介護職のパートと正社員の違いやメリット・デメリットを解説

介護業界では正社員だけでなく、パートやアルバイトなど有期雇用契約を結んだ介護職も多数働いています。正社員とパート社員は勤務時間や仕事内容、給与なども違っており、それぞれメリット・デメリットがあります。介護職としてどちらの働き方が望ましいか迷っている方は、それぞれの特徴を把握した上で職場を探すとよいでしょう。
この記事では介護職の正社員とパートの違いや、パートとして介護業界で働くメリット・デメリット、パート社員から正社員になる方法について解説します。
目次
1. 介護職の正社員とパートの違い
パートとは、同じ事業所に勤めている正社員よりも1週間の所定労働時間が短く、多くの事業所で雇用期間の定めがある働き方です。法律上では「パートタイム労働者」や「短時間労働者」と呼ばれます。
介護職のパートも、基本的には正社員より所定労働時間が短い働き方です。2021年度の時点では、介護職についている方のうち、30.1%がパートを含む有期雇用労働者となっています。
(出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査」
/
https://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf/)
ここでは、介護職においての正社員とパートの違いを詳しく解説します。
1-1. 勤務時間
介護職の正社員は、介護施設の形態や営業時間に合わせて勤務します。入居施設として24時間体制で稼働している施設では、日中にくわえ早番や夜勤の勤務が必要です。営業時間が日中のみの施設は、多くの場合8時間の労働と休憩1時間で構成された勤務形態で働きます。
パートは正社員と異なり、勤務時間が比較的自由なのが特徴です。勤務時間の詳細は勤務する施設により異なりますが、1日3時間や夜勤専従など時間帯を限定して働けます。基本的には残業がなく事前に決められた勤務時間内に仕事を終えられるため、家庭の都合に合わせて働くことも可能です。中には短時間に限定せず、8時間のフルタイムパートで働く方もいます。
1-2. 仕事内容
介護職のパートが担当する主な仕事内容は、下記の通りです。
・食事の配膳
・ベットメイキング
・洗濯・清掃
・ドライバー・送迎の付き添い
・声掛け・見守り
仕事内容は施設の方針や勤務時間により異なりますが、基本的にパート社員も正社員と同じような業務を担当します。介護関連の有資格者の場合は、利用者さんの身体に直接触れるような食事や入浴、排泄介助などの身体介護を担当するのも可能です。ただし、一般的に仕事の責任の比重は正社員のほうが重く、通常パートは補助的な業務を中心に行います。
1-3. 給与
厚生労働省が公開した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、パート介護職員の平均時給は1,140円です。介護従事者にあたる仕事の中では、理学療法士や機能訓練指導員に続いて看護職員、介護支援専門員(ケアマネジャー)の平均時給が高い傾向があります。
【非常勤の介護職の平均時給(2022年12月時点)】
職種 | 平均時給(円) |
---|---|
介護職員 | 1,140 |
看護職員 | 1,450 |
生活相談員・支援相談員 | 1,110 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 または機能訓練指導員 |
1,660 |
介護支援専門員 | 1,340 |
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04gaiyou.pdf)
正社員とパートでは、働き方の違いにより給与待遇が異なる点に注意してください。正社員は勤務時間・日数が固定されている働き方で、基本給や夜勤手当、残業代のほかボーナスの支給も期待できます。パートの場合、基本的にはシフトに従って働いた時間分だけが、給与に反映されるシステムです。勤務時間の融通が利く一方で、正社員が受けられる給与待遇と差があることを覚えておきましょう。
1-4. 福利厚生
福利厚生は各介護施設が独自に設けた「法定外福利」と、法律によって定められた「法定福利」があります。法定外福利は、正社員とパートの違いで利用できる内容が異なるケースがあるため注意してください。
法定福利は一定の条件を満たすと、パートでも正社員と同じように利用できる福利厚生です。たとえば、社会保険の場合は下記の条件を満たすと、加入対象者として扱われます。
従業員数101人以上の企業で働く、以下のすべてを満たす人が対象になります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
・2か月を超える雇用の見込みがある(フルタイムで働く方と同様)
・学生ではない
(引用:政府広報オンライン「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入により手厚い保障が受けられます。」
/
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html 引用日2023/11/4)
また、正社員よりも所定労働日数が少ないパートでも、年次有給休暇の取得が可能です。1週間あたりの勤務時間や出勤日数に応じた日数の有給休暇が付与されます。
2. パートで介護職として働くメリットとデメリット
