ケアマネジャーの実務研修とは|研修で学ぶ内容を紹介
ケアマネジャーが現場で働くには、試験合格後に「介護支援専門員実務研修」の受講が必要になります。実務研修は数日間にわたり、ケアマネジメントに関する専門知識と実践スキルを身につけるための講義・実習が行われます。
当記事では、ケアマネジャーの実務研修の概要や資格取得までの流れ、研修で学ぶ主な内容について詳しく解説します。ケアマネジャーになってから受講が必要な更新研修についても紹介するので、ケアマネジャーを目指している方はぜひ参考にしてください。
目次
- 2. ケアマネジャーの実務研修で学ぶ内容
- 2-1. 制度内容・マネジメントの基本
- 2-2. ケアマネジメントの基礎技術
- 2-3. 居宅サービス計画の作成
- 2-4. アセスメント・ケアプラン作成・モニタリング
- 2-5. 地域包括支援センター・介護予防支援
- 2-6. ケアマネジメントの展開
1. ケアマネジャーの実務研修はしんどい?
ケアマネジャーとして働くには、「介護支援専門員実務研修受講試験」と呼ばれる筆記試験に合格した後、実務研修を受講する必要があります。実務研修は87時間にわたって行われるため、受講者の中には負担に感じる方も一定数存在します。
ケアマネジャーの筆記試験合格後の流れは、下記の通りです。
(1) | 介護支援専門員実務研修受講試験を受験する |
---|---|
試験合格者には、合格通知とともに研修受講案内が届きます。 |
↓
(2) | 介護支援専門員実務研修を受講する |
---|---|
すべての講義・演習を終えると「研修修了証明書」が交付されます。 |
↓
(3) | 各都道府県で介護支援専門員登録を済ませる |
---|---|
登録申請により「介護支援専門員証」が交付され、ケアマネジャーとして働くことが可能です。 |
介護支援専門員研修制度の目的は、専門性の高い知識・スキルの習得と、他職種との連携力の強化です。
ケアマネジャーは、利用者さんに対して適切な介護サービスを提供できるよう、連絡調整を行います。サービス利用の決定を支えるには、ケアマネジメントに関する高水準な知識・スキルが求められます。
また、利用者さんの自分らしい生活をサポートするため、他職種とのスムーズな連携・協働を実践する能力が必要です。
(出典:福祉医療機構「介護支援専門員(ケアマネジャー)」/ https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/fukushiworkguide/jobguidejobtype/jobguide_job07.html)
(出典:福祉医療機構「1.実務研修受講試験からの流れ」/ https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/caremanagerworkguide/caremanagerworkguide_02.html)
(出典:厚生労働省「介護支援専門員実務研修ガイドライン」/ https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2016.11JITSUMUKENSHUGAIDORAIN_3.pdf)
2. ケアマネジャーの実務研修で学ぶ内容
介護支援専門員実務研修では、ケアマネジメントに関するさまざな内容について学びます。研修時間は合計87時間におよび、実施期間として15日程度が必要です。
研修は自治体ごとに行われるため、それぞれで内容や研修日程が多少異なるものの、学習内容や流れは共通しています。ここでは、研修で学ぶ主な内容について紹介します。
(出典:福祉医療機構「2.実務研修の各課程で学ぶこと-その1」/ https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/caremanagerworkguide/caremanagerworkguide_03.html)
(出典:福祉医療機構「3.実務研修の各課程で学ぶこと-その2」/ https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/caremanagerworkguide/caremanagerworkguide_04.html)
2-1. 制度内容・マネジメントの基本
ケアマネジャーとして働く上でまず押さえておくべきは、介護保険制度の内容や介護支援サービスの意義・目的です。ケアマネジャーの役割を理解するには、介護保険制度の基本理念について学ぶ必要があります。
研修では、ケアプランの作成や保険給付など、ケアマネジャーの機能についての講義が行われます。また、介護支援サービスにおけるチームケアやプロセス、ケアマネジャーとしての倫理・基本姿勢も学びます。
2-2. ケアマネジメントの基礎技術
サービスを提供するにあたっての受付や相談、契約に関する知識に加え、アセスメントとニーズの把握方法について学びます。
利用者さんと面談する際は、利用者さんの生活に生じた問題の原因を探り、解決方法を考えながら話を進めることが必要です。また、利用者さん一人ひとりに合わせたケアプランを提供するには、利用者さんの身体状況や疾患の種類、家族関係や経済状況などの把握が求められます。
