認定介護福祉士の年収|資格取得による年収アップ以外のメリットも

認定介護福祉士とは、多様な利用者さん・住環境に対応し、より質の高い介護サービスが提供できる介護福祉士の養成を目的とする資格です。介護福祉士を目指していて、認定介護福祉士の年収が気になる方は多いでしょう。
認定介護福祉士は介護福祉士の上位資格という位置付けであり、取得することで年収アップ以外のメリットもあります。当記事では認定介護福祉士の年収と資格取得のメリットを紹介し、認定介護福祉士資格の取得方法も分かりやすく解説します。
1.認定介護福祉士の年収
結論を先に述べると、認定介護福祉士の年収について公的な統計資料は公表されていません。しかし、介護福祉士の年収から、認定介護福祉士の役割を踏まえて年収を推測することはできます。
認定介護福祉士の年収について公的なデータが存在しない理由は、認定介護福祉士が国家資格ではないためです。認定介護福祉士は「認定介護福祉士 認証・認定機構」が認定する介護士向けの民間資格であり、法令に基づく規定はありません。民間資格は公的な調査・研究の対象とはならないことが一般的であるため、認定介護福祉士についても年収などのデータは統計資料が存在しない状況です。
ただし、認定介護福祉士は民間資格とはいえ、介護福祉士とまったく関連のない資格ではありません。介護福祉士による職能団体で公益社団法人でもある「日本介護福祉士会」では、認定介護福祉士を介護福祉士の上位資格と位置付けています。認定介護福祉士は介護現場において、介護チームのリーダーへの教育指導を行う役割が期待されている資格です。
(出典:福祉医療機構「介護福祉士」)
(出典:厚生労働省「認定介護福祉士(仮称)制度の方向性について」)
国家資格である介護福祉士は、厚生労働省による収入についての統計調査が存在します。介護福祉士の収入・年収に関するデータは、認定介護福祉士の年収としても一定程度は参考にすることが可能です。
認定介護福祉士は介護福祉士資格取得者であることが前提であり、認定介護福祉士は公的な統計調査において介護福祉士としてカウントされます。さらに、認定介護福祉士になるためには介護福祉士の実務経験が最低でも5年以上求められるため、認定介護福祉士は介護技術・知識を積んだベテランの介護福祉士です。以上の条件により、認定介護福祉士の年収は介護福祉士の平均年収よりも高くなると推測できます。
下記の表は、「介護福祉士」「実務者研修」「初任者研修」「保有資格なし」の資格区分で、それぞれの平均年収を示したデータです。
介護福祉士 | 実務者研修 | 初任者研修 | 保有資格なし | |
---|---|---|---|---|
平均年収 | 約394万円 | 約368万円 | 約360万円 | 約325万円 |
(出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」)
介護福祉士は約394万円であり、保有資格なしよりも約70万円、初任者研修・実務者研修よりも約30万円も平均年収が高くなっています。介護福祉士の中でもベテランとなる認定介護福祉士であれば、より高い年収を期待できるでしょう。
なお、上記の表で示した平均年収は基本給を基にしたデータです。給与に賞与を含めた場合は、認定介護福祉士の年収はさらに高くなる可能性があります。
2.認定介護福祉士の資格を取得するメリット3つ
認定介護福祉士の資格は、質の高い介護サービスを提供できる介護福祉士の証明となります。認定介護福祉士の資格を取得するメリットは下記の3つです。
●昇進・昇給を期待できる
認定介護福祉士の資格を取得した介護福祉士は、介護チームのリーダーよりも責任ある立場・仕事内容で活躍することが期待されています。介護現場で働くスタッフ全体をマネジメント・統括する管理職として昇進を期待できる点がメリットです。管理職になると、介護主任よりも役職手当の支給額が増えるため、昇給も見込めます。
●加算措置の対象となる可能性がある
介護職員の処遇改善制度として政府が進める「特定処遇改善加算」では、リーダー級の介護職員は他産業と遜色ない賃金水準の実現を図るとしています。認定介護福祉士の資格を取得することで、経験・技能のあるリーダー級の人材であると介護事業者に判断され、加算の配分を大きく割り当てられる可能性があるでしょう。
●転職に有利になる
介護施設の多くは即戦力の介護職員を募集しており、中でも国家資格の介護福祉士は需要が高い人材です。認定介護福祉士の資格は、介護経験の実績と優れた介護スキル・知識を保有していることを示せるため転職に有利になります。介護の管理職転職を実現したいときにも、認定介護福祉士は役立つ資格です。
3.認定介護福祉士の資格を取得する方法
認定介護福祉士の資格を取得するためには「認定介護福祉士養成研修」を受講し、全課程を修了する必要があります。研修の申請から認定介護福祉士認定までの流れは、下記の通りです。
(1)研修の申請 | 研修実施団体が開催する認定介護福祉士養成研修の受講を申請する |
---|---|
(2)研修の実施 | 認定介護福祉士養成研修の全課程を修了する |
(3)認定の申請・審査 | 研修実施団体が認定介護福祉士 認証・認定機構に認定申請を行い、機構が審査を行う |
(4)認定証の発行 | 審査の結果、問題がなければ「認定介護福祉士 認定証」が発行され、認定介護福祉士として認定される |
研修実施団体とは、認定介護福祉士 認証・認定機構により認証された団体のことです。研修の認証は年度ごとに行われるため、認定介護福祉士養成研修を受けたい方は研修実施団体を事前に調べておきましょう。
研修内容
認定介護福祉士養成研修は、「認定介護福祉士養成研修Ⅰ類」と「認定介護福祉士養成研修Ⅱ類」の2部構成です。それぞれの概要・受講要件・カリキュラムを簡単に紹介します。
●認定介護福祉士養成研修Ⅰ類
