サービス付き高齢者向け住宅の仕事内容や1日のスケジュールを紹介
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、バリアフリー化など高齢者の方が住みやすい環境が整えられた住宅です。比較的要介護度が低い利用者さんが多く、サービス内容も施設によって異なります。サービス付き高齢者向け住宅で働く場合は、利用者さんに合わせて安否確認・生活相談サービスにくわえ、食事や家事、介護サービスなどを提供することになるでしょう。
この記事ではサービス付き高齢者向け住宅の仕事内容や、施設で働くスタッフの職種、1日のスケジュール、サ高住で働くメリットとデメリットを紹介します。
目次
1. サービス付き高齢者向け住宅の仕事内容
サービス付き高齢者向け住宅で働くスタッフは、住宅の登録基準として義務付けられている安否確認(状況把握)・生活相談と、事業者が定める他サービスを提供しています。
実際に提供されている主なサービスの内訳は、下記の通りです。
【提供サービス(n=8,112)】
実数 | 割合 | |
状況把握・生活相談 | 8,112 | 100.0% |
食事の提供 | 7,807 | 96.2% |
入浴等の介護 | 4,018 | 49.5% |
調理等の家事 | 4,290 | 52.9% |
健康の維持増進 | 5,121 | 63.1% |
その他 | 4,393 | 54.2% |
(引用:一般社団法人 高齢者住宅協会「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」
/
https://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_registration_02.pdf 引用日2023/05/02)
必須サービスである安否確認・生活相談はもちろん、食事の提供もほとんどの事業者が行っています。一方で、調理等の家事や介護業務、健康の維持増進などの提供割合は約50~60%です。事業者の運営方針によってサービス内容には差異があります。
サービス付き高齢者住宅についての詳細は、以下のページに掲載しています。
サービス付き高齢者向け住宅の職員が行う主な仕事内容は、以下です。
1-1. 安否の確認・生活相談
安否の確認および生活相談は、サービス付き高齢者向け住宅に義務付けられたサービスです。施設の運営事業者は、いずれかのサービスを必ず実施しなければなりません。
安否の確認は、利用者さんに異変がないかを1日1回以上確認するサービスです。安否確認の方法は事業所ごとに異なり、「人的な安否確認」と「システム的な安否確認」の2種類があります。
人的な安否確認 | ・利用者さん宅を訪問して確認 ・食事の提供時に確認 など |
---|---|
システム的な安否確認 | ・電気やガスの使用状況で確認 ・感知センサーの警報による検知 など |
生活相談は、利用者さんの困りごとに対応するサービスです。健康・介護についての悩みや、入居中のトラブル解決といった相談内容に対応し、利用者さんが快適な生活を送れるようサポートします。
1-2. 食事の提供や家事の供与
利用者さんへの食事の提供や、家事の代行といった生活援助をするサービスです。なお、食事提供・家事供与などのサービスを提供しているサービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームに該当します。
サービス付き高齢者向け住宅において、必須の見守りサービスの他に、老人福祉法に基づく有料老人ホームの要件になっている「①食事の提供」「②介護の提供」「③家事の供与」「④健康管理の供与」のいずれかを実施している場合、そのサービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームに該当します。
(引用:厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅について」
/
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish_sumai 引用日2023/05/02)
食事や家事はサービス付き高齢者向け住宅ではオプションサービスであり、料金を支払った利用者さんにのみサービスを提供する仕組みです。食事はスタッフがキッチンで調理するか、外部に委託するかが事業者ごとに決まっています。
家事供与の仕事内容は、主に掃除・洗濯・買い物の代行です。
1-3. 介護サービス
介護サービスの仕事内容は、利用者さんの入浴・排せつの介助や、散歩・通院の付き添いなどです。介護サービスを提供するサービス付き高齢者向け住宅の75%は、介護施設と併設しています。
・1つ以上の高齢者生活支援施設が併設⼜は隣接している住宅は4分の3(75.0%) ・併設施設の種類は、通所介護事業所(41.1%)、訪問介護事業所(40.7%)、居宅介護支援事業所(21.9%)が多い。
