介護福祉士の平均給料はいくら?年収をアップする方法も解説
介護福祉士は、高齢者や障害者の生活を支える重要な役割を担う職業であり、介護における唯一の国家資格を持つ人材です。一方で、介護福祉士の給料は安いという情報を見聞きして、介護福祉士を目指すことが不安になる方もいるでしょう。実際のところ介護福祉士の給料は、資格や勤務する施設、勤務形態、年齢や性別によっても異なります。
この記事では、介護福祉士の平均月収や年収を、施設・勤務形態・年齢・性別による違いも交えて解説します。さらに、介護福祉士が年収をアップさせる方法についても掲載しているため、介護福祉士を目指している方、現在介護福祉士として働いている方はぜひ参考にしてください。
目次
- 1. 介護福祉士の平均年収や月収はいくら?
- 1-1. 介護福祉士とほかの資格との給料比較
- 1-2. 働く施設による介護福祉士の給料の違い
- 1-3. 勤務形態による介護福祉士の給料の違い
- 1-4. 介護職の年齢・男女別の給料の違い
- 1-5. 介護福祉士の初任給はどれくらい?
- 1-6. 介護業界大手の給与動向
1. 介護福祉士の平均年収や月収はいくら?
介護福祉士の平均月収(平均給与額)は、厚生労働省が公表する「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」に記載されています。
データをもとに介護福祉士の平均年収や手取り月収・年収を計算すると、下記の表の通りです。
【介護福祉士の平均給与(2022年9月)】
介護福祉士の平均月収(常勤の正職員の場合) | 331,080円 |
---|---|
手取り月収(月収×0.8で計算) | 264,864円 |
介護福祉士の平均年収(月収×12か月で計算) | 3,972,960円 |
手取り年収(年収×0.8で計算) | 3,178,368円 |
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04kekka.pdf)
なお、2022年9月の平均月収は、2021年12月よりも16,110円高くなっています。概算すると、平均月収は31万~33万、平均年収は370万~400万と考えてもよいでしょう。
また、夜勤のある病院や介護施設といった入所系の施設では、夜勤手当がつき在宅サービスで働く人に比べると給料が上がります。また、資格手当がつくことが多く、経験を積み、役職がつくようになると基本給も上がっていくでしょう。さらに、国から介護職員処遇改善加算も給付されており、年ベースの給料は増加傾向にあります。
1-1. 介護福祉士とほかの資格との給料比較
介護福祉士とほかの介護系資格職とでは、平均月収・年収に下記の表のような差があります。
【資格別の平均給与(2022年9月)】
資格 | 平均月収 (各種手当含む) |
平均年収 (月収×12か月で計算) |
---|---|---|
介護福祉士 | 331,080円 | 3,972,960円 |
保有資格なし | 268,680円 | 3,224,160円 |
社会福祉士 | 350,120円 | 4,201,440円 |
介護支援専門員 (ケアマネジャー) |
376,770円 | 4,521,240円 |
実務者研修 | 302,430円 | 3,629,160円 |
介護職員初任者研修 | 300,240円 | 3,602,880円 |
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04kekka.pdf)
介護支援専門員(ケアマネジャー)が介護系資格職の中で最も平均給与が高く、次が社会福祉士であり、介護福祉士は3番手です。
平均年収を見ると、介護支援専門員(ケアマネジャー)と社会福祉士は400万円を超えているのに対し、介護福祉士は400万円にわずかに届かない金額となっています。
1-2. 働く施設による介護福祉士の給料の違い
介護福祉士が受け取る給料の額は、働く施設によって差があります。
介護福祉士が働く施設別での平均月収・年収の違いは、下記の表の通りです。
【施設別の平均給与(2022年9月)】
施設形態 | 平均月収 (各種手当含む) |
平均年収 (月収×12か月で計算) |
---|---|---|
介護老人福祉施設 | 360,840円 | 4,330,080円 |
介護老人保健施設 | 349,850円 | 4,198,200円 |
介護療養型医療施設 | 290,310円 | 3,483,720円 |
