介護職の給料は安すぎる?給与が安すぎる理由と対処法を解説
介護職への転職を検討している方や現在働いている方の中には、「介護職の給料が安すぎる」「収入アップの方法を知りたい」という方もいるのではないでしょうか。
実際に介護職の給料は、給与所得者全体の平均給与と比べて安い傾向にあります。当記事では、厚生労働省が公開している令和4年度の賃金構造基本統計調査のデータをもとに、介護職の給料の実情を確認しましょう。
併せて、介護職の給料が低いときの対処法についても解説します。
目次
- 2. 介護職の給料が安すぎる理由
- 2-1. 介護報酬に上限があるため
- 2-2. 専門性が軽視されているため
- 2-3. 人手不足のため
- 2-4. 内部留保額が高いため
- 2-5. 非正規雇用の人が多いため
1. 介護職の給料は安い?
「介護業界の給料は安すぎる」という話を聞いたことがある方は多いでしょう。介護職の皆さんの平均年収は、約363万円です。
(出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/index.html)
対して国税庁の民間給与実態統計調査では、給与所得者全体の平均給与が458万円というデータが公開されています。実際のところ介護職の皆さんの年収は、平均給与と比べ安い傾向にあります。
令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要をもとに、介護職の皆さんが取得している資格ごとの年収を確認しましょう。当資料での平均給与額は、基本給(月額)+手当+一時金(1~12月支給金額の1/12)の計算式で計算されています。したがって、年収は公開されている月給のデータに12をかけて算出します。令和4年12月時点における、取得している資格ごとの年収は以下の通りです。
・介護福祉士:398万280円
・社会福祉士:423万720円
・介護支援専門員:451万4,880円
・実務者研修:363万円
・介護職員初任者研修:363万4,920円
いずれの資格を取得していても、給与所得者全体の平均給与を超えることはありません。 上記で最も年収の高い介護支援専門員であっても、給与所得者全体の平均給与である458万円とは65,120円の差があります。最も低い実務者研修の年収は、平均給与と比較して95万円も安く、無視できない大きな金額の差があると言えます。こうした背景によって、ほかの職種と比べて給料が安すぎると感じる方も少なくありません。
2. 介護職の給料が安すぎる理由
介護職の皆さんの給料が安すぎることには、制度や働き手、職業上の性質などさまざまな面において理由があります。以下からは、介護職の皆さんの給料が安い理由を紹介します。介護職の皆さんの給料の安さに疑問や困惑を感じている方は、参考にしてみてください。
2-1. 介護報酬に上限があるため
介護報酬とは事業者が利用者さんに対して、介護保険を使用可能な介護サービスを提供した場合、その対価として受け取れる報酬のことです。介護保険は国・自治体の公費と、保険に入っている方の保険料それぞれ50%ずつの割合で負担して賄われています。
そして介護職の皆さんが受け取る給料は、介護報酬から支払われています。介護報酬は「高齢化がどのくらい進行しているか」「日本社会の財政がどうなっているか」といった要素によって変化するものです。こうした要素に鑑みると、近年は金額が下げられやすい状況となっているため、それに伴って介護職の皆さんの給料も低下しているのが現状です。
介護報酬は介護保険制度によって決定されるものであり、上限があります。また、事業所は報酬の量を決定できません。介護報酬は国全体の動向に影響を受けて変わるものであって、事業所では給料引き上げの努力ができるものではないため、安いという問題を脱せないのが実情です。
(出典:厚生労働省「介護報酬の仕組みについて」
/
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1005-4f.pdf)
2-2. 専門性が軽視されているため
介護は決して楽な仕事ではありません。働くためには、さまざまな専門性・専門知識が必要となる仕事です。根拠に基づく質のよい介護の実践や、介護職の皆さんが守るべき倫理の遵守は、介護職の皆さんが獲得しなければならない専門性だと言えます。
しかし、介護現場での勤務に資格が必要ないというのもまた事実です。そのため、実際には必要不可欠である専門性が軽視されるケースは少なくありません。「資格が必要ないため、誰にでもできる仕事である」という誤解があることから、給料を上げてもらえないという問題が生じています。
(出典:日本介護福祉士会「介護福祉士の専門性」
