介護職のパートと正社員の違いやメリット・デメリットを解説

介護業界では正社員だけでなく、パートやアルバイトなど有期雇用契約を結んだ介護職も多数働いています。正社員とパート社員は勤務時間や仕事内容、給与なども違っており、それぞれメリット・デメリットがあります。介護職としてどちらの働き方が望ましいか迷っている方は、それぞれの特徴を把握した上で職場を探すとよいでしょう。
この記事では介護職の正社員とパートの違いや、パートとして介護業界で働くメリット・デメリット、パート社員から正社員になる方法について解説します。
目次
1. 介護職の正社員とパートの違い
パートとは、同じ事業所に勤めている正社員よりも1週間の所定労働時間が短く、多くの事業所で雇用期間の定めがある働き方です。法律上では「パートタイム労働者」や「短時間労働者」と呼ばれます。
介護職のパートも、基本的には正社員より所定労働時間が短い働き方です。2022年度の時点では、介護職についている方のうち、29.6%がパートを含む有期雇用労働者でした。施設の形態によっても割合には差があり、通所型の施設では有期雇用職員の割合が31.2%と比較的高く、居宅介護支援施設では20.6%と低めです。
(出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書」
/
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf)
ここでは、介護職においての正社員とパートの違いを詳しく解説します。
1-1. 勤務時間
介護職の正社員は、介護施設の形態や営業時間に合わせて勤務します。入居施設として24時間体制で稼働している施設では、日中にくわえ早番や夜勤の勤務が必要です。 営業時間が日中のみの施設は、多くの場合8時間の労働と休憩1時間で構成された勤務形態で働きます。
パートは正社員と異なり、勤務時間が比較的自由なのが特徴です。 勤務時間の詳細は勤務する施設により異なりますが、1日3時間や夜勤専従など時間帯を限定して働けます。 基本的には残業がなく事前に決められた勤務時間内に仕事を終えられるため、家庭の都合に合わせて働くことも可能です。中には短時間に限定せず、8時間のフルタイムパートで働く方もいます。
2022年度の時点では、正社員を含む無期雇用職員の週当たりの平均労働時間は、39.0時間です。対して、パートを含む有期雇用職員の平均労働時間は34.6時間となっています。
(出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」
/
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023r01_chousa_cw_kekka.pdf)
1-2. 仕事内容
介護職のパートの方が担当する仕事内容は、施設の方針や勤務時間によって異なりますが、基本的にはパート社員も正社員と同様に介護業務を担当します。
介護関連の資格保有者の場合、利用者さんの食事や入浴、排泄介助などの身体介護が可能です。ただし、責任の比重は正社員のほうが重く、通常パート職員が担当するのは補助的な業務内容が中心です。
無資格の場合、身体介護を担当しない介護助手として周辺業務を担当するケースも多くあります。 介護職員初任者研修講座や介護職員実務者研修講座などを受講しながら、介護助手として働く方も少なくありません。
1-3. 給与
厚生労働省が公開した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、パート介護職員の平均時給は1,140円 です。介護従事者にあたる仕事の中では、理学療法士や機能訓練指導員に続いて看護職員、介護支援専門員(ケアマネジャー)の平均時給が高い傾向があります。
【非常勤の介護職の平均時給(2022年12月時点)】
職種 | 平均時給(円) |
---|---|
介護職員 | 1,140 |
看護職員 | 1,450 |
生活相談員・支援相談員 | 1,110 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 または機能訓練指導員 |
1,660 |
介護支援専門員 | 1,340 |
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04gaiyou.pdf)
正社員とパートでは、働き方の違いにより給与待遇が異なる点に注意してください。正社員は勤務時間・日数が固定されている働き方で、基本給や夜勤手当、残業代のほかボーナスの支給も期待できます。パートの場合、基本的にはシフトに従って働いた時間分だけが、給与に反映されるシステムです。勤務時間の融通が利く一方で、正社員が受けられる給与待遇と差があることを覚えておきましょう。