(引用:一般社団法人 高齢者住宅協会「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」
/
https://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_registration_02.pdf 引用日2023/05/02)
また、介護サービスを提供するサービス付き高齢者向け住宅は、「特定施設入居者生活介護」に指定された施設と、指定を受けない施設の2種類があります。
有料老人ホームには、特定施設入居者生活介護の指定を受けた「介護付き有料老人ホーム」と指定を受けない「住宅型有料老人ホーム」がある
(引用:厚生労働省「特定施設入居者生活介護」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000648154.pdf 引用日2023/05/02)
特定施設入居者生活介護に指定された施設では、要介護者に介護保険サービスを提供できます。特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設と、指定を受けない施設の割合は、下記の通りです。
【特定施設入居者生活介護の状況(n=8,112)】
実数 | 割合 | |
いずれかの特定施設入居者生活介護の指定を受けている※ | 722 | 8.9% |
いずれも指定を受けていない | 7,390 | 91.1% |
(引用:一般社団法人 高齢者住宅協会「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」
/
https://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_registration_02.pdf 引用日2023/05/02)
特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設は少なく、大部分の施設は要介護度の低い利用者さんを対象として、主に外部委託で介護サービスを提供しています。
2. サービス付き高齢者向け住宅で働くスタッフの職種
サービス付き高齢者向け住宅では、下記のいずれかの職種・資格を有する者が、日中の常駐スタッフとして働くことを義務付けられています。
●社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所等の職員
●医師 ●看護師 ●介護福祉士 ●社会福祉士 ●介護支援専門員
●介護職員初任者研修課程修了者
(引用:厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅について」
/
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish_sumai 引用日2023/05/02)
常駐スタッフの資格としては、介護福祉士と介護職員初任者研修課程修了者(旧ヘルパー2級)の割合が多い傾向にあります。
また、介護保険サービスを提供する施設の場合は、特定施設入居者生活介護で指定された下記の人員基準を満たさなければなりません。
・管理者-1人
・生活相談員-
要介護者等:生活相談員=100:1
・看護・介護職員-
要支援者:看護・介護職員=10:1
要介護者:看護・介護職員=3:1
・機能訓練指導員-1人以上
・計画作成担当者-介護支援専門員
1人以上
(引用:厚生労働省「特定施設入居者生活介護」
/
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000648154.pdf 引用日2023/05/02)
サービス付き高齢者向け住宅の人員基準については、下記のページで詳しく解説しています。
サービス付き高齢者向け住宅の人員基準とは? 必要な資格も解説
3. サービス付き高齢者向け住宅スタッフの1日のスケジュール
サービス付き高齢者向け住宅に勤務するスタッフのスケジュール例を紹介します。
7:00 | 出勤 | 出勤後、利用者さんの起床を確認します。挨拶をかわしながら体調もチェックします。 |
---|---|---|
8:00 | 朝食 | 食事の提供・見守り・後片付けを行います。 |
9:00 | 安否確認 | 利用者さんの居室を訪問し、安否確認をします。 |
12:00 | 昼食 | 食事の提供・見守り・後片付けを行います。 |
13:00 | 生活相談 | 利用者さんの相談対応を行い、必要であれば医療や介護の関係機関に連絡します。 |
15:00 | レクリエーション | ゲームや体操などのレクリエーションを行う時間です。 |
18:00 | 夕食 | 食事の提供・見守り・後片付けを行います。 |
