介護士の給料相場|年収アップを実現するポイントも解説

今後、少子高齢化がより深刻化すると言われる中で、介護士は社会に欠かせない職業となっています。ニーズが高く社会貢献できる仕事として、介護士に魅力を感じる方も少なくないでしょう。一方、介護士は仕事の負担の割に給料が低いという印象を持たれることもあり、介護士の将来に不安を覚える方もいるかもしれません。
当記事では、介護士の給料相場の現状から、今後の給料の展望、年収をアップさせるためのポイントまでを詳しく解説します。
目次
1.介護士の給料相場
下記では、厚生労働省の令和2年の調査結果に基づく、介護士の給料相場を紹介します。この金額は月給に賞与などを含めた全国の平均値です。年齢や勤続年数などは問わず、介護士を「医療・福祉施設などに勤める介護士」「ホームヘルパー」「ケアマネジャー」の職種別に分類し、まとめています。
医療福祉施設などに勤める介護士 | ホームヘルパー | ケアマネジャー | |
---|---|---|---|
全体 | 約360万円 | 約356万円 | 約398万円 |
男性 | 約392万円 | 約392万円 | 約434万円 |
女性 | 約343万円 | 約350万円 | 約386万円 |
(出典: 厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況」)
職種間で比較すると、介護士の中ではケアマネジャーの給料が高い傾向にあります。また、男女別に見るといずれの職種も男性のほうが高給と言えます。介護士全体の年収を平均で見ると、決して低いわけではないものの、介護現場の仕事は負担が大きく、現状の給料では見合わないと感じる方も少なくないでしょう。
2.都道府県別で比較した介護士の給料相場
介護士に限らず、給料の相場は全国一律ではありません。介護士の場合も、各都道府県の状況や介護へのニーズによって給料の相場に差が出ることがあります。都道府県ごとの相場の幅をつかむことで、自分の勤務先・今後就業を希望している都道府県の給料水準を把握しましょう。
次の表は、令和2年において介護士の給料相場が高い都道府県と給料相場の一覧です。
医療福祉施設などの介護士 | ホームヘルパー | ケアマネジャー | |||
---|---|---|---|---|---|
愛知県 | 約458万円 | 愛知県 | 約458万円 | 滋賀県 | 約461万円 |
山梨県 | 約409万円 | 埼玉県 | 約452万円 | 愛知県 | 約455万円 |
神奈川県 | 約397万円 | 長野県 | 約449万円 | 京都府 | 約455万円 |
(出典: 厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況」)
愛知県では、いずれの職種も給料水準が高く設定されています。東京・大阪などの主要エリアよりも、主要エリアに隣接するエリアや、内陸部のエリアの給料が高い傾向です。
一方、給料相場が低い都道府県はそれぞれ次のようになっています。
医療福祉施設などの介護士 | ホームヘルパー | ケアマネジャー | |||
---|---|---|---|---|---|
沖縄県 | 約299万円 | 鳥取県 | 約243万円 | 宮崎県 | 約320万円 |
宮崎県 | 約296万円 | 岡山県 | 約255万円 | 香川県 | 約334万円 |
青森県 | 約285万円 | 石川県・ 宮崎県 |
約261万円 | 大分県 | 約344万円 |
(出典: 厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況」)
青森県・宮崎県は、すべての職種の相場が低い傾向です。なお、同じ都道府県の介護士でも、給料の水準がすべての職種で同程度であるとは限りません。都道府県によっては、特定の職種のみ高い場合や低い場合もあります。
3.今後介護士の給料は上がっていく可能性が高い
給料相場の現状を見て、介護士の給料は十分な水準ではないと考える人も多いでしょう。実際に、少子高齢化の深刻化によって介護士の需要が高まる一方で、給料などの待遇面の厳しさから介護士は慢性的に不足している状態です。介護士がさらに不足すると、介護サービスを量・質ともに低下させる事態を招きかねません。人材確保のためにも介護士の待遇改善は重要であり、今後介護士の給料は上がる可能性が高いと考えてよいでしょう。
実際に、厚生労働省は介護士の待遇改善を目的とした施策を施行し、問題解決に乗り出しています。具体的な施策の一例としては、介護事業者に対して加算を行う「介護職員処遇改善加算」があります。
介護職員処遇改善加算は、介護士のキャリアパス・職場環境改善・賃金体系の整備など一定の要件を満たすごとに事業者への加算額が上がる仕組みです。最上級の「加算1」であれば、介護士1人あたり月額3万7,000円相当の加算を受けられます。加算の配分対象は介護士のみです。
(出典:厚生労働省「福祉・介護職員の処遇改善」)
(出典:厚生労働省「「介護職員処遇改善加算」のご案内」)