1-4. 福利厚生
福利厚生は各介護施設が独自に設けた「法定外福利」と、法律によって定められた「法定福利」があります。 法定外福利は、正社員とパートの違いで利用できる内容が異なるケースがあるため注意してください。
法定福利は一定の条件を満たすと、パートでも正社員と同じように利用できる福利厚生です。たとえば、社会保険の場合は下記の条件を満たすと、加入対象者として扱われます。
従業員数101人以上の企業で働く、以下のすべてを満たす人が対象になります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
・2か月を超える雇用の見込みがある(フルタイムで働く方と同様)
・学生ではない
(引用:政府広報オンライン「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入により手厚い保障が受けられます。」
/
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201607/2.html 引用日2023/11/4)
また、正社員よりも所定労働日数が少ないパートでも、年次有給休暇の取得が可能です。1週間あたりの勤務時間や出勤日数に応じた日数の有給休暇が付与されます。
2. パートとして働く介護職員の主な仕事
パートとして働く介護職員の方の仕事内容は、正社員と比べると補助的な役割が多い傾向があります。しかし、介護現場で果たす役割は正社員・パート社員ともに重要です。以下では、介護職員や介護助手としてパートで働く方々の主な仕事内容を詳しく解説します。
2-1. 利用者さんの見守りや傾聴
パート職員の重要な仕事の1つに、利用者さんの見守りや傾聴があります。見守りとは、利用者さんが安全に過ごせるように注意を払いながら観察すること です。たとえば、転倒や怪我のリスクを防ぐために、利用者さんの動きや表情の変化に気を配ります。
傾聴とは、利用者さんの話を丁寧に聞く行為を指します。傾聴は、利用者さんの心のケアにおいて非常に重要です。じっくりと相手の話を聞くことで、利用者さんの孤独感を軽減して自己肯定感を高め、心の安定を図る手助けになります。見守りと傾聴は、利用者さんとの信頼関係を築き、施設内での生活をより快適にするために欠かせません。
2-2. 入浴や食事・生活の介助
パート職員は正社員と同様に、利用者さんの日常生活をサポートするために、入浴や食事、排泄などの身体介助を行います。入浴介助では、利用者さんが安全にお風呂に入れるように支援します。食事介助で行うのは、食事の準備や食事が困難な利用者さんに対する食事のサポートです。排泄介助では、トイレの使用の手伝いやおむつ交換などを行います。
いずれの業務も、利用者さんの尊厳を守りながら行わなければなりません。介助を行う際には、利用者さんのプライバシーに配慮し、安心してサービスを受けられる環境を提供します。
なお、直接利用者さんの身体に触れながら行う身体介助は、専門的なスキルと資格が必要です。そのため、介護系資格を持たない方は、事前準備や片づけなどを中心に行います。
2-3. 清掃や洗濯
介護施設内の清掃や洗濯も、パート職員の重要な業務の1つです。見た目の美しさだけでなく、利用者さんの健康を守るためにも、施設内は常に清潔さを保たなければなりません。清掃業務の内容は、主に部屋や共用スペースの掃除、感染症を防ぐための消毒、リネンや消耗品類の交換です。
洗濯業務では、利用者さんの衣類や施設で使用するタオル類などを洗濯します。いずれの業務も、施設内の衛生環境を維持するために欠かせません。清掃や洗濯を通じて、利用者さんが清潔な環境で快適に過ごせるようサポートします。
2-4. レクリエーションのサポート
介護施設では、身体機能や認知機能の維持・向上、社会的交流の促進を目的として、利用者さんが楽しめるレクリエーションを定期的に実施しています。レクリエーションの内容は多岐にわたり、手先を使った工作や絵画、身体を動かす体操やゲームなどが代表的です。
レクリエーションのサポートを担当するのも、パート職員の仕事です。そのため、人を楽しませたり、場を盛り上げたりするスキルがある方は介護パートとして重宝されます。
3. パートで介護職として働くメリットとデメリット
パートで介護職として働くのは、正社員と異なるメリットとデメリットがあります。パートならではのメリットとデメリットとはどのようなものか把握し、介護職での働き方を選ぶ判断材料にしてください。
3-1. パートで働くメリット
介護職のパートで働くメリットは、主に下記の3つが挙げられます。
時間の融通が利く働き方ができる |