19:00 | お茶出し | 共有スペースでくつろぐ利用者さんたちにお茶を出します。 |
21:00 | 就寝 | 居室へと戻る利用者さんたちに「おやすみなさい」と声かけをします。 |
ただし、スケジュールは利用者さんの要望に応じて変化し、施設によっては家事や買い物代行、介護などの業務が加わります。
また、サービス付き高齢者向け住宅は75%以上の施設が、日勤・夜勤ともに常駐スタッフを配置しています。
【常駐する人員(n=8,112)】
実数 | 割合 | |
日中・日中以外とも常駐*1 | 6,098 | 75.2% |
日中常駐・日中以外は常駐なし*2 | 2,014 | 24.8% |
※1︓「日中」時間帯が24時間若しくは「日中以外」時間帯の常駐者に人数の記載があるものとしている。
※2︓「日中以外」時間帯の常駐者に人数の記載がないものを「日中以外は常駐なし」としている。
(引用:一般社団法人 高齢者住宅協会「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」
/
https://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_registration_02.pdf 引用日2023/05/02)
そのため、場合によっては夜勤の職員として、夜間の見回りや緊急対応などの業務を担当することがあります。
4. サービス付き高齢者向け住宅で働くメリットとデメリット
サービス付き高齢者向け住宅の仕事に興味がある方は、働き方が自分に合っているかをチェックすることが大切です。ほかの老人介護施設と比べて、サービス付き高齢者向け住宅で働く場合には独自のメリットやデメリットがあります。
4-1. メリット
サービス付き高齢者向け住宅で働く主なメリットは、下記の3点です。
身体的負担が少ない |
---|
サービス付き高齢者向け住宅の利用者さんは、ほかの老人介護施設よりも比較的自立した生活ができます。介護サービスも義務付けられていないため、介護のサービス提供がない施設で働けば、身体的負担があまりかかりません。 |
コミュニケーション能力を磨ける |
---|
さまざまな利用者さんとふれあう経験ができ、コミュニケーション能力を磨けます。利用者さんとの信頼関係の構築がうまくできるようになり、介護職としてのキャリアアップや転職をする際にも役立ちます。 |
やりがいを感じやすい |
---|
サービス付き高齢者向け住宅で働くスタッフは、安否確認・生活相談サービスの提供を通して、利用者さんの日常生活に触れる機会が多いことが特徴です。利用者さんが施設で楽しく、快活に生活する姿を間近で見守れるため、やりがいを感じやすいでしょう。 |
4-2. デメリット
サービス付き高齢者向け住宅で働く場合、下記のデメリットを感じることがあります。
介護技術を磨く機会が少ない |
---|
サービス付き高齢者向け住宅の利用者さんは、誰もが介護を必要としているわけではありません。特に介護サービスが義務付けられていない施設では、介護技術を磨く機会がほかの老人介護施設よりも少ない傾向があります。 |
希望の仕事内容ができない可能性もある |
---|
サービス付き高齢者向け住宅は施設ごとに提供しているサービスが違うため、就職しても希望する仕事内容ができない可能性もあります。自分がやりたい仕事・磨きたいスキルを決めた上で、希望の仕事内容ができる施設に入職することが大切です。 |
臨機応変な働き方が求められる |
---|
利用者さんの多くは、「自由度が高い居住環境」に魅力を感じてサービス付き高齢者向け住宅に入居しています。スタッフも、利用者さんの生活スタイルに合わせてサービスを提供しなければなりません。計画に沿って業務を進めるだけではなく、ときには利用者さんの希望やスケジュールを優先するなど、臨機応変な働き方が求められます。 |
まとめ
サービス付き高齢者向け住宅は、義務付けられた状況把握・生活相談サービスにくわえて、食事の提供や家事代行、介護サービスなどを提供しています。
サービス付き高齢者向け住宅の利用者さまには要介護度が比較的低い方が多いです。そのため、職員は身体的負担が少なく、幅広い利用者さんとコミュニケーションをとりながら、日常生活に間近に触れる働き方が可能です。一方で、利用者さまの生活スタイルに合わせた働き方が求められ、希望した働き方ができないことがあるほか、介護技術を磨く機会が比較的少ないデメリットもあります。
サービス付き高齢者向け住宅で働きたい方には、マイナビ介護職での職場探しがおすすめです。業界専門のアドバイザーが、ご希望に合わせて非公開求人を含む求人を紹介します。
※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています
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