このほか、デリケートな質問にも答えやすいよう配慮しながら十分なヒアリングを行うための話術や、利用者さんの真のニーズを引き出す方法を養います。
2-3. 居宅サービス計画の作成
ケアマネジャーとして身につけるべきスキルには、アセスメントによって明らかとなった課題・ニーズに応じた適切な居住サービス計画を作成する能力が挙げられます。
居住サービス計画では、利用者さんにあった介護サービスの種類選定や担当者、利用頻度の決定を行います。また、利用者さんとサービス事業者の双方に交付する「居住サービス計画書」の作成もケアマネジャーの役割です。
研修では、演習として居住サービス計画書の原案作成を行い、利用者さんの生活目標達成や課題解決のためにどのようなサービスを提供すべきか判断するスキルを養います。
2-4. アセスメント・ケアプラン作成・モニタリング
ケアマネジャーは、サービス利用開始時のアセスメント・ケアプランの作成だけでなく、その後、月に1回程度のモニタリングを行います。
モニタリングは、ケアプランの内容が適切かどうか、見直しが必要であればどの部分を変更すべきかを判断するために行う面談です。ケアマネジャーには、課題達成度の適切な評価、新たな問題点の発見と解決方法の提案などのスキルが求められます。
研修では、アセスメント・ケアプラン作成・モニタリングの一連の流れについて、事例に基づいた実習形式で学びます。
2-5. 地域包括支援センター・介護予防支援
地域包括支援センターとの連携や情報提供もケアマネジャーの仕事の1つです。地域包括センターの役割やケアマネジャーが利用できる支援について学ぶことで、スムーズな連携を目指します。
研修では、要介護状態になることを予防する「介護予防支援」の利用サポートについて、基本となる考え方や支援業務の流れも学びます。利用者さんの課題を解決できる適切なサポートを行うためには、介護予防支援サービスの種類・内容を理解することも重要です。
2-6. ケアマネジメントの展開
アセスメントにおいて必要な面談技術に加え、アセスメントで得た情報を専門職チーム内でスムーズに共有するためのスキルを身につけます。
チームアプローチについてはロールプレイングなどの実習を行い、情報共有の適切な方法やヒアリング内容を多角的な視点から考えることの重要性を学びます。また、利用者さんの自己決定を守るためには、ケアプランについて利用者さんから同意を得るプロセスを知ることも不可欠です。
実習後はグループ内での意見交換や講評を通して、実践力アップに向けての今後の課題を理解します。
3. ケアマネジャーになってから受講する更新研修
介護支援専門員は5年ごとの更新制です。そのため、介護支援専門員証の交付から5年を経過するまでに、資格更新の研修を受講する必要があります。
更新研修の内容は、事業所・介護施設などでの実務経験の有無や更新回数によって異なります。
実務経験者の場合 | 88時間の更新研修 |
---|---|
実務経験者であり、2回目以降の更新の場合 | 32時間の更新研修 |
実務未経験者の場合 | 実務研修と同内容の更新研修 |
更新研修以外にも、ケアマネジャーとしての資質向上を目指す現任研修が実施されています。現任研修は「専門研修課程Ⅰ」と「専門研修課程Ⅱ」の2種類です。
専門研修課程Ⅰは、就業後6か月以上のケアマネジャーが受講対象者です。研修では、保健や福祉に関する専門知識を身につけ、具体的なサービスとの連携について学びます。
また、専門研修課程Ⅱを受講するには要件があり、専門研修課程Ⅰを受講済みであること、就業後3年以上経過していることが求められます。研修では、演習を通してケアマネジャーとしてのより専門的な知識・スキルを身につけられるでしょう。
なお、現任研修の受講により、更新研修の一部または全部が免除となります。現任研修の両方を受講済みであり、実務経験が5年以上ある方は、介護支援専門員の上位資格である主任介護支援専門員資格の取得研修を受講可能です。
(出典:福祉医療機構「1.実務研修受講試験からの流れ」/ https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/caremanagerworkguide/caremanagerworkguide_02.html)
まとめ
ケアマネジャーとして働くには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格後、研修を受講する必要があります。研修は87時間にわたって行われ、介護保険制度の概要からマネジメントの基本、ケアマネジメントの展開を学ぶロールプレイングまで、幅広い講義・演習を行います。ケアマネジャーは5年ごとの更新制であるため、更新研修の受講が必要です。
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※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています
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