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パートは残業を求められることが少なく、24時間稼働している介護施設でも、時間帯を限定して短時間のみ働けます。仕事と家庭を両立できるため、主婦の方でも勤務しやすい働き方です。 |
資格がなくても働ける |
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介護職は資格がなくても担当できる仕事が多いのが特徴です。利用者さんの生活面に関するサポートやレクリエーションの企画など、無資格・未経験でも取り組める仕事があります。2024年4月以降は認知症介護基礎研修の受講が必須となるものの、研修時間は約1日と短く、簡単に修了できます。 |
需要が高く求人が多い |
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高齢化が進む中で、介護職は社会からの需要が高い仕事です。求人が多く、幅広い選択肢の中から自身が希望する働き方に近い勤務先を探せます。 |
介護職のパートは「無資格・未経験可」の条件にくわえて、幅広い年齢の方を対象として求人募集しているケースが珍しくありません。多くの方が選びやすい職種です。
3-2. パートで働くデメリット
介護職のパートで働くデメリットは、仕事内容や雇用に関する下記の3つです。
責任のある仕事を任されにくい |
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パートは勤務時間や出勤日数が少なく業務の対応時間が限られるため、重要な仕事を任されにくい傾向があります。責任のある仕事を担当したい方にとっては、やりがいや充実感が感じづらい可能性があります。 |
仕事が不安定 |
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パートは正社員よりも業績による影響を受けやすく、仕事量が左右される働き方です。業績によっては雇用の契約期間満了に伴い、退職を求められるケースもあるなど不安定な面があります。 |
正社員よりも昇進や昇給の機会が得にくい |
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責任のある仕事を任されにくく業務内容や経験が限られるパートは、昇進や昇給の機会が得にくい立場です。積極的に評価を得て昇進や昇給を目指したい方にとっては、窮屈に感じる可能性があります。 |
責任のある仕事を担当したい方や安定した雇用を得たい方は、パートでの働き方は十分な検討が必要です。
4. 介護業界でパートとして働くやりがい
介護業界でパートとして働くやりがいはさまざまですが、特に代表的なのは以下の2点です。
・利用者さんの援助や支援につながる
介護サービス業務では、身体介助や日常生活のサポートといった、日々の業務を通じて利用者さんの援助や支援を行います。利用者さんが元気を取り戻し、笑顔になる姿を見たときにも、大きなやりがいを感じられるでしょう。また、利用者さんが「ありがとう」と感謝の言葉をかけてくれる瞬間も、介護スタッフにとって喜びを感じられる瞬間です。利用者さんの生活の質が向上したことを実感できるのが、介護スタッフのモチベーションとなります。
・介護の知識や経験が身につく
介護スタッフとして働く中で、身体介助の方法や介護に関する法制度などの知識を身につけられます。また、実際の現場での経験を積むことで、問題解決能力やコミュニケーションスキルも向上します。これらの知識や経験は、将来的に家族や自分自身が介護を必要とする際にも大いに役立つでしょう。資格取得を支援している施設も多く、キャリアアップの機会も豊富です。
5. 介護業界でパートとして働くときに大変な点と対処法
やりがいの多い仕事ではあるものの、介護業界でパートとして働く中で、大変と感じる場面もあるでしょう。介護業界で働く際に大変な点があっても、適切な対処法を知り実践すれば、働きやすい環境を作ることも可能です。以下では、介護業界で働く際に特に大変だと感じやすい2点の対処法を紹介します。
5-1. 身体介助が大変なときの対処法
身体介助の際に慣れていないと、無理な抱え上げなどが原因で腰痛を起こすケースが少なくありません。腰痛を避けるには、適切な介護技術を身につけることが重要です。厚生労働省は、身体介助を行う際に以下のルールを守るよう伝えています。
介助の種類を問わず、全ての介助に共通する基本的な腰痛予防対策として重要なのは、「人力での利用者の抱え上げは、原則、行わないこと」と「福祉用具を活用すること」です。
(引用:厚生労働省「高齢者介護施設における 雇入れ時の安全衛生教育マニュアル」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153894.pdf 引用日2024/7/10)
腰痛を防ぐために、福祉用具を活用しましょう。スライディングシートやリフトを使用すると、利用者さんを安全に移動させつつ、介護者の腰への負担を軽減できます。可能であれば、特に負担が大きい介助の際は体格が近い複数人で協力し、負担を分散させるとよいでしょう。
加えて、利用者さんの身体のなかで、以下のような骨が表面から触れられるところを介助してください。介助する側の力が利用者さんに伝わりやすくなり、より軽い力で介助できます。
・肘
・肩の側方
・骨盤の側方
・膝の前側や側方
(出典:埼玉県介護施設安全衛生対策連絡協議会「『介護職員として知っておきたい腰痛予防及び転倒予防の視点と生活支援技術(介護技術)について」
/
https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/001274126.pdf)
また、長時間の身体介助は腰痛の原因です。適度に小休憩を入れたり小まめにストレッチしたりするのも、負担を和らげるのに役立ちます。
5-2. 人間関係に悩んでいるときの対処法
さまざまな事情・性格の方が集まる介護の現場では、利用者さんや職員同士の人間関係に悩む方も少なくありません。
利用者さんとの人間関係がうまく行かないときには、コミュニケーションを大切にし、利用者さんの気持ちを理解する姿勢が必要です。たとえば、利用者さんの話に耳を傾け、共感することで信頼関係を築くことができます。
また、職員同士の人間関係を良好に保つためには相互理解が重要です。お互いの意見ややり方を尊重し合えるよう、定期的に皆で話し合う場を持つように心がけるとよいでしょう。
職員同士の理解が進めば、職場の雰囲気がよくなるだけでなく、連携を取りやすくなり仕事の効率も上がります。また、メンタルヘルス対策として定期的にストレスチェックを行い、自分の心身の調子を早めに把握するのも大切です。
(出典:社会福祉法人 東北福祉会認知症介護研究・研修仙台センター「介護現場のためのストレスマネジメント支援テキスト」
/
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/118423.pdf)
6. パートで働く介護職が正社員になる方法
現在パートとして介護職で働いている方も正社員として雇用されると、責任のある仕事を担当したり、昇進や昇給を目標にしたりしやすくなります。
介護職のパートから正社員を目指す場合は、以下の3つの方法を参考にしてください。
6-1. 正社員登用制度を活用する
正社員登用制度を活用すると、現在パートとして勤務する介護施設で、正社員に雇用転換できる可能性があります。正社員登用の条件は施設によりさまざまです。正社員になった場合の雇用内容の変更点と併せ、正社員登用の条件を施設の人事担当者に確認しましょう。
なお、施設によっては正社員登用制度を導入していないケースがあります。将来的に正社員として働くのを目標にパート勤務を検討している方は、応募先が正社員登用制度を導入している施設か、事前に確認すると安心です。
6-2. 介護関連の資格を取得する
正社員を目指す際に介護関連の資格を保有していると、介護職への意欲をアピールできるポイントになります。正社員を目指す上でのおすすめの資格は下記の3つです。
・介護職員初任者研修
・実務者研修
・介護福祉士
現在無資格の方は、はじめに「介護職員初任者研修」を受講しましょう。介護職員初任者研修は、介護職に関する基礎を学べる研修です。実践に生かせる基本の知識・技術を保有している証として、パートから正社員への転換に役立ちます。
6-3. 転職する
現在勤務している介護施設が正社員登用制度を導入していない、希望する働き方ができない場合などは、転職を視野に入れましょう。介護職は需要が高く求人が多いため、正社員への転職を目指しやすい職種です。
実務経験があるのは面接を受ける上での強みになり、採用率を高めるポイントとして生かせます。転職を機に希望の勤務条件や環境が整っている、より実務経験を生かして活躍できるような就職先を探すのもおすすめです。
まとめ
介護業界では約3割の職員がパートなどの有期雇用契約を結んで働いており、機能訓練指導員や看護職員、介護支援専門員資格があれば給与面で優遇される傾向があります。パートとして介護業界で働く場合、夜勤のある施設でも時間の融通が利きやすく、介護需要のため職場を見つけやすいなどのメリットがあります。また、正社員登用制度のある介護施設なら、パートから正社員を目指すことも可能でしょう。
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※当記事は2024年7月時点の情報をもとに作成しています
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