2022年現在、処遇改善加算のランクには「加算I」から「加算V」までの5段階があり、加算5については特に要件を満たさずとも加算が受けられます。ただし、加算IVとVについては一定の経過措置期間の後に廃止が決定しています。廃止後は加算のための要件が厳格化し、各事業者・施設の環境整備をより推進できるでしょう。
介護職員処遇改善加算のほかには、介護士以外の施設職員を配分の対象とする「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」もあります。
4.介護士が年収アップを実現するポイント4つ
介護士が年収をアップさせるには、処遇改善加算などの公的な制度を利用する以外にも、介護士本人の意思で選択できるさまざまな方法があります。公的な施策の力は大きいものの、介護士本人が選択肢を持っておくとより効果的に年収アップを目指すことが可能です。
介護士としての給料に不満を感じた場合には、ここで紹介する方法を実践してみることをおすすめします。
夜勤を増やす
夜勤に入る場合、通常の給料に加えて夜勤手当が発生します。そのため、日勤と同じ勤務時間でもより高い収入を得ることができます。
ただし、夜勤を行うことで増収が見込まれるものの、通常人間が休息を取る夜間に働くため、体力的な負担が大きくなる点には注意が必要です。体力に自信のない方は、無理のない範囲で夜勤を増やしましょう。なお、夜勤のない施設で働いている場合は、24時間体制で介護を行う入居型施設に就職・転職する必要があります。
資格を取得する
介護士の場合、資格の有無が給料に大きく影響します。次の表は、無資格の介護士と一部の資格を取得した介護士の給料を比較したものです。
資格 | 平均年収(令和2年) |
---|---|
無資格者 | 約331万円 |
介護福祉士 | 約395万円 |
実務者研修 | 約364万円 |
介護職員初任者研修 | 約361万円 |
(出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」)
有資格者には資格手当が出ることが多く、無資格の介護士よりも給料が高くなる傾向にあります。保有資格によって昇給額は異なり、たとえば、介護福祉士の場合は国家資格ということもあり、平均で84万円ほどと大幅に上がります。また、表中の平均年収には賞与などが含まれていません。賞与も含めると、実際の給料は表中の相場よりさらに高くなる可能性もあります。
資格取得は、年収アップを目指す方法の中では比較的取り組みやすく、反映されやすい方法です。さらに、業務に関する知識が深まるといった点でもメリットが大きいと言えるでしょう。
給料が高い施設で働く
転職して給料が高い施設で働くことも1つの方法です。給料は個別の施設間だけでなく、施設の種別によっても差が生じるので、より給料が高い傾向の種別への転職を目指すとよいでしょう。次の表は、介護施設の代表的な種別ごとの平均年収をまとめたものです。
施設の種別 | 平均年収(令和2年) |
---|---|
介護老人福祉施設 | 約421万円 |
介護老人保健施設 | 約387万円 |
訪問介護事業所 | 約346万円 |
通所介護事業所 | 約322万円 |
通所リハビリテーション事業所 | 約348万円 |
(出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」)
上表の中で比較すると、通所・訪問事業に比べて介護老人福祉施設・介護老人保健施設などの入居型施設は給料が高くなる傾向が見られます。ただし、入居型施設の場合、体力面での負担が大きくなる上、要求されるスキルのレベルも上がります。
転職の際には仕事内容と給料面のバランスを考慮し、自分に合った職場を探すことで給料アップにつなげましょう。
管理職を目指す
管理職に就くと、今働いている職場に在籍したままで給料アップを目指せます。介護施設の管理職の場合、施設全体の管理に対して責任を負う必要がありますが、責任の大きさが給料に反映され、昇給が見込まれるでしょう。
介護施設の管理職に就くためには一定の要件を満たす必要があり、要件は施設の種別などによって異なります。リーダーとしての責任ある仕事に興味がある方は、挑戦してみる価値があるでしょう。
まとめ
介護士は仕事の内容と比べて、給料などの待遇面では恵まれていないと言われることがあります。一方で来たる高齢化社会に向けて介護士のニーズは高く、国も介護士の待遇改善を目指した施策を展開していることから、介護士の給料は今後上がると考えられます。
また、介護士は資格の取得や昇進などで給料を上げていくことも可能です。在職中であれば、経験を生かしてより給料水準の高い職場への転職を考えてもよいでしょう。介護士の方で給料アップを目指す転職をご希望であれば、ぜひ「マイナビ介護職」をご利用ください。介護業界に強いキャリアアドバイザーが、転職をしっかりサポートいたします。
※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
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