介護医療院 | 332,230円 | 3,986,760円 |
訪問介護事業所 | 323,470円 | 3,881,640円 |
通所介護事業所 | 290,120円 | 3,481,440円 |
通所リハビリテーション事業所 | 313,430円 | 3,761,160円 |
特定施設入居者生活介護事業所 | 330,650円 | 3,967,800円 |
小規模多機能型居宅介護事業所 | 303,270円 | 3,639,240円 |
認知症対応型共同生活介護事業所 | 304,190円 | 3,650,280円 |
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04kekka.pdf)
介護施設の中で、最も介護福祉士の平均月収・年収が高いのは介護老人福祉施設です。介護老人保健施設・介護医療院も給料が高く、介護福祉士全体の平均月収・年収を上回っています。
一方、夜勤があまり発生しない通所介護事業所では平均月収・年収が低くなっていました。
なお、もう1つの平均月収・年収が低い施設である介護療養型医療施設は2024年3月31日に廃止されています。
1-3. 勤務形態による介護福祉士の給料の違い
介護福祉士の勤務形態は大きく分けて「常勤・正職員」と「非常勤」の2種類があり、給料の違いがあります。
また、非常勤の場合は出勤日に応じて支払われる日給と、労働時間がそのまま給料に反映される時給による給料の差がある点も特徴です。
【雇用形態別の平均給与(2022年9月)】
勤務形態 | 平均月収(各種手当含む) |
---|---|
常勤・正職員の介護福祉士 | 331,080円 |
非常勤の介護福祉士(日給) | 162,330円 |
非常勤の介護福祉士(時給) | 134,680円 |
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04kekka.pdf)
平均月収は常勤・正職員の介護福祉士が最も高く、非常勤の介護福祉士が受け取る平均月収の2倍以上です。
なお、実労働時間数は常勤・正職員の介護福祉士が163.7時間です。対して、非常勤の実労働時間数(日給は実労働日数)は、日給の方が13.4日、時給の方が92.6時間となっています。
実労働時間数と平均月収から時間あたりの給料を比較した場合も、常勤・正職員の介護福祉士が最も給料が高い結果となっています。
1-4. 介護職の年齢・男女別の給料の違い
介護職の給料は年齢や性別の違いによって差があります。介護福祉士として働く方は、介護職全体における年齢・男女別での給料の違いを知っておくとよいでしょう。
介護福祉士だけでなく、介護職全体の年齢と男女別での平均給与を下記の表で紹介します。
【性・年齢別の平均給与(2022年9月)】
年齢 | 男性の平均月収( (各種手当含む) |
女性の平均月収 (各種手当含む) |
男性の平均年収 (月収×12か月で計算) |
女性の平均年収 (月収×12か月で計算) |
---|---|---|---|---|
全体 | 335,400円 | 309,630円 | 4,024,800円 | 3,715,560円 |
~29歳 | 293,410円 | 284,170円 | 3,520,920円 | 3,410,040円 |
30~39歳 | 338,680円 | 307,660円 | 4,064,160円 | 3,691,920円 |
40~49歳 | 358,380円 | 319,620円 | 4,300,560円 | 3,835,440円 |
50~59歳 | 340,750円 | 317,870円 | 4,089,000円 | 3,814,440円 |
60歳~ | 280,350円 | 293,110円 | 3,364,200円 | 3,517,320円 |
(出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04kekka.pdf)
まず年齢による給与の傾向を見ると、男女ともに29歳以下が最も給与が低く、40~49歳が給与のピークです。以降は年齢を重ねるにつれて給与が低下しています。
次に男女別では、男性は年齢による給与の差が大きく、反対に女性は年齢による給与の差は小さいことが特徴です。
また、給与は全体的に男性のほうが高いものの、60歳以降になると女性のほうが給与が高くなる傾向も見られます。
1-5. 介護福祉士の初任給はどれくらい?
