酬・手当です。老健の場合、1回あたりの平均夜勤手当額は7,203円となっており、効率的に高収入を得られるといえます。 (出典:日本医療労働組合連合会「2021年介護施設夜勤実態調査結果概要」 / http://irouren.or.jp/research/69ae27ef682eb89b88d6ef404b4b7fc0f700ee00.pdf) |
メリット(2)自分のペースで業務に取り組める |
---|
老人ホームの夜勤スタッフは少人数体制であり、かつ利用者さんはほとんどが就寝中であることから、自分のペースで業務に取り組める点がメリットです。空いた時間を有効に活用すれば、日勤中にやり残した事務業務やスタッフルームの清掃なども完了させられるでしょう。 |
メリット(3)通勤ラッシュを避けられる |
---|
夜勤帯は基本的に人々が就寝する時間となるため、人が少なく、快適に通勤・退勤することができる点も魅力です。満員電車や渋滞が苦手な方にとっては、精神的な負担が大きく軽減する要因ともなるでしょう。 |
4. 老人ホームにおける夜勤のデメリット
老人ホームで夜勤に入ることには、メリットだけでなくデメリットもいくつか存在します。メリットだけに着目せず、デメリットも把握しておきましょう。
デメリット(1)生活リズムの乱れから体調不良になりやすい |
---|
「基本的に日勤で、週に1日夜勤をする」といった不規則な勤務スタイルは生活リズムが乱れやすく、疲労が蓄積しやすくなります。体調を万全に整えておかなければやがて体調を崩し、かえってほかのスタッフに負担をかけてしまう可能性もあるため、十分な睡眠と運動をして健康状態を維持しておきましょう。 |
デメリット(2)救急対応が発生した際は迅速性・柔軟性が求められる |
---|
前述の通り、老人ホームの夜勤は少人数体制で回すため、万が一利用者さんの体調が悪化した際はスタッフの人数が少ないなか、率先して対応しなければなりません。責任ある判断を任されるケースも少なからずあり、冷静かつスムーズに、また柔軟に対応する技術が求められることも覚えておきましょう。 |
職場によっても夜勤形態や働き方、人員体制は細かに異なります。夜勤をそつなくこなすためには、求人選びがポイントです。施設の夜勤事情をしっかり把握したうえで、自分の求める夜勤の働き方に適しているかどうかをチェックしておきましょう。
まとめ
老人ホームで夜勤をすることには、手当を受けられる・通勤ラッシュを避けられるというメリットがある一方で、生活リズムが乱れやすい・救急対応発生時のスキルが問われるというデメリットもあります。なるべく働きやすい環境で夜勤にあたりたいなら、求人選びがポイントです。
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※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています
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