パートで介護職として働くのは、正社員と異なるメリットとデメリットがあります。パートならではのメリットとデメリットとはどのようなものか把握し、介護職での働き方を選ぶ判断材料にしてください。
2-1. パートで働くメリット
介護職のパートで働くメリットは、主に下記の3つが挙げられます。
時間の融通が利く働き方ができる |
---|
パートは残業を求められることが少なく、24時間稼働している介護施設でも、時間帯を限定して短時間のみ働けます。仕事と家庭を両立できるため、主婦の方でも勤務しやすい働き方です。 |
資格がなくても働ける |
---|
介護職は資格がなくても担当できる仕事が多いのが特徴です。利用者さんの生活面に関するサポートやレクリエーションの企画など、無資格・未経験でも取り組める仕事があります。2024年4月以降は認知症介護基礎研修の受講が必須となるものの、研修時間は約1日と短く、簡単に修了できます。 |
需要が高く求人が多い |
---|
高齢化が進む中で、介護職は社会からの需要が高い仕事です。求人が多く、幅広い選択肢の中から自身が希望する働き方に近い勤務先を探せます。 |
介護職のパートは「無資格・未経験可」の条件にくわえて、幅広い年齢の方を対象として求人募集しているケースが珍しくありません。多くの方が選びやすい職種です。
2-2. パートで働くデメリット
介護職のパートで働くデメリットは、仕事内容や雇用に関する下記の3つです。
責任のある仕事を任されにくい |
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パートは勤務時間や出勤日数が少なく業務の対応時間が限られるため、重要な仕事を任されにくい傾向があります。責任のある仕事を担当したい方にとっては、やりがいや充実感が感じづらい可能性があります。 |
仕事が不安定 |
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パートは正社員よりも業績による影響を受けやすく、仕事量が左右される働き方です。業績によっては雇用の契約期間満了に伴い、退職を求められるケースもあるなど不安定な面があります。 |
正社員よりも昇進や昇給の機会が得にくい |
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責任のある仕事を任されにくく業務内容や経験が限られるパートは、昇進や昇給の機会が得にくい立場です。積極的に評価を得て昇進や昇給を目指したい方にとっては、窮屈に感じる可能性があります。 |
責任のある仕事を担当したい方や安定した雇用を得たい方は、パートでの働き方は十分な検討が必要です。
3. パートで働く介護職が正社員になる方法
現在パートとして介護職で働いている方も正社員として雇用されると、責任のある仕事を担当したり、昇進や昇給を目標にしたりしやすくなります。
介護職のパートから正社員を目指す場合は、以下の3つの方法を参考にしてください。
3-1. 正社員登用制度を活用する
正社員登用制度を活用すると、現在パートとして勤務する介護施設で、正社員に雇用転換できる可能性があります。正社員登用の条件は施設によりさまざまです。正社員になった場合の雇用内容の変更点と併せ、正社員登用の条件を施設の人事担当者に確認しましょう。
なお、施設によっては正社員登用制度を導入していないケースがあります。将来的に正社員として働くのを目標にパート勤務を検討している方は、応募先が正社員登用制度を導入している施設か、事前に確認すると安心です。
3-2. 介護関連の資格を取得する
正社員を目指す際に介護関連の資格を保有していると、介護職への意欲をアピールできるポイントになります。正社員を目指す上でのおすすめの資格は下記の3つです。
・介護職員初任者研修
・実務者研修
・介護福祉士
現在無資格の方は、はじめに「介護職員初任者研修」を受講しましょう。介護職員初任者研修は、介護職に関する基礎を学べる研修です。実践に生かせる基本の知識・技術を保有している証として、パートから正社員への転換に役立ちます。
3-3. 転職する
現在勤務している介護施設が正社員登用制度を導入していない、希望する働き方ができない場合などは、転職を視野に入れましょう。介護職は需要が高く求人が多いため、正社員への転職を目指しやすい職種です。
実務経験があるのは面接を受ける上での強みになり、採用率を高めるポイントとして生かせます。転職を機に希望の勤務条件や環境が整っている、より実務経験を生かして活躍できるような就職先を探すのもおすすめです。
まとめ
介護業界では約3割の職員がパートなどの有期雇用契約を結んで働いており、機能訓練指導員や看護職員、介護支援専門員資格があれば給与面で優遇される傾向があります。パートとして介護業界で働く場合、夜勤のある施設でも時間の融通が利きやすく、介護需要のため職場を見つけやすいなどのメリットがあります。また、正社員登用制度のある介護施設なら、パートから正社員を目指すことも可能でしょう。
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※当記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています
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