介護福祉士の職場には、入所施設や訪問サービスがあり、それぞれの勤務地によって初任給の設定が異なります。福祉系の学校を卒業し、介護福祉士の資格を取得した学生の多くは、施設への入社を希望する傾向にあります。
一般的に施設に正社員として就職した場合の初任給は平均167,000円です。資格手当や夜勤手当が加算されて、実際には20万円程度になる企業が一般的です。施設勤務は、訪問サービスに比べて給料がやや高く、身体的介護を行う機会が多いことから、やりがいを感じやすい場所でもあります。
一方で、訪問サービスの正社員の初任給は、男性で平均250,000円、女性では平均して187,000円です。ただし、男性は年代によって差が大きく、20代と50代後半は20万円を切ります。女性は年代による差はあまり大きくありません。
訪問サービスでは、40歳以上の女性が多く活躍しており、特にホームヘルパーの採用の多くは女性です。訪問サービスでは、非常勤が多いのも特徴で、施設職員の多くが正社員であるのに対し、ホームヘルパーは正社員数より非常勤で働く人の方が多くなっています。
介護福祉士の採用では、他業種から転職した人の中途採用が多く、新卒での採用は少ない傾向にあります。実際に入社する人の年齢層も幅広いことから、初任給は年齢によって差が出ることはあまりないでしょう。
1-6. 介護業界大手の給与動向
介護福祉士の給与例として、介護業界大手4社が公開している採用情報から給与動向を紹介します。
・ニチイ学館
業界最大手のニチイ学館は全国各地に約1,900の拠点を保有し、在宅系・居住系などの多彩な介護サービスを提供しています。採用は2つのコースがあり、介護現場で介護を提供する「介護スペシャリストコース」の初任給は約17万円です。
・ツクイ
ツクイは全国各地に事業所を展開していて、中でもデイサービスの事業所数は500か所を超えています。採用情報では、介護職員として働く総合福祉職の募集が行われていて、初任給は約19万円です。
・ベネッセスタイルケア
ベネッセスタイルケアは首都圏を中心として、有料老人ホームなどの高齢者向けホームを300施設以上運営している企業です。初任給は地域差があるものの、おおむね約17万~20万円となっています。
・SOMPOケア
SOMPOケアは近年めざましい成長を遂げている企業で、全国各地に高齢者向けホームや在宅事業所を展開しています。採用情報では正社員のケアスタッフ募集が行われていて、初任給は約21万円です。
2. 介護福祉士は多様な働き方が可能
介護業界における有効求人倍率を見てみると、地域によって差はあるものの、ほかの職種に比べ、人材が不足していることが分かります。資格を持つ介護福祉士は引く手あまたであり、年齢問わず求人先は多く、自分に合った働き方が可能です。
また、女性が多く活躍する職種であり、事業所によっては託児所を併設したり、子育て支援制度を整えたりするところも増えています。今後、結婚や出産を経ても働き続けられる環境整備がさらに進むことでしょう。
正社員だけでなく非常勤の募集も多く、日中フルタイムに限らず、夜勤専門での勤務など、条件も幅広いものです。ライフスタイルに合わせた働き方ができるのも、介護福祉士ならではと言えます。
3. 介護福祉士が年収アップする方法
介護福祉士が年収アップするには、下記に挙げる3つの方法を検討・実践してみましょう。
・社会福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)などの資格を取得する
介護福祉士資格のほかに社会福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)などの資格取得者になれば、給与額や賞与額が上昇して年収アップにつながる可能性があります。職場によっては資格手当の支給額が増えるケースもあるでしょう。
ただし、資格取得が給与に影響するかは職場ごとに違いがあります。年収アップを目的とする場合は、職場の評価基準を事前に調べておくことが大切です。
・管理者やサービス提供責任者を目指す
施設の管理者やサービス提供責任者になることで、役職手当の支給によって年収アップを実現できます。施設規模の大きい事業者であればキャリアパスが整備されていて、役職の要件となる介護実務経験・スキルや勤続年数が明確化されていることもあるでしょう。
・条件のよいほかの事業所に転職する
現在の職場でキャリアアップなどによる給与アップを目指すのではなく、より給与・待遇の条件がよいほかの事業所に転職する方法です。
介護現場は人手不足が深刻になっていて、介護福祉士のように専門性の高い介護人材はニーズが高く、求人サイトに多くの求人情報があります。給与水準が高いことはもちろん、手当・賞与も充実している職場に転職すれば年収アップを実現できます。
現在の職場が気に入っている方は、資格取得や管理者・サービス提供責任者を目指す方法がおすすめです。
スムーズに年収アップを実現したい方は、条件のよいほかの事業所に転職する方法を選択するとよいでしょう。
まとめ
介護福祉士といっても、働き方は人それぞれです。同じ介護福祉士でも夜勤のある施設で働くか、生活のリズムが崩れにくい訪問サービスで働くかによっても、給料に差が出ます。十分とは言えない給料の職場もありますが、毎年確実に給料のベースは上がっているのも事実です。
また、介護職の給料アップに向けて、国をあげた積極的な政策も立てられており、混合介護の簡便化や、介護職員処遇改善加算や勤続10年以上の介護福祉士を対象にした賃上げなど、具体的な動きが見られます。
介護福祉士として給料アップを目指したい方は、マイナビ介護職にぜひご相談ください。介護業界に精通したキャリアアドバイザーが、希望条件や過去のキャリアに合った職場をご紹介します。
※当記事は2024年6月時点の情報をもとに作成しています
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