/
https://jaccw.or.jp/about/fukushishi/senmon)
2-3. 人手不足のため
介護業界は働き手が不足していることも、給料を下げている理由の1つです。介護業界は現在、人手不足に陥っているため、多くの方を採用しています。つまり就職者にとっては、「就職しやすい仕事である」という大きな利点のある業界だと言えるでしょう。そのため、介護業界には就職を希望する方々が殺到します。
就職希望者が多い理由は、人手不足だけではありません。介護は需要の高い仕事であり、なおかつ将来性もあります。また、資格がなくても働けるため、資格勉強に多くの時間を割く必要もありません。こうした仕事としての魅力が多いことも、就職希望者が集まりやすい要因です。
上記のような事情によって、介護業界は給料が安いにもかかわらず、安定して就職希望者が集まる業界となっています。給料を上げなくても人が集まるとなると、給料を上げる必然性が減少するでしょう。そのため、給料が上がりにくい状況が続くこととなります。
(出典:厚生労働省「介護人材の確保について」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000047617.pdf)
2-4. 内部留保額が高いため
内部留保とは、施設の安定的な運営を目的に蓄積しているお金のこと です。介護業界は多額の内部留保額を保有している分、介護職の皆さんの給料が少なくなっています。
「たくさんの内部留保があるなら、その分を給料に回すべきだ」と考える方もいるでしょう。しかし内部留保は資産のようなものであり、経営のためにストックしておかねばならないお金です。経営する上で必要不可欠な内部留保を給料に回すのは、難しいと言えるでしょう。内部留保額が積み上がっていることで、介護職の皆さんへの還元率が減少しているのも給料を下げている一因です。
2-5. 非正規雇用の人が多いため
介護業界は、非正規雇用で活躍する方が多い業界 です。厚生労働省が発表した資料では、介護職の皆さんの39%が契約社員や派遣社員、パート、アルバイトといった非正規職員として働いています。
非正規雇用は短時間勤務が実現しやすく、さまざまなライフスタイルに合わせて働けるという強みがあります。一方で雇用の性質上、昇給しにくく、給料が安くなりやすいというデメリットを抱えているのも事実です。給料が上がりにくい非正規雇用で働く方が介護業界に多いことで、介護業界全体の給料の平均が下がっているというのが実情です。
(出典:厚生労働省「介護労働の現状」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000482541.pdf)
3. 介護職の給料が安すぎるときの対処法は?
介護業界は多くの事情から給料が安くなりやすいものの、現状より給料を上げる方法はいくつか存在します。特に意識すべき点は、以下の2つです。。
・資格を取得する
資格を取得することで、仕事の専門性や周囲からの信頼度が高まり、できる仕事の範囲が広がります。そうなれば、給料アップが期待できます。すでに資格を取得している方は、より上位の資格取得でさらに給料が上がりやすくなるでしょう。資格を取得する上では、スクールや資格講座学校などに通ってプロから学ぶことも手段の1つです。通学にはお金がかかるものの、取得して給料が上がれば元を取れる可能性もあるでしょう。
・職場を変える
働く場所によっても給料は大きく異なります。具体例として、介護老人保健施設や特別養護老人ホームは夜勤があるため、給料が高めに設定されています。対して夜勤がなく昼間の勤務がメインとなるデイサービスや訪問介護事業所は、給料が安めです。給料を上げたい方は、施設の特色やそれによる給料の違いをチェックした上で転職を検討してください。
まとめ
厚生労働省が発表した令和4年度の賃金構造基本統計調査の結果によると、給与所得者全体の平均給与458万円に対して、介護職の皆さんの平均年収は約363万円です。
また令和4年度の介護従事者処遇状況等調査結果の参考に、介護職の皆さんが取得している資格ごとの年収を確認しても、給与所得者全体の平均給与には至りません。
しかし、資格取得や転職によって現在の給料よりも良い待遇を受けられるケースもあります。転職を検討している方は、ぜひマイナビ介護職の転職サポートをご利用ください。
※当記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています
介護・福祉業界の転職事情|仕事の種類・平均給与・おすすめの資格
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