特養と老健の違いは?人員配置基準・仕事内容・給料相場などを比較
特養(特別養護老人ホーム・介護老人福祉施設)と老健(介護老人保健施設)は、いずれも入所型の介護施設で、名称も似ていることから違いがわからないという方もいるでしょう。2つの施設は対象者・目的・サービス内容に違いがあります。
この記事では、それぞれの施設の概要を踏まえ、人員配置基準・仕事内容・給料相場の違いを詳しく解説します。また、特養・老健それぞれに向いている方の特徴にも触れるため、就職先選びにお悩みの場合は、ぜひお役立てください。
目次
1. 特養・老健とはどのような施設?
介護保険施設である特養と老健の主な違いは、次の通りです。
特養 | 老健 | |
---|---|---|
目的 | 在宅介護が困難な要介護高齢者に対し、身体介助や生活支援を中心とした自立支援を行う | 入院治療後の要介護高齢者などに医療ケアを提供し、在宅復帰を目指した自立支援を行う |
主なサービス 内容 |
・入浴や食事などの介護 ・生活支援 ・リハビリ ・通院の付き添い |
・医療、看護ケア ・リハビリ ・入浴や食事などの介護 ・通院の付き添い |
入所条件 | ・65歳以上、または40歳以上65歳未満で特定疾病が認められる ・要介護3以上、または要介護1~2でやむを得ない理由により居宅生活が困難と認められる |
・65歳以上、または40歳以上65歳未満で特定疾病により日常生活の自立が困難と認められる ・要介護1~5 ・入院治療後、または入院治療するほどではないものの自宅で十分なケアを受けることが難しいと認められる |
入所期間 | 基本的に長期利用前提、終身利用も可能 | 原則として、3か月ごとに入所継続意思の確認やリハビリプログラムの見直しを行う |
(出典:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000663498.pdf)
「介護老人保健施設(参考資料)」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000174012.pdf)
特養は中等度以上の要介護高齢者が長期間にわたって生活する施設であり、入浴、食事、排泄などの介助や日常生活サポートなどが主なサービスとなります。また、一定の条件を満たせば介護職員によるたん吸引や胃ろうをはじめとする経管栄養の実施も可能です。
老健は、長期入院後などの要介護高齢者が一時的に入所して医療ケアやリハビリなどを受けながら在宅復帰を目指す場 です。特養と比べて医療体制が整っており、医療機関と自宅の中間的存在と言えます。
2. 【特養と老健の違い】人員配置基準
特養と老健では、人員配置基準にも差があります。
特養の人員配置基準
医師 | 入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数 |
介護職員 又は看護職員 |
入所者の数が3又はその端数を増すごとに1以上 |
生活相談員 | 入所者の数が100又はその端数を増すごとに1以上 |
栄養士 | 1以上 |
機能訓練指導員 | |
介護支援専門員 | 1以上(入所者の数が100又はその端数を増すごとに1を標準とする) |
ユニット型介護老人福祉施設の場合、上記基準に加え、以下が必要
・共同生活室の設置
・居室を共同生活室に近接して一体的に設置
・1のユニットの定員はおおむね10人以下
・昼間は1ユニットごとに常時1人以上の介護職員又は看護職員、夜間は2ユニットごとに1人以上の介護職員又は看護職員を配置
・ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置 等
(引用:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000663498.pdf)
特養では施設規模に関わらず栄養士と機能訓練指導員が常勤しており、大規模な施設では入所者さんや家族向けの相談業務などを行う生活相談員が常勤しています。一方で、常勤医がいない代わりに近隣の医療機関から医師が訪問し診察や投薬などを行う場合も少なくありません。
老健の人員配置基準
医師 | 常勤1以上、100対1以上 |
薬剤師 | 実情に応じた適当数(300対1を標準とする) |
介護職員 又は看護職員 |
3対1以上、うち看護は2/7程度 |
支援相談員 | 1以上、100対1以上 |
理学療法士、作業療法士 又は言語聴覚士 |
100対1以上 |
栄養士 | 入所定員100以上の場合、1以上 |
介護支援専門員 | 1以上(100対1を標準とする) |
調理員、事務員 その他の従業者 |
実情に応じた適当数 |
ユニット型介護老人保健施設の場合、上記基準に加え、
・共同生活室の設置
・療養室を共同生活室に近接して一体的に設置
・1のユニットの定員はおおむね10人以下
・昼間は1ユニットごとに常時1人以上、夜間及び深夜は2ユニットごとに1人以上の介護職員又は看護職員を配置
・ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置 等
(引用:厚生労働省「介護老人保健施設」
/
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000174012.pdf)
医療ケアに重点を置く老健には少なくとも各1人以上の医師と支援相談員が在籍しており、介護や看護を行う職員のうち一定割合以上が看護職員です。また、入所者さん100人に対して1人以上のリハビリ専門職員の配置義務が設けられています。