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類は、介護福祉士養成課程では学習しない医療・リハビリ等の新たな知識を習得し、介護実践力の向上を図る研修です。
・受講要件
・介護福祉士としての実務経験が5年以上であること
・現任研修の受講時間が100時間であり、レポート提出もしくは試験で一定水準の評価を受けていること。なお、受講時間が200時間以上で機構が認めた一定の研修は、レポート提出もしくは試験が免除される
また必須の条件ではないものの、「介護職の小チームでリーダーとしての実務経験」や「居宅、居住系サービスでの生活支援の経験」があると望ましいとされています。
・カリキュラム
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類のカリキュラムは7領域13科目にわたり、学習時間は合計で345時間です。
領域名 | 科目名 | 単位 | 時間 (課題学習を可とする時間) |
---|---|---|---|
認定介護福祉士養成研修導入 | 認定介護福祉士概論 | 1 | 15(7) |
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅰ | 2 | 30(30) |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅱ | 2 | 30(15) | |
リハビリテーションに関する領域 | 生活支援のための運動学 | 2 | 10(10) |
生活支援のためのリハビリテーションの知識 | 20(8) | ||
自立に向けた生活をするための支援の実践 | 2 | 30(8) | |
福祉用具と住環境に関する領域 | 福祉用具と住環境 | 2 | 30(0) |
認知症に関する領域 | 認知症のある人への生活支援・連携 | 2 | 30(15) |
心理・社会的支援の領域 | 心理的支援の知識技術 | 2 | 30(15) |
地域生活の継続と家族支援 | 2 | 30(15) | |
生活支援・介護過程に関する領域 | 認定介護福祉士としての介護実践の視点 | 2 | 30(0) |
個別介護計画作成と記録の演習 | 2 | 30(0) | |
自職場事例を用いた演習 | 1 | 30(20) |
(引用:認定介護福祉士 認証・認定機構「認定介護福祉士養成研修とは」_引用日/2022/06/10)
●認定介護福祉士養成研修Ⅱ類
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類は、Ⅰ類で学習した内容を通して、自立に向けた介護を実践するための指導力・応用力の習得を目指す研修です。
・受講要件
・認定介護福祉士養成研修Ⅰ類を修了していること
・介護職の小チームでリーダーとしての実務経験を有すること
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類の受講要件についても、「居宅、居住系サービスでの生活支援の経験」があると望ましいとされています。
・カリキュラム
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類のカリキュラムは4領域9科目で、学習時間は合計で255時間です。
領域名 | 科目名 | 単位 | 時間 (課題学習を可とする時間) |
---|---|---|---|
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅲ | 2 | 30(15) |
心理・社会的支援の領域 | 地域に対するプログラムの企画 | 2 | 30(15) |
マネジメントに関する領域 | 介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理 | 1 | 15(7) |
チームマネジメント | 2 | 30(15) | |
介護業務の標準化と質の管理 | 2 | 30(15) | |
法令理解と組織運営 | 1 | 15(7) | |
介護分野の人材育成と学習支援 | 1 | 15(7) | |
自立に向けた介護実践の指導領域 | 応用的生活支援の展開と指導 | 2 | 60(40) |
地域における介護実践の展開 | 2 | 30(0) |
(引用:認定介護福祉士 認証・認定機構「認定介護福祉士養成研修とは」_引用日/2022/06/10)
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類・Ⅱ類を合計して600時間の全課程を修了すると「研修の実施」は修了となり、次の「認定の申請・審査」へと進みます。なお、600時間の受講時間のうち、課題学習を可とする最大264時間は、自宅や職場での課題学習で済ませることが可能です。
(出典:認定介護福祉士 認証・認定機構「認定介護福祉士になるために」)
(出典:認定介護福祉士 認証・認定機構「認定介護福祉士養成研修とは」)
まとめ
認定介護福祉士の年収は、介護福祉士の年収である約394万円よりも高い金額を期待できます。認定介護福祉士は介護福祉士の上位に位置付けられた資格であり、取得することで年収アップやキャリア形成につなげられる点がメリットです。
年収アップを図りたい方は、介護福祉士・認定介護福祉士の資格取得を目指すとともに、好条件で働ける職場への転職も検討しましょう。マイナビ介護職では、介護業界に精通するキャリアアドバイザーが転職サポートを行います。希望条件に沿った非公開求人の紹介もできるマイナビ介護職をぜひご利用ください。
※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
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