3. 【特養と老健の違い】仕事内容
特養と老健における介護職の仕事内容は、次の通りです。
特養 | 老健 | |
---|---|---|
介護・ 生活介助 |
要介護度の高い入所者さんが多く、身体介助や生活介助に重点が置かれる | 必要に応じて身体介助や生活介助を行うが、「将来的にはなるべく自分でできるようにすること」を目指す介護が多い |
心身機能維持 ・回復 |
入所者さんの楽しみを増やしつつ寝たきりや認知症の進行をできる限り食い止めるために、ゲームやクリエーション活動などを積極的に行う | 積極的にリハビリを行う代わりに、入所者さんに向けイベントは少ない |
医療との連携 | 入所者さんの健康チェックを行い、定期回診の際は健康チェックの結果や近況を医師に伝える | 介護職と医療・リハビリ専門職との連携が特に重視され、介護職員にも医療関連の知識やスキルが求められる |
看取りケア | 入所者さんにとって終の棲家となることも多く、しばしば看取りケアを行う | 一時的な入所を前提としており、看取りケアの頻度は低い |
特養の目的は入所者さんが安心して日常生活を送れるようサポートすること、老健の目的は入所者さんの在宅復帰支援です。いずれも介護業務や心身機能維持、回復のための業務をするという点では共通しているものの、その特徴は大きく異なります。
4. 【特養と老健の違い】給料相場
2021年度における介護職の平均月給は、次の通りです。
常勤 | 非常勤 | |
---|---|---|
特養(介護老人福祉施設) | 345,590円 | 202,950円 |
老健(介護老人保健施設) | 338,390円 | 289,050円 |
介護療養型医療施設 | 287,070円 | (データなし) |
グループホーム (認知症対応型共同生活介護事業所) |
291,460円 | 189,600円 |
訪問介護事業所 | 314,590円 | 201,120円 |
デイサービス (通所介護事業所) |
278,180円 | 173,190円 |
デイケア (通所リハビリテーション事業所) |
297,980円 | 218,830円 |
(引用:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」
/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03kekka.pdf)
常勤職員の平均月給は特養が最も高く、特養に次いで老健が高くなっています。非常勤職員の平均月給もやはり老健が最も高い一方、特養はデイケアに次いで3番目に高い結果となりました。特養の平均収入が高い理由として、身体介助に重点が置かれており介護職員の身体的負担が大きいことが挙げられます。また、特養や老健において夜勤業務が欠かせないことも高収入の大きな理由です。
5. 特養と老健はどのような方におすすめ?
特養や老健で働くことに興味はあるもののどちらで働きたいか迷う場合は、給与や待遇だけでなく自身の長所や今後伸ばしたいスキルを考えながら選ぶことが大切です。「仕事に興味はあるけれど自分には向かないかもしれない」という場合も働くうちに適性がつく可能性があるため、前向きに検討してみましょう。
5-1. 特養がおすすめの方
次の要素に当てはまる方には、特養がおすすめです。
・心身ともにタフである
・認知症関連のスキルを身につけたい
・長期的なケアに携わりたい
長期入所を前提とする特養では、入所者さんやその家族とじっくり向き合いながらの介護が欠かせません。要介護度の高い入所者さんが多く身体介助に体力を要し、また認知症の入所者さんへの対応や看取りケアも行うため、心身のタフさを要する代わりにスキルを伸ばしやすいと言えます。特養は大規模施設が多く先輩職員のサポートを受けやすいこと、役職に就く機会も多めであることから、介護職としてキャリアアップしたい人におすすめです。
5-2. 老健がおすすめの方
次の要素に当てはまる方には、老健がおすすめです。
・臨機応変な対応が得意
・医療ケアやリハビリに関心がある
・在宅復帰を目指した介護に関心がある
老健は入所者さんの入れ替わりが激しく、入所者さん1人ひとりに必要な医療ケアやリハビリの内容も大きく異なるため、臨機応変な対応や高いコミュニケーションスキルが必要です。またさまざまな専門職と連携して介護をすることで多角的な視点を持ちやすくなり、介護スキルとともに医療やリハビリ関連の知識も身につきます。医療ケアやリハビリを経て入所者さんの心身状態が回復する様子を実感できることも、老健のメリットと言えるでしょう。
まとめ
特養は在宅介護の難しい要介護高齢者の支援を行う施設である一方で、老健は退院後の要介護高齢者が在宅復帰を目指すための施設です。老健では医療ケアが求められるため、医師や看護師が常勤であるという特徴があります。
特養では、入所者さんや家族と長期的に関わり看取りを行うこともあるため、心身のタフさが求められます。老健では入所者さんが短期で入れ替わるため、臨機応変な対応が得意な方や、在宅復帰のサポートにやりがいを感じる方におすすめです。
